2011年4月号
物流指標を読む
物流指標を読む
第28回物流需要回復でトラック事故も増えた
物流指標を読む
APRIL 2011 100
物流需要回復でトラック事故も増えた
第28 回
●事業用貨物車による事故が7年ぶりに増加
●物流需要の回復が事故件数の増加に直結
●需要減退が見込まれる今年は再び減少に向かう
さとう のぶひろ 1964 年
生まれ。
早稲田大学大学院修 了。
89年に日通総合研究所 入社。
現在、経済研究部担当 部長。
「経済と貨物輸送量の見 通し」、「日通総研短観」など を担当。
貨物輸送の将来展望 に関する著書、講演多数。
高速道路における事故が多発 先月号で、「原油価格(WTI)の最高値が一 〇〇ドルを突破する可能性は高い。
とは言っても、 一時一四七ドル台をつけた〇八年夏のような大暴 騰はないだろう」と書いたところ、その原稿を出 稿した数日後に、今度はリビアで大規模な反政府 デモが発生したことなどを受けて、北海ブレント 原油の価格は一時、一バレル=一二〇ドル手前ま で、WTIも一〇七ドル手前まで急騰した。
本誌 は月刊誌のため、発刊の二週間前には原稿を出稿 しなければならないことから、往々にしてこうし た事態が発生することをお含みおき願いたい。
ちなみに、野村ホールディングスは、「リビアと アルジェリアが原油輸出を停止した場合、原油相 場がバレル当たり二二〇ドルまで急騰する可能性が ある」との見方を示した。
しかし、その水準まで 高騰する可能性は極めて低い。
万一、反政府デモ がサウジアラビアまで飛び火するようなことにでも なれば、そういう事態も起こりうるだろうが、ほ とんど考え難い。
そもそも、一バレル=二二〇ドル ともなれば、一ドル=四〇円くらいの超ドル安が 発生する可能性が高く、世界経済は崩壊寸前とな ろう。
失礼ながら、筆者にはやや突拍子もない予 想に思える。
そう言えば、バブル景気の真っ最中、 「一九九五年に日経平均は八万円台になる」と予 想した証券会社がありましたな。
さて、閑話休題。
警察庁交通局の統計によると、 昨年一年間における交通事故の発生件数は七二万 五七七三件で、前年(〇九年)より一万一七〇一 件減少(一・六%減)した。
発生件数の減少は六 年連続であり、ピークであった〇四年(九五万二 一九一件)と比較して二三・八%の低下となって いる。
また、それに伴い死者数や負傷者数もこの ところ着実に減少しており、一〇年の死者数は四 八六三人(前年比一・〇%減)、また負傷者数は 八九万六二〇八人(同一・六%減)と、一九九四 年以来一六年ぶりに九〇万人を下回った。
このように、わが国全体の交通事故発生件数が 減少しているなかで、貨物車による交通事故も減 少している。
一〇年の交通事故発生件数七二万五 七七三件のうち、貨物車が第一当事者となった交 通事故は一二万七八六七件(注:全件数に占める 割合は一七・六%)で、前年より一六八一件減少 (一・三%減)した。
ただし、貨物車が第一当事者となった交通事故 のうち、事業用貨物車によるものは二万五四四七 件で、逆に前年よりも四五五件増加している。
事 業用貨物車による交通事故発生件数は、ここ数年 の間に劇的に減少してきたが、一〇年は〇三年以 来七年ぶりに前年水準を上回る結果となった。
事 業用貨物車による交通事故の増減数を車種別にみ ると、大型が三八〇件増(前年比五・〇%増)、中 型が四一一件増(同四・八%増)、普通が四二三件 減(同九・六%減)、軽が八七件増(同二・〇% 増)である。
また、とくに高速道路における交通事故の増加 が顕著だ。
増減数を車種別にみると、大型が一七 四件増(同一八・八%増)、中型が一七五件増(同 二一・五%増)、普通が一〇二件増(同六・九% 増)となっており、合計すると事業用貨物車によ る交通事故の増加数(四五五件)とほぼ一致して 「平成22年中の交通事故の発生状況」、「平成22年中の交通死亡事 故の特徴及び道路交通法違反取締り状況について」 警察庁交通局 「自動車輸送統計調査」 国土交通省 101 APRIL 2011 業界団体が安全運転に積極的に取り組んでいるこ と、第三に、企業経営においてCSRの遂行が強 く求められるようになっており、トラック事業者 も、自社トラックはもとより下請けのトラックに対 しても安全運転を徹底させなければならなくなっ たこと、第四に、〇七年六月より、中型免許制度 が導入されたことに伴い、中型貨物車による事故 が減少したこと、などがあげられよう。
さらに、一昨年(〇九年)に関しては、事業 用貨物車の走行距離が大幅に短縮されたという 要素もあった。
国土交通省「自動車輸送統計月 報」により、〇九年における営業用トラックの走 行距離をみると、前年比で四・四%減となってい る。
〇九年は世界同時不況の影響などで景気が悪 化し、これを受けて営業用トラック輸送量も七・ 一%減と大きく落ち込んだ時期であり、当然のこ とながら、走行距離も大幅に短縮された。
その結 果、事故の発生件数も減少した可能性があり、図 らずも、景気低迷に伴う物流需要の減退が交通事 故の発生を抑制するのに一役買ったとみることが できる。
ドライバーの労働条件悪化も影響 筆者は以前、本欄で「一〇年については減少率 が多少鈍化するかもしれない。
物流需要の回復に より、走行距離が前年水準を上回る可能性が高い からだ。
」と予想した。
しかし残念ながら、前述 のとおり、減少率が鈍化するどころか、わずかな がらも前年を上回る結果となってしまった。
そし て、増加の主たる要因は、やはり物流需要の回復 にあるようだ。
現在、「自動車輸送統計月報」が一〇年九月分 までしか公表されていないため、一月〜九月分の 比較しかできないが、営業用トラック輸送量は前 年同期比で一・三%増(注:日通総合研究所の予 測(一〇年十二月)によると、一〇年は全体で 同一・四%増)となっている。
一方、走行キロは 〇・一%減であるが、普通車(注:道路運送車両 法施行規則第2条に定める普通自動車のことであ り、警察庁統計における普通車の定義とは異なる) に限定すれば〇・一%の微増だ。
以上のことから推測すると、長距離輸送のウエイ トが比較的高い生産関連貨物などの需要の回復を 受けて、高速道路の利用が増加し、その結果、高 速道路における事業用貨物車の事故が増加したと いうことであろう。
また、自動車一億走行キロ当たりの交通事故件 数の推移をみると、事業貨物車については〇九年 の三三・〇五件から一〇年には三三・六五件に増 加している(注:ただし、一〇年については、〇 九年度の走行キロを使って算出しているため、数 値は後日改訂される見込み)。
増加は六年ぶりのこ とであるが、トラックドライバーの労働条件の悪化 もその遠因になっているのではないか。
トラック ドライバー数の減少に伴い、一人当たりの労働時 間が長くなっているという話も耳にする。
一一年については、物流需要はやや減退するこ とが見込まれるため、事業用貨物車による交通事 故は再び減少に転じるものと予想されるが、労働 条件がさらに悪化するならば、走行キロ当たりの 交通事故件数の増加に伴い、交通事故発生件数の 減少率は小幅なものにとどまる可能性もある。
いる。
言い換えれば、高速道路での交通事故の増 加がそのまま事業用貨物車の交通事故の増加につ ながったということである。
近年、事業用貨物車による交通事故発生件数が 減少してきた要因としては、第一に、法律の厳格 化など社会的規制が強化されてきたこと、第二に、 事業用貨物車が第1当事者となった交通事故件数、営業用トラック貨物輸送量・走行キロの推移 06 年 07 年 08 年 09 年 10 年増減数増減率 7,181 6,913 8,999 7,623 8,003 380 5.0 8,969 9,157 8,648 9,059 411 4.8 11,467 6,061 4,405 3,982 -423 -9.6 4,629 4,656 4,621 4,316 4,403 87 2.0 34,940 32,005 28,838 24,992 25,447 455 1.8 2,871 2,918 2,879 2,674 2,711 38 1.4 78,240 79,706 79,140 (56,050) (-31) (-0.1) 55,934 56,347 55,656 (38,626) (50) (0.1) 大型貨物 中型貨物 普通貨物 軽貨物 計 交通事故件数 貨物輸送量(百万トン) 走行キロ(百万キロ) うち普通車 注)1.交通事故件数は警察庁統計、貨物輸送量および走行キロは国土交通省統計により作成。
2.10 年の貨物輸送量は日通総合研究所の予測値(10 年12 月)。
3.走行キロ蘭の( )内の数値は1〜9月分の実績(増減数、増減率は09 年1〜9月分との比較) 75,687 (56,080) 52,158 (38,577) 23,130
早稲田大学大学院修 了。
89年に日通総合研究所 入社。
現在、経済研究部担当 部長。
「経済と貨物輸送量の見 通し」、「日通総研短観」など を担当。
貨物輸送の将来展望 に関する著書、講演多数。
高速道路における事故が多発 先月号で、「原油価格(WTI)の最高値が一 〇〇ドルを突破する可能性は高い。
とは言っても、 一時一四七ドル台をつけた〇八年夏のような大暴 騰はないだろう」と書いたところ、その原稿を出 稿した数日後に、今度はリビアで大規模な反政府 デモが発生したことなどを受けて、北海ブレント 原油の価格は一時、一バレル=一二〇ドル手前ま で、WTIも一〇七ドル手前まで急騰した。
本誌 は月刊誌のため、発刊の二週間前には原稿を出稿 しなければならないことから、往々にしてこうし た事態が発生することをお含みおき願いたい。
ちなみに、野村ホールディングスは、「リビアと アルジェリアが原油輸出を停止した場合、原油相 場がバレル当たり二二〇ドルまで急騰する可能性が ある」との見方を示した。
しかし、その水準まで 高騰する可能性は極めて低い。
万一、反政府デモ がサウジアラビアまで飛び火するようなことにでも なれば、そういう事態も起こりうるだろうが、ほ とんど考え難い。
そもそも、一バレル=二二〇ドル ともなれば、一ドル=四〇円くらいの超ドル安が 発生する可能性が高く、世界経済は崩壊寸前とな ろう。
失礼ながら、筆者にはやや突拍子もない予 想に思える。
そう言えば、バブル景気の真っ最中、 「一九九五年に日経平均は八万円台になる」と予 想した証券会社がありましたな。
さて、閑話休題。
警察庁交通局の統計によると、 昨年一年間における交通事故の発生件数は七二万 五七七三件で、前年(〇九年)より一万一七〇一 件減少(一・六%減)した。
発生件数の減少は六 年連続であり、ピークであった〇四年(九五万二 一九一件)と比較して二三・八%の低下となって いる。
また、それに伴い死者数や負傷者数もこの ところ着実に減少しており、一〇年の死者数は四 八六三人(前年比一・〇%減)、また負傷者数は 八九万六二〇八人(同一・六%減)と、一九九四 年以来一六年ぶりに九〇万人を下回った。
このように、わが国全体の交通事故発生件数が 減少しているなかで、貨物車による交通事故も減 少している。
一〇年の交通事故発生件数七二万五 七七三件のうち、貨物車が第一当事者となった交 通事故は一二万七八六七件(注:全件数に占める 割合は一七・六%)で、前年より一六八一件減少 (一・三%減)した。
ただし、貨物車が第一当事者となった交通事故 のうち、事業用貨物車によるものは二万五四四七 件で、逆に前年よりも四五五件増加している。
事 業用貨物車による交通事故発生件数は、ここ数年 の間に劇的に減少してきたが、一〇年は〇三年以 来七年ぶりに前年水準を上回る結果となった。
事 業用貨物車による交通事故の増減数を車種別にみ ると、大型が三八〇件増(前年比五・〇%増)、中 型が四一一件増(同四・八%増)、普通が四二三件 減(同九・六%減)、軽が八七件増(同二・〇% 増)である。
また、とくに高速道路における交通事故の増加 が顕著だ。
増減数を車種別にみると、大型が一七 四件増(同一八・八%増)、中型が一七五件増(同 二一・五%増)、普通が一〇二件増(同六・九% 増)となっており、合計すると事業用貨物車によ る交通事故の増加数(四五五件)とほぼ一致して 「平成22年中の交通事故の発生状況」、「平成22年中の交通死亡事 故の特徴及び道路交通法違反取締り状況について」 警察庁交通局 「自動車輸送統計調査」 国土交通省 101 APRIL 2011 業界団体が安全運転に積極的に取り組んでいるこ と、第三に、企業経営においてCSRの遂行が強 く求められるようになっており、トラック事業者 も、自社トラックはもとより下請けのトラックに対 しても安全運転を徹底させなければならなくなっ たこと、第四に、〇七年六月より、中型免許制度 が導入されたことに伴い、中型貨物車による事故 が減少したこと、などがあげられよう。
さらに、一昨年(〇九年)に関しては、事業 用貨物車の走行距離が大幅に短縮されたという 要素もあった。
国土交通省「自動車輸送統計月 報」により、〇九年における営業用トラックの走 行距離をみると、前年比で四・四%減となってい る。
〇九年は世界同時不況の影響などで景気が悪 化し、これを受けて営業用トラック輸送量も七・ 一%減と大きく落ち込んだ時期であり、当然のこ とながら、走行距離も大幅に短縮された。
その結 果、事故の発生件数も減少した可能性があり、図 らずも、景気低迷に伴う物流需要の減退が交通事 故の発生を抑制するのに一役買ったとみることが できる。
ドライバーの労働条件悪化も影響 筆者は以前、本欄で「一〇年については減少率 が多少鈍化するかもしれない。
物流需要の回復に より、走行距離が前年水準を上回る可能性が高い からだ。
」と予想した。
しかし残念ながら、前述 のとおり、減少率が鈍化するどころか、わずかな がらも前年を上回る結果となってしまった。
そし て、増加の主たる要因は、やはり物流需要の回復 にあるようだ。
現在、「自動車輸送統計月報」が一〇年九月分 までしか公表されていないため、一月〜九月分の 比較しかできないが、営業用トラック輸送量は前 年同期比で一・三%増(注:日通総合研究所の予 測(一〇年十二月)によると、一〇年は全体で 同一・四%増)となっている。
一方、走行キロは 〇・一%減であるが、普通車(注:道路運送車両 法施行規則第2条に定める普通自動車のことであ り、警察庁統計における普通車の定義とは異なる) に限定すれば〇・一%の微増だ。
以上のことから推測すると、長距離輸送のウエイ トが比較的高い生産関連貨物などの需要の回復を 受けて、高速道路の利用が増加し、その結果、高 速道路における事業用貨物車の事故が増加したと いうことであろう。
また、自動車一億走行キロ当たりの交通事故件 数の推移をみると、事業貨物車については〇九年 の三三・〇五件から一〇年には三三・六五件に増 加している(注:ただし、一〇年については、〇 九年度の走行キロを使って算出しているため、数 値は後日改訂される見込み)。
増加は六年ぶりのこ とであるが、トラックドライバーの労働条件の悪化 もその遠因になっているのではないか。
トラック ドライバー数の減少に伴い、一人当たりの労働時 間が長くなっているという話も耳にする。
一一年については、物流需要はやや減退するこ とが見込まれるため、事業用貨物車による交通事 故は再び減少に転じるものと予想されるが、労働 条件がさらに悪化するならば、走行キロ当たりの 交通事故件数の増加に伴い、交通事故発生件数の 減少率は小幅なものにとどまる可能性もある。
いる。
言い換えれば、高速道路での交通事故の増 加がそのまま事業用貨物車の交通事故の増加につ ながったということである。
近年、事業用貨物車による交通事故発生件数が 減少してきた要因としては、第一に、法律の厳格 化など社会的規制が強化されてきたこと、第二に、 事業用貨物車が第1当事者となった交通事故件数、営業用トラック貨物輸送量・走行キロの推移 06 年 07 年 08 年 09 年 10 年増減数増減率 7,181 6,913 8,999 7,623 8,003 380 5.0 8,969 9,157 8,648 9,059 411 4.8 11,467 6,061 4,405 3,982 -423 -9.6 4,629 4,656 4,621 4,316 4,403 87 2.0 34,940 32,005 28,838 24,992 25,447 455 1.8 2,871 2,918 2,879 2,674 2,711 38 1.4 78,240 79,706 79,140 (56,050) (-31) (-0.1) 55,934 56,347 55,656 (38,626) (50) (0.1) 大型貨物 中型貨物 普通貨物 軽貨物 計 交通事故件数 貨物輸送量(百万トン) 走行キロ(百万キロ) うち普通車 注)1.交通事故件数は警察庁統計、貨物輸送量および走行キロは国土交通省統計により作成。
2.10 年の貨物輸送量は日通総合研究所の予測値(10 年12 月)。
3.走行キロ蘭の( )内の数値は1〜9月分の実績(増減数、増減率は09 年1〜9月分との比較) 75,687 (56,080) 52,158 (38,577) 23,130
