2011年10月号
特集
特集
第2部 中国の覇者がアジア市場を握る
中国DHL宅配便撤退の背景
DHLが中国の国内宅配便事業から撤退した。
同 社は、二〇〇四年五月に国際インテグレーターとして 初めて同事業に参入。
〇九年には現地の民間宅配会 社「上海全宜快逓」、「北京中外運速逓」、「香港金果 快逓」の三社を完全子会社化してネットワークの強化 を図った。
ところが今年六月末、同社の合弁パート ナーのシノトランスは、中国DHL(中外運敦豪)の 保有する宅配三社の全株式を深圳市友和道通実業に 売却すると発表。
事実上の事業撤退を表明した。
株 式の譲渡時期は明らかにされていないが、翌七月には 業務を停止した模様だ。
中国DHLが買収した三社の累積赤字額は一〇年 末時点で約一億元に上っていた。
しかも国内宅配市 場の先行きは不透明で、黒字化の見通しも立たなかっ たことが撤退の理由とされる。
企業買収による事業強 化から、わずか二年足らずで方針を一八〇度転換した ことになる。
しかし、現地の物流業界の受け止め方は冷静だ。
「国 内宅配事業に関してはDHLと中外運で必ずしも意 見が一致していなかったと聞いている。
撤退にも驚き はない。
他のインテグレーターにしても国内運送は赤 字のはず。
コンプライアンスを守っていれば、そうな らざるを得ない。
むしろ事業化で先行したDHLが、 損切りにも最も早く動いたという理解だ」と物流業界 関係者はいう。
現在、中国ではインフレが深刻化している。
足下の インフレ率は政府の公式発表では前年比六%前後だ が、「運行三費」や諸経費は、それ以上に値上がりし ている。
ドライバーや庫内作業員など物流作業員の人 件費は昨年から今年にかけて一五%近く上がった。
しかし、トラックの実勢運賃だけは上がっていな い。
今年春先には一部の大手が物価上昇を理由に運 賃の値上げを打ち出したが浸透はしていない。
遠距離 トラックの運賃ともなると、一〇年前の半額近くに下 がったまま、安値に張り付いているのが現状だ。
当時と比較して輸送効率が大幅に改善されたのは 確かだ。
高規格道路が整備されて車両の大型化が進 み、各地に貨運市場が発達したことで帰り荷の確保も 容易になった。
しかし、それ以上に大きな運賃の下落 要因が、過当競争によるダンピングだ。
日系物流会社の駐在員は次のように説明する。
「日 系物流会社の運賃が高いのは我々のような駐在員の人 件費が管理コストに乗ってくるからだと、荷主は考え ている。
しかし、それだけでは説明はつかない。
ドラ イバーの人件費や燃料費、車両費などは、我々も現地 系も変わらない。
それなのに現地系の運賃が安いのは 過積載の影響が決定的に大きい」 実際、中国では一〇トン車に三〇トン、四〇トン 乗せる極端な過積載が横行している。
しかも、その一 〇トン車自体が違法改造車だ。
規制に目を瞑ってしま えば重量当たりのコストはいくらでも下げられる。
日 系の物流会社にはとても真似できない。
荷主が物流管 理責任者に日本人駐在員を置いているうちは、そうし た事情も多少は理解してもらえた。
しかし、現地化が 進み、責任者に現地スタッフを起用するようになると、 割高な運賃が通らなくなってくる。
同時に運送取引も“現地化”する。
荷主担当者か ら当たり前のようにキックバックを求められる。
「接待 交際費で落とせる範囲なら何とかするが、露骨に現金 を要求されても、さすがに対応できない」と先の駐在 員。
コンプライアンスを無視できない外資系物流会社 には手に負えない市場となりつつある。
OCTOBER 2011 18 中国の覇者がアジア市場を握る DHLが中国の国内宅配便から撤退した。
しかし、業界内 に驚きの声はない。
外資系物流企業はどこも中国の国内市 場で苦戦を強いられている。
早めの損切りも想定内との評 価だ。
その一方で、中国EMSは株式公開を準備、現地の 民間宅配便で最強とされる順豊エクスプレスは日本市場へ の本格上陸に打って出た。
(大矢昌浩) 第2部 特 集リアル 中国物流 外資系物流会社に対する中国政府のスタンスも以 前とは変わってきている。
中国政府は〇九年一〇月に 郵便法を改正。
外資による手紙類の国内配送の規制 に動いた。
これによって中国DHLは、物量の約三分 の一を占めていたビジネス書類の取り扱いが事実上で きなくなった。
同社が宅配事業から撤退した理由の一 つとされる。
中国政府はこれまで物流業に関しては外資を歓迎 してきた。
有力な外資系物流会社を誘致し、資金と ノウハウを積極的に国内に呼び込んだ。
今も表向きに は大きく姿勢は変えていない。
しかし、地方行政レベ ルでは外資より現地系を優先する傾向が顕著になって きたという。
中国事業戦略の見直しを迫られているの はDHLだけではない。
上海で宅配便事業を行っている上海大衆佐川急便 物流の伊藤耕一総経理は「当社の場合は黒字経営が 前提。
収益のバランスを見ながら段階的に成長してい くやり方だ。
外資に対する風当たりが強くなっている といっても、中国から追い出されることはない。
まだ まだ中国は我々のノウハウを必要としている。
そのこ とは政府もよく分かっている」という。
現地系との無理な競争は避け、対象を絞って付加 価値の高いサービスを提供する方針を貫いている。
当 面は中国で新たにネット通販事業に進出する日系企 業を新規荷主として有望視している。
今年三月には「銀聯カード」による代引きサービス を開始した。
上海で化粧品の通販事業に乗り出す新 日本製薬の要望に応えたものだ。
日本で同社から商 品を預かり、中国への輸出から現金回収までを、S Gグループホールディングスグループ各社が機能分担 するかたちで、一括して請け負っている。
七月にはグ ループのSGシステムが現地のソフト開発会社と合弁 19 OCTOBER 2011 中国250 都市、2000 店舗のネットワークを誇る民間最大手。
海外進出にも意欲的。
グループ会 社の「順豊航空」を中心に、国際ネットワークの構築を進めている。
香港に海外本部を置き、台湾、 韓国、シンガポールに進出済み。
今年10月からは日本でも事業をスタートする ヤマト運輸の宅急便にヒントを得てサービス名を「宅急送」とした。
07 年から小口配送のネットワーク整 備を急速に押し進め、中国全土に3000 以上の拠点、7つの基幹倉庫を整備。
620の鉄道貨物 輸送枠、360の航空貨物輸送枠を確保するなど、中国有数の民間宅配会社に上り詰めた 上海・杭州間の通関申告に関する緊急文書輸送からスタートし、宅配事業に業態を広げていった。
90年代半ばから末にかけて寧波、金華、南京、蘇州、北京、広州などの大都市に事務所を構え、ネッ トワークを拡大。
国際物流にも乗りだし、大手宅配企業としてのブランドを確立している。
36の集配センター、2100の配送拠点、従業員5万人以上のネットワークで、中国全土をカバー している。
翌日配送、即日配送、代引き、国際間輸送にも対応。
宅配会社でありながら、ECモー ルを今秋中に立ち上げる方針を打ち出し、注目を集めている。
仕分け拠点は43 拠点、末端のサービス拠点は3000 に上る。
従業員数は3 万5000人。
ほぼ 中国全土を対象にサービスを提供し、8000 台以上の車両を運行している。
国内宅配では当日 配送や時間指定、代引きにも対応。
そのほか国際宅配や倉庫・配送業務も行っている 仕分け拠点は51拠点。
サービスの対象エリアは中国の32 行政区分のうち、31の省・直轄市・ 自治区。
上海市内では当日配送を実施している。
01年にバーコードを導入した 中国大手物流会社シノトランスとの合弁によって「中外運敦豪」を86 年に設立。
04 年に国内宅 配事業参入。
09年に全宜快遞、中外運速遞、金果快逓の3社を買収し、宅配事業を強化。
しかし、 今年6月、中外運敦豪の親会社である中外運空運発展が3 社の株式の売却を発表 84 年に欧州とアジアに拠点展開するジェルコを買収。
99 年に大田集団(DTW)と折半出資で 「フェデックスDTW」を設立。
06 年に約4億米ドルを投じて残りの株式を取得し、完全子会社化 した。
DTWの国内89 拠点及び国内ネットワークを譲り受け、宅配事業に本格参入を果たした 88 年にシノトランス・グループを代理店として事業を開始。
96 年、同グループと最初の合弁会 社を北京に設立したが、05 年に中国国内のオペレーションをすべて自営化した。
国際エクスプレ スをメーンにフォワーディングやロジスティクス業務を行っている 88 年、シノトランス・グループと国際エクスプレス業務を行う合弁会社を設立。
03 年、同グルー プとの合弁契約を解消し、中国事業を自営化した。
07年、中国の国内陸送・小包配送大手の 華宇物流集団を買収して「天地華宇集団(TNT 華宇)」とし、国内ネットワークを一挙に拡大 路線輸送を中心に宅配、航空輸送を行っている。
従業員数は1万人以上。
全国に1100 拠点を置 き、主要10 都市の物流拠点の総面積は10万1500 ?。
車両台数は3000 台。
そのうち1200 台で幹線輸送、1800 台で市内配送を行っている。
時間指定の緊急輸送なども行う 路線輸送をメーンに航空輸送も行う。
24 都市の大型ターミナルなど31省に1500 拠点を置き、 サービスの対象エリアは550 都市・地区に上る。
自社車両数は4600 台。
1日当たり3 万トン の貨物を取り扱う。
航空輸送では24 時間以内の配送を行っている 企業名 中国物流市場の主要プレーヤー 各社ホームページ・発表資料、各種報道等をもとに作成 設立本拠概 要 1993 年 1994 年 1993 年 2000 年 2002 年 1999 年 深圳 北京 上海 上海 上海 上海 1993 年 1996 年 上海 上海 (09 年〜) 1986 年 1984 年 1996 年 1988 年 北京 上海 上海 上海 上海佳吉快運 徳邦物流股份 DHL フェデックス UPS TNT 中国政府系の上海巴士物流に35億円を出資して子会社化し「雅瑪多(中国)運輸」に社名を変更。
ヤマトの出資比率は65%。
サービスドライバー200人、トラック100台、11拠点からスタートし、 順次陣容を拡大している。
今後10 年で100 億円を投資する方針 住友商事と中国企業・大衆交通との3 社で「上海大衆佐川急便物流」を設立し、上海で宅配便 事業を開始。
さらに住商と合弁で「北京住商佐川急便物流」を設立し北京進出を果たすものの、 07年に撤退。
上海大衆佐川は06年に黒字化を達成し、08年には累損を解消している 2010 年 2002 年上海 上海大衆佐川急便物流 (佐川急便) 現地民間運送 順豊速運(S.F.Express) 北京宅急送快運(ZJS EXPRESS) 申通快逓(SENTONG EXPRESS) 上海圓通速逓(YTO EXPRESS) 中通速逓服務(ZTO EXPESS) 上海韻達貨運(韻達快運、YUNDA) 雅瑪多(中国)運輸 (ヤマト運輸) 国際インテグレーター日系宅配 上海 現地民間宅配 で「無錫飛達物流軟件」を設立。
これによって日系 企業が中国でネット通販事業を行うために必要な全て のリソースを現地で提供できる体制が整った。
中国のネット通販市場の急拡大は、日本企業にも 大きな注目を集めている。
現地に進出する企業の顔触 れも大手から中堅中小にまで広がってきた。
これに対 応して通販モール最大手の楽天は中国の検索エンジン 最大手の「百度(バイドゥ)」、ヤフージャパンはタオ バオと手を組み、日系企業の中国進出支援ビジネスに 乗り出している。
ただし、物流面での支援体制はまだ 脆弱だ。
リソースに制約のある中堅以下の日系荷主に とって、フルフィルメントを安心して託すことのでき る日系物流企業は頼れるパートナーとなっている。
東京・江東区のウィルフロントロジスティクス(W FL)は、そうした日系荷主約三〇社と現在契約を結 んでいる。
昨年一〇月、同社は上海市宝山区に倉庫 面積六〇〇〇?の「上海フルフィルメントセンター」 を稼働させた。
荷主に代わって、中国のOEM先や 日本から調達した商品をここに集め、受注から出荷ま でを処理している。
配送は買い物客がタオバオのサイ トで指定した宅配会社を使う。
現地工場の生産工程まで遡ってWFLが在庫ス テータスを管理し、庫内情報はウェブで荷主に提供し ている。
会社を設立した当初は中国で生産し、日本 に出荷するアパレル品の検品と出荷・輸出業務をメー ンに据えていた。
ところが蓋を開けて見たところ、現 地のネット通販物流とOEM工場の管理がそれぞれ 三分の一ずつという構成になった。
同社の富永忠之代表は「通販物流のニーズが予想 以上に強い。
中国に日系物流会社の倉庫はたくさん あるが、通販に対応できる拠点は限られている。
コス トも高い。
当社のように中小荷主相手の通販物流を 扱っている会社は少ない。
今後も総合商社や大手物 流会社では難しいフレキシブルなサービスを提供して いく」という。
中国宅配便最強「順豊」が日本上陸 今のところ日本から中国の消費者に直接、商品を 販売することは法律上、許されていない。
そのため日 系企業の中国通販事業は現地企業を介在させるB to B to Cのフローをとる。
しかし、いずれ市場は開放さ れる。
国をまたいだB to Cへと移行する。
日中間物流を手掛けるスコアジャパンの大沢理社 長は「ネット通販は商品サイクルが極端に短い。
中国 で生産している製品を中国で販売するのならまだしも、 日本で生産した商品を現地に在庫しても、すぐに陳腐 化してしまう。
日本製品の中国通販には国際宅配便 が使われるようになる」と予測する。
市場調査をしたところ、中国の消費者は商品重量 一?当たり四〇〇元(四八〇円)までの運賃なら受 け入れることが分かった。
この値段を切る日中間の宅 配便があれば、日本発中国向けのネット通販が成り立 つ。
その用意が同社にはあるという。
もともと同社は国際インテグレーターの日中間の宅 配便に価格競争をしかけることで成長してきた。
会社 を設立した九八年当初、日中間の国際宅配便の運賃 はどこも一八〇〇円で横並びだった。
それに対してス コアジャパンは半額以下の料金を打ち出すことで、荷 主をつかんだ。
それでも十分、利益は残った。
しかし、〇七年〜〇八年頃から環境が変わってきた。
国際インテグレーターが実勢運賃を下げてきた。
大沢 社長は「これまで当社は年率四〇%増のペースで売り 上げを伸ばしてきた。
今期は五〇億円弱を見込んでい る。
一五年には一〇〇億円を超えるだろう。
しかし、 OCTOBER 2011 20 スコアジャパンの 大沢理社長 ウィルフロント ロジスティクスの 富永忠之代表取締役 10 年6月に「淘宝(タオバオ)」と提携。
タオバオ内に 「Yahoo!ショッピング」の商品を販売する「淘日本(タオジャ パン)」を開設した 10 年10月、中国のネット検索サービス最大手「百度」と の合弁事業によりネットショッピングモール「楽酷天」をオー プン 09 年4月にタオバオとパートナーシップを締結し、タオバオ 内に出店。
同時に、独自サイトもオープンした。
10年8月 には上海に大型物流センターを稼働。
店舗販売、ネット 通販ともに伊藤忠グループの物流会社をパートナーに起用 11年6月にソフトバンクと合弁で「ZOZOTOWN香港」を、 8月には「ZOZOTOWN 上海」を設立した。
9月末から中 国でサービスを開始する予定。
タオバオへの出店のほか、 中国版「ZOZOTOWN]を開設する方針 11 年9月に専用サイトを開設し、ネット通販を開始。
物 流は丸紅子会社の北京外紅国際物流に委託。
同社は 05 年から華北・東北・西北地区を中心とした約1600 店舗に対し資生堂グループの商品配送を手がけてきた 会社/サイト中国でのネット通販に関する動き アパレル専門 アパレルモール 化粧品専門 淘日本 楽酷天 UNIQLO ZOZOTOWN SHISEIDO ヤフー!ジャパン 楽天 ファーストリテイリング スタートトゥデイ 資生堂 日系企業の中国ネット通販事業展開 業態 総合モール 総合モール 各社発表資料、報道等をもとに作成 特 集リアル 中国物流 その後も成長を続けていくには価格以外の強みが必要 だ。
事業が新しい局面を迎えている」という。
日中間のB to C物流が今後のカギを握ると見てい る。
幸い、国際インテグレーターはB to Cはカバーし ていない。
しかし、「中国の民間物流会社が怖い。
と りわけ『順豊』は、これまで当社が対峙してきた誰よ りも手強いと感じている」と大沢社長はいう。
「順豊速運(S.F.Express)」は香港に本社を置く民 間企業で、中国の宅配業界では最強との呼び声が高 い。
サービス品質を重視して、代理店に頼らない配送 のネットワークの整備を進めている。
台湾、韓国、シ ンガポールにも拠点を構え、アジア圏の国際宅配便事 業にも乗り出している。
その順豊が、いよいよ日本に上陸する。
今年二月、 日本に現地法人の順豊エクスプレスを設立した。
東京 都江東区に拠点を確保し、一〇月から国際宅配便業 務を開始する。
本誌の取材に対して同社は、日本に おける事業計画の詳細については今のところノーコメ ントと応えている。
大沢社長は「順豊がエクスプレス だけでなく、日本の国内物流にまで本気で乗り出すの であれば、大げさでなくヤマト・佐川の地位さえ危う い。
事業規模はまだ小さい。
しかし彼等は中国市場 というバックグランドを持っている。
現状の規模違い など、あっという間に消し飛んでしまう」と懸念する。
一方、今年七月、中国EMSが株式の公開準備に 入ったというニュースが現地で流れた。
その真偽のほ どは明らかではないが、株式公開は時間の問題と見ら れている。
巨額の資産を手にした中国EMSが事業領 域をアジアに拡大するのは必至だ。
国際インテグレー ターが収益の悪化に苦しみ、日系物流会社がニッチの 域を脱し切れずにいる間に、中国系の台頭が着々と進 んでいる。
21 OCTOBER 2011 昨年11月22日、日本郵便は中国の郵政当局である中国郵政 集団とネット通販の物流事業で提携した。
中国のネット通販市 場に商品を売り込みたい日本企業を支援し、その物流ニーズを 取り込むのが狙いだ。
その一環として今年4月、日本発のEM S(国際スピード郵便)に新たな割引サービスを導入した。
1 年間に利用したEMSの個数に応じて翌年の年間割引率を決定 する「年間実績割引」だ。
例えば、1年間に1万個のEMSを利用した荷主の場合、翌年 は年間を通じて22%の割引率が適用される。
これまでも1カ月 間のEMS利用個数に応じて割引を適用する「月間割引」や、1 度に出すEMSの個数に応じて割引く「都度割引」はあったが、 年間を通じて割引を適用する制度は無かった。
年間実績割引の割引率は、従来の割引制度よりも大きく設 定されている。
EMSは配達スピードに優れ、貨物追跡機能も整 備されているという利便性がある反面、送料が高いというネッ クもあった。
日本から上海に2キロの荷物を送る場合の送料は 3000円で、中国の消費者にとっては高額。
新たな割引制度に よって送料を引き下げることにより、中国消費者の購買意欲を 喚起し、EMSの個数拡大に繋げたい考えだ。
中国郵政には現地での配達品質の向上のほか、通関や配達 状況に関する情報提供といった面で協力を求めている。
白土恵 一営業本部法人営業部部長は「広大な中国でラストワンマイル までの配達を行えるのは実質的に中国郵政しかいない。
情報力 も図抜けている。
彼らとの協力関係は我々の強みの一つだ」と パートナーを評価する。
中国郵 政にとっても、日本発のEMS が増えればそれだけメリットが 大きくなるため、新たな取り組 みには積極的だ。
効果は既に出ている。
割引 制度を利用している荷主からの 発送数が以前に比べて約10 % 増えている。
割引によって単価 は低くなるものの、EMSの取 扱個数が増加しているため収益性は高 まっているという。
同じく今年4月に、国際書留郵便の サービス内容も刷新した。
国際書留は EMSに比べて料金が安いが、貨物追跡 機能が整備されていなかった。
そのた め、これまでネット通販で利用する荷 主は少なかった。
そこで、中国郵政の 協力を得て貨物追跡機能を追加。
基本 料金は据え置き、さらに今までは無かった「月間割引」と「都 度割引」を導入して利用者の拡大を図った。
結果、アカウント 払いで国際書留郵便を利用している荷主からの発送数が50 % 以上増加。
その多くが、中国向けの通販関連の荷物だ。
久田雅嗣国際事業本部国際事業部課長は「正直ここまでの 反響があるとは思わなかった。
それだけニーズに合致したサー ビスだと確認できた。
EMS以外の選択肢をネット通販の荷主企 業に提供できたことには大きな意味がある」と胸を張る。
中国郵政の要請から始まった事業もある。
中国郵政が出資し て設立したネットショッピングモール「郵楽」への日本企業の 招致だ。
郵楽は今年1月から本格稼働し、6月までの上半期だ けで6000万元の売り上げを記録。
今後の成長余力に大きな注 目が集まっている。
その郵楽にジャパン・ブロックを設け、日 本の高品質かつブランド力の高い商品を紹介し、サイトの集客 増加に繋げたいというのが中国郵政の意向だ。
この要請を受け、日本郵便は複数の大手企業に郵楽への出店 を打診。
手応えを得ているという。
田畑浩国際事業本部国際 事業部課長は「中国の有望なモールに出店すれば、その企業に とって大きなビジネスチャンスになる。
配達にはEMSを利用し てもらえるため、我々にとっても収益の拡大に繋がる。
今後も 積極的に出店を支援していきたい」と説明する。
これらの事業の他にも、水面下では様々なアイディアがお互 いから持ち寄られ、協議が重ねられている。
白土部長は「中国 は今後の最重要マーケットの一つ。
中国郵政と歩調を合わせな がら、様々な形で荷主の物流をサポートしていく」と語る。
日本郵便──中国郵政との提携でEMS強化 15,000 個〜 6,000 個〜 20% 8,000 個〜 21% 10,000 個〜 22% 15,000 個〜 23% 30,000 個〜 24% 60,000 個〜 25% 120,000 個〜 26% 23% 120,000 個〜 26% EMSの年間実績割引 過去1 年間の差出個数と割引率 白土恵一部長
同 社は、二〇〇四年五月に国際インテグレーターとして 初めて同事業に参入。
〇九年には現地の民間宅配会 社「上海全宜快逓」、「北京中外運速逓」、「香港金果 快逓」の三社を完全子会社化してネットワークの強化 を図った。
ところが今年六月末、同社の合弁パート ナーのシノトランスは、中国DHL(中外運敦豪)の 保有する宅配三社の全株式を深圳市友和道通実業に 売却すると発表。
事実上の事業撤退を表明した。
株 式の譲渡時期は明らかにされていないが、翌七月には 業務を停止した模様だ。
中国DHLが買収した三社の累積赤字額は一〇年 末時点で約一億元に上っていた。
しかも国内宅配市 場の先行きは不透明で、黒字化の見通しも立たなかっ たことが撤退の理由とされる。
企業買収による事業強 化から、わずか二年足らずで方針を一八〇度転換した ことになる。
しかし、現地の物流業界の受け止め方は冷静だ。
「国 内宅配事業に関してはDHLと中外運で必ずしも意 見が一致していなかったと聞いている。
撤退にも驚き はない。
他のインテグレーターにしても国内運送は赤 字のはず。
コンプライアンスを守っていれば、そうな らざるを得ない。
むしろ事業化で先行したDHLが、 損切りにも最も早く動いたという理解だ」と物流業界 関係者はいう。
現在、中国ではインフレが深刻化している。
足下の インフレ率は政府の公式発表では前年比六%前後だ が、「運行三費」や諸経費は、それ以上に値上がりし ている。
ドライバーや庫内作業員など物流作業員の人 件費は昨年から今年にかけて一五%近く上がった。
しかし、トラックの実勢運賃だけは上がっていな い。
今年春先には一部の大手が物価上昇を理由に運 賃の値上げを打ち出したが浸透はしていない。
遠距離 トラックの運賃ともなると、一〇年前の半額近くに下 がったまま、安値に張り付いているのが現状だ。
当時と比較して輸送効率が大幅に改善されたのは 確かだ。
高規格道路が整備されて車両の大型化が進 み、各地に貨運市場が発達したことで帰り荷の確保も 容易になった。
しかし、それ以上に大きな運賃の下落 要因が、過当競争によるダンピングだ。
日系物流会社の駐在員は次のように説明する。
「日 系物流会社の運賃が高いのは我々のような駐在員の人 件費が管理コストに乗ってくるからだと、荷主は考え ている。
しかし、それだけでは説明はつかない。
ドラ イバーの人件費や燃料費、車両費などは、我々も現地 系も変わらない。
それなのに現地系の運賃が安いのは 過積載の影響が決定的に大きい」 実際、中国では一〇トン車に三〇トン、四〇トン 乗せる極端な過積載が横行している。
しかも、その一 〇トン車自体が違法改造車だ。
規制に目を瞑ってしま えば重量当たりのコストはいくらでも下げられる。
日 系の物流会社にはとても真似できない。
荷主が物流管 理責任者に日本人駐在員を置いているうちは、そうし た事情も多少は理解してもらえた。
しかし、現地化が 進み、責任者に現地スタッフを起用するようになると、 割高な運賃が通らなくなってくる。
同時に運送取引も“現地化”する。
荷主担当者か ら当たり前のようにキックバックを求められる。
「接待 交際費で落とせる範囲なら何とかするが、露骨に現金 を要求されても、さすがに対応できない」と先の駐在 員。
コンプライアンスを無視できない外資系物流会社 には手に負えない市場となりつつある。
OCTOBER 2011 18 中国の覇者がアジア市場を握る DHLが中国の国内宅配便から撤退した。
しかし、業界内 に驚きの声はない。
外資系物流企業はどこも中国の国内市 場で苦戦を強いられている。
早めの損切りも想定内との評 価だ。
その一方で、中国EMSは株式公開を準備、現地の 民間宅配便で最強とされる順豊エクスプレスは日本市場へ の本格上陸に打って出た。
(大矢昌浩) 第2部 特 集リアル 中国物流 外資系物流会社に対する中国政府のスタンスも以 前とは変わってきている。
中国政府は〇九年一〇月に 郵便法を改正。
外資による手紙類の国内配送の規制 に動いた。
これによって中国DHLは、物量の約三分 の一を占めていたビジネス書類の取り扱いが事実上で きなくなった。
同社が宅配事業から撤退した理由の一 つとされる。
中国政府はこれまで物流業に関しては外資を歓迎 してきた。
有力な外資系物流会社を誘致し、資金と ノウハウを積極的に国内に呼び込んだ。
今も表向きに は大きく姿勢は変えていない。
しかし、地方行政レベ ルでは外資より現地系を優先する傾向が顕著になって きたという。
中国事業戦略の見直しを迫られているの はDHLだけではない。
上海で宅配便事業を行っている上海大衆佐川急便 物流の伊藤耕一総経理は「当社の場合は黒字経営が 前提。
収益のバランスを見ながら段階的に成長してい くやり方だ。
外資に対する風当たりが強くなっている といっても、中国から追い出されることはない。
まだ まだ中国は我々のノウハウを必要としている。
そのこ とは政府もよく分かっている」という。
現地系との無理な競争は避け、対象を絞って付加 価値の高いサービスを提供する方針を貫いている。
当 面は中国で新たにネット通販事業に進出する日系企 業を新規荷主として有望視している。
今年三月には「銀聯カード」による代引きサービス を開始した。
上海で化粧品の通販事業に乗り出す新 日本製薬の要望に応えたものだ。
日本で同社から商 品を預かり、中国への輸出から現金回収までを、S Gグループホールディングスグループ各社が機能分担 するかたちで、一括して請け負っている。
七月にはグ ループのSGシステムが現地のソフト開発会社と合弁 19 OCTOBER 2011 中国250 都市、2000 店舗のネットワークを誇る民間最大手。
海外進出にも意欲的。
グループ会 社の「順豊航空」を中心に、国際ネットワークの構築を進めている。
香港に海外本部を置き、台湾、 韓国、シンガポールに進出済み。
今年10月からは日本でも事業をスタートする ヤマト運輸の宅急便にヒントを得てサービス名を「宅急送」とした。
07 年から小口配送のネットワーク整 備を急速に押し進め、中国全土に3000 以上の拠点、7つの基幹倉庫を整備。
620の鉄道貨物 輸送枠、360の航空貨物輸送枠を確保するなど、中国有数の民間宅配会社に上り詰めた 上海・杭州間の通関申告に関する緊急文書輸送からスタートし、宅配事業に業態を広げていった。
90年代半ばから末にかけて寧波、金華、南京、蘇州、北京、広州などの大都市に事務所を構え、ネッ トワークを拡大。
国際物流にも乗りだし、大手宅配企業としてのブランドを確立している。
36の集配センター、2100の配送拠点、従業員5万人以上のネットワークで、中国全土をカバー している。
翌日配送、即日配送、代引き、国際間輸送にも対応。
宅配会社でありながら、ECモー ルを今秋中に立ち上げる方針を打ち出し、注目を集めている。
仕分け拠点は43 拠点、末端のサービス拠点は3000 に上る。
従業員数は3 万5000人。
ほぼ 中国全土を対象にサービスを提供し、8000 台以上の車両を運行している。
国内宅配では当日 配送や時間指定、代引きにも対応。
そのほか国際宅配や倉庫・配送業務も行っている 仕分け拠点は51拠点。
サービスの対象エリアは中国の32 行政区分のうち、31の省・直轄市・ 自治区。
上海市内では当日配送を実施している。
01年にバーコードを導入した 中国大手物流会社シノトランスとの合弁によって「中外運敦豪」を86 年に設立。
04 年に国内宅 配事業参入。
09年に全宜快遞、中外運速遞、金果快逓の3社を買収し、宅配事業を強化。
しかし、 今年6月、中外運敦豪の親会社である中外運空運発展が3 社の株式の売却を発表 84 年に欧州とアジアに拠点展開するジェルコを買収。
99 年に大田集団(DTW)と折半出資で 「フェデックスDTW」を設立。
06 年に約4億米ドルを投じて残りの株式を取得し、完全子会社化 した。
DTWの国内89 拠点及び国内ネットワークを譲り受け、宅配事業に本格参入を果たした 88 年にシノトランス・グループを代理店として事業を開始。
96 年、同グループと最初の合弁会 社を北京に設立したが、05 年に中国国内のオペレーションをすべて自営化した。
国際エクスプレ スをメーンにフォワーディングやロジスティクス業務を行っている 88 年、シノトランス・グループと国際エクスプレス業務を行う合弁会社を設立。
03 年、同グルー プとの合弁契約を解消し、中国事業を自営化した。
07年、中国の国内陸送・小包配送大手の 華宇物流集団を買収して「天地華宇集団(TNT 華宇)」とし、国内ネットワークを一挙に拡大 路線輸送を中心に宅配、航空輸送を行っている。
従業員数は1万人以上。
全国に1100 拠点を置 き、主要10 都市の物流拠点の総面積は10万1500 ?。
車両台数は3000 台。
そのうち1200 台で幹線輸送、1800 台で市内配送を行っている。
時間指定の緊急輸送なども行う 路線輸送をメーンに航空輸送も行う。
24 都市の大型ターミナルなど31省に1500 拠点を置き、 サービスの対象エリアは550 都市・地区に上る。
自社車両数は4600 台。
1日当たり3 万トン の貨物を取り扱う。
航空輸送では24 時間以内の配送を行っている 企業名 中国物流市場の主要プレーヤー 各社ホームページ・発表資料、各種報道等をもとに作成 設立本拠概 要 1993 年 1994 年 1993 年 2000 年 2002 年 1999 年 深圳 北京 上海 上海 上海 上海 1993 年 1996 年 上海 上海 (09 年〜) 1986 年 1984 年 1996 年 1988 年 北京 上海 上海 上海 上海佳吉快運 徳邦物流股份 DHL フェデックス UPS TNT 中国政府系の上海巴士物流に35億円を出資して子会社化し「雅瑪多(中国)運輸」に社名を変更。
ヤマトの出資比率は65%。
サービスドライバー200人、トラック100台、11拠点からスタートし、 順次陣容を拡大している。
今後10 年で100 億円を投資する方針 住友商事と中国企業・大衆交通との3 社で「上海大衆佐川急便物流」を設立し、上海で宅配便 事業を開始。
さらに住商と合弁で「北京住商佐川急便物流」を設立し北京進出を果たすものの、 07年に撤退。
上海大衆佐川は06年に黒字化を達成し、08年には累損を解消している 2010 年 2002 年上海 上海大衆佐川急便物流 (佐川急便) 現地民間運送 順豊速運(S.F.Express) 北京宅急送快運(ZJS EXPRESS) 申通快逓(SENTONG EXPRESS) 上海圓通速逓(YTO EXPRESS) 中通速逓服務(ZTO EXPESS) 上海韻達貨運(韻達快運、YUNDA) 雅瑪多(中国)運輸 (ヤマト運輸) 国際インテグレーター日系宅配 上海 現地民間宅配 で「無錫飛達物流軟件」を設立。
これによって日系 企業が中国でネット通販事業を行うために必要な全て のリソースを現地で提供できる体制が整った。
中国のネット通販市場の急拡大は、日本企業にも 大きな注目を集めている。
現地に進出する企業の顔触 れも大手から中堅中小にまで広がってきた。
これに対 応して通販モール最大手の楽天は中国の検索エンジン 最大手の「百度(バイドゥ)」、ヤフージャパンはタオ バオと手を組み、日系企業の中国進出支援ビジネスに 乗り出している。
ただし、物流面での支援体制はまだ 脆弱だ。
リソースに制約のある中堅以下の日系荷主に とって、フルフィルメントを安心して託すことのでき る日系物流企業は頼れるパートナーとなっている。
東京・江東区のウィルフロントロジスティクス(W FL)は、そうした日系荷主約三〇社と現在契約を結 んでいる。
昨年一〇月、同社は上海市宝山区に倉庫 面積六〇〇〇?の「上海フルフィルメントセンター」 を稼働させた。
荷主に代わって、中国のOEM先や 日本から調達した商品をここに集め、受注から出荷ま でを処理している。
配送は買い物客がタオバオのサイ トで指定した宅配会社を使う。
現地工場の生産工程まで遡ってWFLが在庫ス テータスを管理し、庫内情報はウェブで荷主に提供し ている。
会社を設立した当初は中国で生産し、日本 に出荷するアパレル品の検品と出荷・輸出業務をメー ンに据えていた。
ところが蓋を開けて見たところ、現 地のネット通販物流とOEM工場の管理がそれぞれ 三分の一ずつという構成になった。
同社の富永忠之代表は「通販物流のニーズが予想 以上に強い。
中国に日系物流会社の倉庫はたくさん あるが、通販に対応できる拠点は限られている。
コス トも高い。
当社のように中小荷主相手の通販物流を 扱っている会社は少ない。
今後も総合商社や大手物 流会社では難しいフレキシブルなサービスを提供して いく」という。
中国宅配便最強「順豊」が日本上陸 今のところ日本から中国の消費者に直接、商品を 販売することは法律上、許されていない。
そのため日 系企業の中国通販事業は現地企業を介在させるB to B to Cのフローをとる。
しかし、いずれ市場は開放さ れる。
国をまたいだB to Cへと移行する。
日中間物流を手掛けるスコアジャパンの大沢理社 長は「ネット通販は商品サイクルが極端に短い。
中国 で生産している製品を中国で販売するのならまだしも、 日本で生産した商品を現地に在庫しても、すぐに陳腐 化してしまう。
日本製品の中国通販には国際宅配便 が使われるようになる」と予測する。
市場調査をしたところ、中国の消費者は商品重量 一?当たり四〇〇元(四八〇円)までの運賃なら受 け入れることが分かった。
この値段を切る日中間の宅 配便があれば、日本発中国向けのネット通販が成り立 つ。
その用意が同社にはあるという。
もともと同社は国際インテグレーターの日中間の宅 配便に価格競争をしかけることで成長してきた。
会社 を設立した九八年当初、日中間の国際宅配便の運賃 はどこも一八〇〇円で横並びだった。
それに対してス コアジャパンは半額以下の料金を打ち出すことで、荷 主をつかんだ。
それでも十分、利益は残った。
しかし、〇七年〜〇八年頃から環境が変わってきた。
国際インテグレーターが実勢運賃を下げてきた。
大沢 社長は「これまで当社は年率四〇%増のペースで売り 上げを伸ばしてきた。
今期は五〇億円弱を見込んでい る。
一五年には一〇〇億円を超えるだろう。
しかし、 OCTOBER 2011 20 スコアジャパンの 大沢理社長 ウィルフロント ロジスティクスの 富永忠之代表取締役 10 年6月に「淘宝(タオバオ)」と提携。
タオバオ内に 「Yahoo!ショッピング」の商品を販売する「淘日本(タオジャ パン)」を開設した 10 年10月、中国のネット検索サービス最大手「百度」と の合弁事業によりネットショッピングモール「楽酷天」をオー プン 09 年4月にタオバオとパートナーシップを締結し、タオバオ 内に出店。
同時に、独自サイトもオープンした。
10年8月 には上海に大型物流センターを稼働。
店舗販売、ネット 通販ともに伊藤忠グループの物流会社をパートナーに起用 11年6月にソフトバンクと合弁で「ZOZOTOWN香港」を、 8月には「ZOZOTOWN 上海」を設立した。
9月末から中 国でサービスを開始する予定。
タオバオへの出店のほか、 中国版「ZOZOTOWN]を開設する方針 11 年9月に専用サイトを開設し、ネット通販を開始。
物 流は丸紅子会社の北京外紅国際物流に委託。
同社は 05 年から華北・東北・西北地区を中心とした約1600 店舗に対し資生堂グループの商品配送を手がけてきた 会社/サイト中国でのネット通販に関する動き アパレル専門 アパレルモール 化粧品専門 淘日本 楽酷天 UNIQLO ZOZOTOWN SHISEIDO ヤフー!ジャパン 楽天 ファーストリテイリング スタートトゥデイ 資生堂 日系企業の中国ネット通販事業展開 業態 総合モール 総合モール 各社発表資料、報道等をもとに作成 特 集リアル 中国物流 その後も成長を続けていくには価格以外の強みが必要 だ。
事業が新しい局面を迎えている」という。
日中間のB to C物流が今後のカギを握ると見てい る。
幸い、国際インテグレーターはB to Cはカバーし ていない。
しかし、「中国の民間物流会社が怖い。
と りわけ『順豊』は、これまで当社が対峙してきた誰よ りも手強いと感じている」と大沢社長はいう。
「順豊速運(S.F.Express)」は香港に本社を置く民 間企業で、中国の宅配業界では最強との呼び声が高 い。
サービス品質を重視して、代理店に頼らない配送 のネットワークの整備を進めている。
台湾、韓国、シ ンガポールにも拠点を構え、アジア圏の国際宅配便事 業にも乗り出している。
その順豊が、いよいよ日本に上陸する。
今年二月、 日本に現地法人の順豊エクスプレスを設立した。
東京 都江東区に拠点を確保し、一〇月から国際宅配便業 務を開始する。
本誌の取材に対して同社は、日本に おける事業計画の詳細については今のところノーコメ ントと応えている。
大沢社長は「順豊がエクスプレス だけでなく、日本の国内物流にまで本気で乗り出すの であれば、大げさでなくヤマト・佐川の地位さえ危う い。
事業規模はまだ小さい。
しかし彼等は中国市場 というバックグランドを持っている。
現状の規模違い など、あっという間に消し飛んでしまう」と懸念する。
一方、今年七月、中国EMSが株式の公開準備に 入ったというニュースが現地で流れた。
その真偽のほ どは明らかではないが、株式公開は時間の問題と見ら れている。
巨額の資産を手にした中国EMSが事業領 域をアジアに拡大するのは必至だ。
国際インテグレー ターが収益の悪化に苦しみ、日系物流会社がニッチの 域を脱し切れずにいる間に、中国系の台頭が着々と進 んでいる。
21 OCTOBER 2011 昨年11月22日、日本郵便は中国の郵政当局である中国郵政 集団とネット通販の物流事業で提携した。
中国のネット通販市 場に商品を売り込みたい日本企業を支援し、その物流ニーズを 取り込むのが狙いだ。
その一環として今年4月、日本発のEM S(国際スピード郵便)に新たな割引サービスを導入した。
1 年間に利用したEMSの個数に応じて翌年の年間割引率を決定 する「年間実績割引」だ。
例えば、1年間に1万個のEMSを利用した荷主の場合、翌年 は年間を通じて22%の割引率が適用される。
これまでも1カ月 間のEMS利用個数に応じて割引を適用する「月間割引」や、1 度に出すEMSの個数に応じて割引く「都度割引」はあったが、 年間を通じて割引を適用する制度は無かった。
年間実績割引の割引率は、従来の割引制度よりも大きく設 定されている。
EMSは配達スピードに優れ、貨物追跡機能も整 備されているという利便性がある反面、送料が高いというネッ クもあった。
日本から上海に2キロの荷物を送る場合の送料は 3000円で、中国の消費者にとっては高額。
新たな割引制度に よって送料を引き下げることにより、中国消費者の購買意欲を 喚起し、EMSの個数拡大に繋げたい考えだ。
中国郵政には現地での配達品質の向上のほか、通関や配達 状況に関する情報提供といった面で協力を求めている。
白土恵 一営業本部法人営業部部長は「広大な中国でラストワンマイル までの配達を行えるのは実質的に中国郵政しかいない。
情報力 も図抜けている。
彼らとの協力関係は我々の強みの一つだ」と パートナーを評価する。
中国郵 政にとっても、日本発のEMS が増えればそれだけメリットが 大きくなるため、新たな取り組 みには積極的だ。
効果は既に出ている。
割引 制度を利用している荷主からの 発送数が以前に比べて約10 % 増えている。
割引によって単価 は低くなるものの、EMSの取 扱個数が増加しているため収益性は高 まっているという。
同じく今年4月に、国際書留郵便の サービス内容も刷新した。
国際書留は EMSに比べて料金が安いが、貨物追跡 機能が整備されていなかった。
そのた め、これまでネット通販で利用する荷 主は少なかった。
そこで、中国郵政の 協力を得て貨物追跡機能を追加。
基本 料金は据え置き、さらに今までは無かった「月間割引」と「都 度割引」を導入して利用者の拡大を図った。
結果、アカウント 払いで国際書留郵便を利用している荷主からの発送数が50 % 以上増加。
その多くが、中国向けの通販関連の荷物だ。
久田雅嗣国際事業本部国際事業部課長は「正直ここまでの 反響があるとは思わなかった。
それだけニーズに合致したサー ビスだと確認できた。
EMS以外の選択肢をネット通販の荷主企 業に提供できたことには大きな意味がある」と胸を張る。
中国郵政の要請から始まった事業もある。
中国郵政が出資し て設立したネットショッピングモール「郵楽」への日本企業の 招致だ。
郵楽は今年1月から本格稼働し、6月までの上半期だ けで6000万元の売り上げを記録。
今後の成長余力に大きな注 目が集まっている。
その郵楽にジャパン・ブロックを設け、日 本の高品質かつブランド力の高い商品を紹介し、サイトの集客 増加に繋げたいというのが中国郵政の意向だ。
この要請を受け、日本郵便は複数の大手企業に郵楽への出店 を打診。
手応えを得ているという。
田畑浩国際事業本部国際 事業部課長は「中国の有望なモールに出店すれば、その企業に とって大きなビジネスチャンスになる。
配達にはEMSを利用し てもらえるため、我々にとっても収益の拡大に繋がる。
今後も 積極的に出店を支援していきたい」と説明する。
これらの事業の他にも、水面下では様々なアイディアがお互 いから持ち寄られ、協議が重ねられている。
白土部長は「中国 は今後の最重要マーケットの一つ。
中国郵政と歩調を合わせな がら、様々な形で荷主の物流をサポートしていく」と語る。
日本郵便──中国郵政との提携でEMS強化 15,000 個〜 6,000 個〜 20% 8,000 個〜 21% 10,000 個〜 22% 15,000 個〜 23% 30,000 個〜 24% 60,000 個〜 25% 120,000 個〜 26% 23% 120,000 個〜 26% EMSの年間実績割引 過去1 年間の差出個数と割引率 白土恵一部長
