2011年12月号
SOLE

二〇一一年度活動計画 事業・仕事を磨く「ロジスティクスという方法」

SOLE 日本支部フォーラムの報告 The International Society of Logistics DECEMBER 2011  76  SOLE日本支部は一〇月三日の 総会で、二〇一一年度(一一年一 〇月〜一二年九月)の活動計画を決 定した。
今年度は当支部の三三年間 の歴史・経緯を踏まえた上で、「仕 事を磨く」という言葉を掲げ、事 業・仕事を磨く「ロジスティクスと いう方法」としてワークシステム工 学(Work System Engineering & Management)構築の一助となる調 査研究を展開してゆく。
今年度の活 動計画の枠組みを紹介する。
(SOLE日本支部事務局 傳田晴 久・曽我部旭弘) 1 SOLE日本支部 三三年の歩み  我々S O L E 日本支部は、米 国に本部を置く「S O L E ─The International Society of Logistics ( 旧称:Society of Logistics Engineers)」の日本支部であり、今 から約三三年前に発足した。
 この間、米国本部との交流を通じ てロジスティクスに関わるいくつかの 重要概念を日本社会に紹介し、普及 の一助を担ってきた。
たとえばLC C(ライフサイクルコスト)、ILS (統合ロジスティクス支援)、CAL S(継続的な調達とライフサイクルの 支援)、Acquisition Reform(調達の 改革)、PBL(成果基準ロジスティ クス)等々が挙げられる。
 SCM(サプライチェーン・マネジ メント)については一九八七年、オハ イオ州立大学のラ・ロンド教授のご 指導をうけ、研究を開始した。
二〇 一一年三月十一日に発生した東日本 大震災により、道路網がズタズタに 寸断され、被災地への物資供給路が 絶たれて以降、メディア報道で「サプ ライチェーン」という言葉が頻繁に使 用されるのを見ると、ある種の感慨 を覚える。
 SCMはもちろん、産業界、学会 では共通用語であるが、メディアに頻 繁に取り上げられるようになったのは 最近のことであろう。
用語 としては、以前は「ロジス ティクス」、その前は「PD ( フィジカル・ディストリ ビューション)」ないし「物 流(物資流通)」、その前は 「輸送、補給、供給」が使 われていた。
しかし、これ らは似たように見えても異 なる概念であることに留意 しなければならない。
2 「仕事を磨く」とは どういうことか?  情緒的な表現ではあるが、 我々はこの「磨く」と言う 言葉に強いメッセージを込 めている(図1)。
 この「磨く」はもちろん 「芸を磨く」、すなわち世阿 弥の「風姿花伝」にある「序 破急」、あるいは「守破離」 を念頭に置いている。
我々 が設計し、運用している業務、シス テムは、本来「理想システム」を目指 したものであるが、現在はまだその 「理想」に到達していないと考えてい る。
我々は「理想」を目指して業務、 システムを絶えることなく、弛まず改 善、改革し続けていくべきである。
 流通を例にとるならば、五〇年前、 経営コンサルタントの渥美俊一氏を中 心とした流通革新を担う先人たちは 有志を糾合し、流通システムの理想 系(型)を目指してチェーンストアの 研究団体「ペガサスクラブ」を設立し、 研鑽を重ねた。
その成果は「流通の戦 略シリーズ1〜8(ダイヤモンド社)」 という文献に纏められ、いささかも 陳腐化することなく、今でも我々の 手本として光り輝いている。
図1 仕事を磨く あるべき姿(理想システム) To ーBeモデル 共通工学 生産、保全 PM、OR 分野別工学 原子力、鉄道 機械、科学 コンセプト・技法 JIT、TQC、TQM CM、SE、LCC CE 規格・標準額 ISO、JIS 業界規格など 仕事を磨く 現状業務機能体系 As ーIsモデル 自然発生的 業務機能体系 新規設計 業務機能体系 吸収合併後の 業務機能体系 改善後の 業務機能体系 出自いろいろ Copyright 2011 SOLE日本支部 SCM 作業作業 業務 業務 業務 業務 A社 B社 C社 D社 二〇一一年度活動計画   事業・仕事を磨く 「ロジスティクスという方法」 77  DECEMBER 2011 範との違いを認識することができ、現 状から脱皮し、やがてお手本から離れ たまったく新しい姿の「理想系(型)」 に近づいていく。
まさに「序破急」、 「守破離」の精神である。
そのような 事を目指して、我々SOLE日本支 部は、飛躍するための手段、手がか り、材料の研究を始めたところであ る。
3 ライフサイクルマネジメント (統合ロジスティクス計画)  SOLE日本支部は、「ライフサイ クルマネジメント(統合ロジスティク ス計画)」を「理想系(型)」の一つの コンセプトとして捉えている(図2)。
 ロジスティクスは製品・商品・サ ービスを顧客の求めに応じて供給し、 その使用・運用を支援する活動であ る。
その活動は?製品・商品・サー ビスの企画段階から始まり、?その 財を調達、製造、備蓄する過程、? 供給し、運用を支援する過程を経て、 ?使用後の財を回収、再利用、廃棄、 処分する過程に終わる。
 最重要概念は、?の企画段階にお いて、製品・商品・サービスの始め から終わりまでの全ライフサイクルを 統合的に計画(再計画)し、??? を実施管理し、評価することであり、 これをライフサイクルマネジメントと 呼ぶ(図3)。
つまり、?の段階で、 の眼前に提示されているわけではな く、我々はその手がかりを同業者の先 行事例に求め、あるいは異業種で行 われている優れたコンセプトを模索し、 自らの業務、システムに適用するほか ない。
 先ず真似る事から始めても良い。
徹 底的に真似ることにより、自社と模  現在存在する流通業界の業務、現 状のシステム(?as-is?)は、色々な前 提、背景、制約をもち、紆余曲折を 経て稼働している。
その姿は残念なが らあるべき「理想系(型)」(?to-be?) からは程遠く、マーチャンダイジング とロジスティクスの両面から流通を再 構築してゆくことが求められている。
これは全産業共通の喫緊の課題であ り、グローバル化の進む昨今において はなおさらのことである。
 ?as‐is?から?to-be?に飛躍する のは容易ではないが、世の中の動きに 目を凝らせば飛躍のための手段、手 がかり、材料が見えてくる。
ただし、 残念ながらそれらは体系化されて我々 図2 統合ロジスティクス計画 ロジスティクスは 製品供給システムを改善し、 顧客満足度を向上させる。
●要求から使用開始までのリードタイム短縮 ●稼働率・即応性(アベイラビリティ)向上 ●ロジスティクスコスト低減 SINGLE LOGICAL INTEGRATED DATABASE 企画 開発 設計 生産準備 ?製品企画段階の ロジスティクス 調達原材料 在庫生産完成品 在庫運用撤去 廃棄 生産計画受注処理 ?供給段階のロジスティクス 販売計画 ?運用段階のロジスティクス ?廃棄段階の ロジスティクス Copyright 2011 SOLE日本支部 輸配送 設置 ライフサイクルマテリアルフロー 製品支援 図3 ライフサイクルマネジメント Copyright 2011 SOLE日本支部 ライフサイクルエンジニアリング 加工性 組立性 試験性 安全性 デザインエンジニアリング(EPI) コンカレントエンジニアリング(CE) ビジネス プロセス リエンジニアリング(BPR) コンフィギュレーションマネジメント(CM) インフォストラクチュア 開発/ 設計 生産/ 準備製造配備運用リタイア 輸送性 裾付調整 試験性 安全性 生産実績 生産技術 データ データ 物流 データ 物流実績 技術データ マニュアルなど 運用 実績廃棄実績 データ 廃棄 マニュアル 技術 データ 技術 データ 機能 性能 運用性 操作性 保全性 支援性 安全性 リサイクル 環境保護 廃棄性 安全性 企画/ 見積 シングルロジカルデータベース 要求事項(DTx) DECEMBER 2011  78 要件の調査研究を行う。
 前掲のライフサイクルマネジメント (統合ロジスティクス計画)の?企画 段階、?調達・製造備蓄段階、を中 心とし、部品調達・供給システムの 構造とその要件を幾つかの事例を通 して検証する。
 また、グローバル・サプライチェー ンの統合管理に必要な情報システムの 構造やその事例の検証を進める。
そ の上で、グローバル・サプライチェー ンの「新生産システム」として実践ガ イドをとりまとめてみたい。
■卓越したビジネスモデルの考察  卓越したビジネスモデルの考察にも 取り組む。
製造小売業モデル、通信 販売モデルについて事例検証を行い、 MD(マーチャンダイズ)とLG(ロ ジスティクス)の機能構造や特長要件、 条件の整理を行ってみたい。
D.モデル化・モデリング ■システム記述・WBS展開  プロダクト四タイプにはさまざまな ビジネスモデル・事業システムがあり、 事業システムは常にリニューアル、変 革していくことが求められる。
 そのために先ず、システムの記述法 をとりまとめ、課題を抽出して解決 する工程を計画、管理してゆく方法 を提案できるようにする。
■リスク管理とWBS E日本支部創立時に翻訳された。
 LE&MはMIL規格(Defense Acquisition Guidebook: D A G、 米国防省調達ガイド)の民間解釈書 であった。
DAGをプロジェクトマネ ジメントの知識体系、PMB0Kと 組み合わせて読み解くことにより、シ ステム開発(調達)・設計・運用管理 を深く理解できるようにしたい。
で き得ればシステム調達ガイドをとりま とめてみたい。
B.業種別RAMS活動 ■保全業務規格全般を体系化  R A M S とはReliability( 信 頼性)、Availability( 即応 性)、Maintainability( 保全性)、 Supportability(支援性)などシステ ムの持つ要件を指す。
これまでは原 子力保全業務規格の検討をテーマに してきたが、広く保全業務規格の体 系化を試行する。
C.プロダクト・プロセス革新 ■グローバルSCMの実践ガイド  プロダクト(製品・サービス)を加 工組立型、装置加工型、イベント型、 流通型の四タイプに整理し、そのうち 加工組立型の自動車用部品と建設機 械用部品について、調達・供給の両 面からビジネスモデルを考察し、サプ ライチェーンの進化の方向とその構造、 代表される製造小売業やしまむらが、 ライフサイクルを通じて一気通貫でリ スクを負う進化したビジネスモデルを 構築し、前掲のペガサスクラブのチェ ーンストア・マネジメントを自らのビ ジネスモデル開発にきっちりと生かし ている。
 同様に、各々の事業者は自らの特 技を再発見し、それを製品・サービ スとして磨き込み、ビジネス展開の場 を開拓し直すことが求められている。
SOLE日本支部での研究は、そう して仕事を磨くためのロジスティクス 方法展開の実践ガイド作りに役立てた いと考えている。
5 二〇一一年度 活動計画の概要  SOLE日本支部の事業年度は一 一年一〇月から一二年九月の十二カ 月で、毎月の例会(フォーラム、研究 会)と見学会、並びに米国本部主催 のカンファレンスへの参加で構成され ている。
A.ロジスティクス基盤技術 ■DAG*PMBOKの組み合わせ  ロジスティクスの基礎教本である 「LE&M(Logistics Engineering & Management、ベンジャミン・ S・ブランチャード・バージニア工科 大学教授著)」は、三三年前のSOL ?〜?の過程で製品・商品・サービ スが要求する事項(機能、性能、要 求水準)を洗い出し、それを満足さ せるような製品・商品・サービスを 設計するということである。
 この考え方をDTx(Design To x)と呼び、各種の要求事項をxに代 入する。
たとえばコストに対する要請 はDTC、運用性(Operability)に 関する要請はDTOと呼ぶ。
4 グローバル・サプライ チェーンの再構築に向けて  グローバル化とはプロダクト( 製 品・サービス)の国際交流である。
こ れを実現するための手段・方法がグロ ーバル・サプライチェーンであり、さ まざまな事業者(ステークホルダー) が最終顧客・ユーザーに向けて合理 的なプロセスを共創して事業活動を展 開する(図4)。
 従って、グローバル化とは製品・ サービスの産直(産地直送)化と現地 化の組み合わせであり、サプライチェ ーンは常にマーケット・ユーザーを中 心としてリニューアルされることにな る。
 二〇世紀初頭に英国で始まった紅 茶などのチェーンストア経営は、真に マーチャンダイズ・ロジスティクスを 統合したビジネスモデルであった。
現 代においては、ユニクロやニトリに 79  DECEMBER 2011  SOLE日本支部の会員・メンバ ーが抱える課題・テーマを元に課題の 意図・意志を想定し、実現のための リスクを想定し、どのようなシステム をどのような手順で作り込んでゆく か、実践研究を行う。
東日本大震災 からの復旧・復興に伴う部品製造サ プライチェーンの再構築などを考えて いる。
E.現場見学の実施 ■民間航空機の整備実態見学  業種別RAMS活動の一環として、 民間航空機整備について、保全計画 策定から通常点検整備までの業務プ ロセスと実態を把握する。
■陸上自衛隊輸送業務センター見学  膨大な物資・機器などの調達・供 給の実態を把握する。
次回フォーラムのお知らせ 次回フォーラムは12月14日( 水)、 「JAL羽田整備場の現場見学会」を予 定している。
このフォーラムは年間計画 に基づいて運用しているが、単月のみ の参加も可能。
一回の参加費は6,000 円。
ご希望の方は事務局(s-sogabe@ mbb.nifty.ne.jp)までお問い合わせ下 さい。
※ S O L E(The International Society of Logistics:ロジスティクス学会)は一九六〇年 代に設立されたロジスティクス団体。
米国に本 部を置き、会員は五一カ国・三〇〇〇〜三五 〇〇人に及ぶ。
日本支部では毎月「フォーラ ム」を開催し、講演、研究発表、現場見学な どを通じてロジスティクス・マネジメントに関 する活発な意見交換、議論を行っている。
図4 ロジスティクスからSCMへ ■目的の変化 物流の目的:物流コストの適正化 時代の要請:顧客満足と顧客サービス(CS&CS) CS&CSには企業の総力(生産・調達)を糾合する必要あり 更に企業間統合も目指す 輸  送 保  管 包  装 荷  役 流通加工 物流情報 統合 物流 物流コストの適正化 統合 統合 顧客満足向上 ロジスティクス (サービス活動) 企  業 物流コスト低減 顧客満足向上 同時実現 供給連鎖管理 (SCM) Copyright 2011 SOLE日本支部 阿保栄司「物流からロジスティクスへ」(税務経理協会、 1993年)に加筆 生産管理 調  達 運用支援 企業 企業

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