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2011年11月号
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第72回 日立物流

NOVEMBER 2011  54 物流市場の二極化も追い風に  3PLという概念は物流業界において定着して きたように思えるが、資本市場からみれば、3P Lが利益成長のドライバーになっている物流会社 は少ないという印象がある。
その中で日立物流は 「システム物流」という固有の名称を用い、業界 内でいち早く3PLを開始し、利益成長の柱とし た数少ない物流会社の一社である。
 同社は一九九〇年代に「システム物流」の本格 展開を始めたが、当初は必ずしも順風満帆とは 言えなかった。
3PL事業という概念が一般には 根付いていなかったために3PLの構築に苦戦し、 利益率は非常に低かったと考えられる。
 それでも当時から今に至るまで取引の続く荷主 は複数あり、それらの会社との良好な関係のもと、 最適な物流システムの構築に尽力してきた。
だか らこそ日立物流は顧客の物流効率化のノウハウを 習得したといっても過言ではないだろう。
 ようやく「システム物流」の事業基盤を整える と、同社に追い風が吹き始めた。
九〇年代後半に 企業の資産リストラが本格化するとともに、物流 自体も経営戦略の一環として捉えられるようにな り、「システム物流」が注目を集めることになる。
 二〇〇〇年代初めのITバブル崩壊以降は、大 手流通会社やホームセンターなどが物流費の見直 しに着手し、中間流通の見直しや物流の外部委託 に注目し始めた。
これにより「システム物流」は 一躍脚光を浴び、受注件数も飛躍的に伸びた。
そ のような時代の流れに準じて、二〇〇〇年代前半 には多くの物流会社が日立物流に追随し、3PL を手掛けることになった。
 昨今の景気低迷や震災後の物流のあり方の再検 討などにより、今後、3PL事業者の存在感は 増していくだろう。
日本では物流業者は下請け業 者として扱われる傾向が強い。
これは顧客が非コ ア部門として物流子会社を自社内で保有していた ことや、複数の卸・物流業者が存在するという供 給過剰が主因と考えられよう。
 しかし東日本大震災でサプライチェーンの問題 が取りざたされたのをきっかけに、今後は戦略的 な物流システムの構築が大きな経営課題になる可 能性がある。
日立物流やヤマトホールディングスな どは、顧客のWebによる在庫管理などシステマ チックな物流サービスの提供が可能である。
そう したサービスが差別化要因となり、物流市場では 選ばれる物流会社とそうでない物流会社の二極化 も起こり得よう。
 事業環境の追い風に加え、日立物流は成長の第 二フェーズに向けた取り組みを順調に進めている。
〇七年に資生堂物流サービス(現日立物流コラボ ネクスト、以下コラボネクスト)を買収したのを 皮切りに、内田洋行、DICなどの物流子会社や 米国の3PLであるJPH社、インドのフォワー 日立物流 成長の第二フェーズに向けM&A戦略推進 バンテック買収の成否は海外事業で決まる  成長の第二フェーズに向けたM&A戦略は 今のところ順調に進んでいる。
今年四月には 自動車部品物流大手のバンテックを買収した。
自動車産業の海外物流ニーズをどれだけ取り 込めるかがこの買収の成否を握っている。
今 後は買収先企業のマネジメントがより重要にな るだろう。
土谷康仁 メリルリンチ日本証券 調査部 シニアアナリスト 第72回 55  NOVEMBER 2011 ディング大手、フライジャック社など海外企業の 買収、物流一括提携などを矢継ぎ早に実施した。
 資本市場では、それら買収先企業と日立物流本 体とのシナジー効果に注目している。
今後はコア 事業の3PLのマネジメントに加え、傘下に収め た企業群のマネジメント体制がより重要になろう。
バンテックとは相互補完が可能  一般的に、買収時の相手先企業の収益性は低 いと言える。
しかし日立物流の場合、過去の買収 のケースをみると、大規模な案件だったコラボネ クストの収益性は徐々に改善しているようだ。
今 期二〇一二年 三月期はコラボ ネクストを中心 としたヘルスケ ア・化粧品の物 流システムにコ ーセーの物流を 取り込み、共同 物流を実施する。
 さらに今年四 月には自動車部 品物流大手のバ ンテックを買収 した。
バンクオ ブアメリカ・メ リルリンチ(B of AML)で は、飲料、消費 財など自動車向 け以外の国内3PL事業に関しては、バンテック に日立物流のノウハウを導入することによって収 益性の改善が図れると考える。
 一方、日立物流の自動車関連の取り扱い比率は 小さく、一部でカーオーディオを扱うに留まって いる。
自動車産業向けに関しては、バンテックの 業界知識やノウハウを活用した業務領域の拡大な どが期待できる。
 短期的には、今期は自動車の国内生産の増加を 背景にしたバンテックの取扱増により、利益貢献 が見込めるだろう。
ただ、キャセイパシフィック 航空など外資系エアラインが指摘するように、今 後の国際航空貨物は景気低迷の影響から物量が伸 び悩む可能性がある。
中期的には自動車の海外生 産比率が高まるとみられ、バンテックでは中国や インドネシア、インドなどの海外事業が利益成長 の鍵になると考えられる。
 現状、自動車メーカーの海外物流は日本国内よ りも内製化比率が高く、外注する場合は大手日系 物流業者を利用するケースが多い。
今回の買収は 日立物流とバンテックが自動車産業の海外事業の 拡大に参画できるか否かが正否を握ることになる だろう。
 バンテック株購入のリスク要因としては有価証 券の強制評価減がある。
株価が買収時よりも著し く下落(概ね五〇%程度)し、今後の収益改善 が困難と判断される場合には、日立物流は一定の 特別損失を計上せざるを得ない。
しかし、世界的 な株安を受けて株価は低迷しているものの、バン テックの中期的な収益改善の見込みはあるとみら れ、即座に強制評価減を実施する可能性は低いと みている。
 B of AMLはこれらの事業環境を踏まえ、日 立物流の一二年三月期売上高は前期比五一・六% 増の五五九二億円(会社計画五五〇〇億円)、営 業利益は四七・一%増の二三四億円(同二二五 億円)、純利益は六六・四%増の一一三億円(一 〇五億円)と、会社計画に対して超過すると予想 している。
 最後に、最近でこそ話題にならないが、資本市 場の視点からは日立物流には親子上場という問題 がある。
引き続き日立製作所が株式の過半数以上 を保有することによる株式流動性の問題、コーポ レート・ガバナンスの問題などが気になる点であ る。
日立製作所は経営課題として選択と集中を打 ち出しており、金融や物流はノンシナジーの子会 社と位置付けられるだろう。
 仮に日立製作所が株式を売却した場合でも、日 立物流と日立グループとの取引関係が大きく変わ ることはないであろう。
また、日立のブランドが 外れたとしてもこれまで築き上げた実績からみれ ば、業績に与える影響は軽微と考えられる。
そう いった意味でも日立物流が独立、または他社と業 務・資本提携などを検討する価値は十分にあるだ ろう。
引き続き、業績動向だけでなくコーポレー ト・ガバナンスの観点からも注目される。
《出来高》 過去10年間の株価推移 つちや やすひと 一九九七年三月神戸大学大学院卒、 九八年四月和光証券入社。
三菱証券 などを経て、二〇〇五年一〇月にメ リルリンチ日本証券に入社。
運輸セ クター担当アナリストとして活躍し ている。

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