2004年2月号
ケース
ケース
キーコーヒー――需給管理
FEBRUARY 2004 54
主力工場で生産・物流体制を強化
昨年一〇月、レギュラーコーヒーメーカー
のキーコーヒーは、千葉県船橋市内に構える
関東工場をリニューアルした。
同社は業務 用・家庭用・原料用などのさまざまなタイプ のレギュラーコーヒーを、全国四カ所(仙台、 船橋、春日井、鳥栖)の工場で生産している。
関東工場は東日本エリアの主力拠点だ。
今回、同社は、この関東工場を二五年ぶり に全面改修した。
三〇億円を投資して製造能 力を従来の一・五倍に引き上げたのである。
これに伴って、同工場に併設している関東物 流センターの機能も増強。
二億円を投じて最 新の物流機器を導入した。
キーコーヒーの製品アイテム数は千近くあ る。
一言でレギュラーコーヒーといっても、 豆か粉かの違いや、ブレンド方法、パッケー ジ、さらには業務用・家庭用などの用途によ ってアイテムを分ける必要があり、アイテム 数はどうしても多くなる。
このため同社の工場では、包装ラインに流 す商品を頻繁に切り替えながら?多品種少量 生産〞を行なっている。
製造アイテムは毎日 のように変わり、なかには一回の生産量が数 十ケースしかないものや、半月に一度程度し か生産しないものすらある。
関東工場の製造アイテムは月間で約三〇〇 アイテムにのぼる。
一〇数本ある生産ライン で、一日に四〇〜五〇アイテムを作る。
製品 多品種少量生産の弱み克服に向け 生産と在庫補充の仕組みにメス キーコーヒーは昨年、主力工場でリニュ ーアルを行い生産・出荷能力を増強した。
これに併せて新たなロジスティクスシステ ムも導入。
在庫拠点から補充依頼のあった 数量だけを生産する仕組みに変え、補充方 法も見直した。
これによってアイテムや地 域による鮮度のバラツキを解消し、トータ ル在庫の削減を進めている。
キーコーヒー ――需給管理 55 FEBRUARY 2004 はすべて併設の関東物流センターにコンベア で搬送し、センターでパレタイズして保管す る。
ラインが切り替わるたびに物流センター で受け入れる製品も変わり、パレットへの積 み付けパターンも切り替える必要がある。
センターでは従来、この積み付け作業を人 手で行っていた。
しかし、今回のリニューア ルで生産数量やアイテム数が増えることによ って、ミスの発生が懸念された。
そこで物流 センターの側でも、工場の生産増強に対応し て能力と精度の向上をはかるためロボットパ レタイザーを三台導入。
作業の完全な自動化 に踏み切った。
このロボットパレタイザーは、一台で六ア イテムまでを同時に積み付けできる。
包装ラ インから別々の製品が流れてきても、三台の ロボットパレタイザーで計算上は一八アイテ ムまでを同時に積み付けることが可能だ。
こ の自動化によって大幅な省人化を実現し、物 流センターでは従来よりも三人少ない要員で対応できるようになった。
また、新センターでは、製品の保管効率を 上げるために自動倉庫を一レーン増やして三 レーンにし、さらに電動式の移動ラックも新 たに導入した。
これによって収容能力は計一 四〇〇パレットになり、五キロ入りケース換 算で七万ケースを保管できるようになった。
この関東工場のリニューアルに先立ち、同 社は二〇〇三年三月に、西日本の主力工場 である中部工場(春日井)でも同様に生産設 備の増強と物流センターの移転による刷新を 行なっている。
このとき工場での製造と拠点 間の製品補充の仕組みも見直した。
生産物流 システムの再構築を行ない、新しいロジステ ィクスシステムを導入したのである。
昨年三月から一〇月にかけて行なわれた二 つの主力工場と物流センターの相次ぐリニュ ーアルは、キーコーヒーが全社的に進めてい る「生産・物流革新」の一環として実施され たものだ。
八物流センターと五七営業所に在庫 同社の製品は現在、全国八カ所の物流セン ターを経て、商品ごとに異なる販売ルートに 乗り市場に供給されている。
八カ所の物流セ ンターのうち四つは、前述した各工場の併設 拠点だ。
残る四つは札幌、東京、神奈川、神 戸に立地している。
四工場で生産された製品 はすべて、いったん工場に併設された物流セ ンターに入庫し、そこから各地の物流センタ ーへと補充するという流れになっている。
生産体制は、全国を大きく東西に分けて管 理している。
基本的に関東工場(船橋)と東 北工場(仙台)が東日本エリアの需要をまか ない、中部工場(春日井)と九州工場(鳥 栖)が西日本をカバーしている。
物流センタ ー間の在庫補充も、大半の製品は東西それぞ れのエリア内で完結している。
ただ、家庭用 のPB(プライベートブランド)商品のよう に一工場で集中生産しているものについては、 工場併設の物流センターから七カ所のセンタ ーへ補充を行なうというフローになる。
各地の物流センターからは、地域の需要に 応じて、業務用・家庭用などあらゆる商品を 出荷する必要がある。
ただ業務用と家庭用で は、市場に製品を供給するルートが大きく異 なるため、まったく別々に管理している。
喫茶店やレストラン向けなどの業務用は、 同社にとって売上構成比の五割近くを占める 主力事業。
この分野の販売体制は原則として 商物一体で、営業マンによるルートセールス が基本だ。
全国一〇の地域に事業部を置き、 そのもとに六九カ所の営業所を設置。
このう ち首都圏などを除く五七の営業所に在庫を持 って、顧客の要望にきめ細かく応えている。
物流センターからそれぞれの管轄の営業所へ は、週に一度、在庫補充を行っている。
一方、家庭用製品は物流センターから顧客 に直送している。
配送先は卸の拠点や、小売 キーコーヒーの関東工場 (千葉県船橋市) 関東工場と併設物流センターの概要 関東工場 所在地 千葉県船橋市 生産能力 年間20,500トン(製品ベース) 敷地面積 13,901平方メートル 建築面積 4,152平方メートル 延べ床面積 10,010平方メートル 従業員数 81人(社員、パートタイマー、業務委託) 物流センター(関東工場併設) 建築面積 3,513平方メートル 延べ床面積 4,458平方メートル 従業員数 15人(社員) 取り扱いアイテム 約1000アイテム 導入機器 ロボットパレタイザー 3台 自動倉庫 クレーン3台 910パレット 電動式移動ラック 504パレット りの共配センターなどだ。
販売組織も業務用 とは別で、HM営業部と十一の支店からなっ ている。
新たなロジスティクスシステムを構築する にあたって同社は、「工場→併設の物流セン ター→七カ所の物流センター→営業所の倉庫 または顧客の拠点へ直送」という商品の供給 ルートはそのままに、工場での生産の仕組み と、物流センター間および物流センター〜営 業所間での在庫補充の仕組みを見直した。
営業所が補充数量を決める 従来の生産の仕組みでは、過去の製造実績 などをもとに工場が独自に生産数量を決定し ていた。
つまり生産計画に営業部門の意向が 反映されることなく、工場による見込み生産 が行なわれていた。
このため、営業部門が必 要とする数量と実際の生産数量とに乖離が生 じ、在庫の過不足が生じやすいという悩みを 抱えていた。
前述の通り、同社の製品は少量生産するア イテムが多く、なかには何週間かに一度しか 生産しないアイテムもある。
過剰在庫が発生 すると、在庫が一定水準に下がるまで追加生 産は行なわず、その間は古い日付けの商品を 出荷しなければならない。
市場に出回ってい る製品の鮮度はどんどん落ちてしまう。
こうした問題を解決するため同社は、工場 が独自の判断で生産数量を決定するのではな く、営業部門の要求に従って生産し、あらか じめ設定した日に製品を補充できるよう生産計画を立てるかたちに切り替えた。
これを具 体化するため、「新補充発注システム」を全 社的に導入している。
この仕組みでは、まず販売予測システムに よって、向こう四週分の販売予測を営業所・ 支店単位で行なう。
原料用を除いた全アイテ ムを対象に、過去六週間分の販売実績や前年 同時期の推移、変動指数などをもとに、曜日 別の販売予測値を算出する。
この予測値に対して、各営業所は、販売数 が少なくブレの大きい商品を中心にチェック を行ない、次回の補充の対象となる期間の販 売数をアイテムごとに割り出す。
これに安全 在庫を上乗せし、さらに補充日の在庫見込み 数を引いた補充数量を算出。
これを毎週月曜 日に物流センターに発注していく。
こうして全営業所から寄せられる業務用製 品の発注数と、家庭用製品の販売予測数量、 および物流センターの設定する安全在庫数量 をもとに、物流センターで工場に対する製造 依頼数量を確定。
工場では依頼のあった数量 だけを生産する。
川上の工場ではなく、市場に近い営業部門 の発注数量をもとに製造数量を確定すること によって、生産と販売のブレをできるだけ無 くし、過剰在庫を防ぐことを狙っている。
在庫過剰による廃棄ロスの抑制へ 新システムでは、家庭用製品の販促情報も 取り込めるようにした。
家庭用製品はスーパ ーなどの特売によって販売数量が大幅に変動する。
特売情報などの入手が遅れると、販売 数量を確保するため緊急生産が必要になり、 工場の生産体制に負荷がかかる。
その一方で、 販売予測を誤ると大量の在庫を抱えてしまう という危険もある。
そこで、システム上で事前に情報を共有で きるようにした。
量販店など販売規模の大き い顧客については、その量販チェーンの本部 担当の営業部門が、特売の日程とおおまかな 数量を入力。
その後、各支店が実際にバイヤ ーとの交渉を経て数値の修正を行ない、予測 数と販売数の誤差を少なくしていく。
ただし、入力された情報をそのまま補充計 画に反映するわけではない。
最終的には、情 報をもとに物流センターが補充数量を決める。
FEBRUARY 2004 56 自動倉庫に加えて 電動式の移動ラッ クも導入した 物流センターに導入 したロボットパレタ イザー 57 FEBRUARY 2004 変動の大きい特売品は過剰在庫のリスクも大 きいだけに、慎重な判断が必要だからだ。
レギュラーコーヒーのように賞味期限管理 の必要な商品では、組織小売業の多くが厳し い鮮度基準を設け、「製造後何日以内」など の?納入期限〞を独自に指定している。
これ を遵守することが取引要件の一つになってお り、賞味期限内であっても?納入期限〞を超 えた商品を納めることはできない。
キーコーヒーでは、こうした商品について は廃棄処理する方針をとっている。
だが廃棄 処理には手間とコストがかかる。
缶や袋に詰 められた商品を解体・分別する作業やマニュ フェストの管理が必要で、倉庫内のスペース と人手を割かなければならない。
過剰在庫の 発生は、こうした大きなロスにつながるとい う意味で少しでも減らす必要があった。
すでに、新システムの稼働による成果は着 実にあらわれている。
過剰在庫が減り、「新 商品など需要予測の著しく困難なものを除け ば、大方の商品で廃棄処理するケースは少な くなった」とロジスティクス本部KCMチー ムの橋口芳久リーダーは言う。
鮮度のバラツキを解消 今回の新ロジスティクスシステムの構築で は、製造の仕組みとともに、在庫補充の仕組 みそのものも見直した。
従来、工場でつくられた製品はすべて、併 設する物流センターの在庫として計上されて いた。
従って、工場併設の物流センターが管轄エ リアの営業所などに出荷 するものも、ほかの物流 センターへ補充するもの も、同じ在庫から「先入 れ先出し」の原則のもと に出荷していた。
このた め、商品によっては、工 場併設の物流センターが カバーする営業所と、そ の他の物流センターのカ バーする営業所で鮮度に バラツキが生じてしまっ た。
あるアイテムの在庫 が過剰になると、そのア イテムについては他のセ ンターに日付けの新しい 製品がなかなか補充され ないという問題があった。
そこで新システムでは、 工場と物流センターの間 に「FDC」という仮想 の組織を設け、「工場→ FDC→すべての物流セ ンター」というフローに 切り替えた。
各物流セン ターの発注をもとに工場 が製造した製品を、FD Cから発注元である各物 FEBRUARY 2004 58 流センターに出荷するという考え方だ。
この フローでは、工場併設の物流センターもその 他の物流センターも並列の位置付けとなり、 工場併設のセンターと、それ以外のセンター の間で、大きな鮮度のギャップをなくすこと ができる。
FDC上の登録在庫を実際に置いてある工 場併設の物流センターから、各地の物流セン ターへの補充は原則として週に二回だけ。
こ のため製造の曜日によっては補充日まで間が 空いてしまうケースがある。
また、遠方のセ ンターまでは輸送のための時間も必要だ。
そ れでも現状では、各センターに在庫する製品 の日付けのギャップを、平均で三〜四日、長 くても一週間以内に納めることができるよう になっているのだという。
この結果、営業所の商品の鮮度もよくなり、 現在、業務用の在庫品については八五%以上 が製造してから二週間以内という水準に達し ている。
営業所を経由しても、顧客のもとに は遅くとも製造後一カ月半以内の製品を納品 できる。
「毎日同じ製品をつくっているわけ ではないので多少の誤差は出るが、商品によ るバラツキをなくして、常時一定の鮮度で届 けることができるようになった意義は大きい」 (橋口リーダー)。
同社のトータル在庫日数は現在、物流セン ターと営業所を合わせて三週間分という水準 にある。
新システムの導入でトータル在庫の 削減は確実に進んでいるが、橋口リーダーは 「できれば将来、さらに二週間程度まで減ら していきたい」と考えている。
物流センターから営業所への配送は週に一 度。
営業所が発注した製品が補充される。
つ まり営業所には一週間分の在庫があればいい のだが、現実には予測のブレが発生するため に、営業所ではさらに最大で一週間分の安全 在庫を確保している。
一方、物流センターでも、営業所向けに業 務用の安全在庫を抱えている。
業務用につい ては営業所から発注のあった数量を補充する だけのスルー型なので、本来、センターの安 全在庫は家庭用だけあればいいはずだ。
しか し、欠品が出た場合の緊急生産には限界があ る。
このため業務用も安全在庫を持って対応 しており、安全在庫を二カ所に重複して持っ ている。
ここにまだ在庫削減の余地があると 橋口リーダーは見る。
生産アイテムが毎日変わり、補充も物流セ ンターへ週に二回、営業所へ週に一回という 頻度のため、生産と補充のタイミングによっ てどうしても予備の在庫が必要になる。
そこ が多品種少量生産を基調とする同社の物流の 泣き所でもある。
だが、予測の精度をあげる ことで安全在庫の水準を下げることは可能だ。
「ただしコンピューターの予測に頼ってもこれ 以上は無理。
まず物流センターや営業所がシ ステムの運用を通じて、ブレの大きいアイテ ムとそうでないものとを早く特定できるよう になることだ」と橋口リーダーは言う。
事実、販売数量の多いアイテムでは比較的、 予測のブレが少ないため、営業所の安全在庫 を三日分で運用できるようになったケースも あるという。
もう一段の在庫削減も、運用次 第ではそれほど遠い目標ではないかもしれな い。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 物流センターからの在庫補充の仕組み(従来→現在) 従来の製品補充の仕組み 新たな仕組み 工 場 仙台 船橋 春日井 鳥栖 物流センター 札幌、東京 神奈川、神戸 工場併設センター (7カ所) 物流センター コンベヤ 工場併設の 物流センター に全て計上 (4カ所) 工 場 全国 4カ所 物流センター 全国8カ所 FDC あらかじめコンピ ュータ上で全国8 カ所の物流セン ターごとの割り振 りを決定 営業所 または 顧客の物流拠点 営業所 または 顧客の物流拠点 工場併設4カ所 その他4カ所 ※工場で生産した製品在庫は、現実には従来通り併設の物流センターに保管す る。
ただし、その時点ですでにFDC上で各センター向けの在庫が決まってい 物流センター間の製品補充の概念図 九州工場(鳥栖) 併設の物流センター 物流センター(神戸) 併設の物流センター 物流センター(神奈川) 併設の物流センター 物流センター(東京) 併設の物流センター 物流センター(札幌) 関東工場(船橋) 東北工場(仙台) 中部工場(春日井)
同社は業務 用・家庭用・原料用などのさまざまなタイプ のレギュラーコーヒーを、全国四カ所(仙台、 船橋、春日井、鳥栖)の工場で生産している。
関東工場は東日本エリアの主力拠点だ。
今回、同社は、この関東工場を二五年ぶり に全面改修した。
三〇億円を投資して製造能 力を従来の一・五倍に引き上げたのである。
これに伴って、同工場に併設している関東物 流センターの機能も増強。
二億円を投じて最 新の物流機器を導入した。
キーコーヒーの製品アイテム数は千近くあ る。
一言でレギュラーコーヒーといっても、 豆か粉かの違いや、ブレンド方法、パッケー ジ、さらには業務用・家庭用などの用途によ ってアイテムを分ける必要があり、アイテム 数はどうしても多くなる。
このため同社の工場では、包装ラインに流 す商品を頻繁に切り替えながら?多品種少量 生産〞を行なっている。
製造アイテムは毎日 のように変わり、なかには一回の生産量が数 十ケースしかないものや、半月に一度程度し か生産しないものすらある。
関東工場の製造アイテムは月間で約三〇〇 アイテムにのぼる。
一〇数本ある生産ライン で、一日に四〇〜五〇アイテムを作る。
製品 多品種少量生産の弱み克服に向け 生産と在庫補充の仕組みにメス キーコーヒーは昨年、主力工場でリニュ ーアルを行い生産・出荷能力を増強した。
これに併せて新たなロジスティクスシステ ムも導入。
在庫拠点から補充依頼のあった 数量だけを生産する仕組みに変え、補充方 法も見直した。
これによってアイテムや地 域による鮮度のバラツキを解消し、トータ ル在庫の削減を進めている。
キーコーヒー ――需給管理 55 FEBRUARY 2004 はすべて併設の関東物流センターにコンベア で搬送し、センターでパレタイズして保管す る。
ラインが切り替わるたびに物流センター で受け入れる製品も変わり、パレットへの積 み付けパターンも切り替える必要がある。
センターでは従来、この積み付け作業を人 手で行っていた。
しかし、今回のリニューア ルで生産数量やアイテム数が増えることによ って、ミスの発生が懸念された。
そこで物流 センターの側でも、工場の生産増強に対応し て能力と精度の向上をはかるためロボットパ レタイザーを三台導入。
作業の完全な自動化 に踏み切った。
このロボットパレタイザーは、一台で六ア イテムまでを同時に積み付けできる。
包装ラ インから別々の製品が流れてきても、三台の ロボットパレタイザーで計算上は一八アイテ ムまでを同時に積み付けることが可能だ。
こ の自動化によって大幅な省人化を実現し、物 流センターでは従来よりも三人少ない要員で対応できるようになった。
また、新センターでは、製品の保管効率を 上げるために自動倉庫を一レーン増やして三 レーンにし、さらに電動式の移動ラックも新 たに導入した。
これによって収容能力は計一 四〇〇パレットになり、五キロ入りケース換 算で七万ケースを保管できるようになった。
この関東工場のリニューアルに先立ち、同 社は二〇〇三年三月に、西日本の主力工場 である中部工場(春日井)でも同様に生産設 備の増強と物流センターの移転による刷新を 行なっている。
このとき工場での製造と拠点 間の製品補充の仕組みも見直した。
生産物流 システムの再構築を行ない、新しいロジステ ィクスシステムを導入したのである。
昨年三月から一〇月にかけて行なわれた二 つの主力工場と物流センターの相次ぐリニュ ーアルは、キーコーヒーが全社的に進めてい る「生産・物流革新」の一環として実施され たものだ。
八物流センターと五七営業所に在庫 同社の製品は現在、全国八カ所の物流セン ターを経て、商品ごとに異なる販売ルートに 乗り市場に供給されている。
八カ所の物流セ ンターのうち四つは、前述した各工場の併設 拠点だ。
残る四つは札幌、東京、神奈川、神 戸に立地している。
四工場で生産された製品 はすべて、いったん工場に併設された物流セ ンターに入庫し、そこから各地の物流センタ ーへと補充するという流れになっている。
生産体制は、全国を大きく東西に分けて管 理している。
基本的に関東工場(船橋)と東 北工場(仙台)が東日本エリアの需要をまか ない、中部工場(春日井)と九州工場(鳥 栖)が西日本をカバーしている。
物流センタ ー間の在庫補充も、大半の製品は東西それぞ れのエリア内で完結している。
ただ、家庭用 のPB(プライベートブランド)商品のよう に一工場で集中生産しているものについては、 工場併設の物流センターから七カ所のセンタ ーへ補充を行なうというフローになる。
各地の物流センターからは、地域の需要に 応じて、業務用・家庭用などあらゆる商品を 出荷する必要がある。
ただ業務用と家庭用で は、市場に製品を供給するルートが大きく異 なるため、まったく別々に管理している。
喫茶店やレストラン向けなどの業務用は、 同社にとって売上構成比の五割近くを占める 主力事業。
この分野の販売体制は原則として 商物一体で、営業マンによるルートセールス が基本だ。
全国一〇の地域に事業部を置き、 そのもとに六九カ所の営業所を設置。
このう ち首都圏などを除く五七の営業所に在庫を持 って、顧客の要望にきめ細かく応えている。
物流センターからそれぞれの管轄の営業所へ は、週に一度、在庫補充を行っている。
一方、家庭用製品は物流センターから顧客 に直送している。
配送先は卸の拠点や、小売 キーコーヒーの関東工場 (千葉県船橋市) 関東工場と併設物流センターの概要 関東工場 所在地 千葉県船橋市 生産能力 年間20,500トン(製品ベース) 敷地面積 13,901平方メートル 建築面積 4,152平方メートル 延べ床面積 10,010平方メートル 従業員数 81人(社員、パートタイマー、業務委託) 物流センター(関東工場併設) 建築面積 3,513平方メートル 延べ床面積 4,458平方メートル 従業員数 15人(社員) 取り扱いアイテム 約1000アイテム 導入機器 ロボットパレタイザー 3台 自動倉庫 クレーン3台 910パレット 電動式移動ラック 504パレット りの共配センターなどだ。
販売組織も業務用 とは別で、HM営業部と十一の支店からなっ ている。
新たなロジスティクスシステムを構築する にあたって同社は、「工場→併設の物流セン ター→七カ所の物流センター→営業所の倉庫 または顧客の拠点へ直送」という商品の供給 ルートはそのままに、工場での生産の仕組み と、物流センター間および物流センター〜営 業所間での在庫補充の仕組みを見直した。
営業所が補充数量を決める 従来の生産の仕組みでは、過去の製造実績 などをもとに工場が独自に生産数量を決定し ていた。
つまり生産計画に営業部門の意向が 反映されることなく、工場による見込み生産 が行なわれていた。
このため、営業部門が必 要とする数量と実際の生産数量とに乖離が生 じ、在庫の過不足が生じやすいという悩みを 抱えていた。
前述の通り、同社の製品は少量生産するア イテムが多く、なかには何週間かに一度しか 生産しないアイテムもある。
過剰在庫が発生 すると、在庫が一定水準に下がるまで追加生 産は行なわず、その間は古い日付けの商品を 出荷しなければならない。
市場に出回ってい る製品の鮮度はどんどん落ちてしまう。
こうした問題を解決するため同社は、工場 が独自の判断で生産数量を決定するのではな く、営業部門の要求に従って生産し、あらか じめ設定した日に製品を補充できるよう生産計画を立てるかたちに切り替えた。
これを具 体化するため、「新補充発注システム」を全 社的に導入している。
この仕組みでは、まず販売予測システムに よって、向こう四週分の販売予測を営業所・ 支店単位で行なう。
原料用を除いた全アイテ ムを対象に、過去六週間分の販売実績や前年 同時期の推移、変動指数などをもとに、曜日 別の販売予測値を算出する。
この予測値に対して、各営業所は、販売数 が少なくブレの大きい商品を中心にチェック を行ない、次回の補充の対象となる期間の販 売数をアイテムごとに割り出す。
これに安全 在庫を上乗せし、さらに補充日の在庫見込み 数を引いた補充数量を算出。
これを毎週月曜 日に物流センターに発注していく。
こうして全営業所から寄せられる業務用製 品の発注数と、家庭用製品の販売予測数量、 および物流センターの設定する安全在庫数量 をもとに、物流センターで工場に対する製造 依頼数量を確定。
工場では依頼のあった数量 だけを生産する。
川上の工場ではなく、市場に近い営業部門 の発注数量をもとに製造数量を確定すること によって、生産と販売のブレをできるだけ無 くし、過剰在庫を防ぐことを狙っている。
在庫過剰による廃棄ロスの抑制へ 新システムでは、家庭用製品の販促情報も 取り込めるようにした。
家庭用製品はスーパ ーなどの特売によって販売数量が大幅に変動する。
特売情報などの入手が遅れると、販売 数量を確保するため緊急生産が必要になり、 工場の生産体制に負荷がかかる。
その一方で、 販売予測を誤ると大量の在庫を抱えてしまう という危険もある。
そこで、システム上で事前に情報を共有で きるようにした。
量販店など販売規模の大き い顧客については、その量販チェーンの本部 担当の営業部門が、特売の日程とおおまかな 数量を入力。
その後、各支店が実際にバイヤ ーとの交渉を経て数値の修正を行ない、予測 数と販売数の誤差を少なくしていく。
ただし、入力された情報をそのまま補充計 画に反映するわけではない。
最終的には、情 報をもとに物流センターが補充数量を決める。
FEBRUARY 2004 56 自動倉庫に加えて 電動式の移動ラッ クも導入した 物流センターに導入 したロボットパレタ イザー 57 FEBRUARY 2004 変動の大きい特売品は過剰在庫のリスクも大 きいだけに、慎重な判断が必要だからだ。
レギュラーコーヒーのように賞味期限管理 の必要な商品では、組織小売業の多くが厳し い鮮度基準を設け、「製造後何日以内」など の?納入期限〞を独自に指定している。
これ を遵守することが取引要件の一つになってお り、賞味期限内であっても?納入期限〞を超 えた商品を納めることはできない。
キーコーヒーでは、こうした商品について は廃棄処理する方針をとっている。
だが廃棄 処理には手間とコストがかかる。
缶や袋に詰 められた商品を解体・分別する作業やマニュ フェストの管理が必要で、倉庫内のスペース と人手を割かなければならない。
過剰在庫の 発生は、こうした大きなロスにつながるとい う意味で少しでも減らす必要があった。
すでに、新システムの稼働による成果は着 実にあらわれている。
過剰在庫が減り、「新 商品など需要予測の著しく困難なものを除け ば、大方の商品で廃棄処理するケースは少な くなった」とロジスティクス本部KCMチー ムの橋口芳久リーダーは言う。
鮮度のバラツキを解消 今回の新ロジスティクスシステムの構築で は、製造の仕組みとともに、在庫補充の仕組 みそのものも見直した。
従来、工場でつくられた製品はすべて、併 設する物流センターの在庫として計上されて いた。
従って、工場併設の物流センターが管轄エ リアの営業所などに出荷 するものも、ほかの物流 センターへ補充するもの も、同じ在庫から「先入 れ先出し」の原則のもと に出荷していた。
このた め、商品によっては、工 場併設の物流センターが カバーする営業所と、そ の他の物流センターのカ バーする営業所で鮮度に バラツキが生じてしまっ た。
あるアイテムの在庫 が過剰になると、そのア イテムについては他のセ ンターに日付けの新しい 製品がなかなか補充され ないという問題があった。
そこで新システムでは、 工場と物流センターの間 に「FDC」という仮想 の組織を設け、「工場→ FDC→すべての物流セ ンター」というフローに 切り替えた。
各物流セン ターの発注をもとに工場 が製造した製品を、FD Cから発注元である各物 FEBRUARY 2004 58 流センターに出荷するという考え方だ。
この フローでは、工場併設の物流センターもその 他の物流センターも並列の位置付けとなり、 工場併設のセンターと、それ以外のセンター の間で、大きな鮮度のギャップをなくすこと ができる。
FDC上の登録在庫を実際に置いてある工 場併設の物流センターから、各地の物流セン ターへの補充は原則として週に二回だけ。
こ のため製造の曜日によっては補充日まで間が 空いてしまうケースがある。
また、遠方のセ ンターまでは輸送のための時間も必要だ。
そ れでも現状では、各センターに在庫する製品 の日付けのギャップを、平均で三〜四日、長 くても一週間以内に納めることができるよう になっているのだという。
この結果、営業所の商品の鮮度もよくなり、 現在、業務用の在庫品については八五%以上 が製造してから二週間以内という水準に達し ている。
営業所を経由しても、顧客のもとに は遅くとも製造後一カ月半以内の製品を納品 できる。
「毎日同じ製品をつくっているわけ ではないので多少の誤差は出るが、商品によ るバラツキをなくして、常時一定の鮮度で届 けることができるようになった意義は大きい」 (橋口リーダー)。
同社のトータル在庫日数は現在、物流セン ターと営業所を合わせて三週間分という水準 にある。
新システムの導入でトータル在庫の 削減は確実に進んでいるが、橋口リーダーは 「できれば将来、さらに二週間程度まで減ら していきたい」と考えている。
物流センターから営業所への配送は週に一 度。
営業所が発注した製品が補充される。
つ まり営業所には一週間分の在庫があればいい のだが、現実には予測のブレが発生するため に、営業所ではさらに最大で一週間分の安全 在庫を確保している。
一方、物流センターでも、営業所向けに業 務用の安全在庫を抱えている。
業務用につい ては営業所から発注のあった数量を補充する だけのスルー型なので、本来、センターの安 全在庫は家庭用だけあればいいはずだ。
しか し、欠品が出た場合の緊急生産には限界があ る。
このため業務用も安全在庫を持って対応 しており、安全在庫を二カ所に重複して持っ ている。
ここにまだ在庫削減の余地があると 橋口リーダーは見る。
生産アイテムが毎日変わり、補充も物流セ ンターへ週に二回、営業所へ週に一回という 頻度のため、生産と補充のタイミングによっ てどうしても予備の在庫が必要になる。
そこ が多品種少量生産を基調とする同社の物流の 泣き所でもある。
だが、予測の精度をあげる ことで安全在庫の水準を下げることは可能だ。
「ただしコンピューターの予測に頼ってもこれ 以上は無理。
まず物流センターや営業所がシ ステムの運用を通じて、ブレの大きいアイテ ムとそうでないものとを早く特定できるよう になることだ」と橋口リーダーは言う。
事実、販売数量の多いアイテムでは比較的、 予測のブレが少ないため、営業所の安全在庫 を三日分で運用できるようになったケースも あるという。
もう一段の在庫削減も、運用次 第ではそれほど遠い目標ではないかもしれな い。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 物流センターからの在庫補充の仕組み(従来→現在) 従来の製品補充の仕組み 新たな仕組み 工 場 仙台 船橋 春日井 鳥栖 物流センター 札幌、東京 神奈川、神戸 工場併設センター (7カ所) 物流センター コンベヤ 工場併設の 物流センター に全て計上 (4カ所) 工 場 全国 4カ所 物流センター 全国8カ所 FDC あらかじめコンピ ュータ上で全国8 カ所の物流セン ターごとの割り振 りを決定 営業所 または 顧客の物流拠点 営業所 または 顧客の物流拠点 工場併設4カ所 その他4カ所 ※工場で生産した製品在庫は、現実には従来通り併設の物流センターに保管す る。
ただし、その時点ですでにFDC上で各センター向けの在庫が決まってい 物流センター間の製品補充の概念図 九州工場(鳥栖) 併設の物流センター 物流センター(神戸) 併設の物流センター 物流センター(神奈川) 併設の物流センター 物流センター(東京) 併設の物流センター 物流センター(札幌) 関東工場(船橋) 東北工場(仙台) 中部工場(春日井)
