2011年11月号
ケース
ケース
明治ロジテック 物流IT
NOVEMBER 2011 44
子会社合併で総元請けとして再出発
明治ロジテックは二〇〇八年四月に旧明治
乳業(二〇一一年四月に明治製菓のフード&
ヘルスケア事業を統合し「明治」に社名変更)
の東西の二つの物流子会社が合併して発足し
た。
旧明治乳業の各工場に併設して事業所を 構え、運送の元請け会社として製品や原料・ 資材の輸配送業務に携わっている。
旧明治乳業の製品は大きく、チーズ・バタ ーなどの「乳製品」、「アイスクリーム・冷凍 食品」、そして牛乳やヨーグルトなどの「市乳 製品」の三つのカテゴリーからなる。
このうち乳製品やアイスクリームは特定の 工場で集中的に生産し、各地のデポ(外部倉 庫)に在庫を補充しながら市場へ供給してい る。
明治ロジテックは工場からデポへの幹線 輸送のほか、デポの運営や量販店センターな どへの配送も一部、手がけている。
一方、市乳製品は全国十五カ所に工場を置 き、工場から牛乳販売店や量販店・コンビニ の物流センターに直送する体制をとっている。
工場が生産拠点であると同時に顧客に対する 納品拠点の役割を果たしている。
その配送と 需給調整のための「保転」という業務を明治 ロジテックが担っている。
顧客の注文に応じて品揃えするため、他の 工場から製品を取り寄せたり、需要予測の誤 差によって生じた在庫の過不足を調整するた めの工場間の横持ち輸送を、同社では「保転」 と呼んでいる。
従来は各工場が、それぞれの対象エリアの 顧客から直接注文を受け、保転も各工場間で 個別に処理していた。
しかし、近年は市乳製 品でも集中生産が進み、転送の必要なケース が増えてきたことから、効率化のために業務 の集約を二段階で進めた。
まず一九九八年に全国を六つのブロックに 分け、それまで工場別に行っていた需給管理 をブロック単位の管理体制に切り替えた。
ブ ロック内の主力工場に「LC(ロジスティク スセンター)」を設置、LCに受注情報と工場 別の在庫情報を集約して需給調整機能を一元 化した。
LCが各工場に生産数量を割り当て、 保転もLCが指示するかたちだ。
さらに翌九九年にはLCの機能を関東工場 と関西工場の二カ所に集約した。
東日本全体 の需給管理を関東工場が、西日本を関西工場 が、それぞれ統括する体制に移行した。
明治 ロジテックはこの東西のLCから毎日、保転 の指示を受けて、車を走らせている。
昨年秋、明治ロジテックは、市乳の保転や ドライバーの作業実態を詳細に把握するため、昨 年から大型車にデジタルタコグラフを導入している。
収集したデータから車両の稼働率や実車率などを分 析するシステムを自前で開発。
安全運行による事故 防止や過労防止に活かすとともに、全社的な運行効 率化プロジェクトに役立て成果を上げている。
物流IT 明治ロジテック デジタコの活用で運行管理を高度化 実績データの分析システムも自社開発 明治ロジテックの物流運行 本部長の藤井光信常務 45 NOVEMBER 2011 幹線輸送を行う自社保有の大型車両にデジタ ルタコグラフを導入し、新たな運行管理シス テムを稼働させた。
輸送の安全・品質管理を 担当する物流運行本部が輸送品質向上の施策 の一つとして実施したものだ。
同本部では輸送品質を高めるために、〇八 年の統合後から点呼業務の見直しに取り組ん できた。
運送事業者は法律でドライバーの乗 務前と運行終了後に、運行管理者による対面 点呼を行うことが義務付けられている。
同社 はこの点呼を通じてドライバー一人ひとりと のコミュニケーションを強化しようと考えた。
通常のアルコールチェックや運転免許証の 確認だけでなく、ドライバーから健康状態や 輸送中のトラブル、配送先の状況、顧客の要 望や苦情などについて詳細な報告を受けるよ う指導した。
運行終了後の点呼の際に運行管 理者が車両に装着した「タコグラフ」の記録 を参考にヒアリングを行う方法をとった。
ただし、従来のアナログ式のタコグラフは 車両の走行速度・時間・距離を円盤状のチャ ート紙に記録するだけのもので、細かな運行 実態までは把握できないため、ドライバーに 運転日報の内容をチャート紙に転記して提出 させることにした。
ところが、その作成に時 間を取られ、肝心のコミュニケーションに充 分な時間をあてることができなかった。
デジタコを自社仕様にカスタマイズ そこでドライバーへの負荷を軽減するため にタコグラフをアナログ式からデジタル式に換 えることにした。
デジタル式なら周辺装置と の連携で走行記録のほかにも運行管理に必要 なさまざまなデータを記録できる。
しかもメ モリーカードに記録したデータを運行終了後 にドライバーが事業所のパソコンに読み込むこ とで、運転日報の自動作成も可能だ。
このデジタルタコグラフ(デジタコ)の導入 を機に、同社は新たな運行管理システム「M PViS − 21」を自社開発した。
走行デー タのほか、GPS機能を使って車両の位置情 報を記録、作業内容や荷物の種類などもドラ イバーが車載機のボタンを操作してその都度 入力することでステータス管理を可能にした。
また従来のアナログ式ではタコグラフとは別 に装備していた温度センサーを車載システム に組み込み、庫内温度の記録もシステムでい っしょに管理できるようにした。
温度異常が 発生すると運転席にアラームで知らせる。
ただし、タコグラフは、ドライバーの拘束 時間などを正しく記録する目的から、運行が 終了しないとメモリーを読み込めない仕様に なっている。
温度管理の厳格な商品は納品時 に着荷主から温度履歴の確認を求められるこ とがあり、温度センサーが一体になったデジ タコではその際に不都合が生じる。
このため 運行終了前でも温度履歴だけプリントアウト できるよう車載プリンターを装備した(図1)。
運転日報は二枚組で構成される。
一枚目は 「構内作業」「走行(一般道か高速道か)」「待 機」「納品」「積み込み」「洗車」「休憩」などの作 業状況、車の速度・走行距離、庫内の温度、 速度オーバーや急加速・急ブレーキ、アイド リングなどの発生を時系列でグラフにしたも の。
車の運行・作業実態が時間を追って一目 でわかるようになっている。
二枚目は一つ一つの作業ごとに内容・場 所・所要時間・荷物の種類などを一覧にした もの。
一枚目と照合すれば「どこからどこへ 何を運んだ」「待機時間が長かったのはどの納 品先か」「この時間帯は空車で走っていた」「ド ライバーがどこでどれだけ休憩をとった」な どの実態を詳細に把握できる。
温度センサー ハーネス 拡張ハーネス 基本ハーネス 温度センサー延長ハーネス 着脱式温度 センサーハーネス 車速センサー エンジン回転センサー 車載ステーション 本体装置 車載プリンター GPSアンテナ 温度センサー 図1 車載ステーションのシステム構成 NOVEMBER 2011 46 システムの導入でドライバーは日報作成の 手間が省けるようになり、運行管理者はより 踏み込んだヒアリングができるようになった。
今年の上半期は事故数が小さなトラブルを加 えても前年のほぼ半分に減っており、物流運 行本部長の藤井光信常務は「ドライバー一人 ひとりとていねいにコミュニケーションをとる ようになったことが成果につながった」と評 価している。
運行実態の詳細まで記録 このようにきっかけはドライバーとのコミュ ニケーション強化だったが、デジタコが収集 するデータを車両の運行効率化などに有効活 用することも当初から狙っていた。
そのため にMPViS − 21には、メモリーに記録し たデータを専用のサーバーに吸い上げて分析を 行い、さまざまな管理帳票を作成する機能を 持たせた。
その際に物流運行本部では「お仕着せのも のを使うより自分たちが必要な帳票を自由に 作れるようにしたほうがいい」(藤井常務)と の判断から、分析ソフトの開発を外部へ委託 せずに自前で行った。
社内の情報システム部 門にも頼らなかった。
物流運行本部のメンバ ーが「自由検索ソフト」を使ってサーバーの データをエクセルで加工し、必要な帳票を作 成する仕組みを発案、開発まで手がけた。
MPViS − 21のデータ分析は本部が各 地の事業所から募った八人のメンバーで担当 表1 車両操業度(サンプル:実績値とは異なる) 24 時間中 車両操業度車両走行 事業所 事業所 台数 操業時間操業率前月比運行数実車km 空車km 実車率 茨城 前橋 群馬 習志野 関東 神奈川 袋井 愛知 京都 八尾 関西 合計 6 台 6 台 7 台 11 台 8 台 4 台 6 台 6 台 19 台 10 台 30 台 113 台 2453:05 2660:32 5208:51 4401:12 3475:50 1487:59 2882:02 2450:30 7720:20 3886:15 12522:44 49148:23 54.9% 59.5% 59.6% 53.7% 58.4% 50.0% 64.5% 54.9% 54.6% 52.2% 56.1% 58.4% −1.6 −0.5 −1.3 −0.3 11.5 4 1.3 −2 2.2 1.9 3.1 1.9 143 131 148 215 336 151 222 158 730 292 1210 3736 44765.7 55699.6 34971.4 55721.9 89784.3 35825.9 74271.5 58803.2 210385.3 38503.3 278027.1 976759.2 7360.8 7728.2 14154.0 21509.0 4330.6 5290.8 8855.1 7656.7 9114.4 17360.5 26361.2 129721.3 85.9% 87.8% 71.2% 72.1% 95.4% 87.1% 89.3% 88.5% 95.8% 68.9% 91.3% 88.3% 茨城 前橋 群馬 習志野 関東 神奈川 袋井 愛知 京都 八尾 関西 合計 6 台 6 台 7 台 11 台 8 台 4 台 6 台 6 台 19 台 10 台 30 台 113 台 1962:26 2022:05 3281:02 2860:46 2814:50 1145:45 2363:11 1862:01 6106:33 2253:55 10217:58 37352:48 83.05% 76.62% 63.26% 65.02% 81.69% 77.21% 82.84% 76.25% 79.12% 57.96% 81.66% 76.2% 52.97% 49.89% 48.56% 46.75% 57.94% 56.03% 64.21% 53.79% 59.45% 40.27% 53.31% 53.38% 748:15 869:39 704:32 948:26 1432:18 661:35 1158:35 927:39 3202:23 730:55 4449:49 15834:06 44.48% 43.42% 33.30% 32.29% 53.78% 47.05% 56.77% 47.23% 55.57% 26.65% 48.37% 45.87% 142:48 129:32 322:57 424:42 110:47 126:23 151:45 128:50 223:58 373:39 454:27 2589:48 8.49% 6.47% 15.26% 14.46% 4.16% 8.99% 7.44% 6.56% 3.89% 13.62% 4.94% 7.50% 371:44 392:40 360:57 582:21 471:01 265:05 301:30 423:58 916:29 878:33 2569:05 7533:23 22.10% 19.61% 17.06% 19.83% 17.69% 18.85% 14.77% 21.59% 15.90% 32.03% 27.93% 21.82% 78:22 69:10 308:59 297:43 299:58 174:18 183:10 85:34 504:43 259:29 528:29 2789:55 4.66% 3.45% 14.60% 10.14% 11.26% 12.39% 8.98% 4.36% 8.76% 9.46% 5.74% 8.08% 340:53 541:43 418:21 683:53 349:07 178:54 245:46 398:00 915:42 500:06 1197:46 5770:11 20.27% 27.05% 19.77% 23.28% 13.11% 12.72% 12.04% 20.26% 15.89% 18.23% 13.02% 16.72% 台数 ※前月比はポイント(%)の増減を表す。
車両操業中 実車時間走行時間積納品待機その他 実車実車率走行率実車走行率空車走行率時間比率時間比率時間比率し て い る 。
い ず れ も 専 任 で は な く 、 通 常 は 事 業所で点呼や出荷業務に携わっているスタッ フたちだ。
月に二〜四日だけデータ分析業務 を行う勤務割りにしてある。
各メンバーがそれぞれ自分の所属する事業 所のパソコンからサーバーにアクセスしてデー タをとり、車両の稼働率・実車率・燃費など の分析を行い、管理に必要な帳票を作成する。
どんな切り口で分析し、どんなフォーマットの 帳票にするかもメンバーの判断に委ねられて いる。
現場の人間が課題を見つけ、仮説を立 47 NOVEMBER 2011 各地の事業所に輸送を割り振っている。
ただ し配車は各事業所で個別に行うため、同じル ートの往復に別々に車を仕立てることもある。
またチーズ・バター、アイスクリームなどの幹 線輸送や資材の輸送も、それぞれ別々に配車 を行っているため、全体のルートを見直して 輸送効率を上げることが難しかった。
今回、部門を越えたプロジェクトを組織し、 そこにMPViS −21で分析したデータを 集約することによってそれが可能になった。
今 後は配車情報を一元管理する恒常的な組織の 整備が課題となる。
労務違反項目もすべて管理 MPViS −21のデータはドライバーの 労働時間の分析にも活用している。
「待機時 間や休憩時間を含め一日の拘束時間が一六時 間を超えていないか」「一日の連続運転時間が 四時間を超えていないか」「運転時間が一日九 時間、二日で一八時間を超えていないか」「次 の拘束までに休息時間を八時間以上とってい るか」など法律で定めるすべての労務違反項 目を管理し、毎月ドライバー別・事業所別に 集計・分析を行い法令遵守に役立てている。
同社は販売店への配送や一般貨物の輸送な ども含め一日におよそ二〇〇〇台の車両を運 行している。
このうち半分がタコグラフの装 着が法律で義務付けられている八トン以上の 大型車だ。
ただし大半は協力会社の車両で自 社での保有率は一〇%程度に過ぎない。
これまでにMPViS − 21を導入したの は運送子会社一社の車両を含め一四六台。
今 後は導入対象を広げ、他の運送子会社や同社 向け業務の比重が高い協力会社にも車両更新 時にMPViS − 21の採用を勧めていく。
一方、主に牛乳販売店向け配送に従事する 小型車についても次世代型の運行管理システ ムの検討を始めた。
小型はほとんど協力会社 の車両で、現在は携帯電話のパケット通信を 利用した動態管理システムを搭載して運行管 理や温度履歴管理を行っている。
このシステムはもともと一〇数年前に明治 乳業が導入したもので、当初はGPSで移動 を追跡する仕組みだった。
LCを設けた際に 販売店配送の配車業務も各工場からLCに集 約した。
これに合わせて販売店からの到着時 間の問い合わせに即座に答えられるよう、明 治乳業が自らサーバーを用意、荷主がシステ ムの利用料を一部負担するかたちで導入した。
しかし、その後、通信環境が整い、ドライ バーとも携帯電話で直接連絡をとれるように なったため、現在は動態管理の必要性が薄れ ている。
また元請けの一元化で協力会社との 契約元が、明治乳業から明治ロジテックに変 わるなど当時とは状況も変わっている。
今後は明治ロジテックの主導でシステムの 導入を考える必要があり、導入の目的や投資 効果など大型車とはまた別の観点から分析を 急いでいる。
(フリージャーナリスト・内田三知代) てて自らMPViS −21で分析を行い、そ れを実証したうえで改善策を提案する。
そう した運用形態を狙いあえて専任にしなかった。
業務への習熟やセキュリティ上の問題もあり、 現状ではサーバーへのアクセスを八人のメンバ ーだけに制限している。
しかし、「本来は誰も がデータベースに自由にアクセスできるのが理 想だ。
現場の?気づき?をこのシステムで?見 える化?する形を少しずつ広げていきたい」と 藤井常務は強調する。
同社は現在、経営企画本部の主催で営業本 部、物流運行本部も参加し、車の操業率(稼 働率)を五〇%以上に高めることを目標とす るプロジェクトに取り組んでいる。
MPViS − 21の運行データをこのプロジェクトで活用 している。
毎月、物流運行本部が事業所別の 稼働率や実車率など指標となるデータを提供し (表1参照)、これをもとに営業本部が運行ル ートの見直しなど改善を進める。
MPViS −21を導入した大型車は主に、 市乳の保転やチーズ・アイスクリームのデポへ の輸送を担当している。
深夜に工場を出発し て輸送を終え、午前中に事業所に戻るという 運行パターンが多く、この場合には稼働率が四 〇%にも満たない。
こうした稼働率の低い車 両をMPViS −21で抽出し、稼働してい ない時間帯に資材などの輸送を割り当てるなど 対策を進め成果を上げている。
同社は市乳の保転については東西に配車セ ンターを設け、センターがLCの指示を受けて
旧明治乳業の各工場に併設して事業所を 構え、運送の元請け会社として製品や原料・ 資材の輸配送業務に携わっている。
旧明治乳業の製品は大きく、チーズ・バタ ーなどの「乳製品」、「アイスクリーム・冷凍 食品」、そして牛乳やヨーグルトなどの「市乳 製品」の三つのカテゴリーからなる。
このうち乳製品やアイスクリームは特定の 工場で集中的に生産し、各地のデポ(外部倉 庫)に在庫を補充しながら市場へ供給してい る。
明治ロジテックは工場からデポへの幹線 輸送のほか、デポの運営や量販店センターな どへの配送も一部、手がけている。
一方、市乳製品は全国十五カ所に工場を置 き、工場から牛乳販売店や量販店・コンビニ の物流センターに直送する体制をとっている。
工場が生産拠点であると同時に顧客に対する 納品拠点の役割を果たしている。
その配送と 需給調整のための「保転」という業務を明治 ロジテックが担っている。
顧客の注文に応じて品揃えするため、他の 工場から製品を取り寄せたり、需要予測の誤 差によって生じた在庫の過不足を調整するた めの工場間の横持ち輸送を、同社では「保転」 と呼んでいる。
従来は各工場が、それぞれの対象エリアの 顧客から直接注文を受け、保転も各工場間で 個別に処理していた。
しかし、近年は市乳製 品でも集中生産が進み、転送の必要なケース が増えてきたことから、効率化のために業務 の集約を二段階で進めた。
まず一九九八年に全国を六つのブロックに 分け、それまで工場別に行っていた需給管理 をブロック単位の管理体制に切り替えた。
ブ ロック内の主力工場に「LC(ロジスティク スセンター)」を設置、LCに受注情報と工場 別の在庫情報を集約して需給調整機能を一元 化した。
LCが各工場に生産数量を割り当て、 保転もLCが指示するかたちだ。
さらに翌九九年にはLCの機能を関東工場 と関西工場の二カ所に集約した。
東日本全体 の需給管理を関東工場が、西日本を関西工場 が、それぞれ統括する体制に移行した。
明治 ロジテックはこの東西のLCから毎日、保転 の指示を受けて、車を走らせている。
昨年秋、明治ロジテックは、市乳の保転や ドライバーの作業実態を詳細に把握するため、昨 年から大型車にデジタルタコグラフを導入している。
収集したデータから車両の稼働率や実車率などを分 析するシステムを自前で開発。
安全運行による事故 防止や過労防止に活かすとともに、全社的な運行効 率化プロジェクトに役立て成果を上げている。
物流IT 明治ロジテック デジタコの活用で運行管理を高度化 実績データの分析システムも自社開発 明治ロジテックの物流運行 本部長の藤井光信常務 45 NOVEMBER 2011 幹線輸送を行う自社保有の大型車両にデジタ ルタコグラフを導入し、新たな運行管理シス テムを稼働させた。
輸送の安全・品質管理を 担当する物流運行本部が輸送品質向上の施策 の一つとして実施したものだ。
同本部では輸送品質を高めるために、〇八 年の統合後から点呼業務の見直しに取り組ん できた。
運送事業者は法律でドライバーの乗 務前と運行終了後に、運行管理者による対面 点呼を行うことが義務付けられている。
同社 はこの点呼を通じてドライバー一人ひとりと のコミュニケーションを強化しようと考えた。
通常のアルコールチェックや運転免許証の 確認だけでなく、ドライバーから健康状態や 輸送中のトラブル、配送先の状況、顧客の要 望や苦情などについて詳細な報告を受けるよ う指導した。
運行終了後の点呼の際に運行管 理者が車両に装着した「タコグラフ」の記録 を参考にヒアリングを行う方法をとった。
ただし、従来のアナログ式のタコグラフは 車両の走行速度・時間・距離を円盤状のチャ ート紙に記録するだけのもので、細かな運行 実態までは把握できないため、ドライバーに 運転日報の内容をチャート紙に転記して提出 させることにした。
ところが、その作成に時 間を取られ、肝心のコミュニケーションに充 分な時間をあてることができなかった。
デジタコを自社仕様にカスタマイズ そこでドライバーへの負荷を軽減するため にタコグラフをアナログ式からデジタル式に換 えることにした。
デジタル式なら周辺装置と の連携で走行記録のほかにも運行管理に必要 なさまざまなデータを記録できる。
しかもメ モリーカードに記録したデータを運行終了後 にドライバーが事業所のパソコンに読み込むこ とで、運転日報の自動作成も可能だ。
このデジタルタコグラフ(デジタコ)の導入 を機に、同社は新たな運行管理システム「M PViS − 21」を自社開発した。
走行デー タのほか、GPS機能を使って車両の位置情 報を記録、作業内容や荷物の種類などもドラ イバーが車載機のボタンを操作してその都度 入力することでステータス管理を可能にした。
また従来のアナログ式ではタコグラフとは別 に装備していた温度センサーを車載システム に組み込み、庫内温度の記録もシステムでい っしょに管理できるようにした。
温度異常が 発生すると運転席にアラームで知らせる。
ただし、タコグラフは、ドライバーの拘束 時間などを正しく記録する目的から、運行が 終了しないとメモリーを読み込めない仕様に なっている。
温度管理の厳格な商品は納品時 に着荷主から温度履歴の確認を求められるこ とがあり、温度センサーが一体になったデジ タコではその際に不都合が生じる。
このため 運行終了前でも温度履歴だけプリントアウト できるよう車載プリンターを装備した(図1)。
運転日報は二枚組で構成される。
一枚目は 「構内作業」「走行(一般道か高速道か)」「待 機」「納品」「積み込み」「洗車」「休憩」などの作 業状況、車の速度・走行距離、庫内の温度、 速度オーバーや急加速・急ブレーキ、アイド リングなどの発生を時系列でグラフにしたも の。
車の運行・作業実態が時間を追って一目 でわかるようになっている。
二枚目は一つ一つの作業ごとに内容・場 所・所要時間・荷物の種類などを一覧にした もの。
一枚目と照合すれば「どこからどこへ 何を運んだ」「待機時間が長かったのはどの納 品先か」「この時間帯は空車で走っていた」「ド ライバーがどこでどれだけ休憩をとった」な どの実態を詳細に把握できる。
温度センサー ハーネス 拡張ハーネス 基本ハーネス 温度センサー延長ハーネス 着脱式温度 センサーハーネス 車速センサー エンジン回転センサー 車載ステーション 本体装置 車載プリンター GPSアンテナ 温度センサー 図1 車載ステーションのシステム構成 NOVEMBER 2011 46 システムの導入でドライバーは日報作成の 手間が省けるようになり、運行管理者はより 踏み込んだヒアリングができるようになった。
今年の上半期は事故数が小さなトラブルを加 えても前年のほぼ半分に減っており、物流運 行本部長の藤井光信常務は「ドライバー一人 ひとりとていねいにコミュニケーションをとる ようになったことが成果につながった」と評 価している。
運行実態の詳細まで記録 このようにきっかけはドライバーとのコミュ ニケーション強化だったが、デジタコが収集 するデータを車両の運行効率化などに有効活 用することも当初から狙っていた。
そのため にMPViS − 21には、メモリーに記録し たデータを専用のサーバーに吸い上げて分析を 行い、さまざまな管理帳票を作成する機能を 持たせた。
その際に物流運行本部では「お仕着せのも のを使うより自分たちが必要な帳票を自由に 作れるようにしたほうがいい」(藤井常務)と の判断から、分析ソフトの開発を外部へ委託 せずに自前で行った。
社内の情報システム部 門にも頼らなかった。
物流運行本部のメンバ ーが「自由検索ソフト」を使ってサーバーの データをエクセルで加工し、必要な帳票を作 成する仕組みを発案、開発まで手がけた。
MPViS − 21のデータ分析は本部が各 地の事業所から募った八人のメンバーで担当 表1 車両操業度(サンプル:実績値とは異なる) 24 時間中 車両操業度車両走行 事業所 事業所 台数 操業時間操業率前月比運行数実車km 空車km 実車率 茨城 前橋 群馬 習志野 関東 神奈川 袋井 愛知 京都 八尾 関西 合計 6 台 6 台 7 台 11 台 8 台 4 台 6 台 6 台 19 台 10 台 30 台 113 台 2453:05 2660:32 5208:51 4401:12 3475:50 1487:59 2882:02 2450:30 7720:20 3886:15 12522:44 49148:23 54.9% 59.5% 59.6% 53.7% 58.4% 50.0% 64.5% 54.9% 54.6% 52.2% 56.1% 58.4% −1.6 −0.5 −1.3 −0.3 11.5 4 1.3 −2 2.2 1.9 3.1 1.9 143 131 148 215 336 151 222 158 730 292 1210 3736 44765.7 55699.6 34971.4 55721.9 89784.3 35825.9 74271.5 58803.2 210385.3 38503.3 278027.1 976759.2 7360.8 7728.2 14154.0 21509.0 4330.6 5290.8 8855.1 7656.7 9114.4 17360.5 26361.2 129721.3 85.9% 87.8% 71.2% 72.1% 95.4% 87.1% 89.3% 88.5% 95.8% 68.9% 91.3% 88.3% 茨城 前橋 群馬 習志野 関東 神奈川 袋井 愛知 京都 八尾 関西 合計 6 台 6 台 7 台 11 台 8 台 4 台 6 台 6 台 19 台 10 台 30 台 113 台 1962:26 2022:05 3281:02 2860:46 2814:50 1145:45 2363:11 1862:01 6106:33 2253:55 10217:58 37352:48 83.05% 76.62% 63.26% 65.02% 81.69% 77.21% 82.84% 76.25% 79.12% 57.96% 81.66% 76.2% 52.97% 49.89% 48.56% 46.75% 57.94% 56.03% 64.21% 53.79% 59.45% 40.27% 53.31% 53.38% 748:15 869:39 704:32 948:26 1432:18 661:35 1158:35 927:39 3202:23 730:55 4449:49 15834:06 44.48% 43.42% 33.30% 32.29% 53.78% 47.05% 56.77% 47.23% 55.57% 26.65% 48.37% 45.87% 142:48 129:32 322:57 424:42 110:47 126:23 151:45 128:50 223:58 373:39 454:27 2589:48 8.49% 6.47% 15.26% 14.46% 4.16% 8.99% 7.44% 6.56% 3.89% 13.62% 4.94% 7.50% 371:44 392:40 360:57 582:21 471:01 265:05 301:30 423:58 916:29 878:33 2569:05 7533:23 22.10% 19.61% 17.06% 19.83% 17.69% 18.85% 14.77% 21.59% 15.90% 32.03% 27.93% 21.82% 78:22 69:10 308:59 297:43 299:58 174:18 183:10 85:34 504:43 259:29 528:29 2789:55 4.66% 3.45% 14.60% 10.14% 11.26% 12.39% 8.98% 4.36% 8.76% 9.46% 5.74% 8.08% 340:53 541:43 418:21 683:53 349:07 178:54 245:46 398:00 915:42 500:06 1197:46 5770:11 20.27% 27.05% 19.77% 23.28% 13.11% 12.72% 12.04% 20.26% 15.89% 18.23% 13.02% 16.72% 台数 ※前月比はポイント(%)の増減を表す。
車両操業中 実車時間走行時間積納品待機その他 実車実車率走行率実車走行率空車走行率時間比率時間比率時間比率し て い る 。
い ず れ も 専 任 で は な く 、 通 常 は 事 業所で点呼や出荷業務に携わっているスタッ フたちだ。
月に二〜四日だけデータ分析業務 を行う勤務割りにしてある。
各メンバーがそれぞれ自分の所属する事業 所のパソコンからサーバーにアクセスしてデー タをとり、車両の稼働率・実車率・燃費など の分析を行い、管理に必要な帳票を作成する。
どんな切り口で分析し、どんなフォーマットの 帳票にするかもメンバーの判断に委ねられて いる。
現場の人間が課題を見つけ、仮説を立 47 NOVEMBER 2011 各地の事業所に輸送を割り振っている。
ただ し配車は各事業所で個別に行うため、同じル ートの往復に別々に車を仕立てることもある。
またチーズ・バター、アイスクリームなどの幹 線輸送や資材の輸送も、それぞれ別々に配車 を行っているため、全体のルートを見直して 輸送効率を上げることが難しかった。
今回、部門を越えたプロジェクトを組織し、 そこにMPViS −21で分析したデータを 集約することによってそれが可能になった。
今 後は配車情報を一元管理する恒常的な組織の 整備が課題となる。
労務違反項目もすべて管理 MPViS −21のデータはドライバーの 労働時間の分析にも活用している。
「待機時 間や休憩時間を含め一日の拘束時間が一六時 間を超えていないか」「一日の連続運転時間が 四時間を超えていないか」「運転時間が一日九 時間、二日で一八時間を超えていないか」「次 の拘束までに休息時間を八時間以上とってい るか」など法律で定めるすべての労務違反項 目を管理し、毎月ドライバー別・事業所別に 集計・分析を行い法令遵守に役立てている。
同社は販売店への配送や一般貨物の輸送な ども含め一日におよそ二〇〇〇台の車両を運 行している。
このうち半分がタコグラフの装 着が法律で義務付けられている八トン以上の 大型車だ。
ただし大半は協力会社の車両で自 社での保有率は一〇%程度に過ぎない。
これまでにMPViS − 21を導入したの は運送子会社一社の車両を含め一四六台。
今 後は導入対象を広げ、他の運送子会社や同社 向け業務の比重が高い協力会社にも車両更新 時にMPViS − 21の採用を勧めていく。
一方、主に牛乳販売店向け配送に従事する 小型車についても次世代型の運行管理システ ムの検討を始めた。
小型はほとんど協力会社 の車両で、現在は携帯電話のパケット通信を 利用した動態管理システムを搭載して運行管 理や温度履歴管理を行っている。
このシステムはもともと一〇数年前に明治 乳業が導入したもので、当初はGPSで移動 を追跡する仕組みだった。
LCを設けた際に 販売店配送の配車業務も各工場からLCに集 約した。
これに合わせて販売店からの到着時 間の問い合わせに即座に答えられるよう、明 治乳業が自らサーバーを用意、荷主がシステ ムの利用料を一部負担するかたちで導入した。
しかし、その後、通信環境が整い、ドライ バーとも携帯電話で直接連絡をとれるように なったため、現在は動態管理の必要性が薄れ ている。
また元請けの一元化で協力会社との 契約元が、明治乳業から明治ロジテックに変 わるなど当時とは状況も変わっている。
今後は明治ロジテックの主導でシステムの 導入を考える必要があり、導入の目的や投資 効果など大型車とはまた別の観点から分析を 急いでいる。
(フリージャーナリスト・内田三知代) てて自らMPViS −21で分析を行い、そ れを実証したうえで改善策を提案する。
そう した運用形態を狙いあえて専任にしなかった。
業務への習熟やセキュリティ上の問題もあり、 現状ではサーバーへのアクセスを八人のメンバ ーだけに制限している。
しかし、「本来は誰も がデータベースに自由にアクセスできるのが理 想だ。
現場の?気づき?をこのシステムで?見 える化?する形を少しずつ広げていきたい」と 藤井常務は強調する。
同社は現在、経営企画本部の主催で営業本 部、物流運行本部も参加し、車の操業率(稼 働率)を五〇%以上に高めることを目標とす るプロジェクトに取り組んでいる。
MPViS − 21の運行データをこのプロジェクトで活用 している。
毎月、物流運行本部が事業所別の 稼働率や実車率など指標となるデータを提供し (表1参照)、これをもとに営業本部が運行ル ートの見直しなど改善を進める。
MPViS −21を導入した大型車は主に、 市乳の保転やチーズ・アイスクリームのデポへ の輸送を担当している。
深夜に工場を出発し て輸送を終え、午前中に事業所に戻るという 運行パターンが多く、この場合には稼働率が四 〇%にも満たない。
こうした稼働率の低い車 両をMPViS −21で抽出し、稼働してい ない時間帯に資材などの輸送を割り当てるなど 対策を進め成果を上げている。
同社は市乳の保転については東西に配車セ ンターを設け、センターがLCの指示を受けて
