2011年7月号
ケース

NTTロジスコ 情報システム

JULY 2011  44 一〇年で外販比率を三割強に拡大  NTTロジスコは二〇〇八年に策定した中 期経営ビジョンで、自らの将来像を?ICT を活用した次世代3PLのパイオニア企業? と描いた。
3PL事業を柱としてNTTグル ープ外の一般荷主向け事業を開拓し、連結売 上高を現状の倍以上の一〇〇〇億円に拡大す るという長期目標を掲げている。
 同社は一九九四年にNTT物流部の人員お よび資産を物流子会社に継承するかたちで事 業を開始した。
九九年にNTTが現在の持株 会社と事業会社三社(NTT東日本、NTT 西日本、NTTコミュニケーションズ)に再 編された後も、グループ各社のメーンパートナ ーとして業務を請け負っている。
 グループ外の一般顧客を対象とする3PL 事業に本格的に乗り出したのは、今から一〇 年ほど前のこと。
固定電話から携帯電話への 移行が進み、それまでベースカーゴとしてき た通信資材や通信機器、電話帳などの物量が 長期的に減少していくことを見越して、外販 拡大による自律成長に舵を切った。
 3PL事業の展開では、?プラットフォーム 化戦略?を基本方針に据えている。
その意味 を同社の前田治緒取締役企画総務部長は「あ れもこれもではなく、通信機器の物流業務で 培った技術やノウハウを活かせる分野にターゲ ットを絞り、必要なハードとソフトを備えたプ ラットフォームを構築してその分野の荷主を 呼び込んでいくやり方だ」と説明する。
 ターゲットに選んだのは、一つはIT機器 や精密機器などの分野だ。
グループ向けの通 信機器の物流業務と親和性があり、シナジー を期待できる。
空調や防塵・静電気防止対策 を施し、セキュリティを強化した施設を先行 投資で整備した。
 それと並ぶ、もう一つのターゲットが医療 機器や住宅建材、通販など、今後も物流需要 の拡大が見込める分野だ。
このうち医療機器 向けは、有望市場ではあるものの、商品の取 り扱いや情報管理に細心の注意が必要で、各 種の許可を取得する必要もあり、参入のハー ドルは高かった。
 医療機器は医薬品・医薬部外品・化粧品 とともに、薬事法によって製造や取り扱いが 規制されている。
〇五年四月に施行された改 正薬事法では、医療機器などの輸入品を倉庫 に保管し法定の表示ラベルを貼付して梱包・ 出荷する業務を行うにあたって「包装・保 管・表示製造業」の許可が必要になった。
 この許可を得るには一定の構造設備基準に  3PL事業の対象業種を明確にして、必要なハー ド・ソフトを先行投資で整備する“プラットフォーム 化戦略”で外販を伸ばしている。
足下ではクラウド 型SaaSを基盤とする新しいタイプの物流情報サービ スを次々にリリースし、システム開発費やメンテナン スコストの抑制を求める声に応えている。
情報システム NTTロジスコ クラウド型SaaSで相次ぎ新サービス ICT駆使した独自スキームで3PL拡大 前田治緒取締役 企画総務部長 45  JULY 2011 適った施設を備えていることに加え、規定の 手順書に従って製造管理や品質管理業務を行 うための管理者(医療機器の場合は「責任技 術者」)を配置しなければならない。
また同 改正法では医療機器の販売にも機器の種類に 応じて「営業管理者」の配置が義務づけられ た。
 NTTロジスコは医療機器関連の業務を受 託するにあたり、これまでに千葉・小牧・八 尾・福岡・札幌の各物流センターで、医療機 器、医薬部外品、化粧品の三品目についての 「包装・保管・表示製造業」の許可を取得し ている。
これらの拠点のなかには顧客に代わ り、責任技術者の資格を持つNTTロジスコ の社員が製品の出荷判定を行っているところ もある。
有資格者を増やすために継続的に社 員教育を行っている。
 一連のプラットフォーム化戦略は着実に成 果を挙げている。
外販比率(発足時から物流 管理業務を継承しているNTT東日本など事 業会社三社とNTTドコモ他のグループ企業 を除いた一般市場の売上比率)は既に三割を 超えている。
一〇年三月期の連結売上高三八 〇億円のうち一〇三億円が一般市場向けの3 PLとして区分する事業の売り上げだ。
“ハイブリッドクラウド”を利用  外販比率は五割を当面の目標に置いてい る。
NTTグループの一員である強みを発揮 し、ICTを活用して新しい付加価値を提供 することで独自のアプローチで3PL市場を 開拓する方針だ。
その具体策の一つとして現 在、?クラウド型SaaS?の拡充に取り組ん でいる。
 SaaS(Software as a Service)とは、必 要なソフトウェアを必要な分だけ従量制で利 用できるサービスを意味し、一方のクラウド (雲)はインターネットを利用したコンピュー タ処理の手法を指している。
同じシステムを 複数のユーザーが必要に応じて利用できるた め、コストメリットが大きい。
 NTTロジスコでは社内のシステム部が、 顧客の業務設計に必要な情報システムを構築 し、3PL事業の営業活動をサポートする役 割を担っている。
そのやり方としては従来、 既存のパッケージソフトを顧客ごとにカスタマ イズして導入することがほとんどだった。
シ ステムの構築には多大なコストと手間がかか っていた。
 そこでシステム部は、カスタマイズを最小 限に抑えることのできる汎用型パッケージソ フトの開発に乗り出した。
折良くNTTコミ ュニケーションズを始めとするNTTグループ がクラウド型SaaSの開発に取り組んでいた ことから、その基盤を利用してサービスを提 供することにした。
NTTロジスコ自身でも 以前からデータセンターの運営などICT活 用では実績を持っていたが、グループのリソ ースを活用した方が効果的と判断した。
 ただし、NTTコミュニケーションズが開 発・運用するSaaS基盤は当初、企業内で 構築する「プライベートクラウド」と不特定 多数の利用者を対象とする「パブリッククラ ウド」のいずれかの環境を選択する仕組みに なっていた。
 3PL事業者の物流システムを特定荷主の 基幹業務システムと連携させるだけなら、プ ライベートクラウドのほうが望ましい。
しかし、 インターネット経由でどこからでもアクセスで きる利便性を確保し、コスト効率を高めるに はパブリッククラウドを採用する必要があった。
 そこでNTTロジスコはNTTコミュニケ ーションズに対して、二つの環境を必要に応 じて使い分けできることを要件として提案し 3PL 事業者が提供するクラウド型SaaS の形態 倉庫自社運営 荷主 基幹系システム 物流情報システム ‥‥ 3PL事業者へアウトソース 荷主 ‥‥ 自社倉庫 基幹系システム 物流情報システム物流情報システム 3PL事業者3PL事業者 クラウド型SaaS 利用 荷主 ‥‥ 基幹系システム クラウド JULY 2011  46 た。
これを受けてNTTコミュニケーション ズはパブリックとプライベートの双方の長所を 併せ持つ基盤を開発した。
いわゆる?ハイブ リッドクラウド?のはしりだった。
 それまで3PLと荷主間の情報連携は、3 PL側の物流情報システムと荷主の基幹系シ ステムを専用線でつないで運用するのが一般 的だった。
システム間のデータのやり取りは バッチ処理で、作業実績を毎日の作業終了後 に基幹系システムに送ってデータを更新する といったやり方だった。
 これに対してハイブリッドクラウド型Saa Sでは、3PLが物流情報システムで管理し ている情報に、荷主がインターネット経由で 自由にアクセスできる。
セキュリティの確保 された環境で、作業の進捗や在庫の状況をい つでも見ることができる。
進捗状況を見て指示の変更も  一〇年三月、NTTロジスコはクラウド型 SaaSの第一弾として医療機器・化粧品向 け物流情報システムの「Lomio(ロミオ)」 の運用を開始した。
化粧品の輸入販売を手が ける会社から一括受託した3PL案件がその 対象だった。
 ロミオは物流センターでの医療機器や化粧 品の受け入れ検査、薬事ラベル貼付、梱包、 出荷などの作業や在庫の管理を、薬事法に則 って行うためのシステムで、顧客側はパソコ ンやプリンターなどの端末を用意するだけで サービスを利用できる。
 さらにロミオには、これまで同社が?プラ ットフォーム化戦略?によって実績を積んで きた医療機器・化粧品業界向け業務のさまざ まなノウハウが組み込まれている。
製造ロッ ト・シリアル管理や有効期限管理はもちろん、 検査で不合格になった場合にその理由を備考 欄に記入するなど細かな履歴管理もシステム 上で行う。
 荷主が物流センター作業のリアルタイムの 進捗状況を見ながら出荷指示の内容を柔軟に 修正することも可能だ。
 通常であれば、急なオーダーの変更やキャ ンセルには、電話のやり取りや手作業による アナログな対応が必要になる。
だがロミオは、 荷主がシステムにアクセスして進捗状況を確 認し、?ピッキングの完了前まで?など、事前 に設けたルールの範囲で出荷指示を修正する ことができる。
 荷主の修正指示は自動的に倉庫へ送られる。
キャンセル扱いとなった商品をピッキングライ ンから外して再び棚へ戻すまでのフローをシ ステムで管理している。
これによってオーダ ー変更に伴う双方の作業負荷とストレスが軽 減された。
 このロミオに続き、同年八月には「Web LMS」の提供も開始した。
基幹系システム に販売管理などの最小限の機能しか持たない 荷主に対して、受発注や商品管理などの機能 を補完的に提供する。
入荷 医療・化粧品業界向けSaaS 型物流情報システム 概要 システム構成 ●薬事法対応が必要な医療機器・医療用品業界や化粧品業界向けSaaS 型物流システム ●独自開発のLomio システムをプラットフォームとし、効率的な物流サービスとタイムリーな情報を提供 ●輸入代行から受入検査、薬事ラベル貼付等の倉庫内作業、在庫管理、輸配送作業等をトータルに実施 ●国内工場 ●国内サプライヤー ●海外工場 ●海外サプライヤー 通関 検査保管 入荷入荷出荷 在庫管理 Lomio(医療機器物流システム) 入荷仕入品・返品、アイテム管理 保管在庫検索・移動・調整、在庫区分管理 出荷欠品処理、ロット引当、トレーサビリティ 配送運送会社別対応 流通加工キッティング、リパック ON LINE お客様基幹システム NTTロジスコ コンタクトセンター (問い合わせ対応・ 注文受付等) 配送 配送 返戻 配送 返戻 注文 メーカー (支店) 注文 注文 ディーラー 注文 病院等 医療機器物流 化粧品物流 百貨店 販社 サロン(各エリア) 個人宅 注文 NTTロジスコ  物流センター 配送 47  JULY 2011 を一括委託した。
これに合わせてWebLM Sを利用することで、サーバーやネットワーク 構築のための初期投資やメンテナンス費用を 負担することなく、北海道にいながら関東拠 点の在庫や作業の進捗状況をいつでも見られ るようにした。
新たにシステムを構築した場 合と比べた時のコスト面でのメリットを荷主は 高く評価しているという。
需要予測にまで事業領域を拡大  さらに今秋には「在庫管理ソリューション システム」をSaaSで提供する予定だ。
W MSで管理する最新の在庫情報をもとに、需 要を予測し、補充数量を算出して、在庫の最 適化を支援する。
 従来から同社ではグループ内の荷主向け業 務の一環として、専任の部署を設け手作業で 将来の出荷数量シミュレーションを行ってい た。
そのノウハウをベースに、日本ユニシス の予測エンジンを使い、新システムを開発し た。
このサービスを通じて、従来はグループ 向けに限られていたハイレベルな物流管理業 務を、一般荷主向けにも適用することで、3 PL事業の領域拡大を狙っている。
 このほかLAN設備のない施設や屋外でも リアルタイムの在庫管理ができる「見える化 ソリューション」も既に開発済みだ。
バーコー ドスキャナー付き携帯電話などの多機能型携 帯電話とNTTドコモのFOMA網を利用し、 屋外に仮置きした貨物を屋内の貨物と一体で 管理する。
 住宅施工現場での部材管理や路面店・大 型商業施設内店舗での入荷検品や在庫・棚 卸管理などに適用できると同社では見ている。
従来、これらの管理はIT化が困難であるた め、ほとんどが紙ベースで行われ、電話やフ ァクスで情報をやり取りするしかなかった。
 一連の情報サービスは当然ながら有料で提 供されている。
3PL業務の委託を受けてい る荷主に対し、物流費とシステム使用料を別 立てにして請求している。
 ただし、同社はSaaS事業で儲けるつも りはないという。
費用項目を分けているのは 物流センターの採算管理を厳密にするために 過ぎない。
今後も「あくまで3PL事業の付 加価値の一つとしてSaaSをアピールしてい く」と速水澄男システム部長は強調する。
 昨年十二月、同社はシステム部の組織を見 直した。
従来は営業の組織別に担当を設けて いたが、新体制では大型ソリューションの開 発担当とプラットフォーム開発担当に再編し た。
大型案件についてはカスタマイズのウエ ートが高い個別システムで対応。
一方、シス テム構築にコストをかけたくないという中堅・ 中小の顧客にはSaaS型システムやパッケー ジソフトで対応する方針だ。
 今後も同社はNTTグループのICTを活 かしたソリューション開発に力を入れ、新規 分野における提案力を強化していく考えだ。
(フリージャーナリスト・内田三知代)  本来なら荷主が基幹系システムのなかに持 っているはずの機能を取り込み、WMSと連 動して運用する。
このコンセプトをアピールす るため、あえてWMSではなくLMS(物流 管理システム)と名付けた。
 倉庫内の実在庫だけでなく、荷主の独自の 管理区分による論理在庫を管理する機能があ るのも目玉の一つ。
本社在庫と支店在庫、特 定の販売先向け在庫などを分けて管理したり、 権限に応じて在庫照会を制限することなどが できる。
ロミオと同様、インターネット経由 で自由にアクセスして、最新の在庫状況を見 たり、出荷指示を出したりできるだけでなく、 作業工程ごとに顧客の求めるタイミングで作 業完了をメールで知らせる機能も装備し、利 便性を高めた。
いちいちシステムで進捗を確 認する手間を省いた。
 WebLMSは既に荷主二社が利用を開始 しており、さらに数社が導入を予定している。
 そのうちの一社、ある卸売業者は本拠地の 北海道から関東地区へ商圏を拡大するにあた り、ロジスコに関東地区の物流センター業務 速水澄男システム部長

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