2012年6月号
ケース

ホンダアクセス 情報システム

JUNE 2012  40 補修用部品の仕組みに相乗り  ホンダアクセスは本田技研工業(以下では ホンダ)の一〇〇%子会社で、ホンダ車に付 属するシートカバーやナビゲーション、フロ アマット、エアロパーツ、ホイールなどの純 正用品を取り扱っている。
製品の企画開発・ 設計までを自社で手がけ、工場は持たず、製 造は外部へ委託するファブレスメーカーだ。
 ホンダ本体のカー用品の調達・物流・営業 部門が一九八三年に分離し、先に本田技術 研究所から独立していた用品の研究部門と統 合した。
別会社になってもホンダの一部門と いう位置付けに変わりはない。
研究・開発部 門は栃木県内のホンダの研究施設と同じ敷地 内にあり、新車の開発と並行して車にフィッ トするデザイン・仕様の用品を開発し、新車 の発売と同時に市場に出す。
 一つの車両モデルに対し同社がラインナッ プする用品の数はおよそ一〇〇品目。
このな かには車の部品と同じようにホンダの工場で 車両に組み付けるものもあるが、大半の用品 はホンダ系列の新車または中古車のディーラ ーが後付けで取り付けを行う?ディーラーオ プション?の形で販売する。
 用品の供給基地(日高事業所)はホンダ の埼玉製作所(狭山市)から数キロ離れた 埼玉県日高市にある。
八二〇〇坪の倉庫に 常時二万アイテムの在庫を持つ。
製造委託先 のメーカーから月平均で九〇〇〇件を入荷し、 国内向けに同一七万六〇〇〇件を出荷する。
一部海外へも出荷している。
 このほか日高事業所の庫腹不足を補うた めに県内の二カ所、飯能と今福に計三三〇〇 坪の倉庫を借りている。
アイテムごとに一定 比率の在庫を持って日高への補充だけを行う。
したがって市場へは日高一カ所から出荷する。
三つの倉庫はいずれも物流部が管理し業務を ホンダロジスティクスに委託している。
 ディーラーへの用品の供給は、新車販売 のアフターマーケット向け商品である補修用 部品と販売チャネルが共通していることから、 補修用部品の供給網に相乗りしている。
 補修用部品はホンダの部品供給部門の管 轄下にある。
事故や故障などの突発的な要 因で需要が発生するケースが多く、供給に緊 急を要するため、ホンダでは全国七五カ所に 「HDW」と呼ぶ出先倉庫を設け、ディーラ ーや部品商に迅速に配送できる体制をとって いる。
 出荷頻度の高い部品を中心にHDWに在庫 を置き、受注の翌日午前中にディーラーへ納 める。
HDWに在庫がない商品も、午後三 時半までの受注分については鈴鹿の物流セン ターから当日出荷し、一部地域を除いて翌朝 にHDWへ着荷、HDWで配送便に積み合わ せ昼までにディーラーへ届けられる。
 ホンダアクセスもこのHDWを出先の在庫 拠点として活用し、HDWからディーラーへ 補修用部品との共同配送を実施している。
 新車と一緒に販売するシートカバーなどのカー用 品の出荷管理システムを一新した。
従来は補修用 部品の仕組みに相乗りしていたが、受注から納品 までの日数に余裕がある商品特性を活かし、受注 状況に応じて出荷日を調整するシステムを新たに 開発した。
物量の平準化によってコスト削減が実 現した。
震災時にも計画的な出荷ができた。
情報システム ホンダアクセス カー用品専用の出荷システムを構築 リードタイムの余裕を活かし平準化 41  JUNE 2012  ディーラーから用品の注文を受け在庫を引 き当てて出荷するまでの一連の業務管理にも、 最近までは補修用部品のシステムを使ってい た。
八三年に用品部門が独立したあと、協 力メーカーへの発注・調達には独自のシステ ムを構築したが、それ以外の受発注・出荷に ついては補修用部品のシステムをそのまま使 い続けた。
同じ製品に異なる物流ニーズ  ただし、用品ビジネスの業務プロセスやリ ードタイムは客の購入形態によって異なる。
ホンダアクセスは、新車の販売終了後も中古 車市場で車を購入した客の需要を見込んで三 年間は用品の販売を継続し、さらに用品の販 売を終了した後も最低三年間はアフターサー ビス用の在庫を持っている。
こうした既販車 用のビジネスでは補修用部品と同様の迅速な 供給体制が求められる。
 だが、純正用品メーカーであるホンダア クセスのビジネスで最もウエートが高いのは、 客が新車に装備するために用品を購入するケ ースであり、その場合には必ずしも配送の迅 速性は必要とされない。
 通常、新車を購入する際に客は車といっし ょに用品を注文する。
ただし車と用品では受 注から納品までのリードタイムに開きがある。
車の生産は受注生産に近いため、注文を受け てからメーカーがディーラーへ納めるまで車 種によっては一カ月近くかかることもある。
 これに対し用品は販売予測をもとに見込み 生産を行い、全アイテムの在庫を用意して注 文に応じる体制をとっている。
受注の当日に 日高から出荷し、補修用部品の供給網を使っ て直ちにディーラーへ納品することができる。
 しかし、ディーラーにとっては車と用品 が別々のタイミングで届くのは好ましくない。
ディーラーは車と用品が到着した後で、車に 用品を取り付ける作業を行い、客に車を納め る。
用品だけ先に届けば、かえって車の到着 まで用品を保管しておくスペースが必要にな り、管理も煩雑になる。
 このため、ディーラーは客から用品の注 文を受けてもすぐにメーカーに注文を出さず、 納車のタイミングを見計らってぎりぎりに発 注を行う傾向があった。
注文すれば翌日には 届くという用品の配送体制を逆手に取った格 好だ。
この結果、本来ならば受注から配送ま でに余裕があるはずの新車用まで、既販車用 と同様に受注してから短いリードタイムでデ ィーラーへ届けなければならなかった。
 これを改善するため同社は一〇年以上前に、 新車装備用品だけを対象に専用の受発注シス テムを導入している。
ディーラーが車の契約 と同時に用品の注文を出し、配送日を指定す る仕組みだ。
これなら車の到着前に用品が届 くことがなく、ディーラーは管理しやすい。
 新車用品専用に導入した受発注システムは、 補修用部品の受発注システム(パーツオンラ インシステム)とは受注から在庫引き当てま での仕組みが異なる。
補修用部品のシステム では受注後ただちに在庫引き当てが行われる。
これに対し新車用品専用のシステムではオー ダーを受けた後でしばらく情報をサーバーに 用品ビジネスの特性 お客様 販社 オーダーの 引当 日高 HDW 販社 ツール 新車 購入 用品ビジネス 部品ビジネス 《指定日オーダー》 車輌 オーダー 車輌の納車 日に合致した 引当 受注日当日 15:30迄 引当 当日出荷当日出荷当日出荷 指定日に配送 即日配送 即日 着荷 指定日に お客様単位に 着荷 セット 既販車 用品 補修 部品 パーツオンライン システム ・点検 ・修理 鈴鹿 車両到着に合わせて用品を届ける 新車用品 受発注システム 車輌契約時 用品同時 オーダー JUNE 2012  42 プールしておき、ディーラーの指定する配送 日の一〇日前になったら在庫の引き当てを行 う。
 在庫引き当て後の出荷システムは補修用部 品のシステムをそのまま使う。
既販車用と同 じフローで、午後三時半までに引き当てた分 を日高から当日に出荷し、各地のHDWへ輸 送する。
 九州など遠方のHDWへはトラック便で二 日かかる。
また新車装備用はHDWに着荷後、 ディーラーへ納める前にユーザー別にセット する工程が必要だ。
引き当てるタイミングを 「配送指定日の一〇日前」に設定することで、 一連のリードタイムに余裕を持たせた。
オーダーの中身を見える化  だが、この仕組みを導入した後も、日高で のオペレーションには課題が残った。
在庫引 き当てから配送までの時間に余裕はできたも のの、補修用部品と同じシステムで出荷業務 を行うため「在庫引き当てが済んだらただち に出荷する」のは変わらない。
配送日が一〇 日先の新車装備用品も、緊急性の高い既販 車用品も、倉庫における出荷作業の条件は同 じだった。
 同社は一〇日間というリードタイムを利用 して出荷量をコントロールし、物流を効率化 する方法を模索した。
それには新車装備用品 のビジネスに適した出荷システムを構築する 必要があった。
用品ビジネス仕様の物流管理システム「AW C」と、これと連携して運用するWMSの開 発をスタートした。
 情報システム部の加藤文彦CITブロック 主任は「開発のポイントは必要な情報を倉庫 側で見えるようにして、出荷量を調整したり 計画的に作業ができるようにすることにあっ た」と説明する。
 従来のシステムでは、オーダーの中身が分 からないため、既販車用などの緊急オーダー なのか、指定配送日までに余裕のある新車用 のオーダーなのか判断できず、午後三時半ま でに引き当て処理されたものはすべて当日出 荷していた。
このためその日の出荷量が増え れば、それに合わせてトラック便を増やすし かなかった。
しかも引き当てと同時に出荷指 示が出る仕組みだったため、作業量を事前に 把握することができず、計画的な要員の配置 が困難だった。
 そこで新たに開発した用品独自のシステ ムでは、引き当ての済んだデータをいったん 「AWC」に取り込み、ここで出荷量を調整 して作業計画を立てた上で、倉庫のWMSへ  その契機が五年前に訪れた。
ホンダが補修 用部品の物流再構築に取り組み、その一環で 〇七年六月に鈴鹿に大型物流センターを新設 した。
このことがホンダアクセスに、出荷管 理システム全体の見直しを迫ることになった。
 補修用部品の物流を再構築する狙いは在庫 回転率のアップやリードタイムの短縮にあっ た。
このためホンダはそれまで鈴鹿地区と狭 山地区に分散していた倉庫群を一カ所に集約 し、出荷システムも刷新して出荷の迅速性を より強化した。
 だが、ホンダアクセスにとって不都合なこ とに、刷新された補修用部品のシステムには 新車装備用品のオペレーションに必要な?受 注情報を一定期間ためておく?という機能が なかった。
同社はやむなく新システムへの移 行を断念し、旧システムを使い続けた。
 ところが問題はそれだけでは済まなかった。
従来は日高から至近の狭山地区に補修用部品 の倉庫群があったため、用品を日高からHD Wへ運ぶ際に補修用部品のトラック便に便乗 できた。
倉庫群の集約によって、それができ なくなった。
部品と比べ物量の少ない用品の 単独輸送は効率が悪く、物量の変動も吸収で きない。
運賃単価が上がり物流費が高騰して しまった。
 ここに至り同社は積年の物流課題である用 品独自の出荷システムの構築に正面から取り 組むことを決断する。
〇九年一月に物流部と 情報システム部によるプロジェクトを発足し、 情報システム部 加藤文彦CITブロック主任 43  JUNE 2012  このデータをもとにAWCで当日の方面別 輸送量を予測する。
輸送量が大幅に増えそう なときは、緊急以外のオーダーは無理に出荷 せず、翌日以降へ回して、トラックの増便を 回避する。
逆に少ないときは翌日分を前倒し 出荷する。
翌日以降の作業量もある程度わか るため、倉庫の要員配置を前日に決め最適化 を図る。
 また従来は上位システムからの指示が直接 倉庫へ随時送られてくるため、多いときは一 日に六回も伝票を発行していた。
新システム ではオーダーを?前日までに出荷量が分かる 指定日配送の分、?当日出荷する緊急オー ダーの午前の分、?同午後の分の三つに区分 して一日三回だけ発行する形に改善した。
震災時に対応力を実証  AWCは自社開発。
WMSはパッケージを カスタマイズして日高と飯能の二カ所の倉庫 に導入した。
上位システムとのインタフェー スを重視し、開発工数の比較的少ないパッケ ージを選ぶことで、開発期間とコストを抑え た。
事前のテスト運用と検証を経て、二〇一 一年二月にシステムを本格稼動させた。
 その直後に発生した東日本大震災で、新シ ステムは想定外の事態への対応力をも実証す ることになった。
震災の発生当時、仙台港の モータープールにはホンダ車を含む多くの新 車が待機していた。
そのほとんどが津波で流 された。
システムの稼動前なら、被害にあっ て納車できなくなった車の用品も予定通りに 出荷してしまい、後から回収を行わなければ ならないところだった。
 しかし、新システムでは、用品を装備する 車のデータが紐づけられた受注情報を、上位 システムからAWCに取り込めるようになっ たため、納車できない車の用品をAWCで特 定して出荷を止め、混乱を回避することがで きた。
 震災後に電力会社が実施した計画停電にも 比較的スムーズに対応できた。
計画停電は地 域別に時間帯を分けて実施された。
AWCの サーバーは本社所在地の埼玉県新座市にあり、 WMSを導入した倉庫とは地域が異なる。
こ のためどちらの地域も停電していない時間帯 しかシステムを動かせず、作業時間が著しく 制限された。
日によっては四時間しか作業が できない日もあった。
だが緊急度の高いもの から出荷を優先するなど、計画的に作業を割 り振り、深刻な事態を乗りきった。
 新システムの稼動による出荷量の平準化な どが功を奏し、同社は昨年度、輸送費と荷役 費を合わせて従来比で六%のコスト削減を実 現した。
引き続き同社は、出荷頻度や在庫 日数などのデータを分析管理するシステムの 開発を進めている。
今年六月には稼動する予 定だ。
物流部では「今後、管理データを活用 して継続的な効率化に取り組んでいきたい」 とコメントしている。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 作業指示を出す仕組みにした。
 受注・引き当てまでは従来通りホンダのホ ストコンピューターで処理する。
新車用の引 き当てを配送日の一〇日前に行うルールも以 前と変わらないが、作業の開始前にホストか らの指示データをAWCで受け、この時点で オーダーの中身や緊急度、出荷方面などを把 握できるようにした。
指定日を認識した計画出荷・出荷平準化 従来新 パーツホスト 伝票がすべて発行され無用な出荷 (オーダーも地域も区別できない) オーダー締め15:30 輸送出発 17:30〜 輸送出発 17:30〜 翌日以降 前日に作業量 把握不可 全て当日出荷 急がないオーダー 含む 倉庫作業 8:30〜17:30 倉庫作業8:30〜17:30 指定日、地域が確認できない AWC 出荷指示保留 パーツホスト 出荷手番に 達したオーダー が伝票指示 物量 コントロール可 前倒し作業可 急がないオーダー含む 急がない 急ぐオーダーのみ指示 オーダー オーダー締め 15:30 出荷手番設定 翌日以降 物量把握 条件を特定して 保留 条件指定の 出荷指示

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