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2011年2月号
ケース

佐川急便ベトナム 

FEBRUARY 2011  56 混載便ネットワークで国内を網羅  佐川急便ベトナムは二〇一一年春からベト ナム全土を縦断する定期混載便をスタートす る。
北部の首都ハノイ、中部のダナン、そし て南部の商都ホーチミンを、週二便のトラッ ク幹線輸送で結ぶ。
これまでベトナムの混載 輸送便の運行は、積み合わせの可能な荷物が ある場合だけに限られていた。
荷主は計画的 な利用ができなかった。
 しかし「日系荷主の内販ニーズが急拡大し ていることから、スペースを埋められると判 断した。
定期便であれば荷主は出荷スケジュ ールを組みやすくなる。
料金的にも従来の混 載便より抑えることで、新たな輸送需要を創 造したい」と佐川急便ベトナムの島順二社 長はいう。
 定期路線便の運行開始に続き、その後はハ ノイ、ハイフォン、ダナン、ホーチミン、カ ントーの主要五都市で、それぞれ域内配送網 を構築する計画だ。
そのうえで各都市を幹線 輸送でつなぐ。
事実上、ベトナム全土を網羅 する配送ネットワークを敷くことになる。
「ベ トナム物流は今後三年から五年が勝負と見て いる。
そのために一一年度から段階的に日本 の佐川急便と同じスキームをベトナムに根付 かせていく」と島社長は意気込んでいる。
 これまでベトナムは割安な労働力とその地 理的条件から中国生産のリスク回避先、いわ ゆる?チャイナプラスワン?として位置付け られてきた。
それに加え近年では外資に対す る国内販売の規制緩和が進んだことから、有 力な消費市場としての顔も持ち始めている。
 ワコールベトナムの左野善一社長は「当社 のベトナム販売の売り上げは一貫して倍々ペ ースで伸びている。
輸出も順調だ。
拡大する 需要に応えるため一〇年度は現地工場の生産 量を前年比で一割あまり増強した。
一一年度 はさらに二割の増強を計画している」という。
 同社がベトナムに進出したのは一九九七年。
当初は日本の量販店向けに企画されたサブブ ランド「ウイング」の製造基地として立ち上 がった。
現在は「ワコール」ブランドの高級 下着やスポーツタイツなどの高付加価値商品 にまで取り扱いを広げ、日本を始め欧州や東 南アジアに出荷している。
 〇八年末からベトナムの国内販売も開始し た。
現地の一人当たりGDPは約一〇〇〇ド ルで中国の三分の一程度に過ぎない。
それで も五〇〇〇円前後の高級下着が現地の女性に よく売れている。
その旺盛な消費意欲は先の リーマンショックにもほとんど影響を受けな かった。
国民の平均年齢二七歳、人口の約六 割が三〇歳以下という若い国で、今後の需要 拡大も大いに期待できる。
 この二年でワコールベトナムは既に主だっ た百貨店はカバーした。
現地の百貨店チャネ ルにおけるシェアは二位まで浮上した模様だ。
現在はホーチミンやハノイなどの大都市を中 心に直営店を増やしている。
その物流を輸出  佐川急便ベトナムの事業規模が急ピッチで拡大し ている。
従来の日本向け輸出業務に加え、外資系企 業に対する規制緩和が進んだことから、国内の販売 物流ニーズが本格化している。
これに対応して同社 では低価格の混載便ネットワークや付加価値機能を 整備して荷主の内販を支援する。
   (大矢昌浩) 佐川急便ベトナム 10年かけて培った現地運営ノウハウと 日本式サービスで荷主の内販を支援 57  FEBRUARY 2011 入も含めて佐川急便ベトナムが一手に引き受 けている。
ワコールベトナムの左野社長は「当 社の現在の課題は、製造拡大にどうやって対 応し、国内販売をどうやって伸ばしていくか にある。
今の段階で物流管理に投資や人材を 投入して固定費を抱えるのは得策ではない」 と判断している。
 物流まで手が回らないほど忙しいのは、同 社に限らない。
婦人下着のOEMメーカー、 カドリールベトナムの川島均社長は「現地の 縫製ラインはどこも、ずっと先まで注文で埋 まっている。
人手不足も深刻で、これ以上は 仕事を受けられない状態だ」という。
 日本のアパレルメーカーの多くが現在、中 国一辺倒の生産体制の見直しを迫られている。
日中間の関係悪化に加え、欧米系の企業と比 較して発注規模に劣り、品質管理にうるさい 日系企業との取引は、中国の現地工場から回 避される傾向が目立ってきた。
 欧米の有力アパレルは従来から中国生産の シェアを一定の割合に留め、残りを東南アジ アや南米などに分散させてきた。
ところが日 本は、この一〇年で中国依存度を無防備に 高め過ぎた。
リスクヘッジを急ぐ必要がある。
その最有力候補地がベトナムだ。
 川島社長は「これまで三〇年近く東南アジ アの縫製業を回ってきたが、縫製業で中国生 産を補完できるのは、バングラデシュ、ミャ ンマーそしてベトナムの三国しかない。
なか でもベトナムは日本企業にとっては絶対に外 せない国だ」と指摘する。
 しかし、現地の生産ラインは既に欧米の大 手が半年単位で抑えてしまっている。
日本の 商社やメーカーが今から注文を入れても受け 入れ先は見当たらない。
それでもベトナムの 他に工程の持って行き場はない。
現地工場の 新設ラッシュは当分の間、収まりそうにない。
サービス品質支えるドライバー教育  その追い風を受け、工場の設備部品を現地 で加工販売するシオガイ精機ベトナムは急ピ ッチで事業を拡大させている。
〇四年にホー チミンに進出した当初は日本向けの輸出が一 〇〇%を占めていたが、現地に日系工場向け 設備部品の需要が大きいことを知り、販売先 を現地工場にも広げた。
 現在は内販が売り上げの約半分を占めてい る。
同社の小川英樹副社長は「今後は内販の 比率がもっと増えていきそう。
設備部品は供 給が需要に追いつかない状態で、仕事はいく らでもある。
一一年度の売り上げは最低でも 二割増を見込んでいる」と強気の見通しを立 て、先行投資で生産能力増強を進めている。
 物流は当初から佐川急便に一括して委託し ている。
「値段だけなら現地の物流会社のほ うが安い。
しかし、配送が遅れても連絡もな い。
荷物の紛失や破損も避けられないという レベルでは、顧客に約束した納期が守れない。
再生産の費用までかかってしまう。
その点で 佐川急便はトラブルが発生した時でも連絡や 対応がしっかりしている」と評価する。
 佐川急便ベトナムでは、ドライバーの教育 や評価、労務管理制度に日本流を採り入れ ている。
しかし、それだけでは十分ではない。
ベトナムのオペレーションには、この土地特 有のノウハウが必要だ。
例えば事故防止。
マ ニュアル通りに運転すれば日本では安全でも、 交通ルール無視が横行しているベトナムでは、 もらい事故が避けられない。
 島社長は「事故を回避するには単なる安 全運転だけでなく?防衛運転?をドライバー に叩き込む必要がある。
そのノウハウを当社 は現地で約一〇年の時間をかけて蓄積し、ド ライバーを育ててきた。
苦労もずいぶん味わ った。
運転技術だけではない。
日本であれば 必要ないレベルまで教育に踏み込んでいかな いと、ここでは安定運営を維持できない。
そ う簡単に他社にサービス品質で追いつかれる とは思わない」と自信を持っている。
佐川急便ベトナムのホーチミン拠点。
併設 する検品センターはフル稼働状態が続いて いる。

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