2011年1月号
値段
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第65回 ハマキョウレックス
JANUARY 2011 50
近物レックスが四期ぶりに黒字化
ハマキョウレックスは荷主の物流機能を一手
に請け負う3PLを行う物流センター事業と、
二〇〇四年に買収した近物レックスを中心に路
線トラック輸送を行う貨物自動車運送事業を展
開している独立系中堅企業である。
貨物自動 車運送事業が赤字転落した〇七年三月期は営 業減益を余儀なくされたが、長期的には物流 センター事業を牽引役に営業増益を続けてきた。
主力事業である物流センター事業を振り返っ てみると、確認できる範囲で一九九九年三月 期以降、十二期連続の増収営業増益を果たし、 売上高営業利益率も〇六年三月期をボトムに 上昇している。
二〇一〇年三月期においては 過去最高値である十一・三%を記録した。
3PLについて荷主の視点に立てば、導入 効果が事後的にしか判断できず、しかも契約 期間は通常、複数年となる。
荷主を慎重な姿 勢にさせる要素が3PLビジネスにはあるとい えるが、その意味ではネームバリューが効果を 発揮する側面もあると考えられ、実績が実績 を呼ぶビジネスと捉える事ができよう。
ハマキョウレックスが昨今の厳しい環境下に おいても年間一〇件以上の新規案件を安定的 に受託していること、年々引き合い件数が増加 していること等は、荷主からの評価の結果で あると理解している。
荷主企業は本業への回帰、物流子会社再編 等を進めており、3PL事業者にとってはビ ジネスチャンスが拡大していると言える。
また、 ハマキョウレックスをはじめ収益化の進んでい る同業他社を比較すれば、同じ3PL事業者 といえどもある程度棲み分けが進んでいる印象 である。
ハマキョウレックスがこれまで積み上 げてきた実績や強み、その模倣困難性等を勘 案すれば、同社はアウトソーシングニーズの高 まりを3PLの受託チャンスとして活かし、今 後も利益拡大を果たしていくと思われる。
コストコントロールのグリップも効いている。
景気の悪化に伴い、取扱貨物量が減少した〇 九年三月期、一〇年三月期においても採算性 は向上しており、その点、コスト管理が徹底さ れていると判断してよいのではなかろうか。
例えば、パートタイマー数を調整して物量の 波動を吸収する「アコーディオン方式」、拠点 ごとに日々決算を行い、無駄の削減や翌日以降 の物量予測につなげる「収支日計」といった 特徴的な仕組みが挙げられる。
そうした効率 性の追求・継続的改善が、物流センター事業の 利益成長、同業他社と比較して相対的に高い ハマキョウレックス 特積み事業の採算改善で懸念が後退 3PL事業との相乗効果に期待 赤字の続いていた子会社、近物レックスの再建 が進み、特積み事業の収益が改善している。
こ れを受けた現中期経営計画では近物レックスの 3PL事業への活用を打ち出しており、今後は 両事業の相乗効果も期待できる。
ただし、現在 の成長ペースを継続するには配送センターの統廃 合や作業の省力化等、さらなる効率化が必要に なるだろう。
一柳 創 大和証券キャピタル・マーケッツ 金融証券研究所 企業調査第一部 第65回 51 JANUARY 2011 営業利益率に寄与していると言えよう。
一方、貨物自動車運送事業では輸送需要の 低迷が続き、採算面で苦戦を強いられている。
荷主の物流コスト削減意欲の高まり、業者間の 競争激化といった外部要因に加え、(経営陣留 任という買収時の方針が影響し)経営改善が 遅れた近物レックスの業績悪化により、〇七年 三月期には営業赤字を余儀なくされた。
しかし、〇七年一月より近物レックスの経営 陣を順次刷新し、物流センター事業で培った収 支管理の徹底に努めた事は一つの変化と捉えて いる。
結果、一〇年三月期に四期ぶりに営業黒 字を果たす水準にまで採算が改善した点をポジ ティブに評価している。
一〇年三月期に実施したM&Aによって新規 に連結された運送 会社三社の寄与も あり、同事業の業 績は直近の一一年 三月期第2 四半 期まで5四半期連 続で前年同期比 営業増益を果たす までに回復してき ている。
一一年三 月期下期より新規 連結されたロジ・ レックス( 旧J ALロジスティク ス)も徐々に利益 寄与しよう。
同事業の採算改善から、ハマキョウレックス の懸念材料が一歩後退したと捉えている。
今 後はその安定性が試されることになろう。
拠点の有効利用拡大に期待 〇九年五月に公表した一二年三月期を最終 年度とする三カ年の中期経営計画では、従来ど おり3PLを成長ドライバーとした戦略を継続 し、今後は近物レックスの人・設備・配送網を 活用して3PLを展開することが標榜された。
一〇年五月に最終年度の数値目標は売上高 九〇〇億円、経常利益六〇億円に修正された が、当初計画と比較すると減額されたのは売 上高目標のみである。
これは収益環境が厳し くとも利益目標は達成する、というハマキョウ レックスの決意を示したものと捉えている。
中計の中でも特に注目したい点は、近物レッ クスの人・設備・配送網を活用した3PLの展 開である。
現状、近物レックス保有の営業所一 〇二拠点のうち、3PLに利用しているのは 五拠点に留まるが(一〇年九月末時点)、施策 としては開始されたばかりであり、今後はそ の効果と有効利用拠点数の拡大が期待される。
ただし、景気回復に伴い取扱数量は回復基 調にあるものの、競争激化に伴う契約料率や 運賃の下落、作業負担の増加に伴う人件費や 外注委託費等の増加なども予想される。
その 意味では労務関連コストのコントロールにグリ ップが効きにくい状況も想定される。
また、潜在的なリスクとしての労働需給の逼 迫化を勘案すれば、人件費や外注費そのもの の抑制には限界があり、やはり配送センター の統廃合/適正配置や省人化の推進等をはじ めとした効率性の改善を如何に行うかがポイ ントとなろう。
足元までの状況を踏まえれば、3PL事業 を牽引役に目標数値を超過達成する公算が大 きい。
一方で、保有資産の有効活用、3PL 事業と近物レックスの連携、新規顧客獲得に 向けたグループ全体での営業活動などの施策に は改善余地を残すものと考えている。
荷主か らの評価の向上や業容拡大に向け、これまで 以上にグループ総合力の発揮が求められよう。
その他、財務戦略や資本政策についても一 考の余地があろう。
近物レックスの負債に加 え、近年の積極投資(M&Aや受託案件の増 加など)から、有利子負債の水準は下げ止ま りの傾向にある。
しかし、資本蓄積は充分に あると考えられ、リスクとの見合いで言えば レバレッジを利かせる必要が高まっていたも のと理解している。
寧ろキャッシュフローの使途としては株主 還元の在り方がポイントだと考えている。
同 社の利益成長や設備投資計画を鑑みれば、現 状の配当性向は同業他社比で見て低い。
資本 市場での評価向上に向けては、もう一歩踏み 込んだ積極的な対応が待たれる。
《出来高》 ハマキョウレックスの過去10年間の株価推移 ひとつやなぎ・はじめ 一九九七年三月早稲田大学理 工学部土木工学科卒。
同年四月 大和総研入社、企業調査部イン フラチームに配属。
九九年から 物流担当に。
貨物自動 車運送事業が赤字転落した〇七年三月期は営 業減益を余儀なくされたが、長期的には物流 センター事業を牽引役に営業増益を続けてきた。
主力事業である物流センター事業を振り返っ てみると、確認できる範囲で一九九九年三月 期以降、十二期連続の増収営業増益を果たし、 売上高営業利益率も〇六年三月期をボトムに 上昇している。
二〇一〇年三月期においては 過去最高値である十一・三%を記録した。
3PLについて荷主の視点に立てば、導入 効果が事後的にしか判断できず、しかも契約 期間は通常、複数年となる。
荷主を慎重な姿 勢にさせる要素が3PLビジネスにはあるとい えるが、その意味ではネームバリューが効果を 発揮する側面もあると考えられ、実績が実績 を呼ぶビジネスと捉える事ができよう。
ハマキョウレックスが昨今の厳しい環境下に おいても年間一〇件以上の新規案件を安定的 に受託していること、年々引き合い件数が増加 していること等は、荷主からの評価の結果で あると理解している。
荷主企業は本業への回帰、物流子会社再編 等を進めており、3PL事業者にとってはビ ジネスチャンスが拡大していると言える。
また、 ハマキョウレックスをはじめ収益化の進んでい る同業他社を比較すれば、同じ3PL事業者 といえどもある程度棲み分けが進んでいる印象 である。
ハマキョウレックスがこれまで積み上 げてきた実績や強み、その模倣困難性等を勘 案すれば、同社はアウトソーシングニーズの高 まりを3PLの受託チャンスとして活かし、今 後も利益拡大を果たしていくと思われる。
コストコントロールのグリップも効いている。
景気の悪化に伴い、取扱貨物量が減少した〇 九年三月期、一〇年三月期においても採算性 は向上しており、その点、コスト管理が徹底さ れていると判断してよいのではなかろうか。
例えば、パートタイマー数を調整して物量の 波動を吸収する「アコーディオン方式」、拠点 ごとに日々決算を行い、無駄の削減や翌日以降 の物量予測につなげる「収支日計」といった 特徴的な仕組みが挙げられる。
そうした効率 性の追求・継続的改善が、物流センター事業の 利益成長、同業他社と比較して相対的に高い ハマキョウレックス 特積み事業の採算改善で懸念が後退 3PL事業との相乗効果に期待 赤字の続いていた子会社、近物レックスの再建 が進み、特積み事業の収益が改善している。
こ れを受けた現中期経営計画では近物レックスの 3PL事業への活用を打ち出しており、今後は 両事業の相乗効果も期待できる。
ただし、現在 の成長ペースを継続するには配送センターの統廃 合や作業の省力化等、さらなる効率化が必要に なるだろう。
一柳 創 大和証券キャピタル・マーケッツ 金融証券研究所 企業調査第一部 第65回 51 JANUARY 2011 営業利益率に寄与していると言えよう。
一方、貨物自動車運送事業では輸送需要の 低迷が続き、採算面で苦戦を強いられている。
荷主の物流コスト削減意欲の高まり、業者間の 競争激化といった外部要因に加え、(経営陣留 任という買収時の方針が影響し)経営改善が 遅れた近物レックスの業績悪化により、〇七年 三月期には営業赤字を余儀なくされた。
しかし、〇七年一月より近物レックスの経営 陣を順次刷新し、物流センター事業で培った収 支管理の徹底に努めた事は一つの変化と捉えて いる。
結果、一〇年三月期に四期ぶりに営業黒 字を果たす水準にまで採算が改善した点をポジ ティブに評価している。
一〇年三月期に実施したM&Aによって新規 に連結された運送 会社三社の寄与も あり、同事業の業 績は直近の一一年 三月期第2 四半 期まで5四半期連 続で前年同期比 営業増益を果たす までに回復してき ている。
一一年三 月期下期より新規 連結されたロジ・ レックス( 旧J ALロジスティク ス)も徐々に利益 寄与しよう。
同事業の採算改善から、ハマキョウレックス の懸念材料が一歩後退したと捉えている。
今 後はその安定性が試されることになろう。
拠点の有効利用拡大に期待 〇九年五月に公表した一二年三月期を最終 年度とする三カ年の中期経営計画では、従来ど おり3PLを成長ドライバーとした戦略を継続 し、今後は近物レックスの人・設備・配送網を 活用して3PLを展開することが標榜された。
一〇年五月に最終年度の数値目標は売上高 九〇〇億円、経常利益六〇億円に修正された が、当初計画と比較すると減額されたのは売 上高目標のみである。
これは収益環境が厳し くとも利益目標は達成する、というハマキョウ レックスの決意を示したものと捉えている。
中計の中でも特に注目したい点は、近物レッ クスの人・設備・配送網を活用した3PLの展 開である。
現状、近物レックス保有の営業所一 〇二拠点のうち、3PLに利用しているのは 五拠点に留まるが(一〇年九月末時点)、施策 としては開始されたばかりであり、今後はそ の効果と有効利用拠点数の拡大が期待される。
ただし、景気回復に伴い取扱数量は回復基 調にあるものの、競争激化に伴う契約料率や 運賃の下落、作業負担の増加に伴う人件費や 外注委託費等の増加なども予想される。
その 意味では労務関連コストのコントロールにグリ ップが効きにくい状況も想定される。
また、潜在的なリスクとしての労働需給の逼 迫化を勘案すれば、人件費や外注費そのもの の抑制には限界があり、やはり配送センター の統廃合/適正配置や省人化の推進等をはじ めとした効率性の改善を如何に行うかがポイ ントとなろう。
足元までの状況を踏まえれば、3PL事業 を牽引役に目標数値を超過達成する公算が大 きい。
一方で、保有資産の有効活用、3PL 事業と近物レックスの連携、新規顧客獲得に 向けたグループ全体での営業活動などの施策に は改善余地を残すものと考えている。
荷主か らの評価の向上や業容拡大に向け、これまで 以上にグループ総合力の発揮が求められよう。
その他、財務戦略や資本政策についても一 考の余地があろう。
近物レックスの負債に加 え、近年の積極投資(M&Aや受託案件の増 加など)から、有利子負債の水準は下げ止ま りの傾向にある。
しかし、資本蓄積は充分に あると考えられ、リスクとの見合いで言えば レバレッジを利かせる必要が高まっていたも のと理解している。
寧ろキャッシュフローの使途としては株主 還元の在り方がポイントだと考えている。
同 社の利益成長や設備投資計画を鑑みれば、現 状の配当性向は同業他社比で見て低い。
資本 市場での評価向上に向けては、もう一歩踏み 込んだ積極的な対応が待たれる。
《出来高》 ハマキョウレックスの過去10年間の株価推移 ひとつやなぎ・はじめ 一九九七年三月早稲田大学理 工学部土木工学科卒。
同年四月 大和総研入社、企業調査部イン フラチームに配属。
九九年から 物流担当に。
