2011年10月号
ケース
ケース
G─7ホールディングス 在庫削減
OCTOBER 2011 44
リーマン・ショックで在庫改革に本腰
カー用品販売店の「オートバックス」をチ
ェーン展開するオートバックスセブン(本社・
東京)は現在、全国に約五〇〇店舗を構えて
いる。
そのうち約五〇店舗をフランチャイズ (FC)として運営しているのが、兵庫県に 本社を構えるG─7ホールディングスだ。
オー トバックスセブンのFC加盟店の中では最大 の規模を持つ。
G─7は東証・大証一部上場の小売り企業 グループで、二〇一一年三月期の連結売上高 は七一四億円。
「オートバックス事業」と、業 務用食材を扱う「業務スーパー事業」を経営 の二本柱に、関東以西に約二〇〇店舗を展開 している。
創業は一九七六年。
創業オーナーである木 下守会長が兵庫県にカー用品販売店の「オー トセブン」を開店した。
ほどなくオートバッ クスのFC加盟店となり、兵庫県内を中心に 店舗数を増やしていった。
九六年に大阪証券 取引所の二部に上場すると、〇一年には東証 二部にも上場。
〇五年に東証・大証の一部銘 柄に指定された。
〇二年に子会社としてサンセブンを設立し、 神戸物産が展開する「業務スーパー」のFC 加盟店としての活動も開始した。
これ以降、 同事業を中心とする「業務スーパー・こだわ り食品事業」は急拡大を続けており、いまや グループ売上高の約五五%を占めるまでに成 長している。
〇六年にオートセブンとサンセブンを傘下 に収めるかたちで持株会社制に移行した。
そ の後もベストバイ(本社・大阪)が展開する リサイクルショップ「良品買館」のFC加盟 店としてリユース事業に進出。
さらに産直事 業の「めぐみのさと」を買収してアグリ事業 に乗り出すなど多角化を進めている。
各事業間のシナジー効果が薄いようにも見 える。
しかし、オートバックス事業の事業会 社であるオートセブンの社長を兼務するG─7 の金田達三社長は、「売るものが違っても小売 りという点では一緒。
まったく問題ない。
よ うは、そこで働いている個人の力を伸ばすこ とができるかどうか。
その個人の力が会社の 目標に向かうようにベクトルを一つにしてい けばいい」と言い切る。
いずれもFC加盟店として活動しているた め、物流や情報システムをはじめとする受発 注の仕組みは、それぞれのチェーン本部のイ ンフラを利用している。
産直事業も契約農家 に直接店舗まで納品してもらうかたちだ。
そ うして物流機能をパートナーに委ねる一方で、 カー用品を販売する「オートバックス」のフランチ ャイズ加盟店を約50店舗展開している。
物流や情報 システムはチェーン本部に委ね、自らは店舗運営の高 度化に集中してきた。
リーマン・ショック後は商品 在庫の削減に取り組み、4年前に4.8回だった在庫回 転率を7.4回まで向上させた。
在庫削減 G─7ホールディングス 1年間売れない「不動在庫」にメスを入れ オートバックス事業の店舗在庫を3割削減 G-7ホールディングスの 社長を兼務する金田達三 オートセブン社長 45 OCTOBER 2011 自らは店舗オペレーションの高度化に集中し てきた。
それだけに、店頭にムダな在庫を持たない という意識は従来から強い。
とりわけオート セブン事業でチェーン本部から購入する商材 は、一部の季節商品を除けば買い取りが原則。
店舗の在庫をいかに効率よく運用できるかで 業績が大きく左右される。
過去には木下会長が自ら指示して、特定の 車種だけに対応するタイヤホイールなど滞留 在庫になりがちな商品に、入荷年月が一目で わかる色別のシールを貼るなどの工夫を施し たこともあった。
在庫管理にはとくに目を光 らせてきた。
ところが〇六年三月期に同事業で過去最 高益を達成したことで、少し脇が甘くなって しまった。
〇八年三月期に前年を上回る予算 を組み、在庫を積み増した。
だが想定してい たほど売り上げが伸びなかったことから、在 庫に過剰感がでた。
そこに〇八年秋のリーマ ン・ショックが襲った。
即座に危機的な状況 に落ち込んだわけではなかったが、景気の悪 化がオートバックス事業に深刻な影響を及ぼ すのは時間の問題だった。
ここで改めて創業者が動いた。
木下会長 が危機管理に乗り出し、あらゆる経費を削減 するよう指示を下した。
その意を受けた金田 社長は、〇九年初頭の会議でオートセブンの 関係者すべてに在庫削減の徹底を呼びかけた。
とくに着目したのが、仕入れてから一年間経 っても売れない?不動在庫?だった。
これを 「半年後に半減、一年後にゼロ」にするとい う目標を打ち出し、達成した店舗には報奨金 を出すと宣言した。
背景には、〇六年三月期から強制適用され るようになっていた減損会計への対応という 目的もあった。
すでにオートセブンは、仕入 れから一年経っても売れない商品の在庫評価 を二五%減損し、三年経てばゼロにするとい うルールに基づく運用をスタートしていた。
こ のため「いずれは売れるだろう」と従来は黙 認していた在庫に対して、厳しく接する必要 が会計上も生じていた。
まずはチェーン本部のシステム上に蓄積され たデータから店舗別の?不動在庫リスト?を 抽出。
値引き販売や廃棄処分などによって処 理を進めていった。
同時に、在庫の総量を減 らすことにも取り組んだ。
店舗ごとに在庫金 額の目標値を設定し、達成できれば報奨金を 出すというインセンティブを与えて取り組みを 促した。
仕入れを急激に絞ったこの時期には、チェ ーン本部から「もっと買ってくれ」というク レームに近い声も寄せられた。
しかし、動じ なかった。
「在庫削減が一段落すれば回復で きるという確信があった」と金田社長。
実際、 在庫削減が一区切りついてからは、店頭に並 ぶ商品の鮮度が増し、チェーン本部の期待を 上回る仕入れを再開できたという。
「交差比率」を指標に活動を推進 在庫管理で難しいのは、適正レベルを維持 することだ。
経営トップの掛け声で一時的に 在庫を減らすことはできる。
しかし、適正な 在庫水準を維持する仕組みがなければ、しば らくすれば元の状態に戻ってしまい、再び在 庫が増える。
オートセブンは「交差比率」という経営指 標を継続的に活用することで、在庫の適正化 を図っている。
算定式は「交差比率=粗利益 率(%)×在庫回転率(回)」。
商品の在庫回 転率に粗利益率を掛けることで、店舗別の取 グループで展開する195 店舗(2011 年8月末現在)のうち約8割がFC 店 近畿地方 オートバックス 32 店舗 スーパーオートバックス 2 店舗 走り屋天国セコハン市場 1 店舗 クリスタルセブン 1 店舗 タイヤ専門館 1 店舗 BPセンター 2 店舗 カーゾーン 1 店舗 TSUTAYA 3 店舗 業務スーパー 31 店舗 Green‘sK 2 店舗 めぐみの郷 18 店舗 良品買館 2 店舗 バイクセブン 3 店舗 nagomi 4 店舗 神戸粉もん七つの壷 3 店舗 こだわりの食品館 1 店舗 中部地方 オートバックス 6 店舗 業務スーパー 24 店舗 Green‘sK 1 店舗 バイクセブン 1 店舗 中国地方 オートバックス 3 店舗 メ ガネリサイクル王国 1店舗 バイクセブン 1 店舗 九州地方 業務スーパー 8 店舗 バイクセブン 1 店舗 関東地方 オートバックス 6 店舗 業務スーパー 29 店舗 バイクセブン 1 店舗 良品買館 1 店舗 めぐみの郷 4 店舗 Green‘sK 1 店舗 OCTOBER 2011 46 り組みを評価している。
一般に粗利益率と在庫回転率は相反する関 係にある。
粗利の大きな商品ほど在庫回転率 は低い、すなわち在庫が多くなりがちという 傾向がある。
また店舗在庫を減らしすぎれば 欠品などの弊害を招き、機会損失につながる。
そうした多くの要因のバランスをとりながら 在庫削減を進めていくKPIとして、同社は 交差比率を選んだ。
金田社長自身は以前から交差比率を経営管 理に利用していた。
これを〇九年からの在庫 削減を本格化するにあたって、改めて店舗別 管理に用いて、交差比率が二〇〇を超えるこ とを目指すという目標を設定した。
ただし、「交差比率はあくまでも経営レベ ルの管理指標であって、現場の管理指標では ない」(金田社長)。
そこで複数店舗の収益を 管理するエリアマネージャーなどの経営幹部 を対象に交差比率の改善を課す一方で、現場 の店長たちに対しては、より落とし込んだ数 値目標を与えた。
各エリアマネジャーを通じて、店舗ごとに 在庫削減の金額や、不動在庫の金額の目標値 を具体的に設定した。
その金額を達成できれ ば報奨金を出すというシンプルな目標管理で ある。
ほとんどの店長にとって、交差比率は縁 遠い指標だった。
それでも中には、自ら交差 比率をにらみながら在庫削減に取り組む店長 も出てきた。
ある店長は、金田社長が「二五 に見つけ、積極的に無くしていく努力が欠か せない。
とは言え、不動在庫になりそうな商 品をすべて店頭から排除してしまえば、機会 損失や、品揃えの面でユーザーの期待を裏切 ることにもなりかねない。
不動在庫の発生を未然に防ぐための作業は、 情報システム任せでは難しく、売場を熟知し た担当者がチェックを繰り返すしかなかった。
近道はなかった。
何より店長をはじめとする 従業員の意識改革が求められた。
改革を本格化した当時、関東カンパニーの 社長職にあり、現在ではオートセブンの営業 本部長を務めている山本竜太常務は、「僕の 場合、現場を回ってムダな在庫だと感じた商 品を指摘し、担当者にデータを見せながら指 示するといったことを繰り返した。
同じよう な考え方で担当者が売場をチェックするよう になれば、特別なことをやらなくても在庫は 〇で充分」と考えていた交差比率を、三〇〇 を超えるレベルにまで引き上げた。
その結果、 在庫の減らし過ぎで欠品が始まってしまうこ とまで確認できたという。
試行錯誤を経ながらも、取り組みは進化し ていった。
最近では交差比率が四五〇に達す る店舗も出てきている。
車検やメンテナンス 事業などのサービスに注力して粗利率を高め ながら、在庫を極限まで減らした成果だった。
「それでも欠品していないと言うのだから、ム ダな在庫を一切持たずに運営できているのだ ろう」と金田社長は目を細める。
実はこうした教育効果も交差比率を採用し た狙いの一つだった。
売上高や利益といった わかりやすい数値だけでなく、交差比率のよ うな管理指標の意味を考えることでマネジメ ント感覚に長けた人材が育つ。
これは会社の 将来にとって極めて有用だ。
上手くいった事 例を経営指標の裏づけとともに横展開できれ ば、全体のレベルアップも期待できる。
在庫削減に近道はない 不動在庫の撲滅については、また別のアプ ローチが必要だった。
当初はすでに不動在庫 化した商品データをリストアップし、値段を 下げたり、廃棄処分することで、まずはこれ を一掃する必要があった。
しかし、いったんムダな不動在庫を一掃し てしまえば、次は再び発生させないことに焦 点が移る。
不動在庫になりそうな商品を事前 オートセブンの在庫回転率を4 年間で3 割以上改善 300 250 200 150 100 50 0 8 7 6 5 4 3 2 1 0 売上高 4.8 5.2 5.1 5.7 6.1 7.4 7.5 06 年3月 07 年3月 08 年3月 09 年3月 10 年3月 11 年3月 12 年3月 予定 売上高(億円)・営業利益(千万円) 在庫回転率(回) 営業利益在庫回転率 47 OCTOBER 2011 不動在庫については、完全にゼロにしてし まうと店頭の品揃えに支障が出てしまう。
た とえば特定の車種のキズを補修する塗料など はユーザーのニーズが限定されるため、店舗 でどんなに努力しても売り切れるとは限らない。
そのため不動在庫はゼロにはならない。
それ でも九月末までには現在の半分の一五〇〇万 円まで減らしたい考えだ。
物流や情報システムをチェーン本部に依存 するG7グループにとって、差別化の手段は 店舗オペレーションに限られる。
金田社長は 「オートバックス事業は?店長業?。
店長さえ しっかりしていれば、運営部もエリアマネー ジャーも要らない」とさえいう。
優秀な人材 をどれだけ確保できるかにかかっている。
オートセブンの正社員比率は高い。
今年三 月末時点のG─7全体の従業員数は一一九〇 人。
このうちオートセブンの社員が九一六人 と大半を占める。
オートバックス事業で店舗 業務に携わっている従業員の正社員比率は約 八割に上る。
業務スーパー事業の正社員比率 が一割程度なのとは対照的だ。
この点について山本常務は、「たとえば車 検事業であれば、検査員や整備士の資格がい る。
そういう人材を抱えておかなければ事業 が成り立たない。
われわれは『セールス・ピ ットマン』と呼んでいるが、ピットに入庫し たお客様の車を確認して、タイヤの減りとか オイルの状態などをお伝えするのがわれわれ の仕事。
これが営業行為にもつながる」とそ の理由を説明する。
適正な在庫水準を維持するためには、業務 に精通した発注担当者も欠かせない。
ここで も正社員として経験を積み、自ら担当してい る部門の商品について熟知した人材を抱えて いることが競争力につながる。
そのためにオ ートセブンは、社員の定着率を高め、人材を 育てていくことを重視している。
カー用品市場は近年、縮小傾向にある。
新 車が売れなくなっている一方で、古い車を大 切に乗りつづけるユーザーが増えてきた。
そ のためにメンテナンスなどへのニーズが高まっ ている。
時代と共に?カー用品の販売?から ?トータルカーライフのサポート?に軸足を移 してきたオートバックス事業にはまだ将来性 がある、とオートセブンは考えている。
だからこそ金田社長としても「来期は一〇 店舗を出す」ことを内外に宣言している。
お 膝元である兵庫県内はすでに市場がほぼ飽和 状態にある。
今後は関東での事業拡大を狙っ ている。
大消費地の関東であれば、競合店が 抑えている市場を浸蝕する余地はまだ大きい。
物流をチェーン本部に任せているため出店地 域の制約もない。
ただし、チェーン本部の承認を得られなけ れば新しいエリアへの出店はできない。
G─7 としては、同業のFC加盟店をM&Aでグル ープに加えるといった選択肢も視野に入れて 事業を拡大していく方針だ。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) 減った」と振り返る。
一連の取り組みの結果、〇九年初めにオー トセブン合計で三三億円あった商品在庫の金 額は、約一年後には約二二億円まで減少した。
同じく約一億円あった不動在庫も、今や三〇 〇〇万円まで減っている。
〇・二%程度あっ た商品の廃棄ロス率も約〇・一五%まで改善 した。
いずれもチェーン本部を驚かせるほど の成果だった。
この間、オートセブン全体の在庫回転率は 改善しつづけている。
過去最高益を計上した 〇六年三月期に五・一回だったのが、直近で は七・四回まで向上した。
「七・四という回 転率は、同じような商品を扱っている小売業 では最高レベル。
これ以上、減らす必要は感 じていない」と金田社長はいう。
最近は、新車や中古車を扱う事業に注力し ていることから在庫金額が増える傾向にある。
今年度の在庫回転率は、前年度比でほぼ横這 いの七・五回を見込んでいる。
今後は総量の 削減ではなく、在庫の中身を精査することで 消費者のニーズにマッチした品揃えを追求し ていく方針だ。
オートセブンの山本竜太 常務取締役営業本部長
そのうち約五〇店舗をフランチャイズ (FC)として運営しているのが、兵庫県に 本社を構えるG─7ホールディングスだ。
オー トバックスセブンのFC加盟店の中では最大 の規模を持つ。
G─7は東証・大証一部上場の小売り企業 グループで、二〇一一年三月期の連結売上高 は七一四億円。
「オートバックス事業」と、業 務用食材を扱う「業務スーパー事業」を経営 の二本柱に、関東以西に約二〇〇店舗を展開 している。
創業は一九七六年。
創業オーナーである木 下守会長が兵庫県にカー用品販売店の「オー トセブン」を開店した。
ほどなくオートバッ クスのFC加盟店となり、兵庫県内を中心に 店舗数を増やしていった。
九六年に大阪証券 取引所の二部に上場すると、〇一年には東証 二部にも上場。
〇五年に東証・大証の一部銘 柄に指定された。
〇二年に子会社としてサンセブンを設立し、 神戸物産が展開する「業務スーパー」のFC 加盟店としての活動も開始した。
これ以降、 同事業を中心とする「業務スーパー・こだわ り食品事業」は急拡大を続けており、いまや グループ売上高の約五五%を占めるまでに成 長している。
〇六年にオートセブンとサンセブンを傘下 に収めるかたちで持株会社制に移行した。
そ の後もベストバイ(本社・大阪)が展開する リサイクルショップ「良品買館」のFC加盟 店としてリユース事業に進出。
さらに産直事 業の「めぐみのさと」を買収してアグリ事業 に乗り出すなど多角化を進めている。
各事業間のシナジー効果が薄いようにも見 える。
しかし、オートバックス事業の事業会 社であるオートセブンの社長を兼務するG─7 の金田達三社長は、「売るものが違っても小売 りという点では一緒。
まったく問題ない。
よ うは、そこで働いている個人の力を伸ばすこ とができるかどうか。
その個人の力が会社の 目標に向かうようにベクトルを一つにしてい けばいい」と言い切る。
いずれもFC加盟店として活動しているた め、物流や情報システムをはじめとする受発 注の仕組みは、それぞれのチェーン本部のイ ンフラを利用している。
産直事業も契約農家 に直接店舗まで納品してもらうかたちだ。
そ うして物流機能をパートナーに委ねる一方で、 カー用品を販売する「オートバックス」のフランチ ャイズ加盟店を約50店舗展開している。
物流や情報 システムはチェーン本部に委ね、自らは店舗運営の高 度化に集中してきた。
リーマン・ショック後は商品 在庫の削減に取り組み、4年前に4.8回だった在庫回 転率を7.4回まで向上させた。
在庫削減 G─7ホールディングス 1年間売れない「不動在庫」にメスを入れ オートバックス事業の店舗在庫を3割削減 G-7ホールディングスの 社長を兼務する金田達三 オートセブン社長 45 OCTOBER 2011 自らは店舗オペレーションの高度化に集中し てきた。
それだけに、店頭にムダな在庫を持たない という意識は従来から強い。
とりわけオート セブン事業でチェーン本部から購入する商材 は、一部の季節商品を除けば買い取りが原則。
店舗の在庫をいかに効率よく運用できるかで 業績が大きく左右される。
過去には木下会長が自ら指示して、特定の 車種だけに対応するタイヤホイールなど滞留 在庫になりがちな商品に、入荷年月が一目で わかる色別のシールを貼るなどの工夫を施し たこともあった。
在庫管理にはとくに目を光 らせてきた。
ところが〇六年三月期に同事業で過去最 高益を達成したことで、少し脇が甘くなって しまった。
〇八年三月期に前年を上回る予算 を組み、在庫を積み増した。
だが想定してい たほど売り上げが伸びなかったことから、在 庫に過剰感がでた。
そこに〇八年秋のリーマ ン・ショックが襲った。
即座に危機的な状況 に落ち込んだわけではなかったが、景気の悪 化がオートバックス事業に深刻な影響を及ぼ すのは時間の問題だった。
ここで改めて創業者が動いた。
木下会長 が危機管理に乗り出し、あらゆる経費を削減 するよう指示を下した。
その意を受けた金田 社長は、〇九年初頭の会議でオートセブンの 関係者すべてに在庫削減の徹底を呼びかけた。
とくに着目したのが、仕入れてから一年間経 っても売れない?不動在庫?だった。
これを 「半年後に半減、一年後にゼロ」にするとい う目標を打ち出し、達成した店舗には報奨金 を出すと宣言した。
背景には、〇六年三月期から強制適用され るようになっていた減損会計への対応という 目的もあった。
すでにオートセブンは、仕入 れから一年経っても売れない商品の在庫評価 を二五%減損し、三年経てばゼロにするとい うルールに基づく運用をスタートしていた。
こ のため「いずれは売れるだろう」と従来は黙 認していた在庫に対して、厳しく接する必要 が会計上も生じていた。
まずはチェーン本部のシステム上に蓄積され たデータから店舗別の?不動在庫リスト?を 抽出。
値引き販売や廃棄処分などによって処 理を進めていった。
同時に、在庫の総量を減 らすことにも取り組んだ。
店舗ごとに在庫金 額の目標値を設定し、達成できれば報奨金を 出すというインセンティブを与えて取り組みを 促した。
仕入れを急激に絞ったこの時期には、チェ ーン本部から「もっと買ってくれ」というク レームに近い声も寄せられた。
しかし、動じ なかった。
「在庫削減が一段落すれば回復で きるという確信があった」と金田社長。
実際、 在庫削減が一区切りついてからは、店頭に並 ぶ商品の鮮度が増し、チェーン本部の期待を 上回る仕入れを再開できたという。
「交差比率」を指標に活動を推進 在庫管理で難しいのは、適正レベルを維持 することだ。
経営トップの掛け声で一時的に 在庫を減らすことはできる。
しかし、適正な 在庫水準を維持する仕組みがなければ、しば らくすれば元の状態に戻ってしまい、再び在 庫が増える。
オートセブンは「交差比率」という経営指 標を継続的に活用することで、在庫の適正化 を図っている。
算定式は「交差比率=粗利益 率(%)×在庫回転率(回)」。
商品の在庫回 転率に粗利益率を掛けることで、店舗別の取 グループで展開する195 店舗(2011 年8月末現在)のうち約8割がFC 店 近畿地方 オートバックス 32 店舗 スーパーオートバックス 2 店舗 走り屋天国セコハン市場 1 店舗 クリスタルセブン 1 店舗 タイヤ専門館 1 店舗 BPセンター 2 店舗 カーゾーン 1 店舗 TSUTAYA 3 店舗 業務スーパー 31 店舗 Green‘sK 2 店舗 めぐみの郷 18 店舗 良品買館 2 店舗 バイクセブン 3 店舗 nagomi 4 店舗 神戸粉もん七つの壷 3 店舗 こだわりの食品館 1 店舗 中部地方 オートバックス 6 店舗 業務スーパー 24 店舗 Green‘sK 1 店舗 バイクセブン 1 店舗 中国地方 オートバックス 3 店舗 メ ガネリサイクル王国 1店舗 バイクセブン 1 店舗 九州地方 業務スーパー 8 店舗 バイクセブン 1 店舗 関東地方 オートバックス 6 店舗 業務スーパー 29 店舗 バイクセブン 1 店舗 良品買館 1 店舗 めぐみの郷 4 店舗 Green‘sK 1 店舗 OCTOBER 2011 46 り組みを評価している。
一般に粗利益率と在庫回転率は相反する関 係にある。
粗利の大きな商品ほど在庫回転率 は低い、すなわち在庫が多くなりがちという 傾向がある。
また店舗在庫を減らしすぎれば 欠品などの弊害を招き、機会損失につながる。
そうした多くの要因のバランスをとりながら 在庫削減を進めていくKPIとして、同社は 交差比率を選んだ。
金田社長自身は以前から交差比率を経営管 理に利用していた。
これを〇九年からの在庫 削減を本格化するにあたって、改めて店舗別 管理に用いて、交差比率が二〇〇を超えるこ とを目指すという目標を設定した。
ただし、「交差比率はあくまでも経営レベ ルの管理指標であって、現場の管理指標では ない」(金田社長)。
そこで複数店舗の収益を 管理するエリアマネージャーなどの経営幹部 を対象に交差比率の改善を課す一方で、現場 の店長たちに対しては、より落とし込んだ数 値目標を与えた。
各エリアマネジャーを通じて、店舗ごとに 在庫削減の金額や、不動在庫の金額の目標値 を具体的に設定した。
その金額を達成できれ ば報奨金を出すというシンプルな目標管理で ある。
ほとんどの店長にとって、交差比率は縁 遠い指標だった。
それでも中には、自ら交差 比率をにらみながら在庫削減に取り組む店長 も出てきた。
ある店長は、金田社長が「二五 に見つけ、積極的に無くしていく努力が欠か せない。
とは言え、不動在庫になりそうな商 品をすべて店頭から排除してしまえば、機会 損失や、品揃えの面でユーザーの期待を裏切 ることにもなりかねない。
不動在庫の発生を未然に防ぐための作業は、 情報システム任せでは難しく、売場を熟知し た担当者がチェックを繰り返すしかなかった。
近道はなかった。
何より店長をはじめとする 従業員の意識改革が求められた。
改革を本格化した当時、関東カンパニーの 社長職にあり、現在ではオートセブンの営業 本部長を務めている山本竜太常務は、「僕の 場合、現場を回ってムダな在庫だと感じた商 品を指摘し、担当者にデータを見せながら指 示するといったことを繰り返した。
同じよう な考え方で担当者が売場をチェックするよう になれば、特別なことをやらなくても在庫は 〇で充分」と考えていた交差比率を、三〇〇 を超えるレベルにまで引き上げた。
その結果、 在庫の減らし過ぎで欠品が始まってしまうこ とまで確認できたという。
試行錯誤を経ながらも、取り組みは進化し ていった。
最近では交差比率が四五〇に達す る店舗も出てきている。
車検やメンテナンス 事業などのサービスに注力して粗利率を高め ながら、在庫を極限まで減らした成果だった。
「それでも欠品していないと言うのだから、ム ダな在庫を一切持たずに運営できているのだ ろう」と金田社長は目を細める。
実はこうした教育効果も交差比率を採用し た狙いの一つだった。
売上高や利益といった わかりやすい数値だけでなく、交差比率のよ うな管理指標の意味を考えることでマネジメ ント感覚に長けた人材が育つ。
これは会社の 将来にとって極めて有用だ。
上手くいった事 例を経営指標の裏づけとともに横展開できれ ば、全体のレベルアップも期待できる。
在庫削減に近道はない 不動在庫の撲滅については、また別のアプ ローチが必要だった。
当初はすでに不動在庫 化した商品データをリストアップし、値段を 下げたり、廃棄処分することで、まずはこれ を一掃する必要があった。
しかし、いったんムダな不動在庫を一掃し てしまえば、次は再び発生させないことに焦 点が移る。
不動在庫になりそうな商品を事前 オートセブンの在庫回転率を4 年間で3 割以上改善 300 250 200 150 100 50 0 8 7 6 5 4 3 2 1 0 売上高 4.8 5.2 5.1 5.7 6.1 7.4 7.5 06 年3月 07 年3月 08 年3月 09 年3月 10 年3月 11 年3月 12 年3月 予定 売上高(億円)・営業利益(千万円) 在庫回転率(回) 営業利益在庫回転率 47 OCTOBER 2011 不動在庫については、完全にゼロにしてし まうと店頭の品揃えに支障が出てしまう。
た とえば特定の車種のキズを補修する塗料など はユーザーのニーズが限定されるため、店舗 でどんなに努力しても売り切れるとは限らない。
そのため不動在庫はゼロにはならない。
それ でも九月末までには現在の半分の一五〇〇万 円まで減らしたい考えだ。
物流や情報システムをチェーン本部に依存 するG7グループにとって、差別化の手段は 店舗オペレーションに限られる。
金田社長は 「オートバックス事業は?店長業?。
店長さえ しっかりしていれば、運営部もエリアマネー ジャーも要らない」とさえいう。
優秀な人材 をどれだけ確保できるかにかかっている。
オートセブンの正社員比率は高い。
今年三 月末時点のG─7全体の従業員数は一一九〇 人。
このうちオートセブンの社員が九一六人 と大半を占める。
オートバックス事業で店舗 業務に携わっている従業員の正社員比率は約 八割に上る。
業務スーパー事業の正社員比率 が一割程度なのとは対照的だ。
この点について山本常務は、「たとえば車 検事業であれば、検査員や整備士の資格がい る。
そういう人材を抱えておかなければ事業 が成り立たない。
われわれは『セールス・ピ ットマン』と呼んでいるが、ピットに入庫し たお客様の車を確認して、タイヤの減りとか オイルの状態などをお伝えするのがわれわれ の仕事。
これが営業行為にもつながる」とそ の理由を説明する。
適正な在庫水準を維持するためには、業務 に精通した発注担当者も欠かせない。
ここで も正社員として経験を積み、自ら担当してい る部門の商品について熟知した人材を抱えて いることが競争力につながる。
そのためにオ ートセブンは、社員の定着率を高め、人材を 育てていくことを重視している。
カー用品市場は近年、縮小傾向にある。
新 車が売れなくなっている一方で、古い車を大 切に乗りつづけるユーザーが増えてきた。
そ のためにメンテナンスなどへのニーズが高まっ ている。
時代と共に?カー用品の販売?から ?トータルカーライフのサポート?に軸足を移 してきたオートバックス事業にはまだ将来性 がある、とオートセブンは考えている。
だからこそ金田社長としても「来期は一〇 店舗を出す」ことを内外に宣言している。
お 膝元である兵庫県内はすでに市場がほぼ飽和 状態にある。
今後は関東での事業拡大を狙っ ている。
大消費地の関東であれば、競合店が 抑えている市場を浸蝕する余地はまだ大きい。
物流をチェーン本部に任せているため出店地 域の制約もない。
ただし、チェーン本部の承認を得られなけ れば新しいエリアへの出店はできない。
G─7 としては、同業のFC加盟店をM&Aでグル ープに加えるといった選択肢も視野に入れて 事業を拡大していく方針だ。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) 減った」と振り返る。
一連の取り組みの結果、〇九年初めにオー トセブン合計で三三億円あった商品在庫の金 額は、約一年後には約二二億円まで減少した。
同じく約一億円あった不動在庫も、今や三〇 〇〇万円まで減っている。
〇・二%程度あっ た商品の廃棄ロス率も約〇・一五%まで改善 した。
いずれもチェーン本部を驚かせるほど の成果だった。
この間、オートセブン全体の在庫回転率は 改善しつづけている。
過去最高益を計上した 〇六年三月期に五・一回だったのが、直近で は七・四回まで向上した。
「七・四という回 転率は、同じような商品を扱っている小売業 では最高レベル。
これ以上、減らす必要は感 じていない」と金田社長はいう。
最近は、新車や中古車を扱う事業に注力し ていることから在庫金額が増える傾向にある。
今年度の在庫回転率は、前年度比でほぼ横這 いの七・五回を見込んでいる。
今後は総量の 削減ではなく、在庫の中身を精査することで 消費者のニーズにマッチした品揃えを追求し ていく方針だ。
オートセブンの山本竜太 常務取締役営業本部長
