2011年5月号
ケース
ケース
日本酒類販売 情報システム
MAY 2011 54
チェーンストアの台頭で拠点再編
日本酒類販売(日酒販)は日本酒や焼酎な
ど和酒の取り扱いをメーンとする酒類・食品
の全国卸だ。
二〇一〇年三月期の売上高は四 五七四億円で、うち酒類の売り上げが八割強 を占めている。
かつて同社の売り先の九割近くは一般酒販 店、いわゆる町の酒屋だった。
酒類販売の免 許が距離や人口基準によって厳しく制限され ていた頃のことだ。
当時、同社は支店を全国 に細かく配置し、倉庫を併設して酒販店の注 文に対し自社便などで商品を届ける地域密着 型の営業体制をとっていた。
だが〇三年までに段階的に実施された酒類 販売の規制緩和とともに市場環境は大きく変 わった。
スーパーや量販店、ディスカウント ストア、ドラッグストアなどが次々に酒販免 許を取得してマーケットシェアを伸ばし、その 一方で一般酒販店のシェアは縮小した。
日酒販は新チャネルの顧客開拓とともに物 流体制の見直しを迫られた。
量販店など組織 小売業と取引を広げるうえで、センター納品 に対応した物流機能の強化が必要となり、一 般酒販店向けの個店配送を想定した従来の地 域密着型の物流体制は実態にそぐわなくなっ ていった。
二〇〇〇年代に入り、同社は支店の統合と 物流センターの新設によるネットワークの再編 に着手した。
一般酒販店向けチャネルでは地 域ごとに物流センターを設置して物流拠点の 集約と商物分離を進め、業務をアウトソーシ ングする。
そして量販店については別に専用 の拠点を設けて集約を行うという方針だ。
再編は首都圏と近畿圏からスタートした。
地域別集約拠点の第一号として〇一年、大阪 に「近畿南部ロジスティクスセンター(LC)」 を新設、大阪地区の四つの支店を統合して物 流機能を同LCへ集約した。
首都圏ではまず東京の武蔵村山市に量販店 向けの物流センターを設け、続いて首都圏東 部LC、首都圏京浜LCなど四カ所に大型 物流センターを設けた。
一般酒販店やCVS、 スーパー、ディスカウントストアなどへの配送 を地域ごとに四つのLCに担当させ、量販店 への出荷機能を武蔵村山センター一カ所に集 約した。
それまで同社は支店での入出荷や在庫を基 幹業務システムで管理し、作業はベテランの 社員が伝票との照合により行っていた。
新設 の物流センターで業務を外部へ委託するにあ たり、商品知識のない作業者でもスムーズに 業務をこなせるオペレーション体制を整える 必要があった。
同社は近畿南部LCと武蔵村山センターを それぞれ地域別集約拠点と量販店向けセンタ ーのモデル拠点に選び、設備や情報システム に巨費を投じて物流システムを構築した。
同 社にとっては初となる立体自動倉庫や自動仕 分け機、デジタルピッキングシステムなどをセ 日本酒類販売は、汎用センターや専用センター、 共配センターなど、タイプの異なる物流拠点の業務 を標準化するため、社内インターネット網を経由し て全拠点を管理する倉庫管理システムを自社開発し た。
計64の拠点に順次導入し鮮度管理などを強化す る。
同社が参加する酒卸ユニオン「創SOU」の会 員にも有償で提供していく。
情報システム 日本酒類販売 WMSを自社開発し全拠点へ導入 鮮度管理強化と業務の標準化図る 55 MAY 2011 ンターに装備して機械化を図った。
倉庫管理システム(WMS)も導入した。
既 存のパッケージソフトを二つのセンターの業務 内容に合わせそれぞれカスタマイズするかた ちをとった。
センター内の作業はハンディター ミナルを使いマテハン機器と連動して行うよ うにした。
当初の構想ではWMSパッケージを拠点再 編とともに全国に展開し、業務の標準化を進 める計画だった。
だがカスタマイズに多大な コストがかかるうえ既存のセンターで投資額 に見合う成果が上がらなかったため、その後 に新設する物流センターへの導入は見送った。
武蔵村山センターについては大きな誤算も 生じた。
同社は武蔵村山センター を複数の量販店のセンター納品業 務を担当する汎用的なセンターとし て位置づけていた。
だが一般酒販 店と違い量販店との取引では納品 時間や納品方法などのルールが細か く設けられ、センター納品に際して は、出荷明細データを作成し専用 のSCMラベルに紐付けて出荷する などの作業が必要になった。
業務内容は量販店ごとに異なり、 専用ラベルを発行するための出荷シ ステムを個別に揃えなければならず、 集約のメリットは出にくかった。
し かもコンベアを縦横にめぐらし重装 備のマテハン機器を導入したことが センターを柔軟に運用するうえで妨げとなり、 高コスト化を招いてしまった。
このためいったんは武蔵村山センターに集 約した量販店向け業務を再び首都圏LCなど に分散移管し、顧客によっては専用のセンタ ーを別に設ける方針に転じた。
これにより同 社のネットワーク再編は、一般酒販店から量 販店までさまざまな業態に対応する地域別の 「汎用センター」と、特定顧客向けの「専用 センター」の二本立てで進められることにな った。
パッケージ導入はコスト高 汎用センターでは当面の措置として、従来 通り基幹システムを使い入出荷や在庫管理を 行っていた。
だが外部への業務委託のため、 懸念した通り伝票の目視による作業にミスが 多発した。
その対策として入出荷検品業務に特化した パッケージソフトを各拠点に導入し、ハンデ ィターミナルによる作業に切り替えた。
在庫 管理や賞味期限などの鮮度管理は基幹システ ムで行い、入出荷検品システムを基幹システ ムと連携させながら各センターの物流業務を 管理する方法をとった。
ただし、パッケージソフトを導入するには、 拠点ごとに専用のサーバーを設けなければな らずコストがかかる。
しかも取引先が増える たびに相手の仕様に応じてシステムの改造が 必要になった。
同じセンター内でいくつかの 情報物流本部の小川勝豊情報 統括部開発課課長代理 機能概要図 基幹システム 基幹システム 入荷実績 入荷予定 鮮度管理 警告・期限切れ マスター管理 入荷検品 定期補充 在庫引当 欠品調整 配車指示 緊急補充ラベル発行運行管理 容器返送 容器 容器配送 返品 入荷容器返送実績 容器返送指示 仕入先 返品実績 仕入先 返品指示 振替指示 破損指示 ロケマスタ 各種マスタ 得意先 返品実績 得意先 返品指示 容器買入実績 容器買入指示 容器買入 ピッキング返品検品 仕入先返品 在庫振替 破損処理 出荷確定 積込検品 棚卸伝票発行 在庫管理 保管 仕入先 得意先 出荷実績 出荷指示 チェックチェック 返品 MAY 2011 56 システムが混在するようになり、業務内容が まちまちで鮮度基準やコストの管理を標準化 するのは困難だった。
入出荷検品用のパッケージを基幹システム に連携させて運用する方法にも問題があった。
基幹システムでは受注と同時に在庫データの 更新が行われる。
だがこの時点で物流センタ ーではまだピッキング作業が始まっていない。
基幹システムで管理する在庫データとセンター の実在庫の間で絶えず差異が生じることにな る。
この差異が毎日の棚卸作業を著しく煩雑 なものにした。
業務を効率化するために基幹 システムとは別にセンターの実在庫をリアルタ イムで管理するシステムが必要だった。
三タイプのセンターに対応 そこで同社は既存のパッケージには頼らず、 WMSを自社開発することを決めた。
情報物 流本部の小川勝豊情報統括部開発課課長代 理は「導入する拠点や開発の要件が増えるた びに新たな費用が発生するのはこれ以上避け たかった。
内製化することが開発費を減らす 最善の策だと思った」と強調する。
拠点ごとにサーバーを設けるのではなく、 社内インターネット経由で全拠点を一つのサ ーバーにつないで管理するWebベースの倉 庫管理システムの開発をめざした。
〇八年に それまでメーンフレーム上で運用していた基 幹業務システムをオープンシステムに切り替え、 そのうえで〇九年春からWMSの開発をスタ 配送している。
二〇社のほか販売数量の少ないメーカーの 商品については日酒販が在庫を持ち共配網に 乗せている。
共配網を活用することで、支店 単位では発注数がまとまらず取引できなかっ た商品も扱えるようになった。
共配センター へまとめて仕入れておき、支店が必要な分だ け調達する。
一〇数メーカーの商品をこの方 法で調達している。
首都圏ではこれ以外に飲食店向けの共配セ ンターも運営している。
業務用酒販店から委 託を受け、同社が料飲店やレストランへの配 送を代行している。
同社はこれらのタイプの異なるすべてのセ ンターで標準的に運用できるWMSの開発を 行った。
情報物流本部の情報統括部を中心に、 汎用センターと共配センターの運営を管轄す る物流統括部、小売りチェーン向け専用セン ターの運営を管轄する流通本部のメンバーが 開発に加わり、センターのタイプ別に必要な 要件を抽出した。
開発の手順として、まず汎用センターの近 畿南部LCへ最初に導入したWMSパッケー ートした。
同社の拠点には大きく分けて三つのタイプ がある。
一つはネットワーク再編で地域別に 設けた汎用センター。
地域によってはセンタ ーを新設せず従来のまま支店が物流拠点を兼 ねているところも二〇カ所程度あり、これも 機能的には汎用センターと同じタイプに分類 される。
二つ目は小売りチェーン別に設けた専用セ ンターで、センター納品または店別配送まで を行う。
一般に小売り向け専用センターを運 営する場合にはほかの荷主からも業務を受託 するケースが多いが、日酒販の専用センター では同社の仕入れた商品だけを扱っている。
三つ目は共配センター。
日酒販は一九九四 年に清酒・蒸留酒メーカーの共同物流事業 をスタートしている。
横浜市内に共配センタ ーを設置してメーカーの商品を保管し、当時、 首都圏に三〇カ所もあった日酒販の支店へ共 同配送するというもの。
発注の頻度を上げて在庫削減と鮮度アップ を図りたい日酒販と、小口化による配送費の 上昇を防ぎたいメーカーの双方にメリットの でる方法として共同化を図った。
センターで 管理する在庫情報をメーカーへ提供し、メー カーはこれをもとに定期的に補充を行う。
現在はその機能を量販店向け拠点だった武 蔵村山センターに移している。
機械設備を取 り払い共配センターに転用した。
メーカー二 〇社が利用し日酒販以外の卸の拠点へも共同 物流統括部の亀山猛参事補 57 MAY 2011 古い日付けの商品が入出荷する?日付けの逆 転?をチェックすることはできた。
ただし入 出荷の「許容期限」までは管理できなかった。
全顧客の許容期限を管理 同社の扱う酒類や加工食品には、商品ごと に製造から消費までの目安となる「鮮度期間」 がメーカーにより設けられている。
商品がこ の鮮度期間内に消費されるように、在庫日数 や店頭での回転日数などをもとに卸や小売り が独自に設ける基準を入出荷の「許容期限」 という。
特定の小売りチェーン向け専用センターで は、小売りの設定した入荷許容期限を基準に 厳格な管理を行っているケースは珍しくない。
これに対し同社の開発したWMSは、特定の チェーンだけでなくすべての取引先を対象に、 入出荷許容期限を拠点別・顧客別に管理でき るようにした点が特徴だ。
メーカーから鮮度 期間の情報をもらい、顧客ごとの許容期限を もとにアイテム別に入出荷許容期限を設定す る。
これをマスター登録しておき期限を過ぎ た商品が入出荷しないように管理する。
一般酒販店など許容期限を設けていない顧 客については同社が独自の基準を設定して鮮 度を管理する。
情報統括部開発課の肥塚喜一 郎課長代理は「汎用センターのさまざまな顧 客に対し一つのシステムで鮮度を管理する例 はまだ少ないのでは」とアピールする。
WMSでは入荷・格納・ピッキングなどの 作業の進捗状況をリアルタイムで管理し、タ イムラグによる在庫の差異が起こらないよう にした。
また本社・支店がいつでも在庫や作 業の進捗状況を照会できるようになり、顧客 からの出荷状況に関する問い合わせに迅速な 対応が可能になった。
同社はWMSに「WINS」と名付け今年 一月に宇都宮の首都圏北部LCで稼働を開始 した。
今後、三年間をかけ全国の六四拠点に 順次拡大する。
日酒販は〇五年に地域の有力な酒類卸と酒 卸ユニオン「創SOU」を設立した。
会員企 業と仕入れや商品開発、物流・情報システム を共同化し、ネットワーク化を進めることで 事業基盤を強化する狙いがある。
現在二〇社 が加盟し配送網の相互利用などを進めている。
同社は創SOUの活動の一環として、日酒 販の基幹システムをSaaS形式により会員 企業に有償で提供する方針で、今回開発した WINSもこれに含まれる。
第一弾として福 島市に本社のある福島県酒類卸への導入が決 まり、準備を進めているところだ。
(フリージャーナリスト・内田三知代) ジの改造を行い、これをモデルにして新たに 専用センターと共配センターのオペレーション に必要な機能を追加する形をとった。
パッケージの改造で最も大きく変更したの は配車機能だ。
近畿南部LCのパッケージは 登録した配送先の住所と地図情報をもとに コンピューターが自動配車する仕組みだった。
だが道路一本隔てた店へわざわざ遠回りする ルートが組まれることもよくあり、その都度 人手で配送ルートを手直しする必要があった。
かえって時間と手間がかかった。
改造後は配送先を方面別にグループ分けす る作業だけをコンピューターが行い、その後 で人がグループごとに配送ルートを組むやり 方に変えた。
この配車システムを同社は基幹システムに もともとあった配車機能をもとに開発した。
物流統括部の亀山猛参事補は「長年運用して きた仕組みだけに当社の配送実態に合ってい た。
ほかも試してみたが使い勝手は一番良か った」と評価する。
柔軟に配車が組めるよう になり、配車業務にかかる時間を一時間も短 縮できたという。
WMSにはこの汎用センターの配車機能を そのまま取り入れ、専用センターや共配セン ターでも使えるようにした。
配送先が量販店 のセンターや日酒販の支店でもこの仕組みな ら共通の運用ができると同社では見ている。
鮮度管理機能も新規に開発した。
従来の 基幹システムによる鮮度管理では、前回より 情報統括部開発課の 肥塚喜一郎課長代理
二〇一〇年三月期の売上高は四 五七四億円で、うち酒類の売り上げが八割強 を占めている。
かつて同社の売り先の九割近くは一般酒販 店、いわゆる町の酒屋だった。
酒類販売の免 許が距離や人口基準によって厳しく制限され ていた頃のことだ。
当時、同社は支店を全国 に細かく配置し、倉庫を併設して酒販店の注 文に対し自社便などで商品を届ける地域密着 型の営業体制をとっていた。
だが〇三年までに段階的に実施された酒類 販売の規制緩和とともに市場環境は大きく変 わった。
スーパーや量販店、ディスカウント ストア、ドラッグストアなどが次々に酒販免 許を取得してマーケットシェアを伸ばし、その 一方で一般酒販店のシェアは縮小した。
日酒販は新チャネルの顧客開拓とともに物 流体制の見直しを迫られた。
量販店など組織 小売業と取引を広げるうえで、センター納品 に対応した物流機能の強化が必要となり、一 般酒販店向けの個店配送を想定した従来の地 域密着型の物流体制は実態にそぐわなくなっ ていった。
二〇〇〇年代に入り、同社は支店の統合と 物流センターの新設によるネットワークの再編 に着手した。
一般酒販店向けチャネルでは地 域ごとに物流センターを設置して物流拠点の 集約と商物分離を進め、業務をアウトソーシ ングする。
そして量販店については別に専用 の拠点を設けて集約を行うという方針だ。
再編は首都圏と近畿圏からスタートした。
地域別集約拠点の第一号として〇一年、大阪 に「近畿南部ロジスティクスセンター(LC)」 を新設、大阪地区の四つの支店を統合して物 流機能を同LCへ集約した。
首都圏ではまず東京の武蔵村山市に量販店 向けの物流センターを設け、続いて首都圏東 部LC、首都圏京浜LCなど四カ所に大型 物流センターを設けた。
一般酒販店やCVS、 スーパー、ディスカウントストアなどへの配送 を地域ごとに四つのLCに担当させ、量販店 への出荷機能を武蔵村山センター一カ所に集 約した。
それまで同社は支店での入出荷や在庫を基 幹業務システムで管理し、作業はベテランの 社員が伝票との照合により行っていた。
新設 の物流センターで業務を外部へ委託するにあ たり、商品知識のない作業者でもスムーズに 業務をこなせるオペレーション体制を整える 必要があった。
同社は近畿南部LCと武蔵村山センターを それぞれ地域別集約拠点と量販店向けセンタ ーのモデル拠点に選び、設備や情報システム に巨費を投じて物流システムを構築した。
同 社にとっては初となる立体自動倉庫や自動仕 分け機、デジタルピッキングシステムなどをセ 日本酒類販売は、汎用センターや専用センター、 共配センターなど、タイプの異なる物流拠点の業務 を標準化するため、社内インターネット網を経由し て全拠点を管理する倉庫管理システムを自社開発し た。
計64の拠点に順次導入し鮮度管理などを強化す る。
同社が参加する酒卸ユニオン「創SOU」の会 員にも有償で提供していく。
情報システム 日本酒類販売 WMSを自社開発し全拠点へ導入 鮮度管理強化と業務の標準化図る 55 MAY 2011 ンターに装備して機械化を図った。
倉庫管理システム(WMS)も導入した。
既 存のパッケージソフトを二つのセンターの業務 内容に合わせそれぞれカスタマイズするかた ちをとった。
センター内の作業はハンディター ミナルを使いマテハン機器と連動して行うよ うにした。
当初の構想ではWMSパッケージを拠点再 編とともに全国に展開し、業務の標準化を進 める計画だった。
だがカスタマイズに多大な コストがかかるうえ既存のセンターで投資額 に見合う成果が上がらなかったため、その後 に新設する物流センターへの導入は見送った。
武蔵村山センターについては大きな誤算も 生じた。
同社は武蔵村山センター を複数の量販店のセンター納品業 務を担当する汎用的なセンターとし て位置づけていた。
だが一般酒販 店と違い量販店との取引では納品 時間や納品方法などのルールが細か く設けられ、センター納品に際して は、出荷明細データを作成し専用 のSCMラベルに紐付けて出荷する などの作業が必要になった。
業務内容は量販店ごとに異なり、 専用ラベルを発行するための出荷シ ステムを個別に揃えなければならず、 集約のメリットは出にくかった。
し かもコンベアを縦横にめぐらし重装 備のマテハン機器を導入したことが センターを柔軟に運用するうえで妨げとなり、 高コスト化を招いてしまった。
このためいったんは武蔵村山センターに集 約した量販店向け業務を再び首都圏LCなど に分散移管し、顧客によっては専用のセンタ ーを別に設ける方針に転じた。
これにより同 社のネットワーク再編は、一般酒販店から量 販店までさまざまな業態に対応する地域別の 「汎用センター」と、特定顧客向けの「専用 センター」の二本立てで進められることにな った。
パッケージ導入はコスト高 汎用センターでは当面の措置として、従来 通り基幹システムを使い入出荷や在庫管理を 行っていた。
だが外部への業務委託のため、 懸念した通り伝票の目視による作業にミスが 多発した。
その対策として入出荷検品業務に特化した パッケージソフトを各拠点に導入し、ハンデ ィターミナルによる作業に切り替えた。
在庫 管理や賞味期限などの鮮度管理は基幹システ ムで行い、入出荷検品システムを基幹システ ムと連携させながら各センターの物流業務を 管理する方法をとった。
ただし、パッケージソフトを導入するには、 拠点ごとに専用のサーバーを設けなければな らずコストがかかる。
しかも取引先が増える たびに相手の仕様に応じてシステムの改造が 必要になった。
同じセンター内でいくつかの 情報物流本部の小川勝豊情報 統括部開発課課長代理 機能概要図 基幹システム 基幹システム 入荷実績 入荷予定 鮮度管理 警告・期限切れ マスター管理 入荷検品 定期補充 在庫引当 欠品調整 配車指示 緊急補充ラベル発行運行管理 容器返送 容器 容器配送 返品 入荷容器返送実績 容器返送指示 仕入先 返品実績 仕入先 返品指示 振替指示 破損指示 ロケマスタ 各種マスタ 得意先 返品実績 得意先 返品指示 容器買入実績 容器買入指示 容器買入 ピッキング返品検品 仕入先返品 在庫振替 破損処理 出荷確定 積込検品 棚卸伝票発行 在庫管理 保管 仕入先 得意先 出荷実績 出荷指示 チェックチェック 返品 MAY 2011 56 システムが混在するようになり、業務内容が まちまちで鮮度基準やコストの管理を標準化 するのは困難だった。
入出荷検品用のパッケージを基幹システム に連携させて運用する方法にも問題があった。
基幹システムでは受注と同時に在庫データの 更新が行われる。
だがこの時点で物流センタ ーではまだピッキング作業が始まっていない。
基幹システムで管理する在庫データとセンター の実在庫の間で絶えず差異が生じることにな る。
この差異が毎日の棚卸作業を著しく煩雑 なものにした。
業務を効率化するために基幹 システムとは別にセンターの実在庫をリアルタ イムで管理するシステムが必要だった。
三タイプのセンターに対応 そこで同社は既存のパッケージには頼らず、 WMSを自社開発することを決めた。
情報物 流本部の小川勝豊情報統括部開発課課長代 理は「導入する拠点や開発の要件が増えるた びに新たな費用が発生するのはこれ以上避け たかった。
内製化することが開発費を減らす 最善の策だと思った」と強調する。
拠点ごとにサーバーを設けるのではなく、 社内インターネット経由で全拠点を一つのサ ーバーにつないで管理するWebベースの倉 庫管理システムの開発をめざした。
〇八年に それまでメーンフレーム上で運用していた基 幹業務システムをオープンシステムに切り替え、 そのうえで〇九年春からWMSの開発をスタ 配送している。
二〇社のほか販売数量の少ないメーカーの 商品については日酒販が在庫を持ち共配網に 乗せている。
共配網を活用することで、支店 単位では発注数がまとまらず取引できなかっ た商品も扱えるようになった。
共配センター へまとめて仕入れておき、支店が必要な分だ け調達する。
一〇数メーカーの商品をこの方 法で調達している。
首都圏ではこれ以外に飲食店向けの共配セ ンターも運営している。
業務用酒販店から委 託を受け、同社が料飲店やレストランへの配 送を代行している。
同社はこれらのタイプの異なるすべてのセ ンターで標準的に運用できるWMSの開発を 行った。
情報物流本部の情報統括部を中心に、 汎用センターと共配センターの運営を管轄す る物流統括部、小売りチェーン向け専用セン ターの運営を管轄する流通本部のメンバーが 開発に加わり、センターのタイプ別に必要な 要件を抽出した。
開発の手順として、まず汎用センターの近 畿南部LCへ最初に導入したWMSパッケー ートした。
同社の拠点には大きく分けて三つのタイプ がある。
一つはネットワーク再編で地域別に 設けた汎用センター。
地域によってはセンタ ーを新設せず従来のまま支店が物流拠点を兼 ねているところも二〇カ所程度あり、これも 機能的には汎用センターと同じタイプに分類 される。
二つ目は小売りチェーン別に設けた専用セ ンターで、センター納品または店別配送まで を行う。
一般に小売り向け専用センターを運 営する場合にはほかの荷主からも業務を受託 するケースが多いが、日酒販の専用センター では同社の仕入れた商品だけを扱っている。
三つ目は共配センター。
日酒販は一九九四 年に清酒・蒸留酒メーカーの共同物流事業 をスタートしている。
横浜市内に共配センタ ーを設置してメーカーの商品を保管し、当時、 首都圏に三〇カ所もあった日酒販の支店へ共 同配送するというもの。
発注の頻度を上げて在庫削減と鮮度アップ を図りたい日酒販と、小口化による配送費の 上昇を防ぎたいメーカーの双方にメリットの でる方法として共同化を図った。
センターで 管理する在庫情報をメーカーへ提供し、メー カーはこれをもとに定期的に補充を行う。
現在はその機能を量販店向け拠点だった武 蔵村山センターに移している。
機械設備を取 り払い共配センターに転用した。
メーカー二 〇社が利用し日酒販以外の卸の拠点へも共同 物流統括部の亀山猛参事補 57 MAY 2011 古い日付けの商品が入出荷する?日付けの逆 転?をチェックすることはできた。
ただし入 出荷の「許容期限」までは管理できなかった。
全顧客の許容期限を管理 同社の扱う酒類や加工食品には、商品ごと に製造から消費までの目安となる「鮮度期間」 がメーカーにより設けられている。
商品がこ の鮮度期間内に消費されるように、在庫日数 や店頭での回転日数などをもとに卸や小売り が独自に設ける基準を入出荷の「許容期限」 という。
特定の小売りチェーン向け専用センターで は、小売りの設定した入荷許容期限を基準に 厳格な管理を行っているケースは珍しくない。
これに対し同社の開発したWMSは、特定の チェーンだけでなくすべての取引先を対象に、 入出荷許容期限を拠点別・顧客別に管理でき るようにした点が特徴だ。
メーカーから鮮度 期間の情報をもらい、顧客ごとの許容期限を もとにアイテム別に入出荷許容期限を設定す る。
これをマスター登録しておき期限を過ぎ た商品が入出荷しないように管理する。
一般酒販店など許容期限を設けていない顧 客については同社が独自の基準を設定して鮮 度を管理する。
情報統括部開発課の肥塚喜一 郎課長代理は「汎用センターのさまざまな顧 客に対し一つのシステムで鮮度を管理する例 はまだ少ないのでは」とアピールする。
WMSでは入荷・格納・ピッキングなどの 作業の進捗状況をリアルタイムで管理し、タ イムラグによる在庫の差異が起こらないよう にした。
また本社・支店がいつでも在庫や作 業の進捗状況を照会できるようになり、顧客 からの出荷状況に関する問い合わせに迅速な 対応が可能になった。
同社はWMSに「WINS」と名付け今年 一月に宇都宮の首都圏北部LCで稼働を開始 した。
今後、三年間をかけ全国の六四拠点に 順次拡大する。
日酒販は〇五年に地域の有力な酒類卸と酒 卸ユニオン「創SOU」を設立した。
会員企 業と仕入れや商品開発、物流・情報システム を共同化し、ネットワーク化を進めることで 事業基盤を強化する狙いがある。
現在二〇社 が加盟し配送網の相互利用などを進めている。
同社は創SOUの活動の一環として、日酒 販の基幹システムをSaaS形式により会員 企業に有償で提供する方針で、今回開発した WINSもこれに含まれる。
第一弾として福 島市に本社のある福島県酒類卸への導入が決 まり、準備を進めているところだ。
(フリージャーナリスト・内田三知代) ジの改造を行い、これをモデルにして新たに 専用センターと共配センターのオペレーション に必要な機能を追加する形をとった。
パッケージの改造で最も大きく変更したの は配車機能だ。
近畿南部LCのパッケージは 登録した配送先の住所と地図情報をもとに コンピューターが自動配車する仕組みだった。
だが道路一本隔てた店へわざわざ遠回りする ルートが組まれることもよくあり、その都度 人手で配送ルートを手直しする必要があった。
かえって時間と手間がかかった。
改造後は配送先を方面別にグループ分けす る作業だけをコンピューターが行い、その後 で人がグループごとに配送ルートを組むやり 方に変えた。
この配車システムを同社は基幹システムに もともとあった配車機能をもとに開発した。
物流統括部の亀山猛参事補は「長年運用して きた仕組みだけに当社の配送実態に合ってい た。
ほかも試してみたが使い勝手は一番良か った」と評価する。
柔軟に配車が組めるよう になり、配車業務にかかる時間を一時間も短 縮できたという。
WMSにはこの汎用センターの配車機能を そのまま取り入れ、専用センターや共配セン ターでも使えるようにした。
配送先が量販店 のセンターや日酒販の支店でもこの仕組みな ら共通の運用ができると同社では見ている。
鮮度管理機能も新規に開発した。
従来の 基幹システムによる鮮度管理では、前回より 情報統括部開発課の 肥塚喜一郎課長代理
