2011年3月号
グローバルSCM
グローバルSCM
日本型SCMの方向性2日本型グローバルプロセス統合
MARCH 2011 62
日本型SCMの今後の方向性として、前回
の「S&OP」と並び注目されるのがグロー
バル統合である。
業務プロセスのグローバルな 標準化と、それを支える情報インフラの構築 で、日本のCPGメーカーは欧米の大手に大 きく遅れをとってきた。
キャッチアップするだ けでは足りない。
そこでも日本型SCMの強 みを活かし、アジア市場で優位に立つことを 目指せ。
企業グループ内のプロセス統合 需要変動が大きく、かつローコスト化の圧 力に常にさらされているCPG(Consumer Packaged Goods :加工食品・日用雑貨品な どの消費財)メーカーのSCM動向は、他業 界のSCMの将来を検討する上でのベンチマー クとなる。
そのため当社ではCPG業界のS CMについて、常に研究を行っている。
今回のリサーチでは、在庫日数が最も少な い一五日未満の「グループ1企業群」は、需 給管理機能をいったん集中化し、標準化した 後に、改めて自律分散型の組織を形成してい ることが判明した。
この自律分散型のSCM こそが、日本型SCMの真髄といえるであろ う。
それでは日本型SCMは今後どこに向かっ ていくのであろうか。
前回の本稿ではその方 向性の一つとして、川下との連携を強化する 「S & O P (Sales & Operation Planning)」 を取り上げた。
そこでは営業部門がSCMの 一翼を担い、販売計画の精度を向上させてい くことによって、在庫をさらに削減すること が可能であることを述べた。
このS&OPと並ぶもう一つの方向性とし て、グループ企業内でのビジネスプロセス統合 が挙げられる。
SCM領域においては、調達 や受注など、需給管理に隣接する他の機能の SCM部門への取り込み、グループ企業内の 需給管理の統合、SCMの管理対象範囲拡大 などの検討が進められている。
物流管理領域においては、物流子会社がグ ループ全体の物流を統合することによるロー コスト化が図られている。
加えて、特に食品 メーカーでは、物流子会社が受注センター業 務を受託し、受注から納品までの一括管理を 行う事例が散見される。
近年では、グループ企業内の間接業務(人 事・総務・経理業務)のシェアードサービス 化に取り組む企業も目立つ(図1)。
低価格 化に加え、原材料の高騰という市場環境に対 応するため、統合範囲を広げることによるさ らなるローコスト化に取り組んでいるのである。
これらの企業が意識しているのはグローバ リゼーションである。
しかしながら現状では、 日本のCPGメーカーにおけるグループ企業内 のビジネスプロセス統合の対象範囲は、国内に 留まっている。
それに対して、グローバリゼー ションでは一歩先をいく欧米の大手CPGメー カーの取り組み状況はどうなっているのであ 最 終回 次世代を拓く 日本型SCM が アビームコンサルティング プロセス&テクノロジー事業部 平井正人 日本型SCMの方向性2 日本型グローバルプロセス統合 日本型SCMが次世代を拓く 63 MARCH 2011 ろうか。
この連載の最終回にあたり、日系CPG メーカーのグローバルSCMについて、その方 向性を考えてみたい。
欧米メーカーのグローバル展開 欧米の大手CPGメーカーは古くから海外 進出に積極的であった。
スイスに本社を置く 世界最大の加工食品メーカー、ネスレは大正 時代の一九一三年に日本法人を設立している。
日雑メーカー最大手の米プロクター&ギャン ブル(P&G)が日本で生産を開始したのも 一九七〇年代のことである。
そうした欧米の大手CPGメーカーのグロー バルマネジメントは現在までに大きく三つの段 階を経ている(図2)。
〜一九八〇年代 ──徹底した現地化による海外事業拡大 CPG業界は市場 密着型のビジネスで ある。
各地の生活様 式の違いから、必要 とされる商品も国や 地域によって異なっ てくる。
加えて食 品・日用雑貨品と いった商品は、運賃 負担力に乏しいこと から、現地生産・ 現地販売が基本とな る。
そのため欧米CP Gメーカーの海外進 出は、ローカリゼー ションからスタート した。
具体的には、 本社製品については その地域で売れやすいと見込んだ製品のみを 取り扱い、その他の製品は現地で独自に開発 し、販売政策も現地で立案し実施した。
また、 進出の方法としては、現地企業の株式の一部 を取得するというやり方が一般的であった。
一九九〇年代〜 ──本社集中管理基盤の構築 ローカリゼーション中心だったCPGメー カーのグローバル展開に転機をもたらしたのは、 八〇年代に急速に進展したITと国際輸送技 術の高度化であった。
それまでは国別の対応がコスト面でも有利 であった。
それに対しITおよび国際輸送技 術の高度化は、本社の主導によるグローバル な標準化を可能とし、またそれによるコスト 競争力の強化を可能とした。
その基盤を欧米大手CPGメーカーが構築 したのは九〇年代のことである。
それまでの 情報システムが基本的に国別・事業別だった のを改め、まず九〇年代前半に、コードを統 一し、業務プロセスの標準化などを行った。
そして続く九〇年代後半から、情報システム のグローバルな一元化に着手した。
また、これと並行してグローバル管理を強 化する目的で、現地法人の一〇〇%子会社 化を進め、国・地域間での製品連携の強化を 図った。
この際に情報システム基盤として多く採用 されたのがSAP社のERPパッケージであ 図1 グループ内のシェアード化の例 会社名関連会社名機 能 キリンホールディングス アサヒビール 味の素 明治ホールディングス 日本ハム 資生堂 キユーピー 日清製粉グループ ニチレイ サッポロホールディングス キリンビジネスエキスパート アサヒマネジメントサービス 味の素ビジネスアソシエイツ 明治ビジネスサポート 日本ハムビジネスエキスパート 資生堂ビジネスソリューション ケイ・システム 日清アソシエイツ ニチレイプロサーヴ サッポロプロアシスト 経理、人事、総務、調達の標準定型サー ビス・専門サービス 給与・福利厚生、経理等の間接業務 給与、福利厚生、不動産仲介等 研修、給与厚生・経理・総務業務 経理、会計、税務 経理、財務、労務、総務等の間接業務 グループ会社経理業務受託、情報システ ム化支援 人事給与、総務、物流業務及び不動産 管理、保険、物販 人事、総務、経理、財務、法務、保険、 リース等の受託 総務、経理、人事、営業支援に関する 業務の受託、保険代理業 ローカリゼーション (現地化)による海 外進出 製品、販売方法などの 徹底した現地化による海 外事業展開 情報システムも現地に合 わせてそれぞれ構築 グループ企業全体での 業務・データの標準化 本社から海外法人を一 元管理 グローバルIT インフラを活 かしたさらなる業務効率化 による利益向上 主に新興国を中心とした 海外事業展開の加速化 本社集中管理 基盤の構築 グローバルでの 業務効率化と市 場展開加速化 1960〜 1990〜 2000〜 図2 海外CPGメーカーのグローバル化 MARCH 2011 64 る(図3)。
分散して構築されていたシステム を、グローバルで一つに合わせるために、パッ ケージの提供するビジネスプロセスやデータ構 造が利用されたのである。
もちろんマーケットの状況は国によって異 なる。
そのため可能なかぎり業務を標準化し、 マーケット毎の要件に対応させなければなら ないところのみをカスタマイズするという方 法をとることで、本社の統制力強化、グロー バルな業務効率化のベースを構築していった のである。
二〇〇〇年代〜 グローバルでの業務効率化と市場展開加速化 グローバル競争が本格化した今世紀に入っ てからの、欧米大手CPGメーカーの活躍に は目覚しいものがある。
九〇年代に構築した グローバルな統合インフラをベースに、規模の 経済性を活かし、それをさらに拡大する動き を見せている。
その手始めとして各社が取り組んだのは、 地域単位でのシェアードサービス化であった。
同時に国をまたがった最適地生産も進んでいっ た。
すなわち欧米大手CPGメーカーは、日 系メーカーが今日国内で推進しているグループ 企業内の業務統合を、すでにグローバルレベ ルで展開し始めているのである。
例えばネスレは、「G L O B E(Global Business Excellence)プログラム」と称して、 グローバルでの業務・システム統合と、各地 で培ったベストプラクティスの共有化を推進し ている。
同様に米P&Gは、一九九九年に「GBS (Global Business Services)」というシェアー ドサービス会社を設立し、経理・財務・人事 に加え、受注管理や、配送システム等につい てのサービスまでグループ会社に提供している。
業務の効率化に向けた取り組みだけでなく、 売り上げを増やすための仕掛け作りも目立っ ている。
代表的な動きの一つに、製品ライン ナップの強化と、それを目的とした企業買収 がある。
強いブランドの育成とブランドシェア 向上を図ると同時に、採算の悪い事業からの 撤退(売却)や、内製からアウトソースへの 転換など、選択と集中が進められている。
グローバルでの情報システムおよびプロセス の標準化によって実現されるのはコスト低減 のみではない。
グローバル規模で頻繁に行わ れるようになった買収や合併などを実施した 後に、スムースに統合を果たして、早期にそ の効果を享受することも目的としている。
今日の欧米大手CPGメーカーは、すでに グローバルでのビジネスプロセス統合を完了し た段階にある。
それによって買収や進出、企 業戦略の変更に柔軟に対応できる体制となっ ているのである。
日系メーカーのグローバル展開 欧米の大手と比較すると、日本のCPG メーカーのグローバル化の歴史は浅い。
味の素、 キッコーマンなど、すでに半世紀以上前から 海外進出に取り組んだ企業もあるが、大半の メーカーは長らく国内で生産したものを国内 で販売するという体制をとってきた。
海外に ついても工場進出せずに、国内生産品を細々 と輸出する程度だった。
しかしながら、状況は急速に変わりつつあ る。
日本国内は人口減による将来的な市場縮 小という厳しい現実に直面している。
日本の CPGメーカーが現状の企業規模を維持・拡 大していくには、海外進出を真剣に検討せざ るを得ない。
ここで注目されるのがアジア各国である。
アジア地域の人口は今や四〇億人近くにも達 し、世界最大の消費市場として拡大を続けて いる。
各国の所得水準の高まりとともに、食 品・消費財需要の高付加価値化も顕著になっ ている。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ネスレ プロクター&ギャンブル ユニリーバ ペプシ クラフトフーズ ロレアル ダノン コカコーラ・エンタープライズ ヘンケル キンバリークラーク SAP SAP SAP SAP SAP SAP SAP SAP SAP SAP 売上高 順位企業名使用 ERP CPGメーカーのグローバルトップ10はSAP をベースにグローバル標準化を行っている ※対象業種は加工食品・菓子・日雑 売上高順位は2009 年度の財務数値に 基づく 図3 欧米CPGメーカーにおける グローバル業務標準化 日本型SCMが次世代を拓く 65 MARCH 2011 このような状況を鑑み、農林水産省では「東 アジア食品産業活性化戦略」と銘打ち、〇六 年度より食品メーカーの海外進出支援を開始 している。
また、日本経済新聞社が大手食品・日用品 メーカー四〇社を対象に行った調査(一〇年 三月三〇日付)によると、全体の四三%に当 たる一七社が「M&A(合併・買収)を検討 している」と回答して いる。
海外企業を対象 とした買収が実際に紙 面を賑わすことも増え てきた(図4)。
日本のメーカーが海外 事業の主戦場とするア ジアには、すでに欧米 CPGメーカーが進出し ている。
彼等の強みは 先述のように、グローバ ルでの効率化によるロー コストと、M & A 後の 統合を容易にする情報 システムである。
対する 日系CPGメーカーの情 報システムは一部を除い て、いまだ国別に異なっ ている。
図2でいうと ころのローカリゼーショ ンの段階にある。
だが我々は、日本の CPGメーカーのSCM には優位性があると考 えている。
欧米CPGメーカーが 土壌とする欧米市場は、定番品が多く、製品 のライフサイクルは長く、需要変動は小さい という特徴がある。
そのためSCMのオペレー ションは、権限を本社に集中させるかたちが 主となっている。
一方、日本市場は、消費者の多様なニーズ に細やかに応える必要があるため、新製品の 割合が大きく、製品ライフサイクルは短期化 しており、需要変動は大きい。
このような状況に対して、日本のCPGメー カーはこれまで、関連する各部門がそれぞれ 変化を察知して、在庫適正化という企業全体 の目標に向けて自律的に対処するというやり 方をとってきた。
この日本型SCMのノウハウが、流行に敏 感なアジア市場への展開においては、欧米企 業に対する競争優位として働くのではないか と我々は考えている。
鮮度を追求し、過度な在庫を持たず、欠品 を防ぐ、日本市場で鍛え上げ、進化させてき たSCMのオペレーションをグローバルに展開 することで、日系CPGメーカーはアジア市 場においてより大きな存在感を示すことがで きるであろう。
日本型グローバルSCMシステム ただし、グローバルな情報システムの統合 と業務標準化は、CPGメーカーにおけるグ ローバリゼーションの方向性の一つであり、日 マルハがアグロベスト(マレーシア)を買収 大塚製薬がアルマ社(仏)に出資 ロッテがギリアン(ベルギー)買収 キリンHD がデアリーファーマーズ(豪州)買収 キッコーマンがアレジー・リサーチ・グループ社(米) を買収 ユニチャームがAPPP( 豪)を買収 サントリーがダノン子会社フルコア(ニュージーランド) 買収 大塚製薬がヌトリシヨン エ サンテー(仏)を買収 アサヒビールが英キャドバリーからオーストラリア飲料 事業を買収 キリンがサンミゲルビール(比)資本参加 アサヒビールが青島ビールへ出資(20%) キリンがライオンネイサン(豪)完全子会社化 サントリーがオレンジーナ(仏)を買収 資生堂がベア社を買収 サッポロがクローネンブルグ・ベトナム・リミテッドを 買収 アサヒがピー・アンド・エヌ・ビバレッジズ・オース トラリアを買収 サントリーがサニー・ディライト・ビバレッジ(米) を買収 キリンがフレイザー・アンド・ニーヴ(シンガポール) に出資 5,000 〜 9,000 買収・出資金額 年 事 例 (百万円) 報道日 出 典 2008 2009 2010 図4 2008 年〜 2010 年の海外企業への出資・買収報道 3,000 120,000 18,000 84,000 2,000 15,000 70,000 〜 (非公表) 73,500 108,000 60,000 230,000 約300,000 2,000 173,000 84,600 約27,200 2008 年 1月 26日 2008 年 5月 28日 2008 年 6月 23日 2008 年 8月 25日 2008 年 9月 30日 2008 年 10月 1日 2008 年 10月 24日 2008 年 12月 24日 2008 年 12月 25日 2009 年 1月 20日 2009 年 1月 24日 2009 年 4月 27日 2009 年 9月 10日 2009 年 12月 11日 2010 年 1月 15日 2010 年 7月 26日 2010 年 8月 26日 2010 年12 月18 日 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日経産業新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 電子版ニュース 日本経済新聞 電子版ニュース 本のCPGメーカーにとっても真剣に検討し なければならない課題であろう。
そして、グローバル標準化を短期に効率的 に実現するには、ERPパッケージとテンプ レートアプローチの活用が有効である。
パッ ケージに装備された標準機能を利用すること により、自社グループの基幹業務システムを 効率的に構築することが可能となる。
テンプレートアプローチとは、自社グループ の標準となる業務プロセスや情報システムの機 能をテンプレートとして構築し、パイロットプ ロジェクトを通じて具体化し、さらにロール アウトプロジェクトにて多数の自社拠点に短期 間で展開していく手法のことである。
拠点ごとの要件に応じて個別にシステムを 構築すれば、どうしてもコスト・時間を要し てしまう。
それに対しテンプレートアプローチ では、最初に自社グループの共通基盤となる 業務を標準として定義し、それを実現するシ ステム機能を一つひとつ構築していく。
この 際に、拠点展開を意識したパラメータの定義、 ドキュメント類の整備を行う。
また拠点ごとに通常バラバラとなっている 品目、組織、勘定科目等のコード類やKPI についても、事業や拠点の固有要件に配慮し ながら標準化を進めることで、統合のコスト・ 期間を短縮することが可能となる(図5)。
このようなアプローチこそ、グローバルに業 務を標準化し、その基盤としての情報インフ ラを短期に構築する必要に迫られている日本 のCPGメーカーに対するソリューショ ンだと我々は考えている。
ここで検討すべきポイントとして、 日系CPGメーカーのコア・コンピテ ンスの一つとなりうる日本型SCMを、 どうシステムに組み込むかという問題 がある。
関連部門それぞれが自律的に 行動する日本型SCMの業務プロセス は、既存のERPパッケージには装備 されていない。
本誌二〇一一年一月号の本稿にて紹 介した需給テンプレートが、その解決 策の一つとなる。
我々アビームコンサル ティングが日本の需給管理をベースに 開発した国産テンプレートを活用すれ ば、基幹業務だけでなく、需給業務ま で含めたグローバルな情報インフラの構 築が、短期間で実現できる。
終わりに: 日本型SCMとその将来性 本連載のベースとなっているリサー チ『CPGメーカーの実態から探る日 本型SCMの将来』を開始するのにあ たり、我々はSCMの管理集中化レベ ルが在庫の少なさと正の相関関係を持っ ているのではないかという仮説を立てた。
しかし、研究結果はその仮説を否定 した。
在庫が一五日未満の企業は、S MARCH 2011 66 図5 テンプレートアプローチのメリット(10拠点の例) 個別導入アプローチテンプレートアプローチ 12カ月 要件 定義 設計 開発 教育 テスト 移行 (1 拠点目) 9カ月 要件 定義 設計 開発 教育 テスト 移行 (2 拠点目) 9カ月 要件 定義 設計 開発 教育 テスト 移行 要件 定義 設計 開発 テスト 教育 移行 要件 定義 設計 開発テスト要件 定義 設計 開発 テスト 教育 移行 要件 定義 設計 開発 テスト 教育 移行 (3拠点目) 9カ月 要件 定義 設計 開発 教育 テスト 移行 (5 拠点目) 9カ月 テンプレート構築 12カ月9カ月6カ月6カ月 要件 定義 設計 開発 テスト 教育 移行 要件 定義 設計 開発 テスト 教育 移行 6カ月6カ月 パイロット展開ロールアウト 要件 定義 設計 開発 教育 テスト 移行 (4 拠点目) 9カ月 要件 定義 設計 開発 教育 テスト 移行 (6 拠点目) (10 拠点目) ●拠点の要件に応じたシステ ム構築 ●2 拠点目以降はノウハウ蓄 積による期間短縮 ●テンプレートとなる業務を定義、 システム機能を構築 ●拠点展開を意識したパラメータ ●2拠点目以降はテンプレート活用 により大幅な期間短縮 ・・・ ・・・ 大幅な短縮 1 拠点 1 拠点 1 拠点 2 拠点 1 拠点 2 拠点 2 拠点 2 拠点 2 拠点 1 拠点 1 拠点 テンプ レート 日本型SCMが次世代を拓く 67 MARCH 2011 企業まで含めたSCMの高度化が、また海外 進出においては日本のSCMで蓄積したナレッ ジのグローバル展開が求められているといえ るだろう。
日本の消費者行動は世界で最も洗練されて いるといわれる。
他国における将来的な消費 者行動を理解する上で日本は重要なポジショ ンを占めている。
それ故に、今後の市場規模 拡大が見込めないにも拘わらず、多くの海外 メーカーが今も日本市場を重視している。
そのような日本の消費者への対応の過程で 構築された日本型SCMは、日本のCPG メーカーがこれから海外事業を展開していく うえで、競争力の一つと成り得る。
日本企業 の飛躍の原動力になると我々は考えている。
グローバリゼーション対応で最も重要な要因 の一つが、SCMの迅速化、効率化である。
規模の経済性を最も得られるのが、SCMの 管理領域だからである。
そして今日の日本の CPGメーカーは、国内においてはグループ CM組織をいったん集中化した後で、改めて 組織を改革し、自律分散型をとっていること がわかった。
この研究結果は、七年ほど前に次世代SC Mの方向性として話題となった「アダプティ ブS C M 」あるいは「センス&レスポンド」 と方向性が一致している。
その概念は、ITによりプロセスがシステム 化されていくにつれ、人間の役割は、変化を 機敏に察知し、それぞれの現場で自律的にそ れらに対応するという形に変わっていくであ ろうというものであった。
日本のCPGメーカーのSCMは、まさし く各部門の自律的な行動により、非常に少な い在庫でのオペレーションを実現している。
I T化の先進事例の一つであるといえよう。
アビームコンサルティング株式会社 プロセス&テクノロジー事業部 SCMセクター マネージャー 主に食品・日用雑貨メーカーの大手 企業に対する、業務改革・ERP導入 等のプロジェクトに多数参画。
需給 業務の改善に力を入れている。
アビームコンサルティングHP http:// jp.abeam.com 平井正人(ひらいまさと)
業務プロセスのグローバルな 標準化と、それを支える情報インフラの構築 で、日本のCPGメーカーは欧米の大手に大 きく遅れをとってきた。
キャッチアップするだ けでは足りない。
そこでも日本型SCMの強 みを活かし、アジア市場で優位に立つことを 目指せ。
企業グループ内のプロセス統合 需要変動が大きく、かつローコスト化の圧 力に常にさらされているCPG(Consumer Packaged Goods :加工食品・日用雑貨品な どの消費財)メーカーのSCM動向は、他業 界のSCMの将来を検討する上でのベンチマー クとなる。
そのため当社ではCPG業界のS CMについて、常に研究を行っている。
今回のリサーチでは、在庫日数が最も少な い一五日未満の「グループ1企業群」は、需 給管理機能をいったん集中化し、標準化した 後に、改めて自律分散型の組織を形成してい ることが判明した。
この自律分散型のSCM こそが、日本型SCMの真髄といえるであろ う。
それでは日本型SCMは今後どこに向かっ ていくのであろうか。
前回の本稿ではその方 向性の一つとして、川下との連携を強化する 「S & O P (Sales & Operation Planning)」 を取り上げた。
そこでは営業部門がSCMの 一翼を担い、販売計画の精度を向上させてい くことによって、在庫をさらに削減すること が可能であることを述べた。
このS&OPと並ぶもう一つの方向性とし て、グループ企業内でのビジネスプロセス統合 が挙げられる。
SCM領域においては、調達 や受注など、需給管理に隣接する他の機能の SCM部門への取り込み、グループ企業内の 需給管理の統合、SCMの管理対象範囲拡大 などの検討が進められている。
物流管理領域においては、物流子会社がグ ループ全体の物流を統合することによるロー コスト化が図られている。
加えて、特に食品 メーカーでは、物流子会社が受注センター業 務を受託し、受注から納品までの一括管理を 行う事例が散見される。
近年では、グループ企業内の間接業務(人 事・総務・経理業務)のシェアードサービス 化に取り組む企業も目立つ(図1)。
低価格 化に加え、原材料の高騰という市場環境に対 応するため、統合範囲を広げることによるさ らなるローコスト化に取り組んでいるのである。
これらの企業が意識しているのはグローバ リゼーションである。
しかしながら現状では、 日本のCPGメーカーにおけるグループ企業内 のビジネスプロセス統合の対象範囲は、国内に 留まっている。
それに対して、グローバリゼー ションでは一歩先をいく欧米の大手CPGメー カーの取り組み状況はどうなっているのであ 最 終回 次世代を拓く 日本型SCM が アビームコンサルティング プロセス&テクノロジー事業部 平井正人 日本型SCMの方向性2 日本型グローバルプロセス統合 日本型SCMが次世代を拓く 63 MARCH 2011 ろうか。
この連載の最終回にあたり、日系CPG メーカーのグローバルSCMについて、その方 向性を考えてみたい。
欧米メーカーのグローバル展開 欧米の大手CPGメーカーは古くから海外 進出に積極的であった。
スイスに本社を置く 世界最大の加工食品メーカー、ネスレは大正 時代の一九一三年に日本法人を設立している。
日雑メーカー最大手の米プロクター&ギャン ブル(P&G)が日本で生産を開始したのも 一九七〇年代のことである。
そうした欧米の大手CPGメーカーのグロー バルマネジメントは現在までに大きく三つの段 階を経ている(図2)。
〜一九八〇年代 ──徹底した現地化による海外事業拡大 CPG業界は市場 密着型のビジネスで ある。
各地の生活様 式の違いから、必要 とされる商品も国や 地域によって異なっ てくる。
加えて食 品・日用雑貨品と いった商品は、運賃 負担力に乏しいこと から、現地生産・ 現地販売が基本とな る。
そのため欧米CP Gメーカーの海外進 出は、ローカリゼー ションからスタート した。
具体的には、 本社製品については その地域で売れやすいと見込んだ製品のみを 取り扱い、その他の製品は現地で独自に開発 し、販売政策も現地で立案し実施した。
また、 進出の方法としては、現地企業の株式の一部 を取得するというやり方が一般的であった。
一九九〇年代〜 ──本社集中管理基盤の構築 ローカリゼーション中心だったCPGメー カーのグローバル展開に転機をもたらしたのは、 八〇年代に急速に進展したITと国際輸送技 術の高度化であった。
それまでは国別の対応がコスト面でも有利 であった。
それに対しITおよび国際輸送技 術の高度化は、本社の主導によるグローバル な標準化を可能とし、またそれによるコスト 競争力の強化を可能とした。
その基盤を欧米大手CPGメーカーが構築 したのは九〇年代のことである。
それまでの 情報システムが基本的に国別・事業別だった のを改め、まず九〇年代前半に、コードを統 一し、業務プロセスの標準化などを行った。
そして続く九〇年代後半から、情報システム のグローバルな一元化に着手した。
また、これと並行してグローバル管理を強 化する目的で、現地法人の一〇〇%子会社 化を進め、国・地域間での製品連携の強化を 図った。
この際に情報システム基盤として多く採用 されたのがSAP社のERPパッケージであ 図1 グループ内のシェアード化の例 会社名関連会社名機 能 キリンホールディングス アサヒビール 味の素 明治ホールディングス 日本ハム 資生堂 キユーピー 日清製粉グループ ニチレイ サッポロホールディングス キリンビジネスエキスパート アサヒマネジメントサービス 味の素ビジネスアソシエイツ 明治ビジネスサポート 日本ハムビジネスエキスパート 資生堂ビジネスソリューション ケイ・システム 日清アソシエイツ ニチレイプロサーヴ サッポロプロアシスト 経理、人事、総務、調達の標準定型サー ビス・専門サービス 給与・福利厚生、経理等の間接業務 給与、福利厚生、不動産仲介等 研修、給与厚生・経理・総務業務 経理、会計、税務 経理、財務、労務、総務等の間接業務 グループ会社経理業務受託、情報システ ム化支援 人事給与、総務、物流業務及び不動産 管理、保険、物販 人事、総務、経理、財務、法務、保険、 リース等の受託 総務、経理、人事、営業支援に関する 業務の受託、保険代理業 ローカリゼーション (現地化)による海 外進出 製品、販売方法などの 徹底した現地化による海 外事業展開 情報システムも現地に合 わせてそれぞれ構築 グループ企業全体での 業務・データの標準化 本社から海外法人を一 元管理 グローバルIT インフラを活 かしたさらなる業務効率化 による利益向上 主に新興国を中心とした 海外事業展開の加速化 本社集中管理 基盤の構築 グローバルでの 業務効率化と市 場展開加速化 1960〜 1990〜 2000〜 図2 海外CPGメーカーのグローバル化 MARCH 2011 64 る(図3)。
分散して構築されていたシステム を、グローバルで一つに合わせるために、パッ ケージの提供するビジネスプロセスやデータ構 造が利用されたのである。
もちろんマーケットの状況は国によって異 なる。
そのため可能なかぎり業務を標準化し、 マーケット毎の要件に対応させなければなら ないところのみをカスタマイズするという方 法をとることで、本社の統制力強化、グロー バルな業務効率化のベースを構築していった のである。
二〇〇〇年代〜 グローバルでの業務効率化と市場展開加速化 グローバル競争が本格化した今世紀に入っ てからの、欧米大手CPGメーカーの活躍に は目覚しいものがある。
九〇年代に構築した グローバルな統合インフラをベースに、規模の 経済性を活かし、それをさらに拡大する動き を見せている。
その手始めとして各社が取り組んだのは、 地域単位でのシェアードサービス化であった。
同時に国をまたがった最適地生産も進んでいっ た。
すなわち欧米大手CPGメーカーは、日 系メーカーが今日国内で推進しているグループ 企業内の業務統合を、すでにグローバルレベ ルで展開し始めているのである。
例えばネスレは、「G L O B E(Global Business Excellence)プログラム」と称して、 グローバルでの業務・システム統合と、各地 で培ったベストプラクティスの共有化を推進し ている。
同様に米P&Gは、一九九九年に「GBS (Global Business Services)」というシェアー ドサービス会社を設立し、経理・財務・人事 に加え、受注管理や、配送システム等につい てのサービスまでグループ会社に提供している。
業務の効率化に向けた取り組みだけでなく、 売り上げを増やすための仕掛け作りも目立っ ている。
代表的な動きの一つに、製品ライン ナップの強化と、それを目的とした企業買収 がある。
強いブランドの育成とブランドシェア 向上を図ると同時に、採算の悪い事業からの 撤退(売却)や、内製からアウトソースへの 転換など、選択と集中が進められている。
グローバルでの情報システムおよびプロセス の標準化によって実現されるのはコスト低減 のみではない。
グローバル規模で頻繁に行わ れるようになった買収や合併などを実施した 後に、スムースに統合を果たして、早期にそ の効果を享受することも目的としている。
今日の欧米大手CPGメーカーは、すでに グローバルでのビジネスプロセス統合を完了し た段階にある。
それによって買収や進出、企 業戦略の変更に柔軟に対応できる体制となっ ているのである。
日系メーカーのグローバル展開 欧米の大手と比較すると、日本のCPG メーカーのグローバル化の歴史は浅い。
味の素、 キッコーマンなど、すでに半世紀以上前から 海外進出に取り組んだ企業もあるが、大半の メーカーは長らく国内で生産したものを国内 で販売するという体制をとってきた。
海外に ついても工場進出せずに、国内生産品を細々 と輸出する程度だった。
しかしながら、状況は急速に変わりつつあ る。
日本国内は人口減による将来的な市場縮 小という厳しい現実に直面している。
日本の CPGメーカーが現状の企業規模を維持・拡 大していくには、海外進出を真剣に検討せざ るを得ない。
ここで注目されるのがアジア各国である。
アジア地域の人口は今や四〇億人近くにも達 し、世界最大の消費市場として拡大を続けて いる。
各国の所得水準の高まりとともに、食 品・消費財需要の高付加価値化も顕著になっ ている。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ネスレ プロクター&ギャンブル ユニリーバ ペプシ クラフトフーズ ロレアル ダノン コカコーラ・エンタープライズ ヘンケル キンバリークラーク SAP SAP SAP SAP SAP SAP SAP SAP SAP SAP 売上高 順位企業名使用 ERP CPGメーカーのグローバルトップ10はSAP をベースにグローバル標準化を行っている ※対象業種は加工食品・菓子・日雑 売上高順位は2009 年度の財務数値に 基づく 図3 欧米CPGメーカーにおける グローバル業務標準化 日本型SCMが次世代を拓く 65 MARCH 2011 このような状況を鑑み、農林水産省では「東 アジア食品産業活性化戦略」と銘打ち、〇六 年度より食品メーカーの海外進出支援を開始 している。
また、日本経済新聞社が大手食品・日用品 メーカー四〇社を対象に行った調査(一〇年 三月三〇日付)によると、全体の四三%に当 たる一七社が「M&A(合併・買収)を検討 している」と回答して いる。
海外企業を対象 とした買収が実際に紙 面を賑わすことも増え てきた(図4)。
日本のメーカーが海外 事業の主戦場とするア ジアには、すでに欧米 CPGメーカーが進出し ている。
彼等の強みは 先述のように、グローバ ルでの効率化によるロー コストと、M & A 後の 統合を容易にする情報 システムである。
対する 日系CPGメーカーの情 報システムは一部を除い て、いまだ国別に異なっ ている。
図2でいうと ころのローカリゼーショ ンの段階にある。
だが我々は、日本の CPGメーカーのSCM には優位性があると考 えている。
欧米CPGメーカーが 土壌とする欧米市場は、定番品が多く、製品 のライフサイクルは長く、需要変動は小さい という特徴がある。
そのためSCMのオペレー ションは、権限を本社に集中させるかたちが 主となっている。
一方、日本市場は、消費者の多様なニーズ に細やかに応える必要があるため、新製品の 割合が大きく、製品ライフサイクルは短期化 しており、需要変動は大きい。
このような状況に対して、日本のCPGメー カーはこれまで、関連する各部門がそれぞれ 変化を察知して、在庫適正化という企業全体 の目標に向けて自律的に対処するというやり 方をとってきた。
この日本型SCMのノウハウが、流行に敏 感なアジア市場への展開においては、欧米企 業に対する競争優位として働くのではないか と我々は考えている。
鮮度を追求し、過度な在庫を持たず、欠品 を防ぐ、日本市場で鍛え上げ、進化させてき たSCMのオペレーションをグローバルに展開 することで、日系CPGメーカーはアジア市 場においてより大きな存在感を示すことがで きるであろう。
日本型グローバルSCMシステム ただし、グローバルな情報システムの統合 と業務標準化は、CPGメーカーにおけるグ ローバリゼーションの方向性の一つであり、日 マルハがアグロベスト(マレーシア)を買収 大塚製薬がアルマ社(仏)に出資 ロッテがギリアン(ベルギー)買収 キリンHD がデアリーファーマーズ(豪州)買収 キッコーマンがアレジー・リサーチ・グループ社(米) を買収 ユニチャームがAPPP( 豪)を買収 サントリーがダノン子会社フルコア(ニュージーランド) 買収 大塚製薬がヌトリシヨン エ サンテー(仏)を買収 アサヒビールが英キャドバリーからオーストラリア飲料 事業を買収 キリンがサンミゲルビール(比)資本参加 アサヒビールが青島ビールへ出資(20%) キリンがライオンネイサン(豪)完全子会社化 サントリーがオレンジーナ(仏)を買収 資生堂がベア社を買収 サッポロがクローネンブルグ・ベトナム・リミテッドを 買収 アサヒがピー・アンド・エヌ・ビバレッジズ・オース トラリアを買収 サントリーがサニー・ディライト・ビバレッジ(米) を買収 キリンがフレイザー・アンド・ニーヴ(シンガポール) に出資 5,000 〜 9,000 買収・出資金額 年 事 例 (百万円) 報道日 出 典 2008 2009 2010 図4 2008 年〜 2010 年の海外企業への出資・買収報道 3,000 120,000 18,000 84,000 2,000 15,000 70,000 〜 (非公表) 73,500 108,000 60,000 230,000 約300,000 2,000 173,000 84,600 約27,200 2008 年 1月 26日 2008 年 5月 28日 2008 年 6月 23日 2008 年 8月 25日 2008 年 9月 30日 2008 年 10月 1日 2008 年 10月 24日 2008 年 12月 24日 2008 年 12月 25日 2009 年 1月 20日 2009 年 1月 24日 2009 年 4月 27日 2009 年 9月 10日 2009 年 12月 11日 2010 年 1月 15日 2010 年 7月 26日 2010 年 8月 26日 2010 年12 月18 日 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日経産業新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 電子版ニュース 日本経済新聞 電子版ニュース 本のCPGメーカーにとっても真剣に検討し なければならない課題であろう。
そして、グローバル標準化を短期に効率的 に実現するには、ERPパッケージとテンプ レートアプローチの活用が有効である。
パッ ケージに装備された標準機能を利用すること により、自社グループの基幹業務システムを 効率的に構築することが可能となる。
テンプレートアプローチとは、自社グループ の標準となる業務プロセスや情報システムの機 能をテンプレートとして構築し、パイロットプ ロジェクトを通じて具体化し、さらにロール アウトプロジェクトにて多数の自社拠点に短期 間で展開していく手法のことである。
拠点ごとの要件に応じて個別にシステムを 構築すれば、どうしてもコスト・時間を要し てしまう。
それに対しテンプレートアプローチ では、最初に自社グループの共通基盤となる 業務を標準として定義し、それを実現するシ ステム機能を一つひとつ構築していく。
この 際に、拠点展開を意識したパラメータの定義、 ドキュメント類の整備を行う。
また拠点ごとに通常バラバラとなっている 品目、組織、勘定科目等のコード類やKPI についても、事業や拠点の固有要件に配慮し ながら標準化を進めることで、統合のコスト・ 期間を短縮することが可能となる(図5)。
このようなアプローチこそ、グローバルに業 務を標準化し、その基盤としての情報インフ ラを短期に構築する必要に迫られている日本 のCPGメーカーに対するソリューショ ンだと我々は考えている。
ここで検討すべきポイントとして、 日系CPGメーカーのコア・コンピテ ンスの一つとなりうる日本型SCMを、 どうシステムに組み込むかという問題 がある。
関連部門それぞれが自律的に 行動する日本型SCMの業務プロセス は、既存のERPパッケージには装備 されていない。
本誌二〇一一年一月号の本稿にて紹 介した需給テンプレートが、その解決 策の一つとなる。
我々アビームコンサル ティングが日本の需給管理をベースに 開発した国産テンプレートを活用すれ ば、基幹業務だけでなく、需給業務ま で含めたグローバルな情報インフラの構 築が、短期間で実現できる。
終わりに: 日本型SCMとその将来性 本連載のベースとなっているリサー チ『CPGメーカーの実態から探る日 本型SCMの将来』を開始するのにあ たり、我々はSCMの管理集中化レベ ルが在庫の少なさと正の相関関係を持っ ているのではないかという仮説を立てた。
しかし、研究結果はその仮説を否定 した。
在庫が一五日未満の企業は、S MARCH 2011 66 図5 テンプレートアプローチのメリット(10拠点の例) 個別導入アプローチテンプレートアプローチ 12カ月 要件 定義 設計 開発 教育 テスト 移行 (1 拠点目) 9カ月 要件 定義 設計 開発 教育 テスト 移行 (2 拠点目) 9カ月 要件 定義 設計 開発 教育 テスト 移行 要件 定義 設計 開発 テスト 教育 移行 要件 定義 設計 開発テスト要件 定義 設計 開発 テスト 教育 移行 要件 定義 設計 開発 テスト 教育 移行 (3拠点目) 9カ月 要件 定義 設計 開発 教育 テスト 移行 (5 拠点目) 9カ月 テンプレート構築 12カ月9カ月6カ月6カ月 要件 定義 設計 開発 テスト 教育 移行 要件 定義 設計 開発 テスト 教育 移行 6カ月6カ月 パイロット展開ロールアウト 要件 定義 設計 開発 教育 テスト 移行 (4 拠点目) 9カ月 要件 定義 設計 開発 教育 テスト 移行 (6 拠点目) (10 拠点目) ●拠点の要件に応じたシステ ム構築 ●2 拠点目以降はノウハウ蓄 積による期間短縮 ●テンプレートとなる業務を定義、 システム機能を構築 ●拠点展開を意識したパラメータ ●2拠点目以降はテンプレート活用 により大幅な期間短縮 ・・・ ・・・ 大幅な短縮 1 拠点 1 拠点 1 拠点 2 拠点 1 拠点 2 拠点 2 拠点 2 拠点 2 拠点 1 拠点 1 拠点 テンプ レート 日本型SCMが次世代を拓く 67 MARCH 2011 企業まで含めたSCMの高度化が、また海外 進出においては日本のSCMで蓄積したナレッ ジのグローバル展開が求められているといえ るだろう。
日本の消費者行動は世界で最も洗練されて いるといわれる。
他国における将来的な消費 者行動を理解する上で日本は重要なポジショ ンを占めている。
それ故に、今後の市場規模 拡大が見込めないにも拘わらず、多くの海外 メーカーが今も日本市場を重視している。
そのような日本の消費者への対応の過程で 構築された日本型SCMは、日本のCPG メーカーがこれから海外事業を展開していく うえで、競争力の一つと成り得る。
日本企業 の飛躍の原動力になると我々は考えている。
グローバリゼーション対応で最も重要な要因 の一つが、SCMの迅速化、効率化である。
規模の経済性を最も得られるのが、SCMの 管理領域だからである。
そして今日の日本の CPGメーカーは、国内においてはグループ CM組織をいったん集中化した後で、改めて 組織を改革し、自律分散型をとっていること がわかった。
この研究結果は、七年ほど前に次世代SC Mの方向性として話題となった「アダプティ ブS C M 」あるいは「センス&レスポンド」 と方向性が一致している。
その概念は、ITによりプロセスがシステム 化されていくにつれ、人間の役割は、変化を 機敏に察知し、それぞれの現場で自律的にそ れらに対応するという形に変わっていくであ ろうというものであった。
日本のCPGメーカーのSCMは、まさし く各部門の自律的な行動により、非常に少な い在庫でのオペレーションを実現している。
I T化の先進事例の一つであるといえよう。
アビームコンサルティング株式会社 プロセス&テクノロジー事業部 SCMセクター マネージャー 主に食品・日用雑貨メーカーの大手 企業に対する、業務改革・ERP導入 等のプロジェクトに多数参画。
需給 業務の改善に力を入れている。
アビームコンサルティングHP http:// jp.abeam.com 平井正人(ひらいまさと)
