2011年12月号
特集
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第3部 リスクと闘うロジスティクス部門 ソニー──災害対応の最前線に立つ物流子会社
DECEMBER 2011 26
ソニー
──災害対応の最前線に立つ物流子会社
震災後一週間で基幹倉庫を回復
東日本大震災の影響により、ソニーでは国内の一〇
工場が一時生産停止に追いやられた。
ブルーレイディ スクやデジタルカメラ、光学部品、ICカード、リチ ウムイオン電池など、グループ各社が製造する多くの 製品や部材のラインがストップし、市場への供給が困 難な状況に陥った。
地震や津波といった直接的な被害 に加え、電力不足や原材料・部品等の調達が滞った ことなどが影響を拡大させた。
それでも、グループをあげて復旧作業に努めた結果、 震災翌月の四月末時点までには影響を受けた一〇工 場のうち九工場のラインが再稼働するまで回復した。
残りの一工場も初夏までにはほぼ従来通りの機能を 取り戻している。
工場の復旧と並行して、供給網や 調達網も復活している。
業績に及んだ影響は金額に して約一五〇〇億円と甚大だったが、サプライチェー ンを取り戻すまでのスピードは速かった。
その舞台裏では物流部隊が奮闘していた。
現在、ソ ニーは本社の生産本部物流部門に物流企画機能を置 き、オペレーションの管理を物流子会社のソニーサプ ライチェーンソリューション(SSCS)に委託する 体制をとっている。
SSCSが管轄する領域は製品 物流に留まらず、ソニーグループ各社の部材調達やリ ペアパーツ(補修部品)にまで及び、かつそれらをグ ローバルレベルでコントロールしている。
ソニーのサプライチェーン復旧のプロセスにおいて、 SSCSは重大な責任を担っていた。
SSCSは東 北地方の拠点として、宮城県の多賀城市および宮城 郡七ヶ浜町の二カ所に物流センターを構えている。
多 賀城センターは近隣に位置するソニーの工場に納める 部材の保管倉庫として、七ヶ浜センターは完成品を保 管する東北圏の販売拠点倉庫として機能している。
このうち、多賀城センターが震災によって大きな被 害を受けた。
一階部分に津波が浸水し、物流センター としての機能は完全に失われた。
震災からしばらく の間は多賀城センターから部材を送る工場も停止して いたが、生産ラインが回復するにつれて、従来通りの 部材供給が求められるようなった。
しかし、多賀城センターの被害は大きく、その時点 ではまだ復旧に手を付けられる状態ではなかった。
そ こで、被害が比較的軽微だった七ヶ浜センターの一部 に代替スペースを確保してオペレーションを一時移管 した。
さらに、復旧した工場の一部のスペースを物流 用に転用してもらうよう交渉し、生産ラインへの部材 供給を実現した。
同時に、調達の円滑化にも努めた。
被災したサプラ イヤーとの連携を深め、輸送手段の確保に奔走した。
サプライヤーが自分で物流センターに納品する契約条 件の場合でも、それが困難な場合にはSSCS側が 輸送を手配し、自ら取りに行った。
ソニー本社の生産本部物流部門長も兼務するSS CSの江連淑人社長は「一連のプロセスは政府からの 緊急物資要請への対応や被災したソニー社員への救援 輸送、七ヶ浜センターの緊急出荷業務などと並行して 行う必要があった。
非常にタフなオペレーションだっ たが、現場がよく対応してくれた」と振り返る。
震災の影響は関東圏でも発生していた。
東京・お 台場の物流センターでは、強い揺れにより建物の壁が 崩落し、保管していた製品が荷崩れをおこした。
お 台場センターは日本国内における基幹製品倉庫で、関 東圏の顧客に対する納入や地方拠点への出荷基地と しての機能を果たしている。
同センターの機能不全が 長期化すれば、ソニーの業績に深刻な影響を与える。
ソニーグループの製品物流、部材調達、リペアパーツの物 流は子会社のソニーサプライチェーンソリューションがグロー バルレベルで管轄している。
危機下における同社の働きぶりが、 ソニー全体の復興速度に直結する。
東日本大震災では重い 責任を背負いながら、供給網・調達網の回復に奔走した。
さらに大きな試練と今、タイで向き合っている。
(石鍋 圭) 3 リスクと闘うロジスティクス部門 27 DECEMBER 2011 特集 サプライチェーン寸断 安全面に配慮をしながらも、震災当日から復旧作 業を開始した。
震災の翌々日には江連社長自ら現地 に赴き、現場の指揮に当たった。
その結果、三月一 四日には緊急輸送物資の入出荷・配送ができるまで 回復、震災から一週間後の一八日にはほぼ従来通り の機能を取り戻すことができた。
しかし、その後も計画停電がオペレーションに重く のしかかった。
影響の特に大きかったのが、千葉県 木更津市の岩根センターだ。
同センターはソニーにお けるリペアパーツの主要拠点としての機能を有してい る。
ソニーのリペアパーツの多くは同センターでの庫 内作業を経て成田空港まで運ばれ、そこから世界中 に向けて航空輸送されている。
そのセンター機能が計画停電によって大きく乱れた。
航空便のスケジュールに合わせて設計されていた庫内 プロセスが実行不能になり、リペアパーツの供給がグ ローバルレベルで停滞してしまった。
同地区の計画停 電は数日程度に過ぎなかったが、リペアパーツの輸送 は緊急性を要するケースが大半で影響を避けられなか った。
それでも、東日本大震災後のSSCSの一連の対 応に、江連社長は一定の手応えを感じている。
「細か な課題はたくさん見つかったが、ソニーのサプライチ ェーンを繋ぐために必要なことは全てできた」と自負 している。
洪水からデジカメを守る 震災対応が一段落した矢先に、今度はタイで大洪水 が発生した。
ソニーはタイにデジタルカメラや半導体 関連の工場を構えている。
なかでもアユタヤのハイテ ク工業団地内の工場はデジカメの一大生産拠点として いるだけに影響は大きい。
十一月中に発売する予定だった「NEX─7」や 「α 65 」など複数のデジカメ機種が発売延期を余儀な くされている。
一連の影響額を同社は約二五〇億円 と発表しているが、今後の状況次第ではさらに拡大 する可能性もある。
ハイテク工業団地の工場から二〇キロほど離れたと ころに、SSCSのタイにおける基幹倉庫がある。
デ ジカメを中心に保管しており、そこから世界中の市場 へと出荷している。
生産工場と同様、この倉庫も冠 水して従来の機能を失った。
SSCSは保管していた荷物の保全に奔走した。
洪 水が来る可能性が判明した時点で複数の外部倉庫を用 意し、順次運び出した。
間に合わなかった荷物は倉庫 内のラックに乗せ、水を被らないよう配慮した。
洪水が押し寄せてからも、倉庫に残した荷物の搬出 を諦めなかった。
観光用のボートを六隻ほどチャータ ーしてトラックバースに乗り入れ、荷物が濡れないよ うビニール袋に入れて運び出した。
この作業を一〇日 間ほど続け、庫内に残されたほぼ全ての荷物を運び出 した。
しかし、タイの洪水におけるSSCSのオペレーシ ョンが本当の山場を迎えるのはこれからだろう。
今は まだソニーの工場もサプライヤーもストップしている 状態だが、洪水が落ち着けば、サプライチェーンの本 格的な再構築が始まる。
その時のSSCSの働きぶ りが、ソニーの復活に大きく影響する。
江連社長は「サプライチェーンの観点から見れば、 東日本大震災よりもタイの洪水の方が影響は大きくな るだろう。
震災の時にも実感したが、危機において は“柔軟さ”と“現場力”がモノを言う。
これを重視 しながら今後の危機対策を見据えていく必要がある」 と準備を進めている。
SSCSの江連淑人社長 (ソニー本社の生産本部 物流部門長を兼務) タイの洪水ではボードをチャーターして 倉庫内の製品を運び出した
ブルーレイディ スクやデジタルカメラ、光学部品、ICカード、リチ ウムイオン電池など、グループ各社が製造する多くの 製品や部材のラインがストップし、市場への供給が困 難な状況に陥った。
地震や津波といった直接的な被害 に加え、電力不足や原材料・部品等の調達が滞った ことなどが影響を拡大させた。
それでも、グループをあげて復旧作業に努めた結果、 震災翌月の四月末時点までには影響を受けた一〇工 場のうち九工場のラインが再稼働するまで回復した。
残りの一工場も初夏までにはほぼ従来通りの機能を 取り戻している。
工場の復旧と並行して、供給網や 調達網も復活している。
業績に及んだ影響は金額に して約一五〇〇億円と甚大だったが、サプライチェー ンを取り戻すまでのスピードは速かった。
その舞台裏では物流部隊が奮闘していた。
現在、ソ ニーは本社の生産本部物流部門に物流企画機能を置 き、オペレーションの管理を物流子会社のソニーサプ ライチェーンソリューション(SSCS)に委託する 体制をとっている。
SSCSが管轄する領域は製品 物流に留まらず、ソニーグループ各社の部材調達やリ ペアパーツ(補修部品)にまで及び、かつそれらをグ ローバルレベルでコントロールしている。
ソニーのサプライチェーン復旧のプロセスにおいて、 SSCSは重大な責任を担っていた。
SSCSは東 北地方の拠点として、宮城県の多賀城市および宮城 郡七ヶ浜町の二カ所に物流センターを構えている。
多 賀城センターは近隣に位置するソニーの工場に納める 部材の保管倉庫として、七ヶ浜センターは完成品を保 管する東北圏の販売拠点倉庫として機能している。
このうち、多賀城センターが震災によって大きな被 害を受けた。
一階部分に津波が浸水し、物流センター としての機能は完全に失われた。
震災からしばらく の間は多賀城センターから部材を送る工場も停止して いたが、生産ラインが回復するにつれて、従来通りの 部材供給が求められるようなった。
しかし、多賀城センターの被害は大きく、その時点 ではまだ復旧に手を付けられる状態ではなかった。
そ こで、被害が比較的軽微だった七ヶ浜センターの一部 に代替スペースを確保してオペレーションを一時移管 した。
さらに、復旧した工場の一部のスペースを物流 用に転用してもらうよう交渉し、生産ラインへの部材 供給を実現した。
同時に、調達の円滑化にも努めた。
被災したサプラ イヤーとの連携を深め、輸送手段の確保に奔走した。
サプライヤーが自分で物流センターに納品する契約条 件の場合でも、それが困難な場合にはSSCS側が 輸送を手配し、自ら取りに行った。
ソニー本社の生産本部物流部門長も兼務するSS CSの江連淑人社長は「一連のプロセスは政府からの 緊急物資要請への対応や被災したソニー社員への救援 輸送、七ヶ浜センターの緊急出荷業務などと並行して 行う必要があった。
非常にタフなオペレーションだっ たが、現場がよく対応してくれた」と振り返る。
震災の影響は関東圏でも発生していた。
東京・お 台場の物流センターでは、強い揺れにより建物の壁が 崩落し、保管していた製品が荷崩れをおこした。
お 台場センターは日本国内における基幹製品倉庫で、関 東圏の顧客に対する納入や地方拠点への出荷基地と しての機能を果たしている。
同センターの機能不全が 長期化すれば、ソニーの業績に深刻な影響を与える。
ソニーグループの製品物流、部材調達、リペアパーツの物 流は子会社のソニーサプライチェーンソリューションがグロー バルレベルで管轄している。
危機下における同社の働きぶりが、 ソニー全体の復興速度に直結する。
東日本大震災では重い 責任を背負いながら、供給網・調達網の回復に奔走した。
さらに大きな試練と今、タイで向き合っている。
(石鍋 圭) 3 リスクと闘うロジスティクス部門 27 DECEMBER 2011 特集 サプライチェーン寸断 安全面に配慮をしながらも、震災当日から復旧作 業を開始した。
震災の翌々日には江連社長自ら現地 に赴き、現場の指揮に当たった。
その結果、三月一 四日には緊急輸送物資の入出荷・配送ができるまで 回復、震災から一週間後の一八日にはほぼ従来通り の機能を取り戻すことができた。
しかし、その後も計画停電がオペレーションに重く のしかかった。
影響の特に大きかったのが、千葉県 木更津市の岩根センターだ。
同センターはソニーにお けるリペアパーツの主要拠点としての機能を有してい る。
ソニーのリペアパーツの多くは同センターでの庫 内作業を経て成田空港まで運ばれ、そこから世界中 に向けて航空輸送されている。
そのセンター機能が計画停電によって大きく乱れた。
航空便のスケジュールに合わせて設計されていた庫内 プロセスが実行不能になり、リペアパーツの供給がグ ローバルレベルで停滞してしまった。
同地区の計画停 電は数日程度に過ぎなかったが、リペアパーツの輸送 は緊急性を要するケースが大半で影響を避けられなか った。
それでも、東日本大震災後のSSCSの一連の対 応に、江連社長は一定の手応えを感じている。
「細か な課題はたくさん見つかったが、ソニーのサプライチ ェーンを繋ぐために必要なことは全てできた」と自負 している。
洪水からデジカメを守る 震災対応が一段落した矢先に、今度はタイで大洪水 が発生した。
ソニーはタイにデジタルカメラや半導体 関連の工場を構えている。
なかでもアユタヤのハイテ ク工業団地内の工場はデジカメの一大生産拠点として いるだけに影響は大きい。
十一月中に発売する予定だった「NEX─7」や 「α 65 」など複数のデジカメ機種が発売延期を余儀な くされている。
一連の影響額を同社は約二五〇億円 と発表しているが、今後の状況次第ではさらに拡大 する可能性もある。
ハイテク工業団地の工場から二〇キロほど離れたと ころに、SSCSのタイにおける基幹倉庫がある。
デ ジカメを中心に保管しており、そこから世界中の市場 へと出荷している。
生産工場と同様、この倉庫も冠 水して従来の機能を失った。
SSCSは保管していた荷物の保全に奔走した。
洪 水が来る可能性が判明した時点で複数の外部倉庫を用 意し、順次運び出した。
間に合わなかった荷物は倉庫 内のラックに乗せ、水を被らないよう配慮した。
洪水が押し寄せてからも、倉庫に残した荷物の搬出 を諦めなかった。
観光用のボートを六隻ほどチャータ ーしてトラックバースに乗り入れ、荷物が濡れないよ うビニール袋に入れて運び出した。
この作業を一〇日 間ほど続け、庫内に残されたほぼ全ての荷物を運び出 した。
しかし、タイの洪水におけるSSCSのオペレーシ ョンが本当の山場を迎えるのはこれからだろう。
今は まだソニーの工場もサプライヤーもストップしている 状態だが、洪水が落ち着けば、サプライチェーンの本 格的な再構築が始まる。
その時のSSCSの働きぶ りが、ソニーの復活に大きく影響する。
江連社長は「サプライチェーンの観点から見れば、 東日本大震災よりもタイの洪水の方が影響は大きくな るだろう。
震災の時にも実感したが、危機において は“柔軟さ”と“現場力”がモノを言う。
これを重視 しながら今後の危機対策を見据えていく必要がある」 と準備を進めている。
SSCSの江連淑人社長 (ソニー本社の生産本部 物流部門長を兼務) タイの洪水ではボードをチャーターして 倉庫内の製品を運び出した
