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2012年5月号
特集

第3部 ケーススタディ:オペレーション改革 オルビス──東西に拠点を分散して配送迅速化

MAY 2012  16 全国で翌日配送の実現を  オルビスは、化粧品訪問販売大手のポーラが一九 八四年六月に設立した通信販売会社だ。
二〇〇七 年一月にポーラを始めとするグループ企業と共に、 持ち株会社「ポーラ・オルビスホールディングス」 の傘下に入った。
 オルビスの売り上げの八割近くは化粧品で、他に 健康補助食品とボディーウエアを取り扱っている。
二〇〇〇年からは店舗販売も開始し、全国に一〇 九の直営店を展開しているが、売り上げ構成は三 対一で通販のウエートが高い。
 これまでさまざまなサービスを他社に先駆け実施 してきた。
無料配送は同社が通販業界で初めて導 入したサービスだ。
返品の際の送料を含めて、すべ て無料にしている。
代金の支払い手数料も同社が 負担する。
振込み・クレジット払い・代引きなど さまざまな手段を用意し、商品到着後の後払いに 応じるのもセールスポイントのひとつ。
六割の客が 後払いを選択しているという。
 返品への対応でも独自の仕組みを導入した。
そ の顧客が初めて購入する商品には無料サンプルを付 け、サンプルを試して肌に合わなければ商品を返品 できるようにしている。
肌が生まれ変わるサイクル を考慮し、使用済みの商品でも三〇日以内なら返 品・交換に応じている。
 これらのサービスが顧客に評価され、同社は日 経ビジネス誌によるアフターサービス満足度ランキ ングで、過去三年連続でネット通販部門のトップに 輝いている。
サービス産業生産性協議会が一〇万 人以上の利用者を対象に〇九年から実施している 顧客満足度調査(JCSI指数評価)でも、同社 は初めて調査対象となった一一年度に通販分野で いきなり首位に躍り出た。
 ただし、通販客は商品を比較購入する傾向が強 く、移り気だ。
とりわけ化粧品は消費者のブラン ドスイッチが頻繁に起こる。
満足度が高いからと いって顧客が継続的に商品を購入するとは限らな い。
実際、JCSIの評価で同社は「ロイヤルテ ィー(継続購買)」の指数が「サービス品質」など の項目に比べて低かった。
 ネット専業通販の大手が配送の無料化や、大都 市圏での当日配送など、スピードアップを図ってい る点も気がかりだった。
オルビスは午後三時まで の受注分を当日に出荷し、宅配便かメール便で翌 日配送するのを標準サービスとしている。
ただし、 関東地区から出荷するため、北海道・九州・沖縄 へは翌々日配送になってしまう。
 その影響が、同社が最近独自に実施した顧客向 オルビス ──東西に拠点を分散して配送迅速化  関西地区に流通センターを新設し、関東地区3カ所から東 西2 カ所へ出荷拠点の改編に着手した。
ピッキングシステム も刷新し出荷の瞬発力と精度を高めた。
これによって全国翌 日配送と一部地域の当日配送を実施し、誤出荷率を10 万分 の1 以下に抑制、トレーサビリティーの実現を図る。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 図1 ORBIS次世代物流戦略概要 配送スピード強化 ■北海道・九州・沖縄を含む 全国翌日配送 ■関東・関西圏即日配送 (WEB 注文限定) 安心・安全(品質管理)の徹底 ■トレーサビリティの実現 (通信販売限定) ■出荷品質の向上⇒ 誤出荷率10 万分の1の実現 新物流体制 現物流体制 東日本流通センター西日本流通センター 最新型ピッキングシステム(QPS・DAS) + WMS導入 集中 再構築 分散 羽生流通センター(埼玉県) 千葉流通センター(千葉県) 騎西流通センター(埼玉県) ケーススタディ:オペレーション改革 特 集 17  MAY 2012 け満足度調査に現れた。
電話・ファクスで注文する 客のすべてが無料配送や翌日配送などの物流サー ビスを含め五段階評価で最も高い「大変満足」か 「ほぼ満足」と回答したのに対し、全体の五割を占 めるネット注文の客の評価にはかなりばらつきがあ った。
そのなかには配送スピードへの不満の声も寄 せられていた。
 同社の自信は大きく揺らいだ。
芳永直樹CRM 統括部長は「今まで革新的なサービスをいち早く提 供してきたという自負があったが、その優位性が 薄れつつあることに強い危機感を持った」と話す。
 この危機意識のもと同社は再び先手を打つべく 物流戦略の立案に動いた。
まず配送をスピードアッ プして一部の離島を除く全国で翌日配送を実現す る。
関東・関西地区ではネット注文に限定して当 日配送も実施する。
さらに出荷の精度を高め、安 心安全のための品質管理を強化して製造情報のト レーサビリティーを実現する、という内容だ。
 従来、同社は店舗向けを含むすべての商品を、関 東の三カ所の流通センター(騎西=埼玉県加須市、 羽生=埼玉県羽生市、千葉=千葉県八街市)から 出荷していた。
二〇〇〇年代の初頭、コスメブー ムに乗って化粧品の売り上げが伸び、さらにインタ ーネット受注や店舗展開の開始も重なって出荷数量 が大幅に増えた。
三センターはこれに対応するため 二〇〇〇年代半ばまでに相次ぎ開設したものだ。
「主倉庫」と「従倉庫」に役割分担  店舗向けは騎西の一カ所から、通販向けは全三 センターから出荷する。
ただし同じ通販向けでもセ ンターに在庫するアイテムはそれぞれ異なる。
千葉 センターには化粧品を中心に売れ筋の四〇〇アイテ ムだけを、騎西センターには化粧品と食品の一三 〇〇アイテムを、羽生センターにはこれにボディー ウエアを加えた全二〇〇〇アイテムを在庫するとい う具合だ。
 この在庫配分にした理由は二つある。
一つは作 業効率の面から。
通販客からの注文は一日平均二 万五〇〇〇件、多いときは四、五万件にもなる。
これを迅速に処 理するため、注文 の中身によって 出荷拠点を分け る方法をとった。
 一件の注文が 売れ筋に集中し ていれば千葉へ出荷指示を出す。
千葉に在庫のな い商品が含まれていれば騎西へ、騎西にも在庫の ない商品が含まれていた場合には羽生へ出荷指示 を出す。
個数が多くピッキングに時間のかかるオー ダーだけを羽生で処理し、その他を千葉や騎西へ 分散させることで、全体の作業効率を高める考え 方だ。
 二つ目の理由は在庫効率にある。
出荷増に伴っ て拠点を増設する場合には、担当する出荷エリア を拠点ごとに分けて、各拠点に全商品を揃えると いう方法をとることが多い。
地域別に商品の調達・ 生産・在庫を分散管理するやり方だ。
 だが、いわゆる“二・八の法則”にならい、同 社の売り上げは二割のアイテムに八割が集中してい る。
売り上げの二割しかないアイテムの在庫を分散 するのは効率が悪い。
在庫の偏在を招き、賞味期 限管理の必要な食品などは日付の逆転が起こりや すくなる。
 そこで拠点を関東地区に集中配置し、各センタ ーの役割を、全商品の在庫を持つ「主倉庫」と出 荷頻度の高い商品の在庫だけを持つ「従倉庫」に 分ける形をとった。
 アイテム別に調達・生産・在庫をトータル管理 し、売れ行きに応じて主倉庫と従倉庫へ在庫の配 分を決める。
従倉庫の在庫は最小限に抑え、出荷 した分を主倉庫から補充する。
これによって在庫 のだぶつきをなくし、先入れ先出しを徹底して日 付の逆転を防止する。
 カテゴリー別の主倉庫と従倉庫の関係は次のよう になる。
化粧品は三センターとは別に、生産を委託 する静岡県内のポーラ化成工業の工場近辺にマザー センターを設けている。
ここを主倉庫と位置付け、 芳永直樹CRM統括部長 図2 次世代物流戦略詳細 地域別配送イメージ 対象地域受注チャネル締切時間 7:00 16:00 16:00 16:00 48.8% 5.5% 45.6% 当日 18:00 以降 翌日配送 翌日配送 (航空便使用) 翌日配送 お届け時間人口カバー率 関東・関西都市圏 (1都・2府・11 県) ※注1 北海道・沖縄 上記以外 (一部離島除く) インターネット (携帯電話含む) 上記以外 全チャネル 全チャネル ※注1 ■関東:東京・神奈川・千葉・埼玉 栃木・群馬・茨城・山梨 ■関西:大阪・兵庫・京都・奈良 和歌山・滋賀 関東・関西圏(web 受注)   即日配送 全国(一部離島除99.9%)   翌日配送 MAY 2012  18 従倉庫となる三カ所の流通センターへ補充する。
 食品とボディーウエアはOEM生産で、委託先の メーカーが羽生センターへ一括で納める。
うち食品 については羽生が主倉庫の役割を担い、騎西へ補 充を行う。
ボディーウエアは色・サイズ・デザイン を合わせたSKUが細かくアイテム数が多いため、 在庫を羽生一カ所に集めた。
 このやり方をとることで、ハイレベルの作業効率 と在庫管理が実現した。
ただし、出荷元が関東に 集中しているため一部の地域への配送リードタイム には制約があった。
ネット専業通販業者の仕掛け たスピード競争が、その課題を浮き彫りにした。
 そこで同社は物流拠点の再編に踏み切った。
関 西地区に流通センターを新設し、関東地区のセンタ ーを騎西の一カ所に集約、通販向けの商品を東西 の二拠点からそれぞれ東日本と西日本へ出荷する という大手術である。
 関西にセンターを設けることで九州地区へも翌日 配送が可能になる。
北海道・沖縄へは航空便を使 って翌日配送する。
さらに関東・関西の一都二府 十一県へは、午前七時までにネットで受注した分 を当日中(午後六時以降)に届ける。
受注時にこ のリードタイムを確約し、繁忙期であっても変更は しない。
配送料金も従来のまま無料で当日配送な どに別料金を設けない。
物流サービスの競争力を 限界まで高める。
 航空輸送を実施する地域では同社の運賃負担が 増える。
ただし対象地域の売り上げは全体の五% 強に過ぎずウエートは小さい。
むしろ四割の売り上 げを占める西日本エリアで配送距離が短縮される ことから運賃が安くなり、拠点の集約効果もあっ てトータルでコストは下がる。
航空運賃の増加分は 十分に吸収できる見込みだ。
 従来の物流体制と異なり、関東のセンターから 東日本へ、関西のセンターから西日本へ出荷する 新体制では、東西の拠点にそれぞれ全アイテムの 在庫を持つことになる。
ただし分散管理に変える わけではない。
東西の二拠点を主倉庫と従倉庫に 役割分担させる方法によって従来の集中管理を継 続する。
「従倉庫の在庫数を最小限に抑え、主倉庫 で集中管理して従倉庫へ日付の順に必要数だけこ まめに補充することで、分散化の欠点を補ってい く」と芳永部長は説明する。
 関東のセンターを食品・ボディーウエアの主倉庫 とし、関西のセンターを従倉庫として、メーカーか らは従来通り関東一カ所へ納品してもらう。
在庫 の偏在や賞味期限のばらつきが起こらないよう集中 管理しながら、主倉庫から従倉庫へ毎日補充する。
 そのために関東と関西のセンター間で定期便を走 らせる。
中間地点の静岡県清水市に化粧品のマザ ーセンターがあるので、関東から清水を経由して関 西まで一泊二日で往復する便を毎日運行して、在 庫の補充や先入れ先出しの調整を行う。
処理能力を一・五倍に  再編の第一弾として今年二月、兵庫県西宮市に 西日本流通センターを開設した。
同社ではセンター の物流業務をすべて生協の個人宅配向けオペレー ションで実績のある流通サービスに委託しており、 新拠点も流通サービスの西宮北物流センター内に設 けた。
二フロアの延べ一九〇〇坪を使用する。
 センター内のオペレーションを刷新して省力化・ 省スペース化を進め、ITの活用で出荷の瞬発力 を高めた。
在庫アイテム数が同規模の羽生センター と比べて処理能力を一・五倍に設計してある。
 羽生のピッキングは、二〇〇〇アイテムの間口に 対して一本の一筆書きのラインにオリコンを流し、 各ゾーンの作業者がリストを見ながら間口の商品を とりオリコンに投入していくやり方だった。
通販は オーダー一件のピッキングでヒットするのはせいぜ い四〜五間口。
この方法ではオリコンがライン上で 渋滞したり作業者に待機時間が生じるなど効率が 悪かった。
 新センターでは全アイテムを出荷頻度の高いA品 と頻度の低いB・C品に分け、ピッキング方法を変 えることでこれを改善した。
マテハンタイプ 使用スペース 出荷精度 トレーサビリティ ライン稼動人員 (MAX) 生産性 宅急便 メール便 新ライン現行ライン 図3 新出荷システム狙い 新旧比較ライン比較 デジタル 1800 件/H 2000 件/H 4,800坪 (2 倉庫) 95 人 0.1 件/1 万件 対応 マニュアル 1200 件/H 1600 件/H 6,000 坪 (3 倉庫) 105 人 0.8 件/1 万件 未対応 競争力強化に向けて ? 能力アップ   出荷能力 従来比 1.5倍 ? 効率化   使用スペース 20%減   稼動人員 10%削減 ? 安心安全の提供   誤出荷率 10 万分の1   トレーサビリティによる品質   管理の徹底 2012 年8月 東日本流通センター 同システム導入予定 特 集 19  MAY 2012  A品は摘み取り方式でデジタルピッキングする。
四 二〇の間口に対しオリコンが循環するラインと作業 ラインを設け、ヒットするゾーンにくるとオリコン が循環ラインから作業ラインへ自動的に移る。
ピッ キングが済むと循環ラインへ戻り次の検品・梱包ラ インへ流れる。
特定のゾーンに作業が集中しそうに なると作業ラインへ移らずそのまま循環を続ける。
自動制御により作業ラインにオリコンが滞留するの を回避する仕掛けにし、スピードアップを図った。
BC品のピッキングに新方式  一方B・C品は「カートピッキング」と「デジ タルアソートシステム(DAS)」を組み合わせて 六〇件ずつオーダーを処理する新しいピッキング方 法を導入した。
まずオリコンを四個搭載したカート で六〇件分をアイテム別にトータルピッキングする。
B・C品はアイテム数が一六八〇と多くヒット率が 低いため、件数をまとめ、動線が最短になるよう アドレス順にピッキング指示を出す工夫をした。
 このとき一個のオリコンに対し十五件分がトータ ルピッキングされるように、カートのモニターで投 入するオリコンの位置を指示する。
トータルピッキ ングが終了するとDASで種まきピッキングし、オ ーダー別に仕分ける。
オリコン一個=十五件分をD ASの十五間口の棚へデジタル表示に従って種まき する。
オリコン四個分でこれを繰り返す。
カートと DASの台数はともに十一台あり、十一台で一度 に六六〇件分のオーダーを処理できる。
 このピッキング方法を採用したことで、一六八〇 間口のB・C品のピッキングを四二〇間口のA品の デジタルピッキングとほぼ同じスペースで作業でき るようになり、従来に比べて二割の省スペース化を 実現した。
 客のオーダーがA品に集中している場合はデジ タルピッキングラインだけでピッキングが終了する。
B・C品を含むオーダーはB・C品を先に済ませて からA品のラインに合流させる。
A品とB・C品の ピッキング方法を分け作業を平行して行うことで、 待機時間が減り作業全体が大幅にスピードアップし た。
これにより従来よりも人員を一割削減できた。
 A品とB・C品の配分は、月次でカタログを発 行する際のアイテム別需要予測値をもとに行い、売 れ行きを見ながら月に一度変更する。
おおむね五 〇〜一五〇アイテムが入れ替わる。
羽生では従来、 各ゾーンの作業を平準化するためA品を各ゾーンに 一定の比率で分散させる方法をとっていた。
マニ ュアルピッキングのため、入れ替えを行うと作業者 が慣れるまでミスが起こりやすかった。
新センター の作業はデジタル方式のためこれが改善される。
 最後の検品・梱包工程では作業の精度を重視し た。
検品・梱包台を六〇台設け、前工程ですべて デジタル方式によってピッキングしたものを、ここ で再び一点ずつスキャン検品する。
また従来は検品 と梱包を別の作業者が行うやり方だったが、今回 は一件の検品と梱包を一人で完結するフローにして 検品後の梱包ミスも防げるようにした。
同社では この仕組みによって誤出荷を一〇万分の一以下に 抑えられると見ている。
 化粧品については工場でオリコンに製造ロットな どの情報を紐付けて出荷し、流通センターのWM SでオリコンのIDといっしょに生産情報を管理す る。
客のオーダーをピッキングする際に生産情報を 紐付けることで生産履歴のトレーサビリティーが可 能になる。
 同社は西日本流通センターに続いて今年の八月 に、同じシステムを騎西センターにも導入する。
千 葉と羽生のセンターを順次閉鎖して拠点再編が完 了する九月以降に、東西の二拠点から新しいリー ドタイムの配送サービスを開始する予定だ。
 芳永部長は「サービスの中身で消費者が通販商 品を選ぶ傾向は今後ますます強まるだろう。
今回 の施策は単に利便性を高めるだけでなく、顧客に 当社の企業姿勢をアピールする狙いもある。
この取 り組みが評価され商品の継続購入につなげてもら えることを一番期待したい」と強調している。
図4 新出荷システム概要 ABC分析による商品特性に 応じた ピックシステムを採用 ■売上上位20%  ⇒QPS:420 address ■残 80%  ⇒カート(11 台):1680 address   DAS(11 台) アイテムA アイテムB アイテムC アイテムD アイテムE アイテムF アイテムG アイテムH アイテムI アイテムJ 10000 7500 5000 2500 0 100 50 0 A B C 効率化・スピードアップ  ⇒高頻度品に特化し、   集中ピック  ⇒ライン速度、   従来比2 倍 省スペース・省力化  ⇒多品種少量品をまとめピック A品 高頻度品に特化し集中ピック QPS カートピッキングDAS BC 品 60 件まとめてカートピック顧客別に仕分け (%)

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