2012年5月号
特集
特集
第4部 ケーススタディ:物流事業化
MAY 2012 24
ケーススタディ:物流事業化
ネット通販のフルフィルメント代行事業は、伸び盛
りの成長市場だ。
物流専業者のみならず、自社イン フラの有効活用を狙うカタログ通販やIT企業が参 入し、異業種間で荷主を奪い合う混戦模様となって いる。
価格競争も激化してきた。
スクロール ──売上高一〇〇億円を目指す スクロール(旧ムトウ)の子会社、スクロール36 0(サンロクマル)は二〇〇九年九月、通販企業の 物流代行専用センター「スクロールロジスティクスセ ンター磐田(SLC磐田)」を静岡県磐田市に稼働さ せた。
敷地面積四〇二四坪、延べ床面積八二〇六坪 という大型センターだ。
スクロールは〇八年、本体のソリューション営業部、 情報システム子会社のミック(現スクロール360)、 そして物流子会社に分散していた機能をスクロール3 60に集約。
通販ソリューションをワンストップで提 供する体制を整え、経営の柱の一つに位置付けた。
これまでのサービス実績は、物流・受注・決済の 代行を行うフルフィルメント支援で一五〇社、情報シ ステム支援で三〇〇社、販売促進支援で二〇〇社に 及ぶ。
このうち、物流代行サービスの顧客は楽天市 場などのECモールへの出店者や大手メーカーのEC 事業部など約一〇〇社。
一日当たりの出荷件数が一〇件前後の小規模通販 から一万件の大手まで、さまざまな規模の通販企業 の物流業務を手掛けている。
物流代行全体での出荷 件数は一日当たり約二万件、年間の流通総額は推定 五五〇億円に達している。
スクロール本体の出荷件数は、一日当たり一万七 〇〇〇件。
スクロールと顧客企業の利用分を合わせ て宅配便や梱包資材を発注し、スケールメリットを利 かせている。
物流代行サービスの現場業務はSLC磐田のほか、 静岡県浜松市の「スクロールロジスティクスセンター 浜松西(SLC浜松西)」内の四〇〇〇坪、協力会 社の物流センターなどで行っており、利用スペースは 合計一万五〇〇〇坪に達する。
取扱品目はアパレルから化粧品、健康食品、食品、 日用雑貨などさまざま。
各センターでは顧客一社ご とに専用エリアを設け、各社の要望に合わせて異なっ た手順できめ細やかなサービスを提供している。
作業は複雑だが、マテハンはほとんど入れていな い。
人間の能力を最大限に活かした運用を行ってい る。
顧客企業ごとに手順書を作成して伝票の印字か らピッキング、梱包まですべて違う作業者が対応し、 各工程でチェックをかける。
特別な指示事項はわか りやすく現場に掲示するなど、情報システムと現場 のアイデア、改善活動で作業ミスを防ぐ仕組み作りを 徹底している。
ピッキングでも一手間かけている。
ある健康食品 通販の現場では、作業の始めに一日分のトータルピッ キングを行い、次に複数の注文分のバッチピッキング をした後、注文ごとに仕分けて梱包。
一日の出荷作 業の終了時には、現場に何も残っていないことを確 認している。
出荷作業では商品に販促物も同梱する。
ギフト包 装も手掛けている。
ギフト包装の繁忙期に当たる十 二月と二月以外の閑散期に作業者に対してトレーニン グを行っている。
包装の簡素化も顧客企業に提案している。
ある雑 貨の通販では、ショップのイメージに合わせてプリン トした詰め紙を使用していた。
しかし、それでは購 入者がゴミとして捨てるときにかさばってしまう。
資 材の使用量も多くなる。
そこで、特別なデザインを 施したエアバッグを提案して、評価を得た。
スクロール360の鈴木康晴営業部営業課課長は 「小売業は消費者との間でトラブルを起こすことは絶 特 集 25 MAY 2012 対にできない。
そうした小売業の意識を理解してい なければ、当社のようなサービスを提供することは難 しい」と胸を張る。
あらゆる業態の通販物流の経験を積んできた。
一 九九九年に他社に先駆けて同事業に参入し、楽天市 場の第一世代といえるショップの業務を受託して成功 させた。
それらのショップからの口コミもあり、事業 を拡大する過程で様々な顧客と向き合ってきた。
そうして蓄積した知識に物流専業者のノウハウを融 合している。
スクロールは〇六年、物流子会社を本 体に吸収合併し、〇七年には自社の物流現場と物流 代行の現場作業を物流会社にアウトソーシングした。
その後、物流代行専用のSLC磐田でも協力会社を 活用し、協力会社をパートナーとして位置付けてコス ト効率の最大化を図っている。
夏目義治ECフルフィルメントユニットユニット長 は「何もかも自前で揃えるよりも、パートナー企業と 上手く協力した方が発展性がある。
各物流会社はそ れぞれ異なるノウハウを持っている。
今後は物流代行 の拡大に合わせて関東や関西で新しいパートナーも検 討していきたい」と話す。
現在、スクロールのソリューション事業の売上高は 約六〇億円。
これを中長期的には一〇〇億円に引き 上げることを目標としている。
そのために物流代行 のサービスメニューを拡充している。
SLC浜松西では昨年、化粧品製造業(包装・表 示・保管)、今年三月には医薬部外品製造業(同)の 許可を取得した。
これによってセンター内で医薬部外 品も含めた化粧品のセット商品の組み合わせ作業や シュリンク作業(透明フィルムによる密封作業)が可 能になった。
SLC磐田では高度管理医療機器販売業の許可を 取得し、コンタクトレンズなど医療機器の取り扱いを 開始した。
商品の撮影、採寸、サイトへのページアッ プを行うスタジオも開設している。
さらに、衣料品 のサイズ直しまで行っている。
商品を置くセンター内 ですべての付帯作業を完結させる体制を整え、リー ドタイムの短縮とコスト削減を提案していく。
スクロール360の杉本泰宣社長は「EC通販に 参入する企業は多く、物流業務のアウトソーシングも 数年前に比べて増えている。
SLC磐田は今後一〜 二年で満床になるだろう。
今後もグループで連携し てソリューション事業に投資し、機能を強化していき たい」という。
千趣会 ──拠点再編で空けた倉庫を外販 千趣会の通販事業は、こけし人形の頒布会事業か ら数えて五〇年以上の歴史を誇る。
業界の盟主とし て長年君臨してきた。
現在の事業規模は宅配便の年 間出荷個数がおよそ二〇〇〇万個。
年間購入者数は 約三六六万人。
インターネット会員数は七三〇六万 人に上る。
そのノウハウ、物流インフラ、膨大な顧客 データベースを、通販支援事業に活用している。
同社の磯浩一郎事業開発本部法人事業部部長は 「通販物流の現場ノウハウを活用し、各顧客企業の業 務要件に応じてきめ細かいサービスを行っている。
こ れまで通販事業を行ってきた経験から、これはまず いというところが我々には肌でわかる。
少しでも気 付いたことがあれば積極的に改善を提案するように している」とアピールする。
物流代行事業の営業に本腰を入れ始めたのは〇四 年頃からで、現在も顧客数は一〇数社に過ぎない。
自社の物流拠点の再編によって、空いたスペースを有 スクロールの 杉本泰宣社長 SLC浜松西内にある物流代行の現場 物流代行専用のSLC磐田 スクロールの鈴木康晴 営業部営業課課長 夏目義治ECフルフィルメ ントユニットユニット長 スクロールのソリューション事業の業績の推移 08 年3月期 09 年3月期 10 年3月期 11 年3月期 6,100 6,050 6,000 5,950 5,900 5,850 5,800 5,750 5,700 5,650 (百万円) 500 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 売上高 営業利益 効活用しようという狙いだった。
同社の物流インフラ整備は兵庫県西宮市に「甲子 園商品センター」を設立した一九八六年に遡る。
そ の後、カタログ通販事業が大きく成長し物量が大幅に 増加したのに伴い、大型の「中部商品センター」を 九五年に岐阜県可児市に設置した。
一方、九七年には頒布会事業用に栃木県鹿沼市に 「鹿沼商品センター」を設置している。
それまで頒布 会事業は全国の営業拠点から出荷を行っていた。
そ の商物分離を段階的に進めて、鹿沼センターに物流 を集約した。
その後の物流再編で、甲子園商品センターの在庫 を中部商品センターに移管。
これによって甲子園商 品センターが空いた。
鹿沼商品センターも頒布会事業 の縮小で空きが目立ってきた。
その穴を外販で埋め ている。
スペースは甲子園センターの約三〇〇〇坪と 鹿沼の一〇〇〇坪、計四〇〇〇坪を使用している。
現場業務を行うのは、千趣会の物流子会社の千趣ロ ジスコだ。
スタッフは皆、千趣会の現場経験がある。
計画的な人事ローテーションによってスタッフのスキ ルを高め、自社通販事業と物流代行の現場間で繁閑 に応じて柔軟に配置を調整できる体制を整えている。
空いていたスペースは既にほぼ埋まっている。
橋 俊哉事業開発本部法人事業部部長は「自社の通販事 業の現場があるので、外販向けのスペースは限られ る。
物流代行事業の今後の展開をどうするか検討す べき段階を迎えている」という。
NTTロジスコ ──先行投資も辞さずに拠点を整備 NTTロジスコの通販向け事業が拡大している。
N TTの一〇〇%子会社として一九九四年に営業を開 始した同社は、電話帳や公衆電話関連の物量の減少 を、外販の獲得によって穴埋めするかたちで事業規 模を維持してきた。
なかでも近年最も伸びているの が通販向けだ。
二〇一二年三月末時点で、支払い物流費が年間一 億円超の中堅通販会社を中心に、二七社を荷主とし て抱えている。
この一年間で四社増えた。
毎年着実 に荷主数が増えている。
同社の売上規模は現在約四 〇〇億円。
中期経営計画では、これを一〇〇〇億円 まで拡大する目標を掲げている。
その実現に向け、通 販業界を、情報機器、医療機器と並ぶ三本柱の一つ に定めている。
ロジスコの小林兼司業務部LE部門長トランス ポート部門長兼務は「通販向けに蓄積した情報シス テムの構築・運用ノウハウと、配送における価格競 争力が当社の強み」と説明する。
本社スタッフ約三 〇〇人のうち約一割をIT部門に充て、システム設 計はもちろん受注処理から決済までのプロセスの最適 化を提案、営業活動の武器にしている。
配送費の競争力強化では、各拠点の傭車や宅配便 の購買を一元管理するトランスポート部門を〇九年一 〇月に設立した。
集中購買によるコストダウンを図っ ている。
インターネットの回線を接続するルーターの 配送などで、ロジスコは現在、月間一〇〇万個以上 の宅配便を使用している。
その物量を背景に大手宅 配会社と大口レートで契約。
利用運送会社として荷 主に低料金の宅配便を提供している。
宅配便に乗ら ない大物貨物も、全国一六センターを起点に約一〇 〇ルートを運行している混載輸送便を利用できる。
TV通販の「ショップジャパン」などを運営する オークローンマーケティング(OLM)は昨年二月、 ロジスコの「千葉物流センタ」(千葉県市川市)に物 MAY 2012 26 千趣会の磯浩一郎 事業開発本部法人 事業部部長 千趣会の橋俊哉 事業開発本部法人 事業部部長 特 集 流拠点を移管した。
新センターでは倉庫管理システム の構築からセンター運営、全国配送まで、ロジスコが 一括して請け負っている。
OLMは〇九年にNTTドコモが五一%の株式を 取得し、NTTグループ入りしている。
ロジスコに とっては兄弟会社に当たるため、「外販にはカウント できないが、実態としては外販そのもの。
当社のサー ビスレベルとコスト競争力を掛け値なしに評価いただ いた」と小林LE部門長は胸を張る。
ロジスコにとってOLMは通販分野で最大の荷主 となる。
同社向けの売上金額は未公表だが、通販物 流事業の拡大ペースに大きく弾みが付いた。
今後も 先行投資も辞さずに通販向け拠点を整備し新規荷主 の獲得を進める方針だ。
イマージュソリューションズ ──システム会社が格安物流 イマージュソリューションズ(IS)は二〇〇九年 に、出荷一個当たり全国一律四九五円からという低 料金を売り物に、本格的にネット通販向け物流代行 サービスを開始した。
中小規模の通販会社が主な対 象だ。
同社は通販大手のイマージュのシステム部門の責任 者を務めていた出口允博氏らが独立し、〇七年に立ち 上げたベンチャー企業。
創業当初はECサイトの構築 をメーンにしていたが、そこからシステム保守や販売 促進、サイトの運用代行へサービスを拡大してきた。
当初、物流サービスは、顧客の業務要件に合わせ てその都度、見積もりを出していた。
しかし、顧客 の反応や他社の料金水準から、一個五〇〇円を切る ことを目標に置き、自社の利幅を削ると同時に、提 携の倉庫会社や宅配会社と交渉を進め、コストをギ リギリまで削ぎ落とした。
物流会社出身で現在、物流代行事業の責任者を務 める真中清EC運用グループグループマネージャを中 心に、サービスの設計に取り組んだ。
現場業務の委託先には、茨城県つくば市の倉庫会 社を利用することにした。
つくば市は東京から高速 で一時間の距離にあるが、埼玉や千葉に比べると倉 庫の坪単価が格段に安い。
人口が増えているためパー トも集めやすい。
宅配便のコストは東京経由になる ので若干割高になるが、それを上回るのコストダウン メリットがある。
真中グループマネージャは「競合他社では現場運営 は提携先に任せきりというケースも多い。
しかし、当 社は提携倉庫の現場に入り込んで品質を管理するの はもちろん、生産性を上げてコストを削減している」 と説明する。
四九五円の最低料金は小型の商品で、出荷一件当 たりの商品点数が少ない業務に絞られる。
また保管 や流通加工は別料金だ。
ただし、出荷料金とは別に、 月額固定で収受するシステム利用料を相場より安く設 定している。
トータルでは一件当たりの単価は他社 よりも割安になるという。
しかも、アイテム数が一 〇〇アイテム以下の場合はシステムを利用せずに出荷 することも可能なため、単価がさらに下がる。
現在、物流代行サービスの顧客数は約三〇社、月 間の出荷量は一万三〇〇〇件。
順調に実績を積み上 げている。
真中グループマネージャは「出荷量が月間 一〇〇件規模の個人事業レベルの通販会社からの問 い合わせが非常に多い。
そうした会社の悩みを解決 する。
さらに物流を起点に販促を含めてさまざまな 提案を行い、顧客とともに成長していきたい」と考 えている。
27 MAY 2012 ロジスコの小林兼司業務 部LE部門長トランスポー ト部門長兼務 真中清EC運用グ ループグループマ ネージャ
物流専業者のみならず、自社イン フラの有効活用を狙うカタログ通販やIT企業が参 入し、異業種間で荷主を奪い合う混戦模様となって いる。
価格競争も激化してきた。
スクロール ──売上高一〇〇億円を目指す スクロール(旧ムトウ)の子会社、スクロール36 0(サンロクマル)は二〇〇九年九月、通販企業の 物流代行専用センター「スクロールロジスティクスセ ンター磐田(SLC磐田)」を静岡県磐田市に稼働さ せた。
敷地面積四〇二四坪、延べ床面積八二〇六坪 という大型センターだ。
スクロールは〇八年、本体のソリューション営業部、 情報システム子会社のミック(現スクロール360)、 そして物流子会社に分散していた機能をスクロール3 60に集約。
通販ソリューションをワンストップで提 供する体制を整え、経営の柱の一つに位置付けた。
これまでのサービス実績は、物流・受注・決済の 代行を行うフルフィルメント支援で一五〇社、情報シ ステム支援で三〇〇社、販売促進支援で二〇〇社に 及ぶ。
このうち、物流代行サービスの顧客は楽天市 場などのECモールへの出店者や大手メーカーのEC 事業部など約一〇〇社。
一日当たりの出荷件数が一〇件前後の小規模通販 から一万件の大手まで、さまざまな規模の通販企業 の物流業務を手掛けている。
物流代行全体での出荷 件数は一日当たり約二万件、年間の流通総額は推定 五五〇億円に達している。
スクロール本体の出荷件数は、一日当たり一万七 〇〇〇件。
スクロールと顧客企業の利用分を合わせ て宅配便や梱包資材を発注し、スケールメリットを利 かせている。
物流代行サービスの現場業務はSLC磐田のほか、 静岡県浜松市の「スクロールロジスティクスセンター 浜松西(SLC浜松西)」内の四〇〇〇坪、協力会 社の物流センターなどで行っており、利用スペースは 合計一万五〇〇〇坪に達する。
取扱品目はアパレルから化粧品、健康食品、食品、 日用雑貨などさまざま。
各センターでは顧客一社ご とに専用エリアを設け、各社の要望に合わせて異なっ た手順できめ細やかなサービスを提供している。
作業は複雑だが、マテハンはほとんど入れていな い。
人間の能力を最大限に活かした運用を行ってい る。
顧客企業ごとに手順書を作成して伝票の印字か らピッキング、梱包まですべて違う作業者が対応し、 各工程でチェックをかける。
特別な指示事項はわか りやすく現場に掲示するなど、情報システムと現場 のアイデア、改善活動で作業ミスを防ぐ仕組み作りを 徹底している。
ピッキングでも一手間かけている。
ある健康食品 通販の現場では、作業の始めに一日分のトータルピッ キングを行い、次に複数の注文分のバッチピッキング をした後、注文ごとに仕分けて梱包。
一日の出荷作 業の終了時には、現場に何も残っていないことを確 認している。
出荷作業では商品に販促物も同梱する。
ギフト包 装も手掛けている。
ギフト包装の繁忙期に当たる十 二月と二月以外の閑散期に作業者に対してトレーニン グを行っている。
包装の簡素化も顧客企業に提案している。
ある雑 貨の通販では、ショップのイメージに合わせてプリン トした詰め紙を使用していた。
しかし、それでは購 入者がゴミとして捨てるときにかさばってしまう。
資 材の使用量も多くなる。
そこで、特別なデザインを 施したエアバッグを提案して、評価を得た。
スクロール360の鈴木康晴営業部営業課課長は 「小売業は消費者との間でトラブルを起こすことは絶 特 集 25 MAY 2012 対にできない。
そうした小売業の意識を理解してい なければ、当社のようなサービスを提供することは難 しい」と胸を張る。
あらゆる業態の通販物流の経験を積んできた。
一 九九九年に他社に先駆けて同事業に参入し、楽天市 場の第一世代といえるショップの業務を受託して成功 させた。
それらのショップからの口コミもあり、事業 を拡大する過程で様々な顧客と向き合ってきた。
そうして蓄積した知識に物流専業者のノウハウを融 合している。
スクロールは〇六年、物流子会社を本 体に吸収合併し、〇七年には自社の物流現場と物流 代行の現場作業を物流会社にアウトソーシングした。
その後、物流代行専用のSLC磐田でも協力会社を 活用し、協力会社をパートナーとして位置付けてコス ト効率の最大化を図っている。
夏目義治ECフルフィルメントユニットユニット長 は「何もかも自前で揃えるよりも、パートナー企業と 上手く協力した方が発展性がある。
各物流会社はそ れぞれ異なるノウハウを持っている。
今後は物流代行 の拡大に合わせて関東や関西で新しいパートナーも検 討していきたい」と話す。
現在、スクロールのソリューション事業の売上高は 約六〇億円。
これを中長期的には一〇〇億円に引き 上げることを目標としている。
そのために物流代行 のサービスメニューを拡充している。
SLC浜松西では昨年、化粧品製造業(包装・表 示・保管)、今年三月には医薬部外品製造業(同)の 許可を取得した。
これによってセンター内で医薬部外 品も含めた化粧品のセット商品の組み合わせ作業や シュリンク作業(透明フィルムによる密封作業)が可 能になった。
SLC磐田では高度管理医療機器販売業の許可を 取得し、コンタクトレンズなど医療機器の取り扱いを 開始した。
商品の撮影、採寸、サイトへのページアッ プを行うスタジオも開設している。
さらに、衣料品 のサイズ直しまで行っている。
商品を置くセンター内 ですべての付帯作業を完結させる体制を整え、リー ドタイムの短縮とコスト削減を提案していく。
スクロール360の杉本泰宣社長は「EC通販に 参入する企業は多く、物流業務のアウトソーシングも 数年前に比べて増えている。
SLC磐田は今後一〜 二年で満床になるだろう。
今後もグループで連携し てソリューション事業に投資し、機能を強化していき たい」という。
千趣会 ──拠点再編で空けた倉庫を外販 千趣会の通販事業は、こけし人形の頒布会事業か ら数えて五〇年以上の歴史を誇る。
業界の盟主とし て長年君臨してきた。
現在の事業規模は宅配便の年 間出荷個数がおよそ二〇〇〇万個。
年間購入者数は 約三六六万人。
インターネット会員数は七三〇六万 人に上る。
そのノウハウ、物流インフラ、膨大な顧客 データベースを、通販支援事業に活用している。
同社の磯浩一郎事業開発本部法人事業部部長は 「通販物流の現場ノウハウを活用し、各顧客企業の業 務要件に応じてきめ細かいサービスを行っている。
こ れまで通販事業を行ってきた経験から、これはまず いというところが我々には肌でわかる。
少しでも気 付いたことがあれば積極的に改善を提案するように している」とアピールする。
物流代行事業の営業に本腰を入れ始めたのは〇四 年頃からで、現在も顧客数は一〇数社に過ぎない。
自社の物流拠点の再編によって、空いたスペースを有 スクロールの 杉本泰宣社長 SLC浜松西内にある物流代行の現場 物流代行専用のSLC磐田 スクロールの鈴木康晴 営業部営業課課長 夏目義治ECフルフィルメ ントユニットユニット長 スクロールのソリューション事業の業績の推移 08 年3月期 09 年3月期 10 年3月期 11 年3月期 6,100 6,050 6,000 5,950 5,900 5,850 5,800 5,750 5,700 5,650 (百万円) 500 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 売上高 営業利益 効活用しようという狙いだった。
同社の物流インフラ整備は兵庫県西宮市に「甲子 園商品センター」を設立した一九八六年に遡る。
そ の後、カタログ通販事業が大きく成長し物量が大幅に 増加したのに伴い、大型の「中部商品センター」を 九五年に岐阜県可児市に設置した。
一方、九七年には頒布会事業用に栃木県鹿沼市に 「鹿沼商品センター」を設置している。
それまで頒布 会事業は全国の営業拠点から出荷を行っていた。
そ の商物分離を段階的に進めて、鹿沼センターに物流 を集約した。
その後の物流再編で、甲子園商品センターの在庫 を中部商品センターに移管。
これによって甲子園商 品センターが空いた。
鹿沼商品センターも頒布会事業 の縮小で空きが目立ってきた。
その穴を外販で埋め ている。
スペースは甲子園センターの約三〇〇〇坪と 鹿沼の一〇〇〇坪、計四〇〇〇坪を使用している。
現場業務を行うのは、千趣会の物流子会社の千趣ロ ジスコだ。
スタッフは皆、千趣会の現場経験がある。
計画的な人事ローテーションによってスタッフのスキ ルを高め、自社通販事業と物流代行の現場間で繁閑 に応じて柔軟に配置を調整できる体制を整えている。
空いていたスペースは既にほぼ埋まっている。
橋 俊哉事業開発本部法人事業部部長は「自社の通販事 業の現場があるので、外販向けのスペースは限られ る。
物流代行事業の今後の展開をどうするか検討す べき段階を迎えている」という。
NTTロジスコ ──先行投資も辞さずに拠点を整備 NTTロジスコの通販向け事業が拡大している。
N TTの一〇〇%子会社として一九九四年に営業を開 始した同社は、電話帳や公衆電話関連の物量の減少 を、外販の獲得によって穴埋めするかたちで事業規 模を維持してきた。
なかでも近年最も伸びているの が通販向けだ。
二〇一二年三月末時点で、支払い物流費が年間一 億円超の中堅通販会社を中心に、二七社を荷主とし て抱えている。
この一年間で四社増えた。
毎年着実 に荷主数が増えている。
同社の売上規模は現在約四 〇〇億円。
中期経営計画では、これを一〇〇〇億円 まで拡大する目標を掲げている。
その実現に向け、通 販業界を、情報機器、医療機器と並ぶ三本柱の一つ に定めている。
ロジスコの小林兼司業務部LE部門長トランス ポート部門長兼務は「通販向けに蓄積した情報シス テムの構築・運用ノウハウと、配送における価格競 争力が当社の強み」と説明する。
本社スタッフ約三 〇〇人のうち約一割をIT部門に充て、システム設 計はもちろん受注処理から決済までのプロセスの最適 化を提案、営業活動の武器にしている。
配送費の競争力強化では、各拠点の傭車や宅配便 の購買を一元管理するトランスポート部門を〇九年一 〇月に設立した。
集中購買によるコストダウンを図っ ている。
インターネットの回線を接続するルーターの 配送などで、ロジスコは現在、月間一〇〇万個以上 の宅配便を使用している。
その物量を背景に大手宅 配会社と大口レートで契約。
利用運送会社として荷 主に低料金の宅配便を提供している。
宅配便に乗ら ない大物貨物も、全国一六センターを起点に約一〇 〇ルートを運行している混載輸送便を利用できる。
TV通販の「ショップジャパン」などを運営する オークローンマーケティング(OLM)は昨年二月、 ロジスコの「千葉物流センタ」(千葉県市川市)に物 MAY 2012 26 千趣会の磯浩一郎 事業開発本部法人 事業部部長 千趣会の橋俊哉 事業開発本部法人 事業部部長 特 集 流拠点を移管した。
新センターでは倉庫管理システム の構築からセンター運営、全国配送まで、ロジスコが 一括して請け負っている。
OLMは〇九年にNTTドコモが五一%の株式を 取得し、NTTグループ入りしている。
ロジスコに とっては兄弟会社に当たるため、「外販にはカウント できないが、実態としては外販そのもの。
当社のサー ビスレベルとコスト競争力を掛け値なしに評価いただ いた」と小林LE部門長は胸を張る。
ロジスコにとってOLMは通販分野で最大の荷主 となる。
同社向けの売上金額は未公表だが、通販物 流事業の拡大ペースに大きく弾みが付いた。
今後も 先行投資も辞さずに通販向け拠点を整備し新規荷主 の獲得を進める方針だ。
イマージュソリューションズ ──システム会社が格安物流 イマージュソリューションズ(IS)は二〇〇九年 に、出荷一個当たり全国一律四九五円からという低 料金を売り物に、本格的にネット通販向け物流代行 サービスを開始した。
中小規模の通販会社が主な対 象だ。
同社は通販大手のイマージュのシステム部門の責任 者を務めていた出口允博氏らが独立し、〇七年に立ち 上げたベンチャー企業。
創業当初はECサイトの構築 をメーンにしていたが、そこからシステム保守や販売 促進、サイトの運用代行へサービスを拡大してきた。
当初、物流サービスは、顧客の業務要件に合わせ てその都度、見積もりを出していた。
しかし、顧客 の反応や他社の料金水準から、一個五〇〇円を切る ことを目標に置き、自社の利幅を削ると同時に、提 携の倉庫会社や宅配会社と交渉を進め、コストをギ リギリまで削ぎ落とした。
物流会社出身で現在、物流代行事業の責任者を務 める真中清EC運用グループグループマネージャを中 心に、サービスの設計に取り組んだ。
現場業務の委託先には、茨城県つくば市の倉庫会 社を利用することにした。
つくば市は東京から高速 で一時間の距離にあるが、埼玉や千葉に比べると倉 庫の坪単価が格段に安い。
人口が増えているためパー トも集めやすい。
宅配便のコストは東京経由になる ので若干割高になるが、それを上回るのコストダウン メリットがある。
真中グループマネージャは「競合他社では現場運営 は提携先に任せきりというケースも多い。
しかし、当 社は提携倉庫の現場に入り込んで品質を管理するの はもちろん、生産性を上げてコストを削減している」 と説明する。
四九五円の最低料金は小型の商品で、出荷一件当 たりの商品点数が少ない業務に絞られる。
また保管 や流通加工は別料金だ。
ただし、出荷料金とは別に、 月額固定で収受するシステム利用料を相場より安く設 定している。
トータルでは一件当たりの単価は他社 よりも割安になるという。
しかも、アイテム数が一 〇〇アイテム以下の場合はシステムを利用せずに出荷 することも可能なため、単価がさらに下がる。
現在、物流代行サービスの顧客数は約三〇社、月 間の出荷量は一万三〇〇〇件。
順調に実績を積み上 げている。
真中グループマネージャは「出荷量が月間 一〇〇件規模の個人事業レベルの通販会社からの問 い合わせが非常に多い。
そうした会社の悩みを解決 する。
さらに物流を起点に販促を含めてさまざまな 提案を行い、顧客とともに成長していきたい」と考 えている。
27 MAY 2012 ロジスコの小林兼司業務 部LE部門長トランスポー ト部門長兼務 真中清EC運用グ ループグループマ ネージャ
