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佐高 信
経済評論家
JUNE 2012 64
『サイゾー』の五月号に、タブーなき反権力
雑誌だった『噂の真相』元編集長の岡留安則
と元副編集長の川端幹人の対談が載っている。
伝説の『噂の真相』も休刊してもう八年だが、
まず、川端が、
「フリーで仕事をしてみると、大手マスコミ
の連中って想像以上に自己保身ばかりで、記
事を抑えることしかしないんですよ。 でも、
岡留さんは逆で、僕らがリスクを怖がって相
談すると、必ず『大丈夫』と背中を押してく
れた。 訴えられても絶対、部下を責めなかった。
マスコミのひどい状況を見るにつけ、岡留さ
んのすごさを再認識したというか‥‥」
と切り出すと、岡留は、
「『噂真』は創刊時から、大手マスコミが書
けないタブーに挑戦することを大前提として
いたわけだから。 その点は絶対ひよるわけに
はいかなかった。 実際、タブーのほとんどに
踏み込んだという自負がある。 皇室、同和利
権、検察、電通、文壇、バーニングやジャニ
ーズ‥‥。 東京電力のメディア支配や原発の
問題だって特集していたしね」
と応じている。
岡留は、御用化がいくところまでいった新
聞やテレビには「怒りを通り越して殺意すら感
じる」というが、次の川端の指摘も重要だろう。
「原発事故から一年たった今も、新聞・テ
レビのやり口は全く変わってないですからね。
最近、あぜんとしたのはがれきの広域処理受
け入れをめぐる報道。 がれきは放射能の危険
性以前に、被災地で集中処理するほうが経
済合理性がある。 政府が広域処理を叫ぶのは、
自分たちの初動ミスで復旧が遅れていること
を隠すため、それと、産廃利権を全国にばら
まくためですよ。 ところが、テレビや新聞は
政府の情報操作に乗っかって広域処理に協力
しないのは非国民であるかのようなキャンペ
ーンを続けている。 政府から数千万円ものC
Mや全面広告をもらって‥‥」
川端が書いた『タブーの正体!』(ちくま
新書)に、電力会社の二〇〇九年度の広告宣
伝費が載っている。
東京電力 二四三億五七〇〇万円
関西電力 一九八億七一〇〇万円
東北電力 八六億七〇〇万円
九州電力 七九億八六〇〇万円
中部電力 六八億二六〇〇万円
北陸電力 五七億一五〇〇万円
中国電力 五一億八七〇〇万円
北海道電力 四七億三二〇〇万円
四国電力 三一億三一〇〇万円
沖縄電力 五億一五〇〇万円
電源開発 一五億二七〇〇万円
そもそも、地域独占企業の電力会社は競争
相手がいないのだから宣伝する必要などない
はずなのに、これだけ巨額のカネを使ってい
るのは、すべて原発の安全神話をつくるため
だったと言っていいだろう。 原発のない沖縄
電力のそれがヒトケタ少ないのは、それを証
明している。
この他にも数多くの関連団体が広報予算
を持っており、役所関係のそれを加えれ
ば、原子力・電力業界の広告宣伝費は軽
く一〇〇〇億を超える、と川端は推測する。
「パナソニックの二〇〇九年度広告宣伝費が
七七一億円、トヨタが同五〇七億円だから、
この金額がいかに大きいものかがわかるだろう」
というのである。
だから、九州電力のやらせメール事件にし
ても発覚前に複数のメディアに内部告発が寄
せられていたのに、取り上げたのは『赤旗』
だけだった。 川端によれば『赤旗』が記事に
した後でさえ、九電に否定されると、一切報
道しようとしなかったという。 結局、メディ
アが取り上げたのは、国会で問題となり、九
電が事実を認めた後だった。
川端はメディアに対し、「彼らは不正追及ど
ころか、ぎりぎりまで電力会社を守ろうとし
ていた」と怒っている。
安全神話普及のためばらまかれる広告宣伝費
原発事故後も変わらない新聞・テレビの報道
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