2012年5月号
特集
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当日配達・送料無料 解説1 ドア・ツー・ドアからB2Cへヤマトホールディングス/SGホールディングス
MAY 2012 10
ドア・ツー・ドアからB2Cへ
ヤマトホールディングス/SGホールディングス
広域当日配達を実現する秘密兵器
ヤマトロジスティクスが当日配達の新たなモデルを
開発した。
「FRAPS(フリー・ラック・オート・ ピッキング・システム)」と名付け、ビジネスモデル特 許も申請した。
既に北関東、神奈川、名古屋、大阪、 西大阪、広島、福岡の宅急便ターミナルにシステムを 導入済みで、今後は全国に展開する計画だ。
従来から同社は通販向けに「トゥデイ・ショッピン グ・サービス(TSS)」と呼ぶ当日配達サービスを 実施してきた。
ただし、TSSを利用するには宅急 便ターミナル内の倉庫施設に在庫を預ける必要があっ た。
これに対してFRAPSは、在庫を移管するこ となく当日配達を実現できる。
宅急便のオペレーションに使うロールボックスを、そ のままピッキング棚として活用する。
各荷主が当日配 達分の荷物をロールボックスにセット。
それをドライ バーがターミナルに持ち込み、DPS(デジタル・ピッ キング・システム)機能を備えたラインに格納する。
ランプとデジタル表示に従って作業員がロールボック スから商品をピッキングし、配送方面別に仕分ける。
一八時までに入荷した商品を二一時に出発する宅急 便の最終配送に乗せられる。
ターミナルの配送エリア 内であれば当日中に配達できる。
遠隔地の当日配達 も実験的に実施している。
早朝に東京から出荷した 貨物をその日のうちに大阪の消費者宅に届ける。
そのために宅急便のハブ・アンド・スポークのネッ トワークを崩す。
これまで宅急便の幹線輸送は、毎日 二一時に全国の拠点を一斉に出発する一日一回の定 期便だけだった。
これを改め主要拠点間を何度も往復 する幹線便をテストしている。
ターミナルのオペレー ションを大きく変更することになるため、そう簡単に アマゾンジャパンが打ち出した「当日配達」と「送 料無料」が、B2C物流サービスの新たな基準となっ てきた。
足元ではネットスーパーによる小規模配送 網が各地で立ち上がっている。
宅配便の誇る全国 翌日配達サービスが陳腐化し、ハブ・アンド・スポー クのネットワークは変革を迫られている。
11 MAY 2012 は本格運用に踏み込めない。
それでも、羽田に建設中のクロノゲートが稼働する 二〇一三年九月までには新しいオペレーションを確立 したい考えだ。
実現すれば、幹線輸送の実質的なリー ドタイムが大幅に短縮し、FRAPSを導入した拠点 間で遠隔地の即日配達が可能になる。
荷主は既存の 物流体制と在庫アロケーションを維持したままで、全 国即日配達に対応できる。
ヤマトロジスティクスの星野芳彦取締役常務執行役 員は「ネット通販の注文時間帯は午後一〇時から深 夜二時にピークを迎える。
またモバイル通販は仕事が 終わった後の夕方六時〜七時に注文数が跳ね上がる。
そこで受けた注文を遠方であっても翌朝には配達した いというニーズがある。
そのために従来は各消費地に 在庫を分散する必要があった。
FRAPSがそれを 解消する」と説明する。
B2B物流の分野では、既に二〇年以上も前から 宅配会社が当日配達サービスを行ってきた。
ただし、 それは追加料金の発生する緊急輸送に過ぎなかった。
一九九八年にアスクルが追加料金なしの当日配達を東 京二三区内で開始したことで、初めてレギュラーサー ビスの一つに定着した。
その後、二〇〇〇年代に入っ てネット通販が普及し、アマゾンジャパンが同様のサー ビスを消費者向けのB2Cで実施した。
「当日配達・ 送料無料」が通販物流の新たな基準として広まった。
五日から一週間のリードタイムが標準だったカタログ 通販時代のサービスは急速に陳腐化した。
しかし、当日配達を本格的に実施するには主要都 市に在庫型の物流拠点を展開し、独自の配送網を構 築する必要がある。
莫大な物流投資に見合うだけの 効果が得られるという保証はない。
昨年、佐川急便が荷主の通販会社と共同でアンケー ト調査を行ったところ、「当日配達・翌日配達にはこ だわらない」との回答がユーザーの大多数を占めた。
「もちろん早いに越したことはない。
しかし、それ以 上に、希望する時間、希望する場所に届けて欲しいと いうニーズが強い。
商品やユーザー層によってもニー ズは違ってくる。
闇雲に当日配達に乗り出す前に必要 なサービスレベルをよく見極める必要がある」と佐川 急便の山本将典営業部営業戦略担当部長は指摘する。
同社では現在、当日配達の要請に対し、既存のイ ンフラでカバーできない機能を、個別の荷主ニーズに 応じて補強するというアプローチをとっている。
その 結果、佐川急便の色を前面に出さず、荷主のブランド を掲げてサービスを提供する仕事が増えてきた。
ネットスーパーの配送管理もその一つだ。
各地のスー パーの委託を受け配送網の組み立てと運営を代行して いる。
ネットスーパー事業の収益性は現状では極めて 厳しい。
そこで佐川急便では、コールセンターや情報 システム、調達機能にまで踏み込んで、荷主のビジネ ス全体の支援を行っている。
「当社はグループ内に幅 広い領域の機能子会社を揃えている。
我々の目指す ところは今や物流だけではない」と山本担当部長。
B2Cのラストワンマイル問題も広い視野に立って プランを練っている。
ネットスーパーの配送は午後二 時から夜までがメーン。
ちょうど宅配便のセールスド ライバーが集荷に回っている時間帯だ。
二つのインフ ラを統合する可能性を探っている。
宅配便市場は激しい淘汰を経て、ヤマト・佐川の “二強”に収斂された。
しかし、B2Cに特化した ネット通販物流の台頭が、ドア・ツー・ドアを前提と した宅配便市場を足元から揺るがしている。
新たな時 代に対応するために、宅配会社自身もまたビジネスモ デルの変革を迫られている。
(大矢昌浩) ヤマトロジスティクスの 星野芳彦取締役常務執 行役員 佐川急便の山本将典営 業部営業戦略担当部長 代引きサービス開始 「Amazonマーケットプレイス」開始 市川FC(千葉県、18800 坪 )稼働、旧センターは廃止。
関東で「お急ぎ便」開始、注文当日夕方以降もしくは翌日中に納品 八千代FC( 千葉県、10347 坪)稼働 「お急ぎ便」が無料になる会員制プログラム『Amazonプライム」開始 通販物流支援サービス「フルフィルメント by Amazon(FBA)」開始 堺FC(大阪府、20550 坪)稼働 即日配送サービス「当日お急ぎ便」開始。
「FBAマルチチャネルサービス」開始 全品無料配送キャンペーン実施 川越FC(埼玉県、11800 坪)稼働 通常配送を常時全品無料に 大東FC(大阪府)稼働 常滑FC(愛知県)稼働。
芳野台FC(埼玉県川越市)稼働。
川島FC(埼玉県)稼働 鳥栖FC(佐賀県、約20000 坪)。
多治見FC(岐阜県、約24000 坪)稼働予定 2001.11 2002.11 2005.11 2006.10 2007.10 2007.6 2008.4 2009.8 2009.10 2010.1 2010.7 2010.11 2010.11 2011 年中 2012 年中 日本で事業を開始。
アマゾンロジスティクス・ジャパンを設立。
日本通運から千葉県市 川市の市川塩浜物流センターを賃貸(約4500坪)、庫内作業と宅配も日通に委託 2000.11 インフラ FC=フルフィルメント・センター各種資料より本誌が作成 アマゾンジャパンの物流整備サービス
「FRAPS(フリー・ラック・オート・ ピッキング・システム)」と名付け、ビジネスモデル特 許も申請した。
既に北関東、神奈川、名古屋、大阪、 西大阪、広島、福岡の宅急便ターミナルにシステムを 導入済みで、今後は全国に展開する計画だ。
従来から同社は通販向けに「トゥデイ・ショッピン グ・サービス(TSS)」と呼ぶ当日配達サービスを 実施してきた。
ただし、TSSを利用するには宅急 便ターミナル内の倉庫施設に在庫を預ける必要があっ た。
これに対してFRAPSは、在庫を移管するこ となく当日配達を実現できる。
宅急便のオペレーションに使うロールボックスを、そ のままピッキング棚として活用する。
各荷主が当日配 達分の荷物をロールボックスにセット。
それをドライ バーがターミナルに持ち込み、DPS(デジタル・ピッ キング・システム)機能を備えたラインに格納する。
ランプとデジタル表示に従って作業員がロールボック スから商品をピッキングし、配送方面別に仕分ける。
一八時までに入荷した商品を二一時に出発する宅急 便の最終配送に乗せられる。
ターミナルの配送エリア 内であれば当日中に配達できる。
遠隔地の当日配達 も実験的に実施している。
早朝に東京から出荷した 貨物をその日のうちに大阪の消費者宅に届ける。
そのために宅急便のハブ・アンド・スポークのネッ トワークを崩す。
これまで宅急便の幹線輸送は、毎日 二一時に全国の拠点を一斉に出発する一日一回の定 期便だけだった。
これを改め主要拠点間を何度も往復 する幹線便をテストしている。
ターミナルのオペレー ションを大きく変更することになるため、そう簡単に アマゾンジャパンが打ち出した「当日配達」と「送 料無料」が、B2C物流サービスの新たな基準となっ てきた。
足元ではネットスーパーによる小規模配送 網が各地で立ち上がっている。
宅配便の誇る全国 翌日配達サービスが陳腐化し、ハブ・アンド・スポー クのネットワークは変革を迫られている。
11 MAY 2012 は本格運用に踏み込めない。
それでも、羽田に建設中のクロノゲートが稼働する 二〇一三年九月までには新しいオペレーションを確立 したい考えだ。
実現すれば、幹線輸送の実質的なリー ドタイムが大幅に短縮し、FRAPSを導入した拠点 間で遠隔地の即日配達が可能になる。
荷主は既存の 物流体制と在庫アロケーションを維持したままで、全 国即日配達に対応できる。
ヤマトロジスティクスの星野芳彦取締役常務執行役 員は「ネット通販の注文時間帯は午後一〇時から深 夜二時にピークを迎える。
またモバイル通販は仕事が 終わった後の夕方六時〜七時に注文数が跳ね上がる。
そこで受けた注文を遠方であっても翌朝には配達した いというニーズがある。
そのために従来は各消費地に 在庫を分散する必要があった。
FRAPSがそれを 解消する」と説明する。
B2B物流の分野では、既に二〇年以上も前から 宅配会社が当日配達サービスを行ってきた。
ただし、 それは追加料金の発生する緊急輸送に過ぎなかった。
一九九八年にアスクルが追加料金なしの当日配達を東 京二三区内で開始したことで、初めてレギュラーサー ビスの一つに定着した。
その後、二〇〇〇年代に入っ てネット通販が普及し、アマゾンジャパンが同様のサー ビスを消費者向けのB2Cで実施した。
「当日配達・ 送料無料」が通販物流の新たな基準として広まった。
五日から一週間のリードタイムが標準だったカタログ 通販時代のサービスは急速に陳腐化した。
しかし、当日配達を本格的に実施するには主要都 市に在庫型の物流拠点を展開し、独自の配送網を構 築する必要がある。
莫大な物流投資に見合うだけの 効果が得られるという保証はない。
昨年、佐川急便が荷主の通販会社と共同でアンケー ト調査を行ったところ、「当日配達・翌日配達にはこ だわらない」との回答がユーザーの大多数を占めた。
「もちろん早いに越したことはない。
しかし、それ以 上に、希望する時間、希望する場所に届けて欲しいと いうニーズが強い。
商品やユーザー層によってもニー ズは違ってくる。
闇雲に当日配達に乗り出す前に必要 なサービスレベルをよく見極める必要がある」と佐川 急便の山本将典営業部営業戦略担当部長は指摘する。
同社では現在、当日配達の要請に対し、既存のイ ンフラでカバーできない機能を、個別の荷主ニーズに 応じて補強するというアプローチをとっている。
その 結果、佐川急便の色を前面に出さず、荷主のブランド を掲げてサービスを提供する仕事が増えてきた。
ネットスーパーの配送管理もその一つだ。
各地のスー パーの委託を受け配送網の組み立てと運営を代行して いる。
ネットスーパー事業の収益性は現状では極めて 厳しい。
そこで佐川急便では、コールセンターや情報 システム、調達機能にまで踏み込んで、荷主のビジネ ス全体の支援を行っている。
「当社はグループ内に幅 広い領域の機能子会社を揃えている。
我々の目指す ところは今や物流だけではない」と山本担当部長。
B2Cのラストワンマイル問題も広い視野に立って プランを練っている。
ネットスーパーの配送は午後二 時から夜までがメーン。
ちょうど宅配便のセールスド ライバーが集荷に回っている時間帯だ。
二つのインフ ラを統合する可能性を探っている。
宅配便市場は激しい淘汰を経て、ヤマト・佐川の “二強”に収斂された。
しかし、B2Cに特化した ネット通販物流の台頭が、ドア・ツー・ドアを前提と した宅配便市場を足元から揺るがしている。
新たな時 代に対応するために、宅配会社自身もまたビジネスモ デルの変革を迫られている。
(大矢昌浩) ヤマトロジスティクスの 星野芳彦取締役常務執 行役員 佐川急便の山本将典営 業部営業戦略担当部長 代引きサービス開始 「Amazonマーケットプレイス」開始 市川FC(千葉県、18800 坪 )稼働、旧センターは廃止。
関東で「お急ぎ便」開始、注文当日夕方以降もしくは翌日中に納品 八千代FC( 千葉県、10347 坪)稼働 「お急ぎ便」が無料になる会員制プログラム『Amazonプライム」開始 通販物流支援サービス「フルフィルメント by Amazon(FBA)」開始 堺FC(大阪府、20550 坪)稼働 即日配送サービス「当日お急ぎ便」開始。
「FBAマルチチャネルサービス」開始 全品無料配送キャンペーン実施 川越FC(埼玉県、11800 坪)稼働 通常配送を常時全品無料に 大東FC(大阪府)稼働 常滑FC(愛知県)稼働。
芳野台FC(埼玉県川越市)稼働。
川島FC(埼玉県)稼働 鳥栖FC(佐賀県、約20000 坪)。
多治見FC(岐阜県、約24000 坪)稼働予定 2001.11 2002.11 2005.11 2006.10 2007.10 2007.6 2008.4 2009.8 2009.10 2010.1 2010.7 2010.11 2010.11 2011 年中 2012 年中 日本で事業を開始。
アマゾンロジスティクス・ジャパンを設立。
日本通運から千葉県市 川市の市川塩浜物流センターを賃貸(約4500坪)、庫内作業と宅配も日通に委託 2000.11 インフラ FC=フルフィルメント・センター各種資料より本誌が作成 アマゾンジャパンの物流整備サービス
