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2011年2月号
ケース

ビズネット ビジネスモデル

FEBRUARY 2011  48 集中購買の導入・運営を代行  中堅文具メーカーのプラスは、一九九〇年 代に物流サービスを武器とする二つのニュー ビジネスを生み出した。
一つは九三年に開始 したオフィス用品通販の「アスクル事業」だ。
アスクルが登場するまで、オフィス用品の購 買は総務部門や庶務部門のスタッフが自分で 文房具店まで出向いて購入するのが一般的だ った。
 それに対してアスクルは、インターネットや 電話で注文を受けると、その翌日もしくは当 日中にも商品をユーザーのもとに届ける。
し かも、文具だけでなくOA機器のサプライ品 やキッチン・トイレ周りの生活雑貨まで幅広 く品揃えすることで、オフィスで使用する間 接材の購買スタイルを大きく変えた。
必要な 間接材を必要な分だけ、いつでも調達できる ようにした。
 もう一つのニュービジネスは?クイックデ リバリーサービス?を意味する「QDS事業」 で、アスクルから四年後の九七年にスタート した。
アスクルとの最大の違いはサービスの 対象を大規模事業所に絞り込んだ点だ。
しか し、QDSという名称が示す通り、当初はア スクルと同様に豊富な品揃えと迅速な配送体 制がセールスポイントだった。
 規模の大きい事業所では、もともと文具デ ィーラーが事業所を訪問して注文をとり、商 品を届けることが慣習となってきた。
このデ ィーラーによる受注・配送業務を代行するの がQDSだ。
大規模事業所が必要とする様々 な間接材をQDSが仕入れてカタログに掲載 し、ディーラーが開拓した顧客から注文を受 けて翌日配送する。
 アスクルが通販小売業であるのに対して、 QDSは卸売業に受注処理と納品物流を付加 した「カスタマイズドオフィスサプライ事業」 という位置付けだが、ユーザーから見たとき の機能自体は当初は似通っていた。
 だが、その後、この二つの事業はそれぞれ 違った方向にビジネスモデルを進化させていく。
アスクルが中小事業所からSOHO(小規模 事業所)に顧客層を広げ、取り扱う商材の種 類を増やすことに精力を注いだのに対し、Q DSは顧客の購買業務そのものを支援するソ リューションサービスへと軸足を移していった。
 大規模事業所をターゲットに顧客を開拓す るには、商材の拡大よりも、効率的な購買シ ステムの提供や業務の代行による支援のほう が有効だと判断した。
バブル崩壊後の景気の 低迷で、大企業の多くが購買費の削減に取り 組んでいたのを受けてのことだった。
 ソリューション重視の方針を明確にするた め、QDS事業は九九年に「ビズネット」に 名称を変えた。
さらに翌二〇〇〇年にはプラ スからの分社・独立を果たし、新会社ビズネ ットとして再スタートを切った。
 ビズネットは購入費の削減をめざす顧客に、 購入アイテムの選定や価格交渉の窓口を本社  オフィス用品のカタログ通販からソリューション事 業へと軸足を移してきた。
社用品を含む間接材全般 を対象にした購買費の削減支援と、その物流オペレ ーションを代行する事業を「3PPL」と名付け、間接 材の調達を効率化する新サービスを続けざまに開発 している。
ビジネスモデル ビズネット 調達機能を備えた3PLサービスで オフィス用品の購買・物流費を削減 49  FEBRUARY 2011 に集約して集中購買する方法をアドバイスし、 そのオペレーションを代行するというソリュー ションを提供する。
 従来の集中購買は、本社が一括購入した物 品を自社内または外部倉庫で保管し、支店・ 営業所など各部門から電話やファクスで注文 を受けて発送するというやり方が一般的だっ た。
業務フローは複雑で帳票類のやり取りに は手間がかかった。
 サービスレベルにも課題があった。
本社に 物品を注文してもすぐには届かず、コストを 抑えるために配送回数が制限されることも珍 しくなかった。
地方支店などの事業所では配 送回数が少ないことを踏まえて、一定数の在 庫を持っておくなどの対応を迫られていた。
 ビズネットは、本社と各部門間の受発注や 在庫管理・配送などの業務を代行することで、 これらの課題を解消する。
顧客が集中購買に よるコストメリットを享受したうえで、日々の 管理業務や帳票処理を効率化する。
インター ネットで発注した翌日には各部門の事業所へ 物品が届くので、各事業所は余分な在庫を持 たなくて済む。
 顧客のグリーン購入も支援している。
カタ ログの商品のなかで環境負荷の少ないものに フラグを立て、顧客が商品を選ぶ際に注意を 促したり、購入データを分析してグリーン調 達率を算出するフォーマットを提供するなど のサービスを行っている。
﹁3PPL﹂で物販事業の枠を超える  ただし、こうした業務代行やフォーマット の提供も、当初は物品の販売に付随するサー ビスに過ぎなかった。
顧客からサービス料と して対価を得ていたわけではなかった。
ソリ ューション事業を標榜しながらも、実態とし てはカタログ通販の域を出てはいなかったこ とになる。
 〇四年に「ついで便」と名付けたサービス 商品を開発したことが、物販を伴わずに純粋 にサービスへの対価を得る本来のソリューショ ン事業に踏み出す最初の一歩となった。
 顧客の事業所で必要となる間接材のなかに は、ビズネットが販売していない物品もある。
社名入りの封筒やユニフォーム、販促品、業 務用パンフレットなど、顧客が独自ルートで 仕入れている専用品等がその中心で、これら の物品は通常、ユーザーが自分で倉庫に保管 し、必要に応じて営業所などに発送するとい うかたちで管理されている。
 このように従来はアウトソーシングの対象 から外れていた社内物品に着目したサービス が「ついで便」だ。
社内物品をビズネットの 物流センターで預かり、ビズネットから購入 するオフィス用品といっしょに、受発注や在 庫管理・配送業務を代行する。
 すでに社用品や販促品の物流業務を外部の 倉庫に委託している顧客には、同社のシステ ムと連携してインターネットで在庫確認や発 注ができるサービスも提供している。
 顧客はビズネットのシステムにデータを登録 しておけば、パソコンの画面で文房具などを 注文する?ついでに?これらの社内物品も注 文できることから、「ついで便」と名付けた。
ビズネットが物販に伴って提供している業務 代行サービスの対象を社内物品にも広げたわ けだ。
 同社はこの「ついで便」を足がかりにして、 ソリューション分野の需要開拓に本腰を入れ た。
カタログ販売の付帯サービスとしてでは 3PPL サービスの位置づけ 調達主体 調達システム(3PP) ●商材規模大 ●調達のプロ カタログ通販 既製品調達を簡略化 (早い・安い・便利) 物販ベース【創業期】 B to B物販 (オフィス用品調達効率化の仕組み) 間接材取扱の規模の 経済性を追求 ネット通販、マーケットプレイス IT 役務サービス 3PL ●多彩なサービス ●ワンストップ物流 ●カスタマイズ 3PPL 間接材の調達・物流 オールインワンサービス 役務提供主体 物流 物流主体 FEBRUARY 2011  50 なく、「ついで便」をメーンに利用する顧客が 徐々に増えていった。
そして〇八年には「つ いで便」をはじめ、それまでに手がけた調達 支援サービスの集大成を「マルチハブシステ ム」として商品化した。
 さらに〇九年九月に名称を「3PPLサ ービス」へ変え、商品の概念をより明確に 打ち出した。
3PPLは3PL(3rd Party Logistics)に購買(Purchasing)のPを加 えた造語だ。
間接材の調達から在庫管理・受 発注・配送、さらに使用後の廃棄・再利用 処理までの全プロセスに対象を広げ、オール インワンでソリューションを提供するという意 味を込めた。
 組織の強化にも乗り出した。
〇九年九月に 3PPLのビジネスモデルを具体化するため の企画部門として「3PPL推進室」を新設。
続いて昨年五月には「第2事業部」の傘下に 「3PPL営業部」を発足させた。
 さらに同十一月には従来の三事業部制を第 1事業部と第2事業部の二事業部制に再編し、 第2事業部に3PPLサービスの開発・営業 部門を一本化した。
第1事業部が物販事業を、 第2事業部が3PPLを中心とする「サービ ス事業」を担当する体制へと改め、組織上で もサービス事業を物販事業と並ぶ柱として明 確に位置づけた。
 ビズネットは現在、東京と大阪に物流セン ターを設け、全国翌日配送(近隣エリアへは 当日配送)を実施している。
カタログ掲載商 二三区および横浜、川崎の各市でも開始する 予定だ。
 コピー用紙などのOA機器のサプライ品は、 かつてはOA機器メーカーの販売会社やディ ーラーがオフィス街にきめ細かく拠点を配置 し、営業マンや配送専任者によって、商品を 届けるだけでなく、棚入れまで行うことが多 かった。
 ところがアスクルを始めとするオフィス用品 通販がサプライ品を扱うようになり、価格競 争が激化すると、前線に在庫を抱える販売形 態がコスト競争上不利になってきた。
そのた め近年では販社やディーラーが在庫拠点を集 約して商物分離を行い、配送業務を物流会社 へ委託するケースが増えている。
 物流会社による配送は軒先渡しが原則とな る。
商物分離とともに棚入れなどのサービス が付帯業務として行われることはほとんど見 られなくなった。
 このサービスを復活させて付加価値とする ことがビズネットの狙いだ。
そのために、こ うした付帯業務に対応できる物流業者をパー 品は約二万アイテムで競合企業と比べやや少 ない。
ただし物販品以外に顧客専用の社内用 品三〇〇〇アイテムをセンターに預かり、同 様のサービスを行っている。
 また二カ所の出荷基地のほかに流通加工基 地を別途設置して、業務用パンフレットや販 促品を顧客の営業担当者別に袋詰めするサー ビスなどにも対応している。
「顧客のニーズを 探りながら当社が業務を代行することで顧客 の効率化に寄与できるサービスをできるだけ 提供していくスタンスだ」と窪田博執行役員 第2事業部長は説明する。
 アスクル、そしてビズネットが切り開いたオ フィス用品のカタログ通販分野には近年、後 発組が相次いで参入し、価格面、サービス面 で激しい競争が繰り広げられている。
「物販で 競合企業と正面から戦うよりも、顧客の要望 に合わせていろいろなサービスを創出するこ とで当社の価値をアピールしていきたい」と 窪田執行役員はいう。
“棚入れ”を有料で  昨年秋には新サービスをいくつかスタート させた。
一つは「コピーペーパー棚入れサービ ス」。
顧客へコピー用紙を配送する際に、指定 された棚へドライバーが開梱して搬入し、使 用済み段ボールを回収する。
物販に付随する サービスを有料で提供するものだ。
札幌・仙 台・名古屋・大阪・広島の各都市で昨年十 一月から実施しており、今年の六月には東京 窪田博執行役員第2事業部長 51  FEBRUARY 2011 法も検討している」と窪田執行役員。
 一方で、「外部カタログ連携」と名付け、オ フィス用品以外の商品のウェブサイトと連携 して商材を拡大する取り組みも、3PPLサ ービスの一環として進めている。
窪田執行役 員は「物販が当社の屋台骨である以上、商材 の拡大も(新サービスの開発と)並行して進 める必要がある」と説明する。
 昨年十一月に切削工具、電動機械、電設 資材などを扱う機械工具商社のトラスコ中山 が運営するウェブサイトとシステム連携を行っ た。
トラスコ中山は一五万アイテムの機械工 具を紙媒体のカタログや検索・閲覧サイトの 「オレンジブック」に掲載し、販売店を通じて ユーザーに販売している。
 ビズネットはトラスコ中山のウェブサイトに リンクして、オレンジブックに掲載されてい る一五万アイテムの商品を、販売店を経由す る従来の商流を変えずに、ビズネットのサイ トからも発注できるようにした。
顧客にとっ てワンストップショッピングの利便性がより高 まった。
三年で売り上げ三倍めざす  3PPL事業ではこのほか、ビズネットの プラットフォームを提供してオフィス用品・ 間接材を提供するサプライヤー側の事業を支 援するサービスも行っている。
 例えばサプライヤーが事務機といっしょに 付属品などを販売する場合、事務機本体につ いては受発注・物流体制が整備されていても、 付属品は別に電話で注文を受けて宅配便など で送っていることが多い。
 ビズネットのインフラを利用することで、 その管理とオペレーションを効率化する。
サ プライヤーが付属品をビズネットのサイトに登 録し、ビズネットの受発注・物流システムを 利用して販売するのだ。
 ビズネットの〇九年度決算は売上高が前年 度比八・四%減の一七〇億円だった。
物販 事業が前年より一五%近い減収となったこと で前年割れを余儀なくされた。
ただしサービ ス事業の売り上げは新規顧客の拡大などで前 年を四割も上回っている。
 今のところサービス事業の売り上げは構成 比でまだ二割に届かないが、三年後の二〇一 二年度にサービス事業部門で〇九年度の三倍 の売り上げ達成を目標に掲げている。
サービ ス事業の顧客が物販事業にも利用を広げると いう相乗効果もここ数年は顕著になってきて いるという。
 昨今は競合企業も購入システムそのものを 提供して顧客の業務効率化に貢献するという ビズネットのモデルに近い事業展開を志向し 始めている。
それでも窪田執行役員は「早く から顧客企業の懐に入りさまざまな要望を受 け入れてきた分、われわれにはアドバンテージ がある。
この分野でリーディングカンパニーの 地位を早期に確立したい」と意欲を燃やして いる。
(フリージャーナリスト・内田三知代) トナーに選び、さらにドライバーの教育マニュ アルを作り込んだ。
 この協力会社のネットワークを使って、棚 入れサービスの開始とほぼ同時に「機密文書 リサイクルサービス」も開始した。
商品配送 の帰りに顧客から保管期間が過ぎて廃棄する 機密文書を段ボールごと回収し、提携先の処 理業者を通じて再資源化を行う。
 さらに今年二月には「ユニフォームメンテ ナンスサービス」にも乗り出す。
ユニフォーム を顧客から回収しクリーニングして届けるサー ビスだ。
今後も「顧客にとって分かりやすい 商品を開発していく。
特徴あるサービスを提 供している物流事業者と提携し商品化する方 サービス事業の波及効果 100 100 326 413 265 サービス利用ユーザーの 総受注件数の推移 ワンストップオーダーでの サービス+物販 受注件数の推移 404 ※07年度を100として指数表示 ※07年度を100として指数表示 07 年度08 年度09 年度07 年度08 年度09 年度 サービス利用ユーザーの物販拡大の相乗効果が顕著に

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