2011年7月号
特集
特集
第4部 返品WG報告── 1/3 ルール見直しへ
返品WG報告── 1/3 ルール見直しへ
なぜ返品がこれほど多いのか。
誰もが好ましくな いと思いながらも、返品問題をその根源まで踏み込 んで原因を解き明かそうとする取り組みは、これま で行われたことがなかった。
そうした取り組みがあ ったとしても、単独企業や特定の卸団体だけの試み にとどまっていた。
その点で今回の返品削減WGの活動は画期的と言 える。
日本の製配販の有力企業が集まり、返品問題 に真っ正面から取り組んだ。
現場の実態調査から始 まり、互いの社内データを提供し合い、それを集計・ 分析した。
その結果を叩き台に製配販がそれぞれの 言い分を披露してディスカッションを重ねてきた。
問題意識の共有は難しくはなかった。
返品による 廃棄を削減し、環境対応を推進することに反対する ものはいない。
返品は誰にとっても価値を生まない。
返品の発生は流通コストを増大させて、それは最終 的に消費者に転嫁されている。
返品は小売業→卸売業、卸売業→メーカーの二段 階で発生する。
いずれの場合も返品処理で発生する 作業は、同じ商品の配貨作業と比べて同等以上の手 間と時間がかかる。
とりわけ卸売業のセンターでは、 返品処理作業が大きな負担になっていることは、今 回の取り組み以前から業界の共通認識となっている。
しかし、返品による影響が業界全体で具体的にど れだけの規模になっているのか、これまで本格的に 調査されたことはなかった。
返品削減WGでは、そ れに取り組んだ。
食品卸の国分と菱食、日雑卸のP altac、あらた、花王カスタマーマーケティング の実績データを基に、返品率、返品処理経費額を算 出し、業界全体の返品規模を推計した。
図1は卸五社の実績値の累計だ。
食品の返品は小 売業→卸売業には少なく、卸売業→メーカーで多く 発生している。
一方、日雑品は小売業→卸売業、卸 売業→メーカーとも返品が多い。
返品処理経費も日 雑品のほうが高くついている。
これは返品の多くが 小売りから卸を経由してメーカーに逆流しており、食 品よりも多くの工数がかかっているためだ。
この結果から業界全体の返品額および返品処理経 費の推計を行った(図3)。
食品業界では小売業→卸 売業で四五三億円、卸売業→メーカーで一八八五億 円もの返品が発生している計算となった。
その大部 分が廃棄に回されているわけである。
また返品処理 コストにも二九億円がかかっている。
同様に日雑業界では小売業→卸売業で六二一億 円、卸売業→メーカーで八三八億円の返品が発生して いる。
返品処理コストは四七億円だ。
日雑業界の市場 規模は小売業→卸売業段階で三兆一一六〇億円、卸 売業→メーカー段階で二兆八〇四四億円であり、返 品の影響の大きさは明らかだ。
WGは返品を発生させている理由も調査した。
先 の大手卸五社が担当者に対して行ったヒアリングをベ ースに、返品の「発生理由別構成比」を算出した。
その結果が図4だ。
食品と日雑品では返品の発生理 由が大きく異なっている。
食品業界の返品は、小売業→卸売業段階では、も ともと発生率が低いうえ、その多くが「汚破損」を 理由としている。
同じ食品でも卸売業→メーカー段 階の返品は、発生率が高く、「滞留在庫(納品期限切 れ)」が最大の原因となっている。
一方、日雑品の場 合は、小売業→卸売業、卸売業→メーカーのいずれ も「年二回の棚換え・季節品」が主な原因で、食品 のように「汚破損」や「滞留在庫(納品期限切れ)」 を理由とする返品はほとんど発生していない。
ただし、このアンケートで確認したのは、返品の直 JULY 2011 24 日本は消費者からの返品が比較的少ないと言われる。
消 費者のマナーが良く、供給側も品質管理に優れているため不 良品率が低い。
ところが、流通段階では不当な返品が横行 している。
その実態を初めて本格的に調査した。
その結果、 食品業界では日付問題が、日雑品では商品の入れ替えプロ セスが、返品の主な原因となっていることが明らかになった。
接のきっかけとなった原因である。
WGはこれらの 直接的原因の背景には、より根本的で複合的な原因 が横たわっていると考えた。
基本的に返品は納入数と販売数の差が大きくなっ た時に発生する。
そこには特定の“主犯”がいるわ けではない。
サプライチェーンの一連のプロセスや取 引慣行が不適切であることが、製配販の各階層に複 合的な要因を発生させている。
その発生要因をWG では次の五つのパターンに整理した。
?販売政策が適切でないことにより、押し込み在庫 が発生する(製) ?需要予測が適切でないため、生産数、注文数が過 剰になる(製配販) ?在庫計画が適切でないためにサービス水準・安全 在庫が過剰になる(製配販) ?在庫処分が適切でないために値下げなどによる処 分数が過小になる(配販) ?取引慣行が適切でないために安易な返品要請や受 入が行われる(製配販) こうして返品問題を分析していく過程では、WG のメンバー間で侃々諤々の激しい議論が行われた。
そ の議論を通じて、返品問題には特定の被害者や加害 者がいるわけではなく、製配販それぞれに要因があ ることを共通認識とすることができた。
この実態調査を踏まえて、返品削減に向けたアク ションプランを策定した。
?公正取引の徹底、?納 品期限設定方法の再検討、?定番商品の商品入れ替 えプロセスの見直しの三つが、その柱だ。
?公正取引の徹底 公正取引委員会は既に返品の原則禁止を打ち出し ている。
それに沿って法令を順守し、不公正な返品 取引を行わないことを徹底する。
?納品期限設定方法の再検討 行き過ぎた鮮度競争を改める。
食品業界では、納 品期限切れが返品を発生させる最大の要因となって いる。
しかし、現在の「三分の一ルール」に合理的 な根拠はないという認識をWGでは共有することが できた。
加工食品に関しては賞味期限の範囲内なら 品質はほぼ一定であり、極端に短い納品期限を設定 する意味はない。
今後は三分の一ルールに代わる納品 期限の合理的な基準作りを検討していく。
各層でカ テゴリー別に在庫日数の実態などを定量的に調査し、 カテゴリーごとに適正在庫日数を検討していくことも 一つの方法として挙がっている。
?定番商品の商品入れ替えプロセスの見直し 日雑品は年二回の商品入れ替え時、棚替え時に返 品が発生している。
これを改善するために、第一に 既存品の販売終了(終売)プロセス、新商品の導入 プロセスを見直す。
現状、小売りは既存品の終売直前まで発注を入れ ている。
ベンダー側でも欠品を防ぐため在庫を確保し ている。
それが終売後の返品を招いている。
これを 改め、卸が終売日の一定期間前にメーカーへの補充 発注を止めるようにする。
既存の在庫分だけで店舗 発注に対応し、小売りは終売品の欠品を許容する。
新商品の導入では、卸は小売りの発注が確定する 前にメーカーに見込みで発注することが多い。
この見 込みが外れた結果として卸に在庫が残り、メーカーへ の返品に繋がっている。
これを改め、新商品発売の 一定期間前に小売りが卸に確定発注を出し、卸は見 込み発注を止める。
25 JULY 2011 加工食品日用雑貨 図1 返品・返品処理経費率(09 年) 図3 返品額・返品処理経費(09 年) 図2 取引規模推計(09 年) 返品率 返品処理経費率 (対メーカー返品額比) 小売業→卸売業 卸売業→メーカー 0.41% 1.88% 1.53% 1.99% 2.99% 5.57% 返品額推計 返品処理経費推計 小売業→卸売業 卸売業→メーカー 453 億円 1,885 億円 29 億円 621 億円 838 億円 47 億円 取引規模推計 小売業→卸売業 卸売業→メーカー 11 兆1,474億円 10 兆327 億円 3 兆1,160億円 2 兆8,044億円 図4 返品の発生理由別構成比 小売↓卸卸↓メーカー ?閉店・改装 ?年2回の棚替え・季節品 ?特売残 ?随時の商品改廃 ?販売期限切れ ?汚破損 ?その他(メーカー起因等) ?滞留在庫(納品期限切れ) ?庫内破損 ?特売残 ?年2回の棚替え・季節品 ?随時の商品改廃 ?その他(メーカー起因等) 4.5% 6.9% 16.6% 13.8% 13.5% 41.5% 3.2% 39.0% 2.7% 7.9% 7.8% 28.7% 13.8% 2.7% 70.0% 1.7% 12.5% 0.8% 1.2% 10.9% 10.0% 3.0% 10.0% 63.8% 8.0% 5.1% 加工食品日用雑貨 特集 (この記事は流通経済研究所の「返品削減WG報告書」および同フ ォーラムにおけるPaltacの久宗圭一業務改革部部長の発表を 元に本誌が再構成したものです)
誰もが好ましくな いと思いながらも、返品問題をその根源まで踏み込 んで原因を解き明かそうとする取り組みは、これま で行われたことがなかった。
そうした取り組みがあ ったとしても、単独企業や特定の卸団体だけの試み にとどまっていた。
その点で今回の返品削減WGの活動は画期的と言 える。
日本の製配販の有力企業が集まり、返品問題 に真っ正面から取り組んだ。
現場の実態調査から始 まり、互いの社内データを提供し合い、それを集計・ 分析した。
その結果を叩き台に製配販がそれぞれの 言い分を披露してディスカッションを重ねてきた。
問題意識の共有は難しくはなかった。
返品による 廃棄を削減し、環境対応を推進することに反対する ものはいない。
返品は誰にとっても価値を生まない。
返品の発生は流通コストを増大させて、それは最終 的に消費者に転嫁されている。
返品は小売業→卸売業、卸売業→メーカーの二段 階で発生する。
いずれの場合も返品処理で発生する 作業は、同じ商品の配貨作業と比べて同等以上の手 間と時間がかかる。
とりわけ卸売業のセンターでは、 返品処理作業が大きな負担になっていることは、今 回の取り組み以前から業界の共通認識となっている。
しかし、返品による影響が業界全体で具体的にど れだけの規模になっているのか、これまで本格的に 調査されたことはなかった。
返品削減WGでは、そ れに取り組んだ。
食品卸の国分と菱食、日雑卸のP altac、あらた、花王カスタマーマーケティング の実績データを基に、返品率、返品処理経費額を算 出し、業界全体の返品規模を推計した。
図1は卸五社の実績値の累計だ。
食品の返品は小 売業→卸売業には少なく、卸売業→メーカーで多く 発生している。
一方、日雑品は小売業→卸売業、卸 売業→メーカーとも返品が多い。
返品処理経費も日 雑品のほうが高くついている。
これは返品の多くが 小売りから卸を経由してメーカーに逆流しており、食 品よりも多くの工数がかかっているためだ。
この結果から業界全体の返品額および返品処理経 費の推計を行った(図3)。
食品業界では小売業→卸 売業で四五三億円、卸売業→メーカーで一八八五億 円もの返品が発生している計算となった。
その大部 分が廃棄に回されているわけである。
また返品処理 コストにも二九億円がかかっている。
同様に日雑業界では小売業→卸売業で六二一億 円、卸売業→メーカーで八三八億円の返品が発生して いる。
返品処理コストは四七億円だ。
日雑業界の市場 規模は小売業→卸売業段階で三兆一一六〇億円、卸 売業→メーカー段階で二兆八〇四四億円であり、返 品の影響の大きさは明らかだ。
WGは返品を発生させている理由も調査した。
先 の大手卸五社が担当者に対して行ったヒアリングをベ ースに、返品の「発生理由別構成比」を算出した。
その結果が図4だ。
食品と日雑品では返品の発生理 由が大きく異なっている。
食品業界の返品は、小売業→卸売業段階では、も ともと発生率が低いうえ、その多くが「汚破損」を 理由としている。
同じ食品でも卸売業→メーカー段 階の返品は、発生率が高く、「滞留在庫(納品期限切 れ)」が最大の原因となっている。
一方、日雑品の場 合は、小売業→卸売業、卸売業→メーカーのいずれ も「年二回の棚換え・季節品」が主な原因で、食品 のように「汚破損」や「滞留在庫(納品期限切れ)」 を理由とする返品はほとんど発生していない。
ただし、このアンケートで確認したのは、返品の直 JULY 2011 24 日本は消費者からの返品が比較的少ないと言われる。
消 費者のマナーが良く、供給側も品質管理に優れているため不 良品率が低い。
ところが、流通段階では不当な返品が横行 している。
その実態を初めて本格的に調査した。
その結果、 食品業界では日付問題が、日雑品では商品の入れ替えプロ セスが、返品の主な原因となっていることが明らかになった。
接のきっかけとなった原因である。
WGはこれらの 直接的原因の背景には、より根本的で複合的な原因 が横たわっていると考えた。
基本的に返品は納入数と販売数の差が大きくなっ た時に発生する。
そこには特定の“主犯”がいるわ けではない。
サプライチェーンの一連のプロセスや取 引慣行が不適切であることが、製配販の各階層に複 合的な要因を発生させている。
その発生要因をWG では次の五つのパターンに整理した。
?販売政策が適切でないことにより、押し込み在庫 が発生する(製) ?需要予測が適切でないため、生産数、注文数が過 剰になる(製配販) ?在庫計画が適切でないためにサービス水準・安全 在庫が過剰になる(製配販) ?在庫処分が適切でないために値下げなどによる処 分数が過小になる(配販) ?取引慣行が適切でないために安易な返品要請や受 入が行われる(製配販) こうして返品問題を分析していく過程では、WG のメンバー間で侃々諤々の激しい議論が行われた。
そ の議論を通じて、返品問題には特定の被害者や加害 者がいるわけではなく、製配販それぞれに要因があ ることを共通認識とすることができた。
この実態調査を踏まえて、返品削減に向けたアク ションプランを策定した。
?公正取引の徹底、?納 品期限設定方法の再検討、?定番商品の商品入れ替 えプロセスの見直しの三つが、その柱だ。
?公正取引の徹底 公正取引委員会は既に返品の原則禁止を打ち出し ている。
それに沿って法令を順守し、不公正な返品 取引を行わないことを徹底する。
?納品期限設定方法の再検討 行き過ぎた鮮度競争を改める。
食品業界では、納 品期限切れが返品を発生させる最大の要因となって いる。
しかし、現在の「三分の一ルール」に合理的 な根拠はないという認識をWGでは共有することが できた。
加工食品に関しては賞味期限の範囲内なら 品質はほぼ一定であり、極端に短い納品期限を設定 する意味はない。
今後は三分の一ルールに代わる納品 期限の合理的な基準作りを検討していく。
各層でカ テゴリー別に在庫日数の実態などを定量的に調査し、 カテゴリーごとに適正在庫日数を検討していくことも 一つの方法として挙がっている。
?定番商品の商品入れ替えプロセスの見直し 日雑品は年二回の商品入れ替え時、棚替え時に返 品が発生している。
これを改善するために、第一に 既存品の販売終了(終売)プロセス、新商品の導入 プロセスを見直す。
現状、小売りは既存品の終売直前まで発注を入れ ている。
ベンダー側でも欠品を防ぐため在庫を確保し ている。
それが終売後の返品を招いている。
これを 改め、卸が終売日の一定期間前にメーカーへの補充 発注を止めるようにする。
既存の在庫分だけで店舗 発注に対応し、小売りは終売品の欠品を許容する。
新商品の導入では、卸は小売りの発注が確定する 前にメーカーに見込みで発注することが多い。
この見 込みが外れた結果として卸に在庫が残り、メーカーへ の返品に繋がっている。
これを改め、新商品発売の 一定期間前に小売りが卸に確定発注を出し、卸は見 込み発注を止める。
25 JULY 2011 加工食品日用雑貨 図1 返品・返品処理経費率(09 年) 図3 返品額・返品処理経費(09 年) 図2 取引規模推計(09 年) 返品率 返品処理経費率 (対メーカー返品額比) 小売業→卸売業 卸売業→メーカー 0.41% 1.88% 1.53% 1.99% 2.99% 5.57% 返品額推計 返品処理経費推計 小売業→卸売業 卸売業→メーカー 453 億円 1,885 億円 29 億円 621 億円 838 億円 47 億円 取引規模推計 小売業→卸売業 卸売業→メーカー 11 兆1,474億円 10 兆327 億円 3 兆1,160億円 2 兆8,044億円 図4 返品の発生理由別構成比 小売↓卸卸↓メーカー ?閉店・改装 ?年2回の棚替え・季節品 ?特売残 ?随時の商品改廃 ?販売期限切れ ?汚破損 ?その他(メーカー起因等) ?滞留在庫(納品期限切れ) ?庫内破損 ?特売残 ?年2回の棚替え・季節品 ?随時の商品改廃 ?その他(メーカー起因等) 4.5% 6.9% 16.6% 13.8% 13.5% 41.5% 3.2% 39.0% 2.7% 7.9% 7.8% 28.7% 13.8% 2.7% 70.0% 1.7% 12.5% 0.8% 1.2% 10.9% 10.0% 3.0% 10.0% 63.8% 8.0% 5.1% 加工食品日用雑貨 特集 (この記事は流通経済研究所の「返品削減WG報告書」および同フ ォーラムにおけるPaltacの久宗圭一業務改革部部長の発表を 元に本誌が再構成したものです)
