2011年7月号
特集

第5部 日本的商慣行・取引制度の改革に挑む

JULY 2011  28 イトーヨーカ堂 改革手法を一八〇度転換  ライバルのイオンがメーカーとの直接取引を基 本とする欧米型のSCMを志向しているのとは対 照的に、イトーヨーカ堂はこれまで、卸の介在す る日本型サプライチェーンを堅持してきた。
自主 企画のPB商品であっても、在庫の配分や数量管 理、そして物流には基本的に卸を利用している。
 その理由を同社の飯原正浩物流企画開発部総括 マネジャーは次のように説明する。
「流通管理は卸 の本来の役割であり、我々よりも卸のほうが優れ ているという判断だ。
PBにしても、同じカテゴ リーのNBと分けてハンドリングするのは効率が 悪い。
直接取引に比べて卸流通が劣っているとは 考えていない」。
 それだけに従来から卸との連携には積極的に取 り組んできた。
ただし、その手法は発注頻度の向 上と発注単位の小ロット化、そして納品リードタ イム短縮を進めるという多頻度小口化・即納のア プローチだった。
八〇年代まで週二回だった加工 食品の発注を段階的に増やしていき、毎日発注に 移行した結果、店舗の在庫量は劇的に削減され、 商品の鮮度は飛躍的に向上した。
欠品が増えるこ ともなかった。
その成功体験が物流部門だけでな く社内全体に染みついていた。
 しかし、二〇〇 〇年代後半に入っ てアプローチを大き く転換した。
現在 は物流サービスレベ ルを引き下げるこ とで全体の効率を上げるという、それまでとは正 反対の施策を多く採用するようになっている。
 その取り組みの一部は今回の製配販連携協議会 でも報告されている。
舞台は首都圏四カ所に配置 している加工食品センターだ。
二〇〇〇年に稼働 した後、〇五年まで大きな変更のないまま運用し てきた。
それに対して当時のトップが疑問を投げ かけた。
それまでの五年間で店舗展開や販売方法 は大きく変化している。
それなのに物流だけはま ったく変わっていない。
おかしいではないかとい う指摘だった。
 物流部門は改めて現状の見直しを行った。
その 結果、物流サービスレベルを落として店舗側の作 業負荷が多少増えても、それ以上に納品配送費や 専用センターの工数を減らすことができれば全体 のコスト効率は向上することに気がついた。
伝統 的に多頻度小口化とリードタイム短縮を進めるこ とをミッションとされてきた同社の物流部門にと っては大きな発想の転換だった。
 既存のサービス条件を一つひとつ検証し、最適 解を探った。
同社では店舗における商品の仕分け・ 陳列作業を軽減するために、各店のレイアウトに 合わせて商品を納品する「個店通路分類納品」を 行っている。
その分類数を二割削減することにし た。
納品車両の積載率を上げ、専用センターの仕 分け工数を減らす狙いだ。
 納品ルートも見直した。
それまでは店舗側の作 業スケジュールに合わせて各店舗への納品時間を 設定していた。
それを改めセンターロケーション から最適なルートを組み、各店舗への納品時間を 設定し直した。
 販売計画の事前立案も徹底させた。
特売商品は 日本的商慣行・取引制度の改革に挑む  サービスレベルを戦略的に引き下げて物流コストを 削減し、なおかつサプライチェーン全体のパフォーマ ンスを維持・向上する。
情報システムの高度化や情 報共有の進展によって、それが可能になってきた。
先進企業は既に動き始めている。
(大矢昌浩、梶原幸絵) 飯原正浩物流企画開発 部総括マネジャー 特集 29  JULY 2011 くできなかっただろう。
単品管理の思想をベース にして、POSデータの運用の工夫や自動発注シ ステムの整備など進め、ICTが高度化したことで、 ようやくサービスレベルの引き下げが可能になった。
リードタイムを延ばしても欠品の増えないオペレ ーションが可能になってきた」と飯原総括マネジ ャーはいう。
 返品の削減にも取り組んでいる。
ヨーカ堂の店 舗では約四〇〇〇アイテムの加工食品が販売され ている。
納品リードタイムは翌日で、従来はすべ てのアイテムに同じ条件を設定していた。
そのた め物流センターに全アイテムを常に在庫する必要 があった。
売れ筋以外のBC商品は、回転率が低 いため在庫日数が長くなってしまう。
それが在庫 ロスを招いていた。
 これを改善するためアイテムによって納品リー ドタイムを変えることにした。
発注システムのプ ログラムを修正し、BC商品の五〇〇アイテムに ついては三日〜一週間にリードタイムを伸ばした。
そして、この五〇〇アイテムが当該センターで欠 品した場合は他のセンターから横持ちをかけるよ うに変えた。
廃棄などの商品ロスを大幅に解消す ることができた。
 一方、売れ行き上位の高回転アイテムも特売終 了後などには卸に大量の売れ残りが発生すること がある。
これに対してはヨーカ堂の店頭在庫、販 売数、センター在庫を一元化した数字を取引先卸 に公開し、さらに翌日の販売量を予測する独自の 「発注提案システム」によって流通段階で発生す る返品や廃棄の抑制を図っている。
 既に同社の加工食品の返品率は〇・〇〇一%〜 〇・〇〇三%程度まで下がっている。
業界平均値 前週までに販売計画を確定し、初回投入分の配送 を計画化。
二回目以降に投入する分の店舗発注で 実需とのズレを調整するかたちに変えた。
さらに は毎日発注を週六日に変更、発注の締め時間も十 二時半から十一時半に一時間前倒しにした。
 一連の改革によって首都圏の加工食品の物流コ ストは約一〇%削減された。
しかも発注頻度を減 らしたことで、店舗側でも発注作業や荷受けの負 担が減り、その分、本来の販売業務に時間を割け るようになった。
 この取り組みをきっかけに、同社は発注ロット を増やす、発注回数を減らす、リードタイムを伸 ばすといった納品条件の変更を、カテゴリーやエ リアごとに進めるようになっている。
 「一〇年前に同じことをやれと言われても恐ら と比べると桁違いに少ない。
それでもまだ「当社 の取引先卸からメーカーへの返品は無視できない レベルで発生している。
そこを減らしていく必要 がある」と飯原統括マネジャーは考えている。
今 回の製配販連携協議会に、ヨーカ堂が小売りとし て最も積極的に関与している理由だ。
 ライフコーポレーション  発注頻度を毎日から週五日へ  食品スーパー最大手のライフコーポレーション は、商品の鮮度に強くこだわっている。
「三分の 一ルールや販売期限もしっかりと管理している」 と高岡康隆近畿圏物流部兼物流企画部課長はい う。
物流サービスに対する要求も高い。
発注は毎日。
加工食品の店舗への納品リードタイムは最短四時 間に設定している。
 ライフの店舗は市街地の中規模店がメーンで、 バックヤードに在庫を保管する余裕はほとんどない。
周辺道路に大型車両が入れないことも多い。
配送 コストが割高になっても多頻度小ロットを避けら れないという背景もある。
 しかし、〇九年一〇月に、近畿地区の常温セン ター二カ所を集約した新センター「住之江物流セ ンター」(大阪・住之江区)が稼働したのに合わ せて発注頻度の見直しを始めている。
 一部の店舗を対象に、まず木曜日の発注を止め た。
その結果を見て徐々に対象を広げていき、全 店舗に拡大した。
続いて一〇年秋から月曜日の発 注停止も進めている。
月・木の発注を止めた店舗 は近畿圏の全一二三店舗(五月時点)中八店舗 だが、今後は他の店舗にも広げていく計画だ。
 発注頻度を減らしたことで店舗内の作業人時は 物流費削減額と想定される影響 検討項目想定される影響 A. B. C. D. E. F. G. 納品分類数の2 割削減 →現行の「個店通路分類納品」サー ビスの縮小 納品後、品出し前に若干の商品 仕分けが発生 納品ルート(時間)の変更により、 店では人員配置の見直しが必要 (36 店舗に影響) 販売計画の事前立案の徹底 売り出し期間中は店発注にて数量 調整) 遅番社員の発注に影響 (発注のパート化されている店は問 題なし) 店は毎日発注に慣れており、意識 の切り替えが必要 但し、年末等の繁忙時期は毎日 発注にて対応予定(年4 回程度) 納品ルートの見直し →センターロケーションから見た効率的 な納品ルートの設定 特売商品の投入方法の見直し →売り出し前週に販売計画を立案し、 初回投入(陳列)分の配送を計画化 発注締め時間の1時間前倒し →現行の締め時間12 時半を11 時 半へ繰り上げ 現状の毎日発注を週6 日発注へ変更 →火曜日発注、又は水曜日発注の中 止を検討中 緊急発注削減、情報システム費用見 直し、センター運営人員の削減 その他、各センター毎の効率化追求 合 計 出所:イトーヨーカ堂資料より作成 大幅に改善している。
木曜日の発注を止めた店舗 の中には一週間の作業人時が三割近く減少した店 舗もあった。
将来は関東地区でも同様の改革を行 いたい考えだ。
 同社は〇六年二月期に全社的な業務改革に着手 し、業務のあり方を抜本的に見直した。
店舗オペ レーションの改革では、店舗スタッフの作業内容 を調べたところ、発注や荷受け・補充作業に多く の時間が割かれていることが明らかになった。
 それまでは多頻度発注を店舗を支援するために 必要なサービスと位置付けていた。
しかし、店舗 スタッフが毎日発注をかけ、荷受けをし、棚に少 しずつ商品を補充する作業が店舗の運営効率を落 としている面があることに気がついた。
 そこから発注頻度を減らすという改善策が浮上 した。
店舗側からは「毎日発注に慣れているので 減らすのは難しい」という意見もあったため、段 階を踏んでその効果と運用を確認しながら導入を 進めているところだ。
 高岡課長は製配販連携協議会の配送最適化ワ ーキンググループにメンバーとして参加している。
その席で「他の小売りも当社と同様に多頻度小口 化の見直しに動いていることを知り、現在の取り 組みに対して自信を深めることができた」という。
 しかし、不満も感じている。
現在、ライフの物 流部門は物量の波動への対応を課題として掲げて いる。
住之江物流 センターは、一カ所 で近畿圏の全店舗 をカバーしている。
週二回のチラシ発 行時やCM放送時、 連休前、年末などの繁忙期には物量が膨れあがり、 センターで入荷受け入れを待つ待機車両が発生す る。
 このため特売については事前にベンダーにおよ その計画を提示し、約一〇日前に確定情報を流し ている。
しかも、発注データをいったん物流部門 でチェックし、センターの作業負担を考慮してベ ンダーに分納を指示できる仕組みになっている。
 それでも悩みはつきない。
特にTC型で運用し ている日用雑貨品は繁忙期の仕分け作業が負担に なっている。
このため卸側でカテゴリーごとに商 品を仕分ける「センター前センター」を設置でき ないか検討している。
 ほかにも、近隣にセンターを置く他のスーパー とのセンター納品物流の共同化や店舗納品の帰り 便を活用して商品をメーカーに集荷しにいく「バ ックホール」、納品車両の積載効率に合わせた発 注方式など、温めているアイデアはたくさんある。
いずれも製配販の協力が必要になる施策だ。
 しかし、「配送最適化WGでは、まだメーカー や卸側からそうした提案が出てきていない。
これ までのところは参加各社の取り組みを披露したの に留まっている。
WGではメーカーさんや卸さん にもっと提案をしていただくよう呼びかけている。
事務局を務める流通開発研究所のリーダーシップ にも期待したい」と高岡課長はいう。
 菱食  「背面発注」でロットを最適化  菱食は大手加工食品メーカーと「メーカー・リ ョーショクECR研究会」を組織している。
参加 メーカーは味の素、カゴメ、キユーピー、永谷園、 日清食品、日清フーズ、ネスレ日本、ハウス食品、 ミツカンの九社だ。
 研究会の発足は九四年。
各社の物流部門の部長 級、課長級、担当者と階層別に会合を設け、お互 いの車両の動きや作業人員数などの情報までオー プンにして、メーカー〜卸間の物流効率化に継続 して取り組んできた。
 その一環で〇七年にはロットをまとめて納品頻 度を削減するための実証実験を行った。
場所は菱 食が埼玉県南埼玉郡に置く物流拠点「関東物流事 業所」。
「RDC(ピースピッキングを集中処理す る広域センター)」と「FDC(ケース商品とR DCからの集荷品を納品先別に仕分ける前線セン ター)」を併設する大型拠点だ。
 それまで同事業所では納品を待つトラックで渋 滞が発生していた。
センターでの入荷受け付け・ 検品作業は基本的に先着順だったため、深夜三時 前後から車両が待機し、六時前後には一日の納品 車両の約四割が集中していた。
 これを解消するため、メーカーごとに「月・水・ 金」と「火・木・土」の二パターンの定曜日納品 を設定し、T 11 型パレットに積み付ける一段分(背 面)に合わせた単位にメーカーへの発注ロットを まとめることにした。
 この背面発注を実施するために菱食は、大手食 品卸の商品の共同データベース「インフォレックス」 からメーカーがアイテムごとに登録したパレット積 み付け情報を取得、それに合わせた発注をできる ように情報システムの設定を変更した。
 センター側の荷受け体制も変更した。
それまで 関東事業所はRDCとFDCで別々に荷受けを行 っていた。
その区別をやめてメーカーごとに受け JULY 2011  30 高岡康隆近畿圏物流部 兼物流企画部課長 特集 付け時間・バースを指定するようにした。
さらに 納品の集中する時間帯には入荷受付の人員を増員 した。
その結果、同事業所周辺で発生していた渋 滞は改善し、車両の滞留時間は大幅に短縮された。
同時に菱食側も受け入れ・検品作業がスムーズに なった。
 こうした改善効果をECR研究会では独自に 開発した「ECRスコアカード」によって検証し ている。
受発注単位、計画納品、指定時間納品、 パレタイズ納品などのKPIを設定してパフォー マンスを評価し、PDCAサイクルを回している。
 実証実験で効果が確認されたため、現在は同じ 取り組みを関東事業所を含めて五エリアに拡大し ている。
その一方、課題も浮き彫りになってきた。
メーカーと菱食がいくら定曜日納品や発注ロット などに関するルールを守ろうとしても、小売りか ら急な発注があればルールを崩さざるを得ない。
 特に大きな物量の動く特売時の発注リードタイ ムが問題になってい る。
店舗の通常の発 注作業は自動化が進 んでおり、運用も安 定している。
しかし、 特売時は本部や店舗 のパート社員が手動で発注することが多く、店舗 納品の前日まで納品数量が確定しない。
 「イレギュラーな発注によって取引のルールが守 られないこと、ルールはあってもあまりにリード タイムが短すぎることがムダの発生する根源であり、 これを改善すれば配送は必ず最適化できる」と櫻 井清隆SCM推進本部長代理は語る。
 ECR研究会の活動も含め、メーカー〜卸間の 物流の最適化では、取引先同士の協働が既に定着 している。
もう一段の効率化を進めるには、卸〜 小売り間、さらには製配販三層の協働が欠かせない。
 櫻井本部長代理は「メーカーから消費者までの 本当にトータルなサプライチェーンの合理化が必要 なところまで既に行き着いている。
協議会は三層 が議論を深め、意識を変えていくために必要な活 動だ」と考えている。
 あらた  ダイカ式「無返品制」の壁  Paltacと並ぶ日用雑貨品卸の二強、あら たの中核企業となった旧ダイカは、一九九〇年代 初頭にメーカーに対して“返品ゼロ”を宣言して いる。
メーカーの販売代理店として機能してきた 従来の日雑卸のあり方を抜本的に変えるための荒 療治だった。
 メーカーに返品するのは止めるが、小売りから の返品は受け入れた。
そのままでは自分だけが大 量の不良在庫を抱えてしまうことになる。
背水の 陣で改革に乗り出した。
 将来の返品を招く押し込み販売は御法度にした。
小売各社の前年実績を基に緻密な販売計画を立て、 実際に売れる量を推奨する提案営業に切り替えた。
 春秋の棚変え時 には、メーカーに 対して商品の生産 中止予定を早めに 提示するよう促し た。
直前まで中止 の予定がわからなければ、小売りは従来通りの発 注を続けるため、結果として返品が多くなってし まう。
 一方で小売りには季節品の販売終了予定を念頭 に置いて各アイテムの発注をコントロールしても らうよう働きかけた。
小売りの許可が得られれば、 生産中止の決まった商品の並ぶ棚に印を付けたり、 棚のラベルやバーコードを剥がしたりもした。
 そうした取り組みが奏功し、ダイカは地盤とす る北海道でメーカーへの“返品ゼロ”を実現した。
業績も赤字に陥るどころか、返品処理や廃棄コス トが下がったことで逆に収益性が改善した。
 この改革をきっかけにダイカは成長軌道に乗っ た。
そして二〇〇二年から〇六年にかけて中部、 九州、四国、近畿の有力卸と経営統合し、全国 卸へと飛躍していった。
 ダイカ出身で現在あらたの執行役員を務める岩 渕晋明経営戦略室室長は「トップダウンで本気で 改革に取り組んだことで、卸としての経営の質を 一段上げることができた」と振り返る。
 しかし、ダイカ式の無返品制は、その後、東北 地区で成功しただけで、他のエリアには思うよう に浸透していない。
北海道と東北で改革が可能だ ったのは、同社がそのエリアで圧倒的なシェアを 握っていたことが背景になっていた。
環境の違う 他のエリアで同じことはやるのは難しい。
31  JULY 2011 + + ※背:パレットへの商品積みつけ  (パレタイズ)数 出所:味の素資料より 背段 この場合は“3 段” 櫻井清隆SCM推進 本部長代理 岩渕晋明執行役員 経営戦略室室長  岩渕執行役員は「もちろん今でも返品を減らす 努力はしているし、実際、返品額は他社よりは少 ないはずだ。
しかし、競争がある以上、相対の交 渉には限界がある。
今回の協議会では三層の話し 合いに加え、経産省にもリーダーシップを発揮し て欲しい」と期待している。
 キリンビール  物流メニュープライシング導入  キリンビールは今年一月、納品ロットや納品指 定時間などの物流サービスレベルを卸価格に反映 させた新しいメニュープライシングを全国で一斉に 導入した。
昨年から一年かけて営業部門とSCM 部門が得意先卸を回って新取引制度への理解を求 め、導入にこぎ着けた。
 これに先立つ二〇〇七年に同社は卸からの発注 ロットを大型化してセンターへの納品車両台数を 削減する取り組みを開始している。
一回の納品量 を一八〜二〇パレット(十一・五〜十三・五トン) にまとめた発注に対してインセンティブを付けた。
通常の大型車よりも積載量の大きい「増トン車」 で納品することを可能にした。
 アイテムによっては一八〜二〇パレットの発注 でも、増トン車の配送重量・荷姿と合わないこと もある。
その場合はキリンビールの受注担当者か ら卸の発注担当者に連絡し、別のアイテムとの混 載を提案するなど、 調整を依頼した。
 当初は試行錯誤 もあったが、運用 が安定してきた〇 八年頃から取り扱 いが飛躍的に増加していった。
 一〇年九月時点では取り組みに合意した卸の総 発注箱数のうち、増トン車に合わせたロットでの 発注箱数が九九%に達した。
その結果、月間二八 〇〇台の納品車両台数を削減することができた。
輸送トンキロ当たりのCO2削減効果は、一〇年 度年間で一六%と弾いている。
 この取り組みの成功を受け、今後はメニュープ ライシングによって改革の対象を発注ロットだけ ではなく、発注方法や納品時間にまで広げ、受注 から納品までのすべてプロセスの効率化を進めた い考えだ。
 メニュープライシングの導入には、近年、納品 先の卸や小売りから個別対応のサービスを求めら れることが増え、エリアやセンター、得意先ごと にまちまちになっていた物流サービスレベルを全 国的に統合する狙いもあった。
 今後は新取引制度の下、特に配送の分野では納 品時間帯の平準化に力を入れる方針だ。
センター からの納品時間の指定は午前中が全体の七五%を 占め、中でも八〜九時の時間帯に集中している。
このために納品車両の稼働率が上がらないうえ、 指定された時間通りに車両が到着しても入荷作業 が追いつかず、長時間の待機を余儀なくされるこ とが珍しくはない。
待機車両によって引き起こさ れる周辺道路の渋滞は卸にとっても看過できない 問題となっている。
 そこで新制度では、時間指定の緩和・撤廃、ま たは待ち時間なしに納品できる時間を取り決める など、さまざまなパターンに応じて価格メニュー を設定した。
 キリンビールの中尾稔SCM本部SCM推進部 長は「卸さんとメーカーの双方がウィン・ウィン になる施策に協力して取り組んでいく。
また卸さ んが運営する小売りの専用センターの場合には、 当然、小売りさんの協力も必要になる。
その点で は製配販連携協議会にも大いに期待している」と いう。
 味の素  SCM版「もったいない運動」  日本では加工食品の賞味期限が、実際に品質が 劣化する期限よりも三割程度は前倒しに設定され ている。
しかも、品質テストはメーカーの指定す る保存温度ではなく、通常の流通条件よりも過酷 な複数の温度帯で行われている。
 その商品に対して小売りは現在、製造日が賞味 期限の三分の一を過ぎていないことを店舗納品の 条件としている。
なかには六分の一に設定してい る小売りもある。
そのために小売りの専用センタ ーや卸の汎用拠点では、大量の加工食品が廃棄も しくは返品されている。
 製配販連携協議会の返品削減WGの調査による と、加工食品の小売り→卸段階の返品率は〇・四 一%にとどまっている。
ただし、そこには店舗に 納品されないまま販売できなくなった商品は含ま れていない。
 小売りの専用センターといっても、そこにある 在庫の所有権は通常は卸にある。
専用センターで 期限切れを迎えた商品は返品にはカウントされな い。
そのため先の調査でも卸→メーカー段階にな ると、返品率は一・八八%に跳ね上がる。
 しかも、それは氷山の一角に過ぎない。
味の素 の藤原寛治食品事業本部営業企画部ECRグルー JULY 2011  32 中尾稔SCM本部SCM 推進部長 は該当品の三二%が 既に直送に切り替わ っている。
「問屋さ んによっては該当品 の八割近くを直送に 切り替えたところも ある」と同社の若林 則夫ロジスティクス 部参事はいう。
 今後は梱包改革や 廃棄の抑制を通じて 環境対応に向けた取 り組みを進めたい考えだ。
それには商慣習や取引 制度の見直しが避けられなくなってくる。
卸や小 売りの理解と協力を得ることが当然必要になる。
しかし対面販売の「制度品化粧品」では最大手の 資生堂も一般の日用雑貨品市場では中堅メーカー の一つ。
取引先との相対の交渉では遠慮が出てし まう。
 製配販連携協議会の席であれば難しいテーマも 俎上に乗せられると期待している。
同社の平田眞 司国内化粧品事業部流通開発部課長は「取引制 度を公平かつ透明なものに変えていくことは、グ ローバル化を急ぐ当社にとって実は差し迫った課 題でもある」という。
 世界一〇〇カ国以上で採用されている国際財 務報告基準「IFRS( International Financial Reporting Standards)」が日本でも近く上場企業 に対して強制適用される。
これに対応するには、 返品やリベート制度を明確化する必要がある。
そ のことが製配販連携協議会の発起人の一人として 資生堂が参加した理由でもあった。
特集 プ長は「賞味期限の問題で販売できずに廃棄され ている商品はその何倍にも上る。
コストだけでな くサステナビリティの点からも看過できない問題だ。
しかし現在の商慣行が続く限り、そうしたムダは ほとんど改善できない」という。
 味の素のECRグループではこれまで約一〇年 にわたって卸を中心とする取引先との連携強化に 取り組んできた。
EDIの整備やデータ共有、納 品条件の調整など、営業部門だけではカバーしき れない問題をECRグループがサポートしている。
 二〇〇二年にはグリーン化を旗印に返品削減プ ロジェクトにも取り組んだ。
約三年間の活動で返 品のほぼ半減に成功している。
そのため現在、同 社の卸からの返品率は業界平均の四分の一程度の 水準に抑えられているという。
 それでも小売りの求める厳格な納入条件を順守 するために、今も大量の廃棄と莫大なコストがサ プライチェーン上で発生している。
販売終了を間 近に迎えた商品でも最終日まで欠品が許されない ため、廃棄になることが分かっているのに生産し ているのが実情だ。
そうしたコストが最終的には 商品価格に転嫁されている。
 藤原ECRグループ長は「返品や廃棄、ムダな コストを招いているのに、消費者に対しても何の 価値も生んでいない、まさしく“もったいない” 商慣習が横行している。
それを徹底的に排除した い」という。
 製配販協議会を その格好の機会と 位置付けている。
メーカー〜卸の二層 間の連携は既に成 熟し、効率化の余地は小さい。
それに対して製配 販の連携には、これまでほとんど手がつけられて いない。
 「製配販だけでなく、産学官、そして消費者ま で巻き込んで、サプライチェーンのもったいない 運動に本気で取り組む。
三分の一ルールを改める だけでも、加工食品の流通は劇的に変わる」と藤 原ECRグループ長は訴えている。
 資生堂  事前一括発注による工場直送  資生堂の二〇一一年三月期の連結売上高は前年 比四・一%増の六七〇七億円だった。
海外事業が 前年比二一・二%伸びた。
一方で国内事業は同五・ 八%のマイナスだった。
海外の好調とは裏腹に国 内は長期にわたって縮小する傾向にある。
今後も 需要の拡大は期待できそうにない。
 そのためグローバル化を積極的に進めるのと同 時に、国内事業の再構築に取り組んできた。
物流 分野では、〇七年に一〇〇%子会社の資生堂物流 の株式を日立物流に譲渡して、3PLに切り替え た。
同時に物流拠点はプロロジスに売却、アセッ トを社外に切り離したうえで、従来の全国八拠点 体制を東西二拠点に集約した。
 現在は取引制度改革に取り組んでいる。
大手卸 との間では、インセンティブ制度を設けて五営業 日前に車両単位で一括発注してもらい、工場から 卸の拠点に直接納品する大ロット化を進めている。
メーカーの在庫拠点を経由する場合と比較して物 流コストを三四%削減できる。
 物量のかさむ詰め替え用のシャンプーやリンス などがその対象で、取り組みに参加している卸で 33  JULY 2011 藤原寛治食品事業本部営 業企画部ECRグループ長 若林則夫ロジスティクス 部参事 平田眞司国内化粧品事 業部流通開発部課長

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