2011年12月号
ケース

日本生活協同組合連合会 SCM PB商品の需給管理に独自のアプローチ生産計画まで直接管理して流通を合理化

DECEMBER 2011  42 「生協版SCM」で合理化に挑む  全国の生協や事業連合が加入する日本生活 協同組合連合会(日本生協連)は、二〇一〇 年春からプライベートブランド(PB)商品を 対象とするSCMを本格化している。
〇六年 から構築を進めてきた新しい需給管理の手法 を、加工食品を中心とする一部のPBに適用 しはじめた。
 日本生協連は〇五年に発表した長期指針 「日本の生協の二〇一〇ビジョン」の中でSC Mの重要性に言及し、その段階でサプライチ ェーンの合理化をテーマとするプロジェクトを 発足させている。
 現在、日本生協連の第一商品本部で需給 管理部の責任者を務める韮澤進部長はこのプ ロジェクトの主要メンバーだった。
当時は日 本生協連が一〇〇%出資する物流子会社のシ ーエックスカーゴで需給管理の責任者を務め ていた。
プロジェクトチームは約半年間の検 討を経て、〇六年九月に「生協版SCM」を 打ち出した。
 生協のビジネスモデルは一般のチェーンスト アとは大きく異なっている。
宅配による物品 販売だけで年間一・六兆円近くを扱い、加え て店舗でも九〇〇〇億円超の商品を販売する 流通業者は、生協をおいて他にない。
そのサ プライチェーンを効率化するには、既存の手 法とは異なる方法論が必要だった。
 それが韮崎部長の起案した「生協版SCM」 だった。
最大の特長は、需要予測が困難な宅 配業態を中心とする生協の事業において、P B商品の生産数量に生協自身が責任を負うこ とでサプライチェーンを効率化していこうとす る点にある。
その結果として、商品価格を引 き下げることを明確に意図している。
 「コスト削減のためには、サプライチェーン を合理化して構造的に調達力を高めていくし かなかった。
生産量の決定や在庫管理を取引 先に任せてきた部分にメスを入れない限り、も はや商品の調達価格は下がらない。
取引先が 持っている在庫まで含めて可視化して自分た ちでコントロールする必要があった」と韮澤 部長は振り返る。
 これまでに在庫管理の見直しや物流改革、 生産数を決めるための業務プロセスの構築な どを進めてきた。
「生協版SCM」のスタート 時に十一個の「SCMタスク」を立ち上げた。
物流や情報システムなど機能別のタスクに加 えて、「水産」や「ペット飲料」など商品カ テゴリー別のタスクを設けて、各領域で最適 な業務モデルを模索してきた。
プロジェクト の総指揮を執る日本生協連の矢野和博専務理  2010年春から400SKUのPB商品を対象に「生協 版SCM」と呼ぶ独自の取り組みを開始した。
従来は 調達先任せだったPB商品の生産量を直接コントロー ル。
在庫リスクを自ら背負い、サプライチェーンの合 理化を原資とする商品の低価格化を進めている。
SCM 日本生活協同組合連合会 PB商品の需給管理に独自のアプローチ 生産計画まで直接管理して流通を合理化 日本生活協同組合連合会の 韮澤進需給管理部部長 43  DECEMBER 2011 事からは、「とにかくSCMを進めろ」と後 押しされながら作業を進めてきた。
 これに伴って需給管理のための組織も段階 的に拡充してきた。
〇六年に発足したSC Mプロジェクトの事務局が、〇八年四月には 「SCM推進室」に格上げされた。
もっとも 「当初は二人だけの必要最低限の組織だった。
こういった部署に人をたくさん配置してしま うと、ここに任せておけばSCMをやってく れるものと関係者が誤解しかねないからだ」 と韮澤部長は説明する。
 一〇年四月からは、SCM推進室を「需給 管理部」に衣替えした。
それまでの事務局的 な位置づけも見直して、「商品本部」の中で 実務を担うセクションに変更。
ここに需要予 測を担っていた人材や、輸入商材を発注して いた人材などを集約した。
人数も一気に一五 人へと増員を図った。
 実質的な初年度となった一〇年度には、ト ータルで約四七〇〇SKUあるPB商品のう ち四〇〇SKUを「生協版SCM」の対象と した。
手作業が中心ではあったが、事前に構 築した業務モデルに沿って需給調整を高度化 していった。
 結果として同年度には、剰余(粗利)を 三・八億円拡大することができた。
一方で、 従来は取引先に任せていた物流を日本生協連 が自ら手掛けることによる支出増もあったが、 その分の三億円余りを差し引いても最終的に 七五〇〇万円の収益拡大という結果を残すこ とができた。
PB商品の低価格化を目指す  日本生協連がサプライチェーン改革を急ぐ 背景にはPBを取り巻く環境の変化がある。
同連合会は一九六〇年に「CO・OP生協 バター」を発売して以来、多くのPBを世に 送り出してきた。
メーカーの価格政策の盲点 を突く商品や、環境や健康に配慮した食品な ど、生協活動の理念に沿うPBを積極的に開 発。
他の流通業者のPBが?安かろう悪かろ う?という負のイメージを払拭できないなか、 生協のPBは品質を重視する組合員に支えら れながら普及していった。
 しかし二〇〇〇年代後半になると、その優 位性が揺らぎはじめた。
大手有力チェーンが 相次いでPB戦略に本腰を入れ、価格だけで なく品質でも消費者の支持を得るようになっ た。
〇八年には「日経ヒット商品番付」でイ オンの「トップバリュ」とセブン&アイの「セ ブンプレミアム」が「横綱」を受賞するなど、 PBへの社会的な注目度が向上。
生協のPB への評価は相対的に低下していった。
 商品を購入する組合員の意識も変化してい る。
日本生協連は〇九年に約六〇〇〇人の 組合員を対象とする「全国生協組合員意識 調査」を実施した。
その結果を〇六年の調査 結果と比較すると、生協のPBに低価格を求 める声が二三%から二九%へと増加している。
若年層ほど低価格への要望が強いこともあら ためて明らかになった。
 ニーズの変化に対して、日本生協連も手を こまぬいていたわけではない。
事業連合と の商品の共同開発などによって二〇〇〇年前 後からPBの仕入れルートの集約に取り組み、 量をまとめて調達条件の改善を進めた。
ただ し、〇五年ぐらいになるとそれも一巡してし まい、新たな対策を求められていた。
 PB商品の価格競争力を実際に調べてみた ところ、必ずしも競合より劣っているわけで はなかった。
にもかかわらず「生協のPBは 高い」というイメージを持たれていた。
〇六 年に新たなPBブランド「新・低価格商品」 シリーズを展開したが、こうしたイメージを 覆すまでには至らなかった。
 そこで〇九年三月から「コープベーシック」 生協のPB商品の供給高(売上高)の推移 (億円) (年度) (%) 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 100 80 60 40 20 0 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 供給高(左軸) 共同開発の構成比(右軸) DECEMBER 2011  44 という新しいPBブランドを戦略商品として 投入した。
狙いはズバリ「トップバリュ」や 「セブンプレミアム」に負けない価格を実現す ること。
その原資を生み出すためにも、サプ ライチェーンの効率化が不可欠だった。
 九〇年代までの日本生協連は、卸売業者の ような立場でPBを会員生協に供給していた。
各地の草の根運動を母体とする生協は分権を 前提に運営されており、日本生協連の役割も チェーンストアの本部とは根本的に違う。
会 員生協には実現できないPBの開発や、生協 運動のナショナルセンターの機能を担うといっ た役割に限定されていた。
 それが近年は、各地の生協が抱える事業課 題を解決する、いわばチェーン本部と同様の 役割を求められるように変わってきた。
そう した変化を真正面から受け止めたのが、先に 触れた「二〇一〇年ビジョン」だった。
組合 員の低価格志向に応えるには、生協全体で 二・五兆円に上る供給高(売上高)を生かす 必要があり、そのためには日本生協連を中心 に行動しなければならなかった。
 生協の宅配事業は、週単位で業務サイクル を繰り返している。
個配であれば、毎週あら かじめ決められた曜日に、事業を利用する組 合員のところに商品カタログと申込書、それ から前週に申し込んだ商品が届く。
組合員は カタログの中から新たに購入する商品を選び、 申込書に記入。
これを生協が回収し、一週間 後にまた新しいカタログと一緒に商品を届け だけを管理していればよかった。
 その一方で取引先は、多くが生協の三倍、 四倍の在庫を持って欠品の発生を防いでいた。
これを日本生協連の各地の倉庫にその都度納 品することも負担になっていた。
こうしたコ ストは当然、商品価格に跳ね返る。
そこで需 給改革と同時に、取引先から日本生協連の倉 庫まで商品を納品してもらっていた物流につ いても大幅に見直した。
 それまで取引先に管理してもらっていた商 品の在庫を、引き取りにいってまとめて仕入 れ、その後の管理はすべて日本生協連が担う るという流れになる。
 「生協の宅配事業のカタログは二〇〇〇年 頃まで毎週、全国で四〇から五〇種類ぐらい が動いていた。
仮にどこかの販売企画が上手 くいかなくても、翌週とか翌々週に別のとこ ろで同様の企画がある。
同じ商品を別のとこ ろで販売できることから、PB商品の作りす ぎなどに対するリスクヘッジが自然にできて いた」と韮澤部長。
 生協の活動は法律で県域や職域を制限され ている。
当時は、このことが結果的にPBの 在庫管理を容易にしていた。
商品の調達相手 である取引先に発注はしても、実際の生産量 の決定は相手に任せっぱなし、という粗っぽ い需給管理でも業務は回っていた。
 ところが事業連合の進展で各地の生協の統 合が進んだ結果、そうはいかなくなった。
一 つの事業連合の企画のために用意する商品の 数量が格段に多くなり、売れ行きによるブレ 幅も大きくなった。
欠品に備えて商品を用意 すると、想定外の在庫が残ってしまうといっ たリスクが格段に増していた。
多頻度小口化した物流にもメス  日本生協連はPBを管理するための倉庫を、 常温と低温でそれぞれ全国に一〇カ所程度構 えている。
SCMに着手する以前、それらの センターでは四、五日分程度の商品在庫しか 持っていなかった。
在庫が少なくなれば随時、 取引先に補充してもらえるため、庫内の在庫 PB商品に対する組合員の要望は時代とともに変化している 出典「 2009年全国生協組合員意識調査」 ( )内は% 20歳代 低価格  (43) 30 歳代 40 歳代 50 歳代 低価格  (42) 健康・ カロリー配慮 健康・ カロリー配慮 低価格  (32) 便利さ  (32) 便利さ  (34) おいしさ  (31) おいしさ  (27) おいしさ  (29) おいしさ ( 29) 低価格  (27) 1位2位3位 (38) (50) 45  DECEMBER 2011 クスカーゴが手配するトラックの積載率を高め るということを徹底してやった。
たとえば北 海道向けであれば、必要な商品がちょうど一 〇トン車一台分になるように調整する。
その 甲斐あってこの業務の平均積載率は今でも九 割を超えている」(韮澤部長) 二〇一二年度に新システム稼働  一連の物流改革は大きな成果を挙げた。
た だし、SCMにとって最大の眼目である在庫 削減については、これまでのところ期待した ほどの結果を残せずにいる。
理由の一つとし て、今年三月に発生した東日本大震災を受け て「生協版SCM」でカバーすべき領域を抜 本的に見直したという事情がある。
 当初の計画では、一〇年度に四〇〇SKU で実施したのに続いて、一一年度は対象品目 を六〇〇SKUに拡大して生産指示まで踏み 込んだSCMを導入する考えだった。
しかし 未曾有の大震災によって、需給管理部門が何 よりも優先すべきは、商品の安定供給という ことになった。
このため約四七〇〇SKUあ るすべてのPBについて調達管理を強化する ことになった。
 需給管理部の担当者数が大きく変わらない なかで管理対象の品目を一〇倍以上に増やし た結果、品目ごとにSCMを深掘りしていく より先に、まずは広く浅く全品の調達状況を 管理するというものに変わらざるをえなかっ た。
夏場の節電対策のために意図的に在庫を 積み増した影響も小さくなかった。
 「生協版SCM」の管理業務がまだあまりシ ステム化されていないことも、在庫削減とい う結果につながっていない理由になっている。
五年前にサプライチェーン改革に着手したと き、まずは最適な業務モデルを構築し、シス テム化は後からでいいという判断を下したと いう経緯がある。
 しかし、需給管理を効率化するためのシス テムの構築はすでにスタートしている。
開発 費として二・五億円を予算計上しており、二 〇一二年度から段階的に新システムを稼働さ せる計画を進めている。
システム化のポイン トは、現実の変化に迅速に対応できる機能を 整えるというものだ。
 「まず取引先に生産指示を出す段階で、ブ レ幅がどれぐらいになりそうなのかを事前に 予想する。
そのうえで実際の売れ行きを見な がら次の手を打っていくことを重視している。
総在庫量や生産計画をすべて可視化できてい れば、予想が外れたときに素早くリカバリー することが可能だ。
実需を予測できなくても、 業務をコントロールすることはできる」と韮 澤部長は考えている。
 新システムの稼働に合わせて、一二年度に は取引先への生産指示にまで踏み込む商品を 一挙に二五〇〇SKUに増やす方針だ。
そう なれば「生協版SCM」の本当の実力も明ら かになるはずだ。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) というかたちに変更した。
さらに、従来は日 本生協連の各地の倉庫それぞれに納品しても らっていたのを、総量でまとめて一カ所に納 入してもらい、その後の小分けや横持ちをす べて日本生協連の物流ネットワークで処理す ることも始めた。
 「とにかく物量をまとめて動かし、シーエッ 生協の供給高(売上高)は過去20 年間一進一退の状態にある 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 150 140 130 120 110 100 0 70 (年度) 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 (億円) 70 年代 862%伸長 80 年代 322%伸長 90 年代 118%(一進一退) 2000 年代 供給高(左軸) 前年度比(右軸) (一進一退)

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