2011年12月号
特集
特集
第2部 日本企業101 社の対応策を調査
日本企業101 社の対応策を調査
調達物流に手を広げろ
欧米の産業界ではSCMが、インバウンド・ロジス
ティクス(調達物流)の問題として語られることが
多い。
当地では購入した部材を買い手側がサプライヤ ーの出荷場所まで取りに行くケースが一般的であるた め、インバウンド・ロジスティクスが従来から輸送費 や在庫コストを左右する重要な管理項目の一つに位置 付けられてきた。
それに対して日本では、伝統的に輸送費込みの価 格で取引が行われてきた。
買い手側は輸送コストを配 慮する必要がないので、多頻度小口発注によって在 庫を最小限のレベルに抑制することができた。
ロジス ティクス部門の管理対象はあくまで販売物流で、購買 部門はサプライヤーの選定と価格交渉に専念。
調達物 流はサプライヤー任せが普通だった。
しかし、サプライチェーンの回復力を獲得し、リス ク対応能力を強化するためには、販売物流の管理だ けでは不十分だ。
サプライヤーの状況を常時把握し、 必要とあればいつでも部材を取りに行く、あるいは 代替品を調達できる体制を整備しておく必要がある。
SCMにおけるBCPの必要性の高まりが、日本企 業にインバウンド・ロジスティクスの管理という新し い課題を突き付けている。
日本サプライマネジメント協会が主催するCAPS 日本研究会は今年八月、SCMにおける事業継続計 画をテーマとするアンケート調査を行った。
三八〇社 にアンケートを送付し、一〇一社の回答を得た(詳し くは二五頁「調査の概要」を参照)。
同アンケートはサプライチェーンの上流における部 材の安定調達の視点に立ち、「複数購買(サプライヤ ー)」、「代替品」、「内製化」、「物流」、「在庫」、「レジ リエンシー(回復力)」の六つの側面から、各社の現 状を尋ねている。
その調査結果をベースに日本企業に おけるインバウンド・ロジスティクスの現状と課題を 以下に見ていく。
複数購買 Tier2の把握が常識に リスクを分散するために、同一品を複数のサプライ ヤーから調達する「複数購買」と、同じサプライヤー から購買するが、地域を分散する「分散購買」の実 施状況、およびサプライヤーの調達先となる「二次サ プライヤー(Tier2)」の把握について、それぞ れ質問した。
その結果、「複数購買」の実施率は八六%に達して おり、既に一般的なリスク分散施策として定着してい ることが分かった(図1、「現在複数購買しており、 主要サプライヤー以外から問題なく調達できる」、「現 在複数購買しており、主要サプライヤー以外からある 程度の調達が可能」、「現在、複数購買しているが、主 要サプライヤーへの依存度が高く、主要サプライヤー 以外からの調達量は限られる」の合計)。
「分散購買」の実施率も五六%に達していた(図 2、「国内と海外で分散購買」、「一カ国内で分散購 買」、「一サプライヤー会社の国内複数拠点から分散購 買」の合計)。
実施率は「複数購買」よりも低いが、 国の内外での分散購買を実施している企業も既に数多 く存在している。
二次サプライヤーの情報を把握している企業は現状 では五四%だった(図3、「サプライヤーの全ての仕 入品の仕入先情報を把握」、「サプライヤーの多くの仕 入品の仕入先情報を把握」、「サプライヤーの主要仕入 品の仕入先情報を把握」の合計)。
それ以外でも準備 中/調査中の企業が三八%あった。
両者を合わせると DECEMBER 2011 16 日本企業はこれまで調達物流をサプライヤー任せにして きた。
しかし、回復力の獲得には販売物流の管理だけで は足りない。
今年8月にCAPS日本研究会が実施したアン ケート調査を元に、日本企業におけるインバウンド・ロジ スティクスの現状と課題を分析する。
(文責=本誌編集部、研究調査著作権= CAPS日本研究会) 2 特集 サプライチェーン寸断 17 DECEMBER 2011 既に九二%の企業が二次サプライヤーの把握に動いて いることになる。
これは東日本大震災の影響による ところが大きいと考えられる。
ただし、「複数購買」、「分散購買」、「二次サプライ ヤーの把握」の全てに対応している企業は現状では全 体の三分の一程度にとどまっている(図4)。
調達の二重化は、特定のサプライヤーが独占的に供 給している品目や、特注品・少量品などでは実施が 困難だ。
過度な分散は購入価格の上昇や管理負担増 も招く。
その品目の特性とコストから、分散の方法や サプライヤーを検討する必要があり、対応策の実施に は時間がかかる。
代替品 標準化はいまだ停滞 代替品の活用およびそれを可能にする部材の標準 化・共通化もまたハードルの高いテーマだ。
実現すれ ばサプライチェーン寸断のリスクを軽減させることが できるが、同時に製品仕様面における競争力を失っ てしまう恐れがある。
擦り合わせ技術を強みとする日 本メーカーには抵抗感がある。
調査結果を見ても、代替品活用の必要性に対する 意識は各社とも高いものの、多くは「代替品候補を 把握してはいるが社内での受け入れは未定」(二六・ 三%)、「おおよその目途はついている」(二九・五%) というレベルで、本格的な実施にはなかなか踏み込め ていない(図5)。
部品標準化に関しては既に約七八%の企業が何ら かのアクションを起こしている(図6)。
東日本大震 災を契機として代替品活用の意識が高まっているのは 確かだ。
ただし、具体的な取り組みが製造工程にま で浸透している企業はまだ少ない。
現状では標準化の 範囲は社内にとどまっており、業界内での規格統一や 現在複数購買しており、主要サプライ ヤー以外から問題なく調達できる 現在複数購買しており、主要サプライ ヤー以外からある程度の調達が可能 現在複数購買しているが、主要サプ ライヤーへの依存度が高く、主要サプ ライヤー以外からの調達量は限られる 実施していないが、候補サプライヤー からサンプルを入手し品質等検証済み 実施していないが、 候補サプライヤーのリストを作成済み 実施していないが、 複数購買のための調査を開始 全く実施していない (1 社からのみ調達している) (社)0 10 20 30 40 50 図1 複数購買 リスク分散のための複数購買を実施していますか 国内と海外で分散購買 (国内と海外の両方のサプラ イヤー/拠点から分散購買) 国内または海外の 1カ国内で分散購買 1サプライヤー会社の持つ 国内の複数拠点から分散購買 実施していないが、候補サプ ライヤーからサンプルを入手し 品質等検証済み 実施していないが、候補サプラ イヤー/拠点のリストを作成済み 実施していないが、分散購買 のための調査を開始 全く実施していない(1 社の 1 拠点からのみ調達している) (社)0 10 20 30 図2 分散購買 リスク分散のための地域分散購買を実施していますか サプライヤーの全ての仕入品 の仕入先(Tier2サプライヤー) 情報を把握 サプライヤーの多くの仕入品 の仕入先(Tier2サプライヤー) 情報を把握 サプライヤーの主要仕入品の 仕入先(Tier2サプライヤー) 情報を把握 把握していないが、サプライヤ ーが直ぐに仕入先(Tier2サプ ライヤー)情報を報告可能 把握していないが、サプライヤ ーに仕入先(Tier2サプライヤ ー)情報提供を依頼 把握していないが、 把握することを検討中 全く把握していない (社)0 5 10 15 20 25 30 35 (%)0 20 40 60 80 100 図3 仕入先 サプライヤーの仕入先(Tier2 サプライヤー)を 把握していますか図4 サプライヤー二重化実施状況 実施している 複数購買 36% 分散購買 サプライヤー 仕入先把握 実施している 51% 実施して いない 14% 実施している 36% 実施している 20% 実施していない 44% 把握している 36% 把握している 18% 把握していない 46% 実施率 86% 実施率 54% 準備中/調査中 の企業の割合 38% 実施率 56% 全て対応 DECEMBER 2011 18 仕様の標準化については「全く考慮していない」と する企業がいまだ六五・三%を占めている(図7)。
東日本大震災ではペットボトルのキャップが枯渇し たことから、業界標準化が急遽進められたことが話 題になった。
しかし、そうした事例は今のところ例外 に過ぎないようだ。
内製化 内外作問題を再検討 その部材を社内で生産するのか、それともサプライ ヤーから購入するのかという内外作問題は、古くから 経営戦略の最上位に位置付けられてきたテーマだが、 リスク管理の視点から改めて検討に乗り出す動きが目 立っている。
今回の調査でも、外部から調達している部材を「社 内で内製化できるか」という設問に対して、「全く考 えたことがない」とする企業が四四・二%を占める 一方で、「既に内製・外部購入の両ソースから調達し ている」、「内製可能のレベルに達している」、「内製実 行段階に入った」という回答が合わせて二三%に上っ ている(図8)。
同様に「グループ内で内製化できるか」という設問 に対しては、「全く考えたことがない」が四二・一% であるのに対し、三二・六%は実施済みと答えてい る(図9、「グループ内製・外部購入の両ソースから 調達している」、「内製可能なレベルに達している」、 「特定のグループ会社での内製実行段階に入った」の 合計)。
社内もしくはグループ内で内製化を実施して いる企業は合わせて三七%に上り、他に三二%が内 製化を検討しているという結果となった(図 10 )。
一方、内製化のバリエーションの一つに、サプライ ヤーとの共同出資で工場を設置する方法がある。
しか し、これについては今のところほとんどの企業が「全 実際に何度も試験生産をし、 代替品の受け入れが可能である 試験的に調達し評価も済み、 ライン生産を残すのみである 製造現場も積極的に 受け入れるようになっている 代替品候補を把握しているが 社内での受け入れは未定 おおよその目途はついている 代替品の調査を開始した 全く保有、確保していない (社)0 5 10 15 20 25 30 図5 代用・代替 代替品を確保していますか 部品を仕様統合し、 また標準化している 試験的に標準品を調達し 評価も済み、ライン生産を 残すのみである 半分くらいの標準化が 達成している かなりの程度標準化できる 目途がついた 社内に標準化委員会ができ コンセンサスが整いつつある 標準化活動を開始した 全く考慮していない (社)0 5 10 15 20 25 図6 部品の標準化 部品の標準化を経営戦略の中に入れていますか 当該品を仕様統合し、 また共通化している 試験的に統一規格品を調達し 評価も済み、ライン生産を 残すのみである かなりの程度、 統合化できるめどがついた 半分くらいの統合化が 達成している 業界内に統合化委員会ができ コンセンサスは整いつつある 業界内での活動を開始した 全く考慮していない (社)0 20 40 60 80 図7 仕様の共通化 同一業界内で仕様や規格を統一、又は共通にできますか 既に内製・外部購入の 両ソースから調達している 内製可能のレベルに達している 内製実行段階に入った 鋭意検討中でシナリオを 書き上げて経営判断を待つ 内製の投資回収が困難で 断念した 検討を開始した 全く考えたことがない (社)0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 図8 社内製造 対象部材を社内で製作できますか 7.4% 3.2% 8.4% 26.3% 29.5% 13.7% 11.6% 12.6% 0.0% 2.1% 6.3% 2.1% 11.6% 65.3% 17.0% 1.1% 11.7% 19.1% 9.6% 19.1% 22.3% 15.8% 3.2% 4.2% 4.2% 10.5% 17.9% 44.2% N=95 実施率 78% 実施率 23% 特集 サプライチェーン寸断 19 DECEMBER 2011 く考えたことがない」と答えている(図 11 )。
今後の 検討材料に加えることができるだろう。
物流 サプライヤー任せから脱却 物流に関する質問は、回答が大きく二極化する傾 向が見られた。
日本では長らく、調達物流は、発注 数量、納期、サービスレベルをサプライヤーに指定す るだけで、後は実績を確認するだけの管理だった。
し かし近年、コスト削減や荷受け作業負担の軽減を主な 目的として、商品価格と物流費を分離して、買い手 側が調達物流のコントロールに直接乗り出すケースが 増えている。
そのことが今回の調査結果にも表れて いるようだ。
アンケートでは「被災した調達先から部品が入って こなくなった時、そこまで取りにいくことはできます か」という問いに対して、「引き取りなど想像したこ ともない」という回答が依然として二七%あったもの の、「既に数回にわたり自社便で取りに行っている」、 「引き取り可能のレベルに達している」との回答が合 わせて四七%に上った(図 12 )。
また、調達物流に対応できる企業においては、通 常の輸送手段のほかに代替輸送手段を持つ企業が五 四%に達している(図 13 、「常時一〇〇%確保できて いる」、「ほぼ確保できている」、「半分程度、代替手 段を確保できている」、「共同物流および3PL複数 化の目途がついた」、「3PL会社との契約で代替の 目途がついた」の合計)。
さすがに、国際輸送における代替手段の確保(図 14 )や、協力運送会社との契約に損害回避条項を盛 り込む(図 15 )といった踏み込んだレベルになると、 対応できている企業の割合は下がる。
それでも、いずれの設問においても「検討を開始 グループ内製・外部購入の 両ソースから調達している 内製可能なレベルに 達している 特定のグループ会社での 内製実行段階に入った 鋭意検討中でシナリオを 書き上げて経営判断を待つ 内製の投資額を検討中 グループ内で検討を開始した 全く考えたことがない (社)0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 図9 関連会社製造 グループ内の関連会社にて社内製作できますか コンビナート内製・外部購入の 両ソースから調達している 内製可能のレベルに 達している コンビナート内の特定の会社 での内製実行段階に入った 鋭意検討中でシナリオを 書き上げて経営判断を待つ コンビナート内で検討を 開始した 内製の投資額を検討中 全く考えたことがない (社)0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 図11 地域内共同出資会社による内製 工場集積地帯、工業地帯または同一コンビナート地域内で 共同出資による会社設立等で製作できますか 既に数回にわたり自社便で 取りに行っている 引き取り可能のレベルに 達している 自社輸送実行段階に入った 自社輸送能力の半分を 確保した 投資判断を要請中 自社での引き取り検討を 開始した 引き取りなど想像したこともない (社)0 5 10 15 20 25 30 図12 自社便 被災した調達先から部品が入ってこなくなった時、 そこまで自社便で取りに行くことができますか ●内製化は社内・関連会社の回答がほぼ同傾向のことから、企業・企業グループの 内製化の関心度・実施可能度によりアンケート結果を分析した。
●コンビナート内での内製化は回答が「全く関心がない」に偏っていることから分析より除 いた。
86社 25.3% 6.3% 1.0% 3.2% 22.1% 42.1% N=95 N=93 (%)0 25 50 75 100 図10 「内製化実施可能度」と「内製化関心度」 実施可能 23% 社内内製 関係会社内製 社内もしくは 関係会社での 内製化 検討中 33% 全く考えていない 44% 実施可能 33% 検討中 25% 全く考えていない 42% 実施可能 37% 検討中 32% 全く考えていない 32% 47% 27% 実施率 33% DECEMBER 2011 20 した」という回答が高い比率を占めていることから、 調達物流を管理しようとする機運が高まっていること がうかがえる(図 16 )。
在庫 見える化・共同化に課題 在庫は次の五つの観点から調査を行った。
「?サプ ライヤーの在庫の把握」、「?サプライヤーの在庫の分 散」、「?自社安全在庫水準の把握」、「?流通在庫の 把握」、「?共同在庫の可能性」である。
?サプライヤーの在庫量については、レベルの違い はあるものの、六一%の企業が既に把握できている (図 17 、「常時、完璧に在庫数量を把握している」「ほ ぼ在庫数量を把握している」、「概算でとらえている」、 「都度、聞いている」の合計)。
ただし、?サプライヤー在庫の分散については、実 施率は三八%に過ぎず(図 18 、「全国多数の場所にて 在庫を保有している」、「東西南北に分散している」、 「数カ所に分散している」の合計)、在庫の保管場所 自体を把握していない企業(同、「よく知らない」と の回答)も二九・五%に上っている。
?自社の安全在庫水準は、六六%の企業で全社的 に共有されている(図 19 、「経営トップ及び社内で認 識が十分に共有されている」、「経営トップ及び社内で 認識がほぼ共有されている」、「社内ではほぼ共有さ れている」の合計)。
メーカー以外の代理店や商社が保有する部材の?流 通在庫は四九%の企業が把握している(図 20 、「常時、 流通在庫を十分に把握している」、「流通在庫をほぼ 把握している」、「流通在庫を半分くらい把握してい る」、「流通在庫を数カ所くらい把握している」の合 計)。
残り五一%の企業は流通在庫を把握していない ことになる。
また全体の二二・七%の企業は「全く 常時、100%確保できている ほぼ確保できている 半分程度、代替手段を 確保できている 共同物流及び3PL複数化の できる目途がついた 3PL会社との契約で代替 できる目途がついた 各種代替手段の検討を 開始した 持っていない (社)0 5 10 15 20 25 30 図13 代替物流 自社調達防衛のため通常の物流に加え、 代替となるべき物流手段を持っていますか 海外品の輸送・搬入手段を 確保している ほぼ確保できるレベルに 達している 半分程度、確保できている 輸送ルートのみ調査済みだが、 物流手段はこれから 検討を開始した 輸送ルートも物流手段も 調査最終段階 確保していない 図14 海外物流 海外品に関し、港湾地区の機能停止など非常事態に備え、 代替となる物流手段や輸送ルートを確保していますか 図16 「検討を開始した」回答の割合 交渉の末、損害回避の 条項を入れた 交渉中であるがほぼ全て 目途はついた 半数ほどの輸送契約で 目途がついている 弁護士を入れて鋭意、 最終レベルの交渉中である 半分程度、交渉に入っている 契約内容の検討を開始した 全く考えたことがない (社)0 5 10 15 20 25 30 35 図15 輸送契約 輸送契約にて損害を回避できる条項を 入れていますか (社)0 5 10 15 20 25 30 35 40 30 25 20 15 10 5 0 (%) 自社便代替物流海外物流輸送契約 19% 26% 20% 24% 54% 21 DECEMBER 2011 特集 サプライチェーン寸断 把握していない」と回答している。
今回の調査では、現状ではチャレンジングなテーマ ながら、同一エリア・同一業界における「?共同倉庫 の可能性」についても、敢えて質問してみた。
予想 通り「全く考えていない」とする企業が六九・三% を占める一方で、残りの約三割が何らかのレベルで共 同化を実施中あるいは「検討を始めた」と回答して いるのは注目される(図 21 )。
これら在庫に関する五項目の回答について、それ ぞれ未対応をレベル1、完全対応をレベル7とカウン トして平均値と分布をグラフ化したものが図 22 と図 23 だ。
全体として自社在庫、サプライヤー在庫、流通在 庫の把握は一定レベルに達しているが、サプライヤー 在庫の分散、そして共同化については取り組みが不十 分だといえる。
レジリエンシー 新たなキーワード 危機管理のキーワードとも言えるレジリエンシー (Resiliency:回復力)に関して、その準備の度合い、 関心度を次の六つの観点から調査した。
すなわち「? 生産復旧支援」、「?経営層の支援」、「?柔軟なリソ ースの投入」、「?地域内資材融通体制」、「?不測の 損害回避のための契約条項」、「?サプライチェーンの 全体把握」である。
このうち「?生産復旧支援」は、被災したサプラ イヤーの生産復旧支援について尋ねている。
「場合に 応じて支援できる体制にある」とする企業と、「全く 考えたこともない」という対照的な二つの選択肢に 回答が集中している(図 24 )。
「?経営層の支援」は、回復力の獲得に対する経営 層の関与を問う設問で、総じて高いレベルにあること が分かった(図 25 )。
また「?柔軟なリソースの投入」 7. 常時、完璧に在庫数量を 把握している 6.ほぼ在庫数量を把握してい る 5. 概算でとらえている 4. 都度、聞いている 2.あまり知らない 3.少し知っている 1. 全く知らない 図17? サプライヤー在庫 現在のサプライヤー会社の持つ在庫量をどの程度知っていますか (注:取引しているサプライヤーの持つ在庫量のこと) (社)0 5 10 15 20 25 30 3.4% 12.5% 17.0% 12.5% 17.0% 9.1% N=95 7.全国多数の場所にて 在庫を保有している 6. 東西南北に分散している 5. 数カ所に分散している 4. 分散する計画である 2.在庫場所は1カ所 のみである 3.分散するよう依頼中である 1.よく知らない 図18? サプライヤー在庫分散 サプライヤーの在庫場所は国内に適度に分散されていますか (注:サプライヤーの生産拠点が一カ所でも全国に複数の倉庫を持っているか) (社)0 5 10 15 20 25 30 5.7% 2.3% 11.4% 19.3% N=95 2.3% 7. 経営トップ及び社内で認識 が十分に共有されている 6. 経営トップ及び社内で 認識がほぼ共有されている 5. 社内ではほぼ 共有されている 4. 調達部門内でのみ 共有されている 2. 現在、検討中である 3.担当者ベースでは 認識がある 1. 全く共有されていない 図19? 自社在庫 自社の在庫水準は安全在庫数量を含め、 適切であると経営トップ及び社内で認識が共有されていますか (注:在庫数量は適切で非常時を想定して耐える水準かどうか、また 安全在庫数量以上に今後バッファーを持つことも考えられる) (社)0 5 10 15 20 25 12.5% 5.7% 3.4% N=95 12.5% 28.4% 29.5% 29.5% 25.0% 26.1% 7. 常時、流通在庫を 十分に把握している 6.流通在庫をほぼ 把握している 5. 流通在庫を半分くらい 把握している 4.流通在庫を数カ所くらい 把握している 2. 流通在庫を調査中である 3.流通在庫を把握する 認識はある 1. 全く把握していない 図20? 流通在庫 当該品の流通在庫を把握していますか (注:代理店や商社経由の場合、メーカー在庫以外に期待できる在庫のこと) (社)0 5 10 15 20 25 11.4% 6.8% 4.5% 22.7% N=95 12.5% 18.2% 23.9% 実施率 61% 実施率 38% 実施率 49% 実施率 66% 14.8% DECEMBER 2011 22 は非常時における調達部門への人員、施設、車両な どの配備計画で、これについても一定の対応がとら れている(図 26 )。
「?地域内資材融通体制」は、現状では「全く考え たことがない」という企業がほとんどを占めている (図 27 )。
ハードルの高い施策であるため、こうした結 果になったことも理解できるが、次の「?不測の損 害回避のための契約条項」は、すぐにでも実施でき る施策であるにもかかわらず、多くの企業が現状で は対応できていない(図 28 )。
「?サプライチェーンの全体把握」は既に体制整備 を進めている先行グループと、何らかの問題意識を持 つグループの二つに大別できるが、全体としては関心 の高さがうかがえる(図 29 )。
これら回復力に関する六項目の調査結果のうち、回 答に偏りのある「?地域内資材融通体制」と「?不 測の損害回避のための契約条項」を外し、回復力に対 する関心度と実際の準備のレベルを図 30 にまとめた。
関心度としては「?サプライチェーンの全体把握」が 最も高いが、その準備度は「?経営層の支援」、「? 柔軟なリソースの投入」と比べて大きく遅れをとって いることが分かる。
回復力の差はどこで付くのか 以上の「?複数購買」、「?代替品」、「?内製化」、 「?物流」、「?在庫」、「?レジリエンシー(回復力)」 という六つの側面からのSCMの事業継続に関する調 査結果を、対応レベルが平均以上のグループと平均未 満のグループに分け、両者の比較を行った。
平均以上のグループと平均未満のグループの各側面 の水準は図 31 の通り。
これをグラフ化したものが図32 だ。
六つの側面のうち「物流対策」と「回復力対策」 共同で在庫を十分 集めることができる 共同で在庫をかなりの程度まで 集めることができる 共同で在庫を半分くらい 集めることができる 対象を決めほぼコンセンサスが とれている 検討を始めた コンビナート内、同一地域、 同一業界内で協議中である 全く考えていない 図21? 共同在庫 同一コンビナート内、同一地域・同一業界内 で在庫を増やす、または共同で一カ所に在庫を集めることができますか (注:地域や業界内にて共同で在庫を持つという意味) (%)0 10 20 30 40 50 60 70 4.5% 2.3% 0% 3.4% 12.5% N=95 図23 回答企業95 社の在庫に関する対策順位 対応レベル (対応レベル) 1 2-4 5-7 ?サプライヤー在庫 ?サプライヤー在庫分散 ?自社在庫 ?流通在庫 ?共同在庫 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 (%) ? ? ? ? ? 8.0% 69.3% 図22 結果 ? ? ? ? ? 7 6 5 4 3 2 1 0 ?サプライヤー在庫 ?サプライヤー在庫分散 ?自社在庫 ?流通在庫 ?共同在庫 N=95 3.8 3.1 4.9 3.8 1.8 7.支援体制ができている 6.場合に応じて支援できる 体制にある 5.支援体制が整いつつある 4.社内にて支援の コンセンサスを取りまとめ中 3.サプライヤーと協議中 2. 社内検討中 1. 全く考えたこともない (社)0 10 20 30 40 図24? 生産復旧支援 被災サプライヤー会社の生産体制復旧を支援することができますか N=95 平均値:2.9 最頻値:1 中央値:2 23 DECEMBER 2011 特集 サプライチェーン寸断 で格差が大きいことが分かる。
平均未満グループは、 この二つの側面に大きな改善の余地を残している可能 性が高い。
平均以上グループと平均未満グループを、業種別に 見た時には、どのような傾向が表れるのか。
一定の回 答母数のある「電気・精密・機械」の組立型メーカ ー、「食品・医薬・雑貨」のグロサリーメーカー、そ して「素材・繊維・エネルギー」の素材型メーカーに ついて、それぞれグラフを作成した。
それによると「電気・精密・機械」メーカーでは、 全業種分析で平均以上グループと平均未満グループの 格差が顕著だった「回復力対策」、「物流対策」と並 び、「内製化対策」の対応レベルに大きな開きのある ことが分かった(図 33 )。
また他業種と比べると危機 対応能力に優れた企業と、そうでない企業の違いが 大きかった。
「食品・医薬・雑貨」メーカーは、平均以上グルー プと平均未満グループの格差が各項目とも同レベルだ った(図 34 )。
なお、グロサリーメーカーは組立型メ ーカーと比較すると、サプライヤー対策の対応レベル が高く、内製化対策の対応レベルが低い。
これは商品 特性を反映したものと考えられる。
「素材・繊維・エネルギー」メーカーも、「物流対策」 の格差が若干大きいものの、グロサリーメーカーと同 様に平均以上グループと平均未満グループのグラフが ほぼ平行している(図 35 )。
いずれの業界においても平均以上グループの企業は、 六つの側面のすべてにおいて平均未満グループの対応 レベルを上回っている。
SCMにおける事業継続の取 り組みには、その会社で明らかな温度差が存在してい る。
そのことが各社の競争力に大きく影響している可 能性が高い。
7. 助言や支援を適切に 実施している 6. 場合に応じて助言や 支援を行っている 5. 助言や支援体制が整いつつ ある 4. 助言や支援体制の コンセンサスを取りまとめ中 3.経営レベルで協議中 2. 社内検討中 1. 全く考えたこともない 図25? 経営層の支援 経営トップは重要部材、原材料の調達先や調達上の課題を把握し、 適切な助言や支援をしていますか 7.柔軟なリソース投入体制が できている 6.ほぼ体制ができている 5.ある程度のレベルで 柔軟な運用が可能である 4. 一部の運用については 可能な状態となっている 3. 関連部門(人事や設備、 生産部門など)と協議中 2.社内検討中 1. 全く不可能だ (社)0 10 20 30 40 図26? 柔軟なリソース投入 非常時における調達部門への人員や施設・設備(車両などの機材) の柔軟な投入・配備などの体制がありますか (社)0 10 20 30 40 7. 横断的にネットワーク内で資 材を融通している 6.ネットワーク内で指針を作っ ている 5. 現実的な対応可能性をまと めている 4. 実行可能性について前向き な意見がある 3.取り急ぎ会合をもち意見聴取 をしている 2.今回の震災で検討を始めた 1. 全く考えたこともない 図27? 地域内資材融通体制 非常時には同一地域、工業団地、コンビナート内等の産業集積 コミュニティー内で部品や資材を相互に融通し合う地域ネットワ ークが出来ていますか (社)0 10 20 30 40 50 60 70 N=95 平均値:3.9 最頻値:5 中央値:4 N=95 平均値:4.4 最頻値:6 中央値:6 N=93 平均値:1.8 最頻値:1 中央値:1 7. 交渉の末、損害回避の 条項を入れた 6. 交渉中であるがほぼすべて 目途はついた 5.半数ほどの契約で目途が ついている 4.弁護士を入れて鋭意、 最終レベルの交渉中 3.半分程度、交渉に入っている 2. 契約内容の検討を開始した 1. 全く考えたことがない 図28? 不測の損害回避の為の契約条項 一般的な不可抗力条項や免責条項を超え、サプライヤー契約に不測 の損害を回避できる条項を入れていますか (社)0 10 20 30 40 N=94 平均値:2.4 最頻値:1 中央値:2 DECEMBER 2011 24 (%) 0 ?生産復旧支援 ?経営層の支援 ?柔軟なリソース 投入 ?サプライチェーン 全体把握 20 40 60 80 100 7. 完全に把握し緊急時の バックアップ体制がある 6.ほぼ把握しておりバックアッ プ体制整備も進行中 5.プロセス審査を通してボトル ネックを把握し、バックアップ 体制も整備中 4.マニュアルや文書でのみ把 握している 3.サプライヤーと協議中 2.あまり知らない 1. 全く知らない 図29? サプライチェーンの全体把握 サプライチェーンの全体構造及びそれを支える全業者を把握して いますか。
また、ボトルネックとなる工程やボトルネックを支える 業者のバックアップ体制を構築していますか 図30 回復力への対応 各企業の回復力に対する準備度、関心度を定義し、アンケート結果を 分析した。
◆準備度:レベル5 〜 7の合計値の比率で「体制・準備あり」のラインで表示 ◆関心度:レベル2 〜 4の合計値の比率で「検討・準備中」のラインで表示 図31 6つの側面の平均値(3.51) 平均以上グループと平均未満グループの水準比較 (社)0 10 20 30 40 サプライヤー関連対策 5.44 4.12 代替品対策 3.82 2.40 内製化対策 3.41 1.91 物流対策 4.69 2.86 在庫対策 4.42 2.78 回復力対策 4.77 2.76 平均以上G 平均未満G N=95 平均値:3.2 最頻値:2 中央値:3 サプライヤー 対策 回復力対策 物流対策 在庫対策 代替品対策 内製化対策 図32 6つの側面の平均値(3.51)以上グループと 平均未満グループの水準比較 7 6 5 4 3 2 1 平均未満グループ 平均以上グループ 28 25 42 51 29 15 45 41 9 25 64 6 準備度関心度 N=95 体制・準備あり検討・準備中全く考えていない サプライヤー 対策 代替品対策 内製化造対策 物流対策 在庫対策 回復力対策 図33 電気・精密・機械 平均以上グループと未満グループの比較 4.13 6 5 4 3 2 1 0 3.86 4.58 5.40 4.16 4.95 5.86 4.31 3.84 2.34 2.68 1.61 4.55 2.59 4.88 2.88 2.2 5.72 4.66 4.16 3.22 2.27 3.00 4.20 2.75 4.03 2.90 4.41 3.41 2.95 2.94 2.06 平均以上グループ 平均以上グループ 平均未満グループ 平均未満グループ 平均未満 グループ 平均以上 グループ サプライヤー 対策 代替品対策 内製化対策 物流対策 在庫対策 回復力対策 図35 素材・繊維・エネルギー 平均以上グループと未満グループの比較 6 5 4 3 2 1 0 サプライヤー 対策 代替品対策 内製化対策 物流対策 図34 食品・医薬・雑貨 平均以上グループと未満グループ の比較 6 5 4 3 2 1 0 調査主体 CAPS日本研究会(注) 注・サプライマネジメント協会と米アリゾナ州立 大学が一九八六年に折半出資で設立したシンクタ ンク「CAPSリサーチ」の日本研究チーム。
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協 会(ISMジャパン)の有志によって二〇〇〇年 に任意団体として設立された。
主に企業の購買・ 調達・SCM管理職層によって構成されている。
CAPS日本研究会の研究資金は米CAPS リサーチおよびISMジャパンによって提供され ている。
これに対して米CAPSリサーチの運営 費は、以下の米大企業および一部個人による寄 付によって支えられているという違いがある。
調査の主旨 日本企業における事業継続計画策 定にあたっての示唆を得ることを目的として、サ プライチェーンの上流における部材等の安定調達 の視点から、「複数購買(サプライヤー)」、「代 替品」、「内製化」、「物流」、「在庫」、「レジリエ ンシー(回復力)」の六つの側面について質問を 設定した。
調査方法 インターネット調査。
電子メールで質 問票を送付した企業も一部含まれている。
調査期間 二〇一一年八月一日〜八月二〇日 調査対象企業 三八〇社(ISMジャパン会員 およびCAPS研究員関連企業を中心に、日本 経営倫理学会、日本科学技術連盟の支援を得た) 回答企業数 一〇一社(回答率二六・六%) 25 DECEMBER 2011 特集 サプライチェーン寸断 3M Company Adobe Systems Incorporated Agilent Technologies, Inc. Alcoa, Inc. Allstate Corporation American Electric Power Company, Inc. American Express Amgen Inc. Arizona Public Service Company AT&T Services, Inc. B/E Aerospace, Inc. BAE SYSTEMS BBVA Bechtel Corporation BHP Billiton Petroleum (Americas) Inc. Bonneville Power Administration BP America Inc. Bristol-Myers Squibb Company Cablevision Systems Corporation Calpine Corporation Celanese Corporation Cessna Aircraft Company Chevron Corporation Chevron Phillips Chemical Company LP CONSOL Energy Inc. Covidien Cummins Inc. Dean Foods Company Deere & Company Dell Inc. Delphi Corporation 回答企業・売上規模分布回答企業業種(社) 不明 13% 1 兆円以上 19% 1000 億円〜 1 兆円 100億円〜 28% 1000 億円 22% 100 億円未満 18% 食品…………………………… 24 電機機器…………………… 12 情報通信…………………… 10 化学……………………………… 7 輸送機器……………………… 6 機械……………………………… 6 その他製造…………… 6 商業……………………………… 5 陸海空運……………………… 5 サービス・金融…………… 4 水産・農林・鉱業……… 4 鉄鋼・非鉄・石油……… 4 繊維……………………………… 3 不明……………………………… 5 Diageo Diebold, Incorporated Dominion Resources, Inc. Drager Medical Systems, Inc. Dresser-Rand Group Inc. DTE Energy Duke Energy Corporation EADS N.V. Eisai Inc. Eli Lilly and Company Emerson Process Management Eni S.p.A. Eskom Holdings Ltd Evonik Degussa Corporation ExxonMobil Global Services Company FedEx Express Fidelity Investments Fluor Corporation Freeport-McMoRan Copper & Gold Inc. Freescale Semiconductor, Inc. General Dynamics Corporation General Mills, Inc. GlaxoSmithKline Group Five Ltd. Hallmark Cards, Inc. Hess Corporation Hilton Worldwide Honda of America Mfg., Inc. Honeywell IBM Intel Corporation International Paper Company ITT Corporation J. C. Penney Company, Inc. Johnson & Johnson Kerry Group plc L-3 Communications MasterCard Worldwide Microsoft Corporation Ministry Health Care (MHC) NAV CANADA Nestle USA Nilfisk-Advance, Inc. Northrop Grumman Corporation Novartis Pharmaceuticals Corporation Oakley, Inc. Pacific Gas and Electric Company Parker Aerospace PepsiCo, Inc. Petro Rabigh Pfizer Inc. Plains All American Pipeline, L.P. PNM Resources, Inc. PSEG Services Corporation Ralcorp Raytheon Company Repsol YPF Rio Tinto Rockwell Automation Rolls-Royce Royal Dutch Shell plc Royal Philips Electronics N.V. Ryder System, Inc. SABIC Innovative Plastics SAP AG Schneider Electric North America Siemens AG Siemens Industry, Inc. Solvay SA Sonoco Products Company Southern California Edison Company Statoil ASA Suncor Energy Inc. Tennessee Valley Authority Teradyne Terex Corporation Tesoro Corporation Texas Instruments, Incorporated The American National Red Cross The Boeing Company The Coca-Cola Company The Procter & Gamble Company The Walt Disney Company TransCanada Pipelines Ltd. Tyco International Management Company U.S. Department of Veterans Affairs U.S. Postal Service U.S. Steel Unisys Corporation United States Air Force Vale S.A. Xcel Energy Inc. 調査の概要
当地では購入した部材を買い手側がサプライヤ ーの出荷場所まで取りに行くケースが一般的であるた め、インバウンド・ロジスティクスが従来から輸送費 や在庫コストを左右する重要な管理項目の一つに位置 付けられてきた。
それに対して日本では、伝統的に輸送費込みの価 格で取引が行われてきた。
買い手側は輸送コストを配 慮する必要がないので、多頻度小口発注によって在 庫を最小限のレベルに抑制することができた。
ロジス ティクス部門の管理対象はあくまで販売物流で、購買 部門はサプライヤーの選定と価格交渉に専念。
調達物 流はサプライヤー任せが普通だった。
しかし、サプライチェーンの回復力を獲得し、リス ク対応能力を強化するためには、販売物流の管理だ けでは不十分だ。
サプライヤーの状況を常時把握し、 必要とあればいつでも部材を取りに行く、あるいは 代替品を調達できる体制を整備しておく必要がある。
SCMにおけるBCPの必要性の高まりが、日本企 業にインバウンド・ロジスティクスの管理という新し い課題を突き付けている。
日本サプライマネジメント協会が主催するCAPS 日本研究会は今年八月、SCMにおける事業継続計 画をテーマとするアンケート調査を行った。
三八〇社 にアンケートを送付し、一〇一社の回答を得た(詳し くは二五頁「調査の概要」を参照)。
同アンケートはサプライチェーンの上流における部 材の安定調達の視点に立ち、「複数購買(サプライヤ ー)」、「代替品」、「内製化」、「物流」、「在庫」、「レジ リエンシー(回復力)」の六つの側面から、各社の現 状を尋ねている。
その調査結果をベースに日本企業に おけるインバウンド・ロジスティクスの現状と課題を 以下に見ていく。
複数購買 Tier2の把握が常識に リスクを分散するために、同一品を複数のサプライ ヤーから調達する「複数購買」と、同じサプライヤー から購買するが、地域を分散する「分散購買」の実 施状況、およびサプライヤーの調達先となる「二次サ プライヤー(Tier2)」の把握について、それぞ れ質問した。
その結果、「複数購買」の実施率は八六%に達して おり、既に一般的なリスク分散施策として定着してい ることが分かった(図1、「現在複数購買しており、 主要サプライヤー以外から問題なく調達できる」、「現 在複数購買しており、主要サプライヤー以外からある 程度の調達が可能」、「現在、複数購買しているが、主 要サプライヤーへの依存度が高く、主要サプライヤー 以外からの調達量は限られる」の合計)。
「分散購買」の実施率も五六%に達していた(図 2、「国内と海外で分散購買」、「一カ国内で分散購 買」、「一サプライヤー会社の国内複数拠点から分散購 買」の合計)。
実施率は「複数購買」よりも低いが、 国の内外での分散購買を実施している企業も既に数多 く存在している。
二次サプライヤーの情報を把握している企業は現状 では五四%だった(図3、「サプライヤーの全ての仕 入品の仕入先情報を把握」、「サプライヤーの多くの仕 入品の仕入先情報を把握」、「サプライヤーの主要仕入 品の仕入先情報を把握」の合計)。
それ以外でも準備 中/調査中の企業が三八%あった。
両者を合わせると DECEMBER 2011 16 日本企業はこれまで調達物流をサプライヤー任せにして きた。
しかし、回復力の獲得には販売物流の管理だけで は足りない。
今年8月にCAPS日本研究会が実施したアン ケート調査を元に、日本企業におけるインバウンド・ロジ スティクスの現状と課題を分析する。
(文責=本誌編集部、研究調査著作権= CAPS日本研究会) 2 特集 サプライチェーン寸断 17 DECEMBER 2011 既に九二%の企業が二次サプライヤーの把握に動いて いることになる。
これは東日本大震災の影響による ところが大きいと考えられる。
ただし、「複数購買」、「分散購買」、「二次サプライ ヤーの把握」の全てに対応している企業は現状では全 体の三分の一程度にとどまっている(図4)。
調達の二重化は、特定のサプライヤーが独占的に供 給している品目や、特注品・少量品などでは実施が 困難だ。
過度な分散は購入価格の上昇や管理負担増 も招く。
その品目の特性とコストから、分散の方法や サプライヤーを検討する必要があり、対応策の実施に は時間がかかる。
代替品 標準化はいまだ停滞 代替品の活用およびそれを可能にする部材の標準 化・共通化もまたハードルの高いテーマだ。
実現すれ ばサプライチェーン寸断のリスクを軽減させることが できるが、同時に製品仕様面における競争力を失っ てしまう恐れがある。
擦り合わせ技術を強みとする日 本メーカーには抵抗感がある。
調査結果を見ても、代替品活用の必要性に対する 意識は各社とも高いものの、多くは「代替品候補を 把握してはいるが社内での受け入れは未定」(二六・ 三%)、「おおよその目途はついている」(二九・五%) というレベルで、本格的な実施にはなかなか踏み込め ていない(図5)。
部品標準化に関しては既に約七八%の企業が何ら かのアクションを起こしている(図6)。
東日本大震 災を契機として代替品活用の意識が高まっているのは 確かだ。
ただし、具体的な取り組みが製造工程にま で浸透している企業はまだ少ない。
現状では標準化の 範囲は社内にとどまっており、業界内での規格統一や 現在複数購買しており、主要サプライ ヤー以外から問題なく調達できる 現在複数購買しており、主要サプライ ヤー以外からある程度の調達が可能 現在複数購買しているが、主要サプ ライヤーへの依存度が高く、主要サプ ライヤー以外からの調達量は限られる 実施していないが、候補サプライヤー からサンプルを入手し品質等検証済み 実施していないが、 候補サプライヤーのリストを作成済み 実施していないが、 複数購買のための調査を開始 全く実施していない (1 社からのみ調達している) (社)0 10 20 30 40 50 図1 複数購買 リスク分散のための複数購買を実施していますか 国内と海外で分散購買 (国内と海外の両方のサプラ イヤー/拠点から分散購買) 国内または海外の 1カ国内で分散購買 1サプライヤー会社の持つ 国内の複数拠点から分散購買 実施していないが、候補サプ ライヤーからサンプルを入手し 品質等検証済み 実施していないが、候補サプラ イヤー/拠点のリストを作成済み 実施していないが、分散購買 のための調査を開始 全く実施していない(1 社の 1 拠点からのみ調達している) (社)0 10 20 30 図2 分散購買 リスク分散のための地域分散購買を実施していますか サプライヤーの全ての仕入品 の仕入先(Tier2サプライヤー) 情報を把握 サプライヤーの多くの仕入品 の仕入先(Tier2サプライヤー) 情報を把握 サプライヤーの主要仕入品の 仕入先(Tier2サプライヤー) 情報を把握 把握していないが、サプライヤ ーが直ぐに仕入先(Tier2サプ ライヤー)情報を報告可能 把握していないが、サプライヤ ーに仕入先(Tier2サプライヤ ー)情報提供を依頼 把握していないが、 把握することを検討中 全く把握していない (社)0 5 10 15 20 25 30 35 (%)0 20 40 60 80 100 図3 仕入先 サプライヤーの仕入先(Tier2 サプライヤー)を 把握していますか図4 サプライヤー二重化実施状況 実施している 複数購買 36% 分散購買 サプライヤー 仕入先把握 実施している 51% 実施して いない 14% 実施している 36% 実施している 20% 実施していない 44% 把握している 36% 把握している 18% 把握していない 46% 実施率 86% 実施率 54% 準備中/調査中 の企業の割合 38% 実施率 56% 全て対応 DECEMBER 2011 18 仕様の標準化については「全く考慮していない」と する企業がいまだ六五・三%を占めている(図7)。
東日本大震災ではペットボトルのキャップが枯渇し たことから、業界標準化が急遽進められたことが話 題になった。
しかし、そうした事例は今のところ例外 に過ぎないようだ。
内製化 内外作問題を再検討 その部材を社内で生産するのか、それともサプライ ヤーから購入するのかという内外作問題は、古くから 経営戦略の最上位に位置付けられてきたテーマだが、 リスク管理の視点から改めて検討に乗り出す動きが目 立っている。
今回の調査でも、外部から調達している部材を「社 内で内製化できるか」という設問に対して、「全く考 えたことがない」とする企業が四四・二%を占める 一方で、「既に内製・外部購入の両ソースから調達し ている」、「内製可能のレベルに達している」、「内製実 行段階に入った」という回答が合わせて二三%に上っ ている(図8)。
同様に「グループ内で内製化できるか」という設問 に対しては、「全く考えたことがない」が四二・一% であるのに対し、三二・六%は実施済みと答えてい る(図9、「グループ内製・外部購入の両ソースから 調達している」、「内製可能なレベルに達している」、 「特定のグループ会社での内製実行段階に入った」の 合計)。
社内もしくはグループ内で内製化を実施して いる企業は合わせて三七%に上り、他に三二%が内 製化を検討しているという結果となった(図 10 )。
一方、内製化のバリエーションの一つに、サプライ ヤーとの共同出資で工場を設置する方法がある。
しか し、これについては今のところほとんどの企業が「全 実際に何度も試験生産をし、 代替品の受け入れが可能である 試験的に調達し評価も済み、 ライン生産を残すのみである 製造現場も積極的に 受け入れるようになっている 代替品候補を把握しているが 社内での受け入れは未定 おおよその目途はついている 代替品の調査を開始した 全く保有、確保していない (社)0 5 10 15 20 25 30 図5 代用・代替 代替品を確保していますか 部品を仕様統合し、 また標準化している 試験的に標準品を調達し 評価も済み、ライン生産を 残すのみである 半分くらいの標準化が 達成している かなりの程度標準化できる 目途がついた 社内に標準化委員会ができ コンセンサスが整いつつある 標準化活動を開始した 全く考慮していない (社)0 5 10 15 20 25 図6 部品の標準化 部品の標準化を経営戦略の中に入れていますか 当該品を仕様統合し、 また共通化している 試験的に統一規格品を調達し 評価も済み、ライン生産を 残すのみである かなりの程度、 統合化できるめどがついた 半分くらいの統合化が 達成している 業界内に統合化委員会ができ コンセンサスは整いつつある 業界内での活動を開始した 全く考慮していない (社)0 20 40 60 80 図7 仕様の共通化 同一業界内で仕様や規格を統一、又は共通にできますか 既に内製・外部購入の 両ソースから調達している 内製可能のレベルに達している 内製実行段階に入った 鋭意検討中でシナリオを 書き上げて経営判断を待つ 内製の投資回収が困難で 断念した 検討を開始した 全く考えたことがない (社)0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 図8 社内製造 対象部材を社内で製作できますか 7.4% 3.2% 8.4% 26.3% 29.5% 13.7% 11.6% 12.6% 0.0% 2.1% 6.3% 2.1% 11.6% 65.3% 17.0% 1.1% 11.7% 19.1% 9.6% 19.1% 22.3% 15.8% 3.2% 4.2% 4.2% 10.5% 17.9% 44.2% N=95 実施率 78% 実施率 23% 特集 サプライチェーン寸断 19 DECEMBER 2011 く考えたことがない」と答えている(図 11 )。
今後の 検討材料に加えることができるだろう。
物流 サプライヤー任せから脱却 物流に関する質問は、回答が大きく二極化する傾 向が見られた。
日本では長らく、調達物流は、発注 数量、納期、サービスレベルをサプライヤーに指定す るだけで、後は実績を確認するだけの管理だった。
し かし近年、コスト削減や荷受け作業負担の軽減を主な 目的として、商品価格と物流費を分離して、買い手 側が調達物流のコントロールに直接乗り出すケースが 増えている。
そのことが今回の調査結果にも表れて いるようだ。
アンケートでは「被災した調達先から部品が入って こなくなった時、そこまで取りにいくことはできます か」という問いに対して、「引き取りなど想像したこ ともない」という回答が依然として二七%あったもの の、「既に数回にわたり自社便で取りに行っている」、 「引き取り可能のレベルに達している」との回答が合 わせて四七%に上った(図 12 )。
また、調達物流に対応できる企業においては、通 常の輸送手段のほかに代替輸送手段を持つ企業が五 四%に達している(図 13 、「常時一〇〇%確保できて いる」、「ほぼ確保できている」、「半分程度、代替手 段を確保できている」、「共同物流および3PL複数 化の目途がついた」、「3PL会社との契約で代替の 目途がついた」の合計)。
さすがに、国際輸送における代替手段の確保(図 14 )や、協力運送会社との契約に損害回避条項を盛 り込む(図 15 )といった踏み込んだレベルになると、 対応できている企業の割合は下がる。
それでも、いずれの設問においても「検討を開始 グループ内製・外部購入の 両ソースから調達している 内製可能なレベルに 達している 特定のグループ会社での 内製実行段階に入った 鋭意検討中でシナリオを 書き上げて経営判断を待つ 内製の投資額を検討中 グループ内で検討を開始した 全く考えたことがない (社)0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 図9 関連会社製造 グループ内の関連会社にて社内製作できますか コンビナート内製・外部購入の 両ソースから調達している 内製可能のレベルに 達している コンビナート内の特定の会社 での内製実行段階に入った 鋭意検討中でシナリオを 書き上げて経営判断を待つ コンビナート内で検討を 開始した 内製の投資額を検討中 全く考えたことがない (社)0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 図11 地域内共同出資会社による内製 工場集積地帯、工業地帯または同一コンビナート地域内で 共同出資による会社設立等で製作できますか 既に数回にわたり自社便で 取りに行っている 引き取り可能のレベルに 達している 自社輸送実行段階に入った 自社輸送能力の半分を 確保した 投資判断を要請中 自社での引き取り検討を 開始した 引き取りなど想像したこともない (社)0 5 10 15 20 25 30 図12 自社便 被災した調達先から部品が入ってこなくなった時、 そこまで自社便で取りに行くことができますか ●内製化は社内・関連会社の回答がほぼ同傾向のことから、企業・企業グループの 内製化の関心度・実施可能度によりアンケート結果を分析した。
●コンビナート内での内製化は回答が「全く関心がない」に偏っていることから分析より除 いた。
86社 25.3% 6.3% 1.0% 3.2% 22.1% 42.1% N=95 N=93 (%)0 25 50 75 100 図10 「内製化実施可能度」と「内製化関心度」 実施可能 23% 社内内製 関係会社内製 社内もしくは 関係会社での 内製化 検討中 33% 全く考えていない 44% 実施可能 33% 検討中 25% 全く考えていない 42% 実施可能 37% 検討中 32% 全く考えていない 32% 47% 27% 実施率 33% DECEMBER 2011 20 した」という回答が高い比率を占めていることから、 調達物流を管理しようとする機運が高まっていること がうかがえる(図 16 )。
在庫 見える化・共同化に課題 在庫は次の五つの観点から調査を行った。
「?サプ ライヤーの在庫の把握」、「?サプライヤーの在庫の分 散」、「?自社安全在庫水準の把握」、「?流通在庫の 把握」、「?共同在庫の可能性」である。
?サプライヤーの在庫量については、レベルの違い はあるものの、六一%の企業が既に把握できている (図 17 、「常時、完璧に在庫数量を把握している」「ほ ぼ在庫数量を把握している」、「概算でとらえている」、 「都度、聞いている」の合計)。
ただし、?サプライヤー在庫の分散については、実 施率は三八%に過ぎず(図 18 、「全国多数の場所にて 在庫を保有している」、「東西南北に分散している」、 「数カ所に分散している」の合計)、在庫の保管場所 自体を把握していない企業(同、「よく知らない」と の回答)も二九・五%に上っている。
?自社の安全在庫水準は、六六%の企業で全社的 に共有されている(図 19 、「経営トップ及び社内で認 識が十分に共有されている」、「経営トップ及び社内で 認識がほぼ共有されている」、「社内ではほぼ共有さ れている」の合計)。
メーカー以外の代理店や商社が保有する部材の?流 通在庫は四九%の企業が把握している(図 20 、「常時、 流通在庫を十分に把握している」、「流通在庫をほぼ 把握している」、「流通在庫を半分くらい把握してい る」、「流通在庫を数カ所くらい把握している」の合 計)。
残り五一%の企業は流通在庫を把握していない ことになる。
また全体の二二・七%の企業は「全く 常時、100%確保できている ほぼ確保できている 半分程度、代替手段を 確保できている 共同物流及び3PL複数化の できる目途がついた 3PL会社との契約で代替 できる目途がついた 各種代替手段の検討を 開始した 持っていない (社)0 5 10 15 20 25 30 図13 代替物流 自社調達防衛のため通常の物流に加え、 代替となるべき物流手段を持っていますか 海外品の輸送・搬入手段を 確保している ほぼ確保できるレベルに 達している 半分程度、確保できている 輸送ルートのみ調査済みだが、 物流手段はこれから 検討を開始した 輸送ルートも物流手段も 調査最終段階 確保していない 図14 海外物流 海外品に関し、港湾地区の機能停止など非常事態に備え、 代替となる物流手段や輸送ルートを確保していますか 図16 「検討を開始した」回答の割合 交渉の末、損害回避の 条項を入れた 交渉中であるがほぼ全て 目途はついた 半数ほどの輸送契約で 目途がついている 弁護士を入れて鋭意、 最終レベルの交渉中である 半分程度、交渉に入っている 契約内容の検討を開始した 全く考えたことがない (社)0 5 10 15 20 25 30 35 図15 輸送契約 輸送契約にて損害を回避できる条項を 入れていますか (社)0 5 10 15 20 25 30 35 40 30 25 20 15 10 5 0 (%) 自社便代替物流海外物流輸送契約 19% 26% 20% 24% 54% 21 DECEMBER 2011 特集 サプライチェーン寸断 把握していない」と回答している。
今回の調査では、現状ではチャレンジングなテーマ ながら、同一エリア・同一業界における「?共同倉庫 の可能性」についても、敢えて質問してみた。
予想 通り「全く考えていない」とする企業が六九・三% を占める一方で、残りの約三割が何らかのレベルで共 同化を実施中あるいは「検討を始めた」と回答して いるのは注目される(図 21 )。
これら在庫に関する五項目の回答について、それ ぞれ未対応をレベル1、完全対応をレベル7とカウン トして平均値と分布をグラフ化したものが図 22 と図 23 だ。
全体として自社在庫、サプライヤー在庫、流通在 庫の把握は一定レベルに達しているが、サプライヤー 在庫の分散、そして共同化については取り組みが不十 分だといえる。
レジリエンシー 新たなキーワード 危機管理のキーワードとも言えるレジリエンシー (Resiliency:回復力)に関して、その準備の度合い、 関心度を次の六つの観点から調査した。
すなわち「? 生産復旧支援」、「?経営層の支援」、「?柔軟なリソ ースの投入」、「?地域内資材融通体制」、「?不測の 損害回避のための契約条項」、「?サプライチェーンの 全体把握」である。
このうち「?生産復旧支援」は、被災したサプラ イヤーの生産復旧支援について尋ねている。
「場合に 応じて支援できる体制にある」とする企業と、「全く 考えたこともない」という対照的な二つの選択肢に 回答が集中している(図 24 )。
「?経営層の支援」は、回復力の獲得に対する経営 層の関与を問う設問で、総じて高いレベルにあること が分かった(図 25 )。
また「?柔軟なリソースの投入」 7. 常時、完璧に在庫数量を 把握している 6.ほぼ在庫数量を把握してい る 5. 概算でとらえている 4. 都度、聞いている 2.あまり知らない 3.少し知っている 1. 全く知らない 図17? サプライヤー在庫 現在のサプライヤー会社の持つ在庫量をどの程度知っていますか (注:取引しているサプライヤーの持つ在庫量のこと) (社)0 5 10 15 20 25 30 3.4% 12.5% 17.0% 12.5% 17.0% 9.1% N=95 7.全国多数の場所にて 在庫を保有している 6. 東西南北に分散している 5. 数カ所に分散している 4. 分散する計画である 2.在庫場所は1カ所 のみである 3.分散するよう依頼中である 1.よく知らない 図18? サプライヤー在庫分散 サプライヤーの在庫場所は国内に適度に分散されていますか (注:サプライヤーの生産拠点が一カ所でも全国に複数の倉庫を持っているか) (社)0 5 10 15 20 25 30 5.7% 2.3% 11.4% 19.3% N=95 2.3% 7. 経営トップ及び社内で認識 が十分に共有されている 6. 経営トップ及び社内で 認識がほぼ共有されている 5. 社内ではほぼ 共有されている 4. 調達部門内でのみ 共有されている 2. 現在、検討中である 3.担当者ベースでは 認識がある 1. 全く共有されていない 図19? 自社在庫 自社の在庫水準は安全在庫数量を含め、 適切であると経営トップ及び社内で認識が共有されていますか (注:在庫数量は適切で非常時を想定して耐える水準かどうか、また 安全在庫数量以上に今後バッファーを持つことも考えられる) (社)0 5 10 15 20 25 12.5% 5.7% 3.4% N=95 12.5% 28.4% 29.5% 29.5% 25.0% 26.1% 7. 常時、流通在庫を 十分に把握している 6.流通在庫をほぼ 把握している 5. 流通在庫を半分くらい 把握している 4.流通在庫を数カ所くらい 把握している 2. 流通在庫を調査中である 3.流通在庫を把握する 認識はある 1. 全く把握していない 図20? 流通在庫 当該品の流通在庫を把握していますか (注:代理店や商社経由の場合、メーカー在庫以外に期待できる在庫のこと) (社)0 5 10 15 20 25 11.4% 6.8% 4.5% 22.7% N=95 12.5% 18.2% 23.9% 実施率 61% 実施率 38% 実施率 49% 実施率 66% 14.8% DECEMBER 2011 22 は非常時における調達部門への人員、施設、車両な どの配備計画で、これについても一定の対応がとら れている(図 26 )。
「?地域内資材融通体制」は、現状では「全く考え たことがない」という企業がほとんどを占めている (図 27 )。
ハードルの高い施策であるため、こうした結 果になったことも理解できるが、次の「?不測の損 害回避のための契約条項」は、すぐにでも実施でき る施策であるにもかかわらず、多くの企業が現状で は対応できていない(図 28 )。
「?サプライチェーンの全体把握」は既に体制整備 を進めている先行グループと、何らかの問題意識を持 つグループの二つに大別できるが、全体としては関心 の高さがうかがえる(図 29 )。
これら回復力に関する六項目の調査結果のうち、回 答に偏りのある「?地域内資材融通体制」と「?不 測の損害回避のための契約条項」を外し、回復力に対 する関心度と実際の準備のレベルを図 30 にまとめた。
関心度としては「?サプライチェーンの全体把握」が 最も高いが、その準備度は「?経営層の支援」、「? 柔軟なリソースの投入」と比べて大きく遅れをとって いることが分かる。
回復力の差はどこで付くのか 以上の「?複数購買」、「?代替品」、「?内製化」、 「?物流」、「?在庫」、「?レジリエンシー(回復力)」 という六つの側面からのSCMの事業継続に関する調 査結果を、対応レベルが平均以上のグループと平均未 満のグループに分け、両者の比較を行った。
平均以上のグループと平均未満のグループの各側面 の水準は図 31 の通り。
これをグラフ化したものが図32 だ。
六つの側面のうち「物流対策」と「回復力対策」 共同で在庫を十分 集めることができる 共同で在庫をかなりの程度まで 集めることができる 共同で在庫を半分くらい 集めることができる 対象を決めほぼコンセンサスが とれている 検討を始めた コンビナート内、同一地域、 同一業界内で協議中である 全く考えていない 図21? 共同在庫 同一コンビナート内、同一地域・同一業界内 で在庫を増やす、または共同で一カ所に在庫を集めることができますか (注:地域や業界内にて共同で在庫を持つという意味) (%)0 10 20 30 40 50 60 70 4.5% 2.3% 0% 3.4% 12.5% N=95 図23 回答企業95 社の在庫に関する対策順位 対応レベル (対応レベル) 1 2-4 5-7 ?サプライヤー在庫 ?サプライヤー在庫分散 ?自社在庫 ?流通在庫 ?共同在庫 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 (%) ? ? ? ? ? 8.0% 69.3% 図22 結果 ? ? ? ? ? 7 6 5 4 3 2 1 0 ?サプライヤー在庫 ?サプライヤー在庫分散 ?自社在庫 ?流通在庫 ?共同在庫 N=95 3.8 3.1 4.9 3.8 1.8 7.支援体制ができている 6.場合に応じて支援できる 体制にある 5.支援体制が整いつつある 4.社内にて支援の コンセンサスを取りまとめ中 3.サプライヤーと協議中 2. 社内検討中 1. 全く考えたこともない (社)0 10 20 30 40 図24? 生産復旧支援 被災サプライヤー会社の生産体制復旧を支援することができますか N=95 平均値:2.9 最頻値:1 中央値:2 23 DECEMBER 2011 特集 サプライチェーン寸断 で格差が大きいことが分かる。
平均未満グループは、 この二つの側面に大きな改善の余地を残している可能 性が高い。
平均以上グループと平均未満グループを、業種別に 見た時には、どのような傾向が表れるのか。
一定の回 答母数のある「電気・精密・機械」の組立型メーカ ー、「食品・医薬・雑貨」のグロサリーメーカー、そ して「素材・繊維・エネルギー」の素材型メーカーに ついて、それぞれグラフを作成した。
それによると「電気・精密・機械」メーカーでは、 全業種分析で平均以上グループと平均未満グループの 格差が顕著だった「回復力対策」、「物流対策」と並 び、「内製化対策」の対応レベルに大きな開きのある ことが分かった(図 33 )。
また他業種と比べると危機 対応能力に優れた企業と、そうでない企業の違いが 大きかった。
「食品・医薬・雑貨」メーカーは、平均以上グルー プと平均未満グループの格差が各項目とも同レベルだ った(図 34 )。
なお、グロサリーメーカーは組立型メ ーカーと比較すると、サプライヤー対策の対応レベル が高く、内製化対策の対応レベルが低い。
これは商品 特性を反映したものと考えられる。
「素材・繊維・エネルギー」メーカーも、「物流対策」 の格差が若干大きいものの、グロサリーメーカーと同 様に平均以上グループと平均未満グループのグラフが ほぼ平行している(図 35 )。
いずれの業界においても平均以上グループの企業は、 六つの側面のすべてにおいて平均未満グループの対応 レベルを上回っている。
SCMにおける事業継続の取 り組みには、その会社で明らかな温度差が存在してい る。
そのことが各社の競争力に大きく影響している可 能性が高い。
7. 助言や支援を適切に 実施している 6. 場合に応じて助言や 支援を行っている 5. 助言や支援体制が整いつつ ある 4. 助言や支援体制の コンセンサスを取りまとめ中 3.経営レベルで協議中 2. 社内検討中 1. 全く考えたこともない 図25? 経営層の支援 経営トップは重要部材、原材料の調達先や調達上の課題を把握し、 適切な助言や支援をしていますか 7.柔軟なリソース投入体制が できている 6.ほぼ体制ができている 5.ある程度のレベルで 柔軟な運用が可能である 4. 一部の運用については 可能な状態となっている 3. 関連部門(人事や設備、 生産部門など)と協議中 2.社内検討中 1. 全く不可能だ (社)0 10 20 30 40 図26? 柔軟なリソース投入 非常時における調達部門への人員や施設・設備(車両などの機材) の柔軟な投入・配備などの体制がありますか (社)0 10 20 30 40 7. 横断的にネットワーク内で資 材を融通している 6.ネットワーク内で指針を作っ ている 5. 現実的な対応可能性をまと めている 4. 実行可能性について前向き な意見がある 3.取り急ぎ会合をもち意見聴取 をしている 2.今回の震災で検討を始めた 1. 全く考えたこともない 図27? 地域内資材融通体制 非常時には同一地域、工業団地、コンビナート内等の産業集積 コミュニティー内で部品や資材を相互に融通し合う地域ネットワ ークが出来ていますか (社)0 10 20 30 40 50 60 70 N=95 平均値:3.9 最頻値:5 中央値:4 N=95 平均値:4.4 最頻値:6 中央値:6 N=93 平均値:1.8 最頻値:1 中央値:1 7. 交渉の末、損害回避の 条項を入れた 6. 交渉中であるがほぼすべて 目途はついた 5.半数ほどの契約で目途が ついている 4.弁護士を入れて鋭意、 最終レベルの交渉中 3.半分程度、交渉に入っている 2. 契約内容の検討を開始した 1. 全く考えたことがない 図28? 不測の損害回避の為の契約条項 一般的な不可抗力条項や免責条項を超え、サプライヤー契約に不測 の損害を回避できる条項を入れていますか (社)0 10 20 30 40 N=94 平均値:2.4 最頻値:1 中央値:2 DECEMBER 2011 24 (%) 0 ?生産復旧支援 ?経営層の支援 ?柔軟なリソース 投入 ?サプライチェーン 全体把握 20 40 60 80 100 7. 完全に把握し緊急時の バックアップ体制がある 6.ほぼ把握しておりバックアッ プ体制整備も進行中 5.プロセス審査を通してボトル ネックを把握し、バックアップ 体制も整備中 4.マニュアルや文書でのみ把 握している 3.サプライヤーと協議中 2.あまり知らない 1. 全く知らない 図29? サプライチェーンの全体把握 サプライチェーンの全体構造及びそれを支える全業者を把握して いますか。
また、ボトルネックとなる工程やボトルネックを支える 業者のバックアップ体制を構築していますか 図30 回復力への対応 各企業の回復力に対する準備度、関心度を定義し、アンケート結果を 分析した。
◆準備度:レベル5 〜 7の合計値の比率で「体制・準備あり」のラインで表示 ◆関心度:レベル2 〜 4の合計値の比率で「検討・準備中」のラインで表示 図31 6つの側面の平均値(3.51) 平均以上グループと平均未満グループの水準比較 (社)0 10 20 30 40 サプライヤー関連対策 5.44 4.12 代替品対策 3.82 2.40 内製化対策 3.41 1.91 物流対策 4.69 2.86 在庫対策 4.42 2.78 回復力対策 4.77 2.76 平均以上G 平均未満G N=95 平均値:3.2 最頻値:2 中央値:3 サプライヤー 対策 回復力対策 物流対策 在庫対策 代替品対策 内製化対策 図32 6つの側面の平均値(3.51)以上グループと 平均未満グループの水準比較 7 6 5 4 3 2 1 平均未満グループ 平均以上グループ 28 25 42 51 29 15 45 41 9 25 64 6 準備度関心度 N=95 体制・準備あり検討・準備中全く考えていない サプライヤー 対策 代替品対策 内製化造対策 物流対策 在庫対策 回復力対策 図33 電気・精密・機械 平均以上グループと未満グループの比較 4.13 6 5 4 3 2 1 0 3.86 4.58 5.40 4.16 4.95 5.86 4.31 3.84 2.34 2.68 1.61 4.55 2.59 4.88 2.88 2.2 5.72 4.66 4.16 3.22 2.27 3.00 4.20 2.75 4.03 2.90 4.41 3.41 2.95 2.94 2.06 平均以上グループ 平均以上グループ 平均未満グループ 平均未満グループ 平均未満 グループ 平均以上 グループ サプライヤー 対策 代替品対策 内製化対策 物流対策 在庫対策 回復力対策 図35 素材・繊維・エネルギー 平均以上グループと未満グループの比較 6 5 4 3 2 1 0 サプライヤー 対策 代替品対策 内製化対策 物流対策 図34 食品・医薬・雑貨 平均以上グループと未満グループ の比較 6 5 4 3 2 1 0 調査主体 CAPS日本研究会(注) 注・サプライマネジメント協会と米アリゾナ州立 大学が一九八六年に折半出資で設立したシンクタ ンク「CAPSリサーチ」の日本研究チーム。
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協 会(ISMジャパン)の有志によって二〇〇〇年 に任意団体として設立された。
主に企業の購買・ 調達・SCM管理職層によって構成されている。
CAPS日本研究会の研究資金は米CAPS リサーチおよびISMジャパンによって提供され ている。
これに対して米CAPSリサーチの運営 費は、以下の米大企業および一部個人による寄 付によって支えられているという違いがある。
調査の主旨 日本企業における事業継続計画策 定にあたっての示唆を得ることを目的として、サ プライチェーンの上流における部材等の安定調達 の視点から、「複数購買(サプライヤー)」、「代 替品」、「内製化」、「物流」、「在庫」、「レジリエ ンシー(回復力)」の六つの側面について質問を 設定した。
調査方法 インターネット調査。
電子メールで質 問票を送付した企業も一部含まれている。
調査期間 二〇一一年八月一日〜八月二〇日 調査対象企業 三八〇社(ISMジャパン会員 およびCAPS研究員関連企業を中心に、日本 経営倫理学会、日本科学技術連盟の支援を得た) 回答企業数 一〇一社(回答率二六・六%) 25 DECEMBER 2011 特集 サプライチェーン寸断 3M Company Adobe Systems Incorporated Agilent Technologies, Inc. Alcoa, Inc. Allstate Corporation American Electric Power Company, Inc. American Express Amgen Inc. Arizona Public Service Company AT&T Services, Inc. B/E Aerospace, Inc. BAE SYSTEMS BBVA Bechtel Corporation BHP Billiton Petroleum (Americas) Inc. Bonneville Power Administration BP America Inc. Bristol-Myers Squibb Company Cablevision Systems Corporation Calpine Corporation Celanese Corporation Cessna Aircraft Company Chevron Corporation Chevron Phillips Chemical Company LP CONSOL Energy Inc. Covidien Cummins Inc. Dean Foods Company Deere & Company Dell Inc. Delphi Corporation 回答企業・売上規模分布回答企業業種(社) 不明 13% 1 兆円以上 19% 1000 億円〜 1 兆円 100億円〜 28% 1000 億円 22% 100 億円未満 18% 食品…………………………… 24 電機機器…………………… 12 情報通信…………………… 10 化学……………………………… 7 輸送機器……………………… 6 機械……………………………… 6 その他製造…………… 6 商業……………………………… 5 陸海空運……………………… 5 サービス・金融…………… 4 水産・農林・鉱業……… 4 鉄鋼・非鉄・石油……… 4 繊維……………………………… 3 不明……………………………… 5 Diageo Diebold, Incorporated Dominion Resources, Inc. Drager Medical Systems, Inc. Dresser-Rand Group Inc. DTE Energy Duke Energy Corporation EADS N.V. Eisai Inc. Eli Lilly and Company Emerson Process Management Eni S.p.A. Eskom Holdings Ltd Evonik Degussa Corporation ExxonMobil Global Services Company FedEx Express Fidelity Investments Fluor Corporation Freeport-McMoRan Copper & Gold Inc. Freescale Semiconductor, Inc. General Dynamics Corporation General Mills, Inc. GlaxoSmithKline Group Five Ltd. Hallmark Cards, Inc. Hess Corporation Hilton Worldwide Honda of America Mfg., Inc. Honeywell IBM Intel Corporation International Paper Company ITT Corporation J. C. Penney Company, Inc. Johnson & Johnson Kerry Group plc L-3 Communications MasterCard Worldwide Microsoft Corporation Ministry Health Care (MHC) NAV CANADA Nestle USA Nilfisk-Advance, Inc. Northrop Grumman Corporation Novartis Pharmaceuticals Corporation Oakley, Inc. Pacific Gas and Electric Company Parker Aerospace PepsiCo, Inc. Petro Rabigh Pfizer Inc. Plains All American Pipeline, L.P. PNM Resources, Inc. PSEG Services Corporation Ralcorp Raytheon Company Repsol YPF Rio Tinto Rockwell Automation Rolls-Royce Royal Dutch Shell plc Royal Philips Electronics N.V. Ryder System, Inc. SABIC Innovative Plastics SAP AG Schneider Electric North America Siemens AG Siemens Industry, Inc. Solvay SA Sonoco Products Company Southern California Edison Company Statoil ASA Suncor Energy Inc. Tennessee Valley Authority Teradyne Terex Corporation Tesoro Corporation Texas Instruments, Incorporated The American National Red Cross The Boeing Company The Coca-Cola Company The Procter & Gamble Company The Walt Disney Company TransCanada Pipelines Ltd. Tyco International Management Company U.S. Department of Veterans Affairs U.S. Postal Service U.S. Steel Unisys Corporation United States Air Force Vale S.A. Xcel Energy Inc. 調査の概要
