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2011年11月号
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「ベンチャーを脱し大手に立ち向かう」SBSホールディングス 鎌田正彦 社長

NOVEMBER 2011  4 のでは?  「上場の頃は約一六億円だった自己 資本が今では二二〇億円に増えました。
売上規模も当初の一九五億円が今では 約一二〇〇億円になっています。
しか し、まだまだ中途半端です。
大手荷主 の大型案件を取るには、物流市場で上 位一〇社には入る必要がある」  「当面は連結売上を三〇〇〇億円に まで伸ばすことを目標としています。
それだけの規模があれば物流企業とし てのブランドを確立できる。
大手荷主 の引き合いも今よりさらに増えてくる。
海外ネットワークの整備も可能になっ てきます」 ──M&Aではなく自律成長ではダメ なのですか。
 「自律成長も大切ですが、時間がか かりすぎる。
自律成長だけで三〇〇〇 億円にしようとしても、私の代では実 現できない。
日本の経済成長が止まっ ている中で、当社だけ毎年二〇%、三 〇%と伸びていくという計画には現実 味がありません。
時間を買う意味でも、 やはりM&Aが核になる」 ──近年のM&Aは大半が物流子会社 ですが、今後のターゲットもそこが中 心になりそうですか。
 「オーナー系企業も出てきます。
こ れまでにも当社は全通やエイシーシス テムコーポレイションというオーナー会 売上高三〇〇〇億円目指す ──物流業界でも大型のM&Aが増え てきました。
 「これからもっと増えていくでしょう。
ちょうど一〇年前に日産自動車が物流 子会社のバンテックを、MBO(マネ ジメント・バイアウト:経営陣による 買収)で切り離したのを見て、こうし た時代が来ることは予想していました。
それまで物流子会社は親会社にとって 天下り先でした。
先輩たちがいて、自 分たちもお世話になるかもしれない会 社だから管理も甘かった」  「それをカルロス・ゴーン氏が一変さ せた。
物流子会社といえどもコスト競 争力がなければ使わない時代がやって 来た、と考えました。
落札はできなか ったけれども、バンテックの入札にも 参加した。
その後、〇四年に当社は雪 印物流(現フーズレック)を買収しま した。
この辺りが物流業界の本格的な M&A時代の幕開けで、その後はどん どん活発化しています」  「日本の人口は既にピークを過ぎまし た。
人口が減っていけばマーケットだ って小さくなっていく。
誰もが今のま まで生き残っていけるはずがない。
淘 汰の必要があります。
M&Aの魅力 の一つはライバルを減らせることです。
同業種同士の大型合併は日本でも既に 珍しいことではなくなっています。
物 流業界でも当然、同じことが起きるは ずです」 ──SBSは日立物流と並んでM&A に積極的です。
雪印物流を皮切りに、 〇五年に東急ロジスティック(現ティ ーエルロジコム)、昨年にはビクターロ ジスティクス(VLロジネットに商号 変更後、ティーエルロジコムに吸収合 併)、そして今年四月には日本レコー ドセンターを子会社化しました。
 「目的の一つは企業規模の拡大です。
〇三年十二月にジャスダックに上場し た頃の当社は、小さなベンチャー企業 に過ぎませんでした。
大きな仕事が したいと思っても、リスクが取れない。
数億円程度の穴をあければそれで倒産 ですから、大型案件や大規模センター の開発などには手が出せなかった」  「莫大な自己資本を持つ大手は、リ スクを取ることができます。
実際、コ ンペでは赤字でも取りに来たりする。
対抗するには当社も規模を追う必要が ありました。
そうしないとベンチャー はいつまでも大手の下請けかニッチな 商売しかできない。
上場して自己資本 を積み上げることで、ようやく大きな 仕事ができるようになったんです」 ──その規模はもう十分に確保できた SBSホールディングス 鎌田正彦 社長 「ベンチャーを脱し大手に立ち向かう」  企業買収を繰り返すことで株式公開時の二〇〇三年度に約 二〇〇億円だった連結売上高を一〇年度に約一二〇〇億円ま で拡大させた。
当面の目標を三〇〇〇億円に置き、今後も積 極的に買収攻勢をしかける。
企業規模の拡大によって、より 大きなリスクテイクを可能にし、既存の大手に立ち向かう。
(聞き手・大矢昌浩、石鍋圭) 5  NOVEMBER 2011 社を子会社化しました。
同様の引き合 いは今も数多く寄せられています。
上 場企業であってもオーナー系では、い ずれ事業承継の問題が発生する。
息子 に跡を継がせるか、優秀な社員に経営 を任せるか、外部に株を売却するのか、 オーナーは選択を迫られる」  「あるいは独自で経営していても、そ れ以上の成長が見込めなくなったとき、 新たな資本を入れて再出発を選択する というケースもある。
全通やエイシー システムはそのパターンでした。
全通 は買収時点で売上高が一二〇億円程 度の規模でしたが、これを例え二〇 〇億円まで伸ばしたとしても大手との 競争には勝てないとオーナーは考えた。
それよりもSBSに傘下入りして、大 きな組織として戦うという選択をした」  「エイシーシステムにしても売上規模 は一〇億円程度ながら、非常に利益率 の高い会社で、そのままなら株を売る 必要などなかった。
しかし、オーナー は会社の規模をヒト桁大きくしたかっ た。
そのためには一〇億円、二〇億 円という規模の資金調達が必要になる。
それを実現するために当社にグループ 入りしたんです」 ──これまでM&Aを重ねて見えてき たことは?  「M&Aを始める前は、当社が買っ た途端に荷主が離れていってしまうの なかったでしょう。
M&Aの成否は数 字的なことよりも、そういった泥臭い 人間味の部分にかかっているのです」 ──買収によって生じた余剰人員を整 理しなければ、効率化も難しくなる。
 「確かに成果が出るまでに多少時間 はかかります。
しかし、長期的な視点 に立てば当社の方法は正しいと確信し ています。
買った我々がやるべきなの は社員を切り捨てることではなく、成 長して新しい仕事を作ることです」 ──今後の展開は?  「国際物流のニーズに当社も対応し ていく必要がある。
その第一歩として、 今年五月にアトラスロジスティクスと いうインドのフォワーダーを買収しま した。
いまインドに進出している日本 の企業を回っているのですが、非常に 良い手ごたえを得ています。
中国やタ イなどにも良いM&A案件があれば積 極的に打って出るつもりです」 ではという心配がありました。
しかし、 荷主と長年の付き合いをきちっとこな している物流企業であれば、資本関係 がどう変わってもそう簡単には切られ ないことがわかった。
システム的な連 動もあるし、その企業の物流を、どこ よりも分かっているわけですから繋が りも深い。
嬉しい誤算でした」 ──では失敗だと感じたことは?  「もちろん色々とあります。
おそら くトータルで五〇億円くらいは?授業 料?を払っている。
その一つが引越し 業のダックの買収です。
引越しは基本 的にトラック運送なので、当社の本業 である企業間物流との親和性が高いと 考えたのですが、甘かった。
引越しの 顧客は一般消費者、つまりB2Cの ビジネスモデルです。
広告宣伝費が莫 大にかかる。
B2Bの物流とは全く事 業構造が違うということが分かってい なかった。
三年がんばってみましたが、 やはり経験もノウハウも無い市場で勝 つのは難しい。
結局、アートコーポレ ーションさんに売却することになりま した。
そのときに、当社はB2Bの物 流に特化すると心に決めました」 ──買収する企業の価値はどうやって 評価しているのですか。
 「当初はデューデリジェンスまで自分 で全てやっていました。
今も専門家に 任せるだけでなく、必ず私自身が現地 に行って社員たちと直接話し、現場も 自分の目で確かめるようにしています。
現場や人材の質が一定のレベルに達し ていることが確認できたら、抱えてい る顧客や効率化の余地などを考慮して 買うか買わないかを決めます」  「『支払い家賃が高くて業績を圧迫し ているが、当社の物流センターを使え ばすぐにこれだけのコストダウンが図 れる』といったようにM&A後のシナ ジーまで含めて判断しています。
そう した判断は会計士やM&Aの専門家に はできない」 人員リストラはしない ──買収後のポイントは?  「やはり人を大切にするということ です。
当社はM&A後の人員リストラ は一切しません。
オーナー企業であれ ば、オーナーにも一緒に来てもらって 手厚く処遇しています。
リストラすれ ば社内のモチベーションが下がるだけ でなく、その後のM&A戦略にも大き な悪影響が出てしまう。
『あそこに入 ったら切り刻まれる』などという噂が 立つ企業に、大事な会社を売ろうと思 うオーナーや株主はいません。
売り手 はそういう部分をよく見ている。
私が リストラを躊躇なく断行するような経 営者だったら、おそらく当社がここま でM&Aを積み重ねてくることはでき (かまた・まさひこ)1959年宮崎 県生まれ。
79年、佐川急便入社。
87年に同社を退社し、関東即配(現 SBSホールディングス)を設立。
軽 トラックを活用したエリア集配業を 開始する。
2003年12月にジャス ダック上場。
04年に雪印物流(現 フーズレック)を子会社化したのを 皮切りに、05年に東急ロジスティッ ク( 現ティーエルロジコム)、06年 に全通、10年にビクターロジスティ クス、今年4月に日本レコードセン ターを買収するなど、矢継ぎ早に物 流企業のM&Aを繰り返している。

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