2012年8月号
特集
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第3部 ポスト日雇い派遣のビジネスモデル
AUGUST 2012 24
日雇い派遣事業者に二つの選択肢
六月二七日、人材派遣会社を対象とした「物流人
材ビジネス研究会」が都内で開催された。
一〇月に 控えた改正派遣法の施行に対し、派遣会社としてど のような打ち手があるのかを検討するのが主な目的 だ。
研究会には定員の二倍となる二〇人の派遣会社 の経営者や社員が詰めかけた。
参加者の一人は言う。
「当社は売り上げの大半を物流会社向けの日雇い派 遣事業に頼っているが、それが法改正によって禁止 になる。
社内で対応を検討しているが、今のところ 有効な手段を見出せていない。
同業他社の意見を聞 ける良い機会だと思って参加した」 同じ悩みを抱えている派遣会社は全国に存在する。
日雇い派遣事業の比率が小さい場合には思い切って 撤退してしまうのも手だが、派遣会社の多くはそれ では経営が成り立たなくなってしまう。
研究会を開 催した人材ビジネス総合研究所の栃本浩昭代表は次 のように指摘する。
「結論から言えば、日雇い派遣事業の代替策は二つ に絞られる。
日々紹介を入口に、その後の業務管理 代行までを請け負うか、もしくは物流業務そのもの を請け負うかだ。
つまり、雇用管理代行のプロにな るか現場管理のプロになるか、どちらかしか道はな い。
派遣会社によってどちらが適しているかは異な る。
短期的、中長期的視野に立って選択するべきだ」 日雇い派遣最大手のフルキャストホールディングス は、今回の法改正の影響をまともに受ける。
二〇一一 年九月期の連結売上三四三億一六〇〇万円のうち、 短期業務支援事業が二六八億七〇〇〇万円を占めて いる。
この短期業務支援事業のうち、七五%程度が 日雇い派遣事業だ。
この事態に対し、フルキャストは日雇い派遣からの 完全脱却を決断。
メーン事業を短期の人材紹介業お よび雇用管理代行にシフトする方針を固めた。
日々 紹介と雇用管理代行をセットにすることで、顧客企 業に日雇い派遣と同等の機能を提供する。
同社の強 みである人員動員力と営業力を最も活かせる領域を 主戦場に選んだ。
既に今年四月から顧客企業に対するアナウンスを開 始。
五月には三億円を投じて開発した新システムが完 成するなど、準備は整っている。
八月からは一部の 顧客に対して、新サービスの提供をスタートさせる。
SBSホールディングス傘下の人材派遣会社SB Sスタッフは、売上高の九割近くを日雇い派遣事業 が占めている。
派遣法の改正議論が高まった〇九年 から社内にプロジェクトチームを立ち上げ、日雇い派 遣に代わる新たな事業展開を模索してきた。
そこで得た結論は、フルキャストと同様、顧客から のニーズが最も強かった日々紹介と雇用管理代行を事 業の中心に据えるというものだった。
ただし、サー ビスを日々紹介に絞るのではなく、幅広いメニューを 用意して顧客企業の要望に柔軟に応えていく姿勢だ。
その理由を、SBSスタッフの古谷茂社長は次のよ うに説明する。
「顧客の置かれている状況は一社ごとに異なる。
日々 紹介ではなく請負サービスの方が馴染む場合もある だろうし、『例外規定』を使って従来通り日雇い派遣 サービスを提供した方が良いケースもある。
当社のス タンスを単一にしてしまうと、きめ細やかな対応が難 しくなる。
『色がない』という意見もあるかもしれな いが、あらゆるメニューを揃えて顧客に貢献する。
そ の分、当社の経営は複雑化して難しくなるが、それ が使命だと認識している」 日雇い派遣の禁止が、物流現場へのスポット派遣を メーンにしてきた人材派遣会社に大幅な業態転換を迫っ ている。
当面は日々紹介に移行して雇用管理代行にソ リューションを拡大するか、あるいは業務請負会社とし て物流業界に参入するか、大きく2 つの選択肢がある。
(石鍋 圭) ポスト日雇い派遣のビジネスモデル 3 物流現場のコンプライアンス 特 集 日雇い派遣禁止 25 AUGUST 2012 今回の日雇い派遣禁止には例外規定が設けられて おり、これに当てはまる労働者は従来通り日雇い派 遣として働くことができる。
具体的には、六〇歳以 上の高齢者や昼間学生、副業の場合、主たる生計維 持者でない者などがそれに当たる。
このうち、副業の場合と主たる生計維持者でない者 には、五〇〇万円という収入要件が設定されている。
例えば主たる生計維持者でない主婦の場合、世帯収 入が五〇〇万円を超えていれば日雇い派遣として働く ことができる。
同じ主婦でも、世帯収入が五〇〇万 円を下回っていれば日雇い派遣として働くことはで きない。
SBSスタッフに登録している労働者の中心は主 婦層だ。
どれだけの主婦が収入要件を満たしている かで、SBSスタッフの今後の舵取りも変わってくる。
そのため同社では、登録しているスタッフのうち、ど の程度の人数が日雇い派遣としての働き方を継続で きるか調査を急いでいる。
スポット業務請負も登場 厳しい環境に対応するため、今後はこれまで以上 にグループシナジーを高めていく方針も明らかにして いる。
SBSホールディングスにはティーエルロジコ ム(TLロジコム)やフーズレックといった物流企業 が存在する。
その物流インフラを、SBSスタッフの 武器として活用する。
「例えば突発的に大型の請負案件が舞い込んだ場合、 一般的な人材会社は倉庫やトラックをすぐに準備でき ずに受託できないケースが多いが、当社の場合はTL ロジコムなどグループ企業とタッグを組むことができ る。
これは物流系の人材会社ならではの強みだ」と 古谷社長は強調する。
関東エリアを基盤とするマックスサポートは、日々 紹介や雇用管理代行サービスではなく、業務請負に舵 を切る。
「短期」「スピード」「マンパワー」をスローガ ンとする同社は、これまで物流業界向けの波動調整 機能をドメインとしてきた。
売上高の約一五億円のう ち、およそ六割を日雇い派遣事業が占めている。
マックスサポートがポスト日雇い派遣に位置付けた のは、超短期型の業務請負だ。
最短一日からでも業 務を請け負う。
「スポットアウトソーシング」と呼んで いる。
その特徴は、どんなに短期の仕事であっても 現場のリーダーには必ず正社員を起用すること。
現場 の指揮命令者を正社員で固めることで業務品質を確 保し、懸念されるコンプライアンスリスクに備える。
しかし、一定期間の請負契約の裏付けがないまま 正社員を抱えれば、大きなリスクになる。
一日単位 の業務請負で、どう固定費を吸収するのか。
同社の 梅田和督社長は次のように説明する。
「当社は設立当初から短期の仕事を中心に受けてき た。
そのために、今では短期の仕事が年間途切れる ことなく繋がっている。
投入する現場を次から次へ と変えていくことでスタッフを遊ばせないで済む。
つ まりクライアントにとっては短期の仕事でも、当社な ら継続的な仕事の一部として扱うことができる」 この仕組みには別のメリットもある。
一人ひとり の正社員は多くの現場を経験することで、様々な業 態の物流作業に精通することになる。
そこで得られ た知見は、他の現場でも活かされる。
その結果とし て、全体の作業効率が上がるという相乗効果がもた らされるという。
同社には現在、現場リーダーとな る正社員が約二〇人在籍しているが、近いうちに倍 の四〇人程度まで増やし、この短期業務請負を積極 的に打ち出していく方針だ。
SBSスタッフの 古谷茂社長 物流人材ビジネス研究会には20人の派遣会社関係者が参加。
互いの意見を交換し合った
一〇月に 控えた改正派遣法の施行に対し、派遣会社としてど のような打ち手があるのかを検討するのが主な目的 だ。
研究会には定員の二倍となる二〇人の派遣会社 の経営者や社員が詰めかけた。
参加者の一人は言う。
「当社は売り上げの大半を物流会社向けの日雇い派 遣事業に頼っているが、それが法改正によって禁止 になる。
社内で対応を検討しているが、今のところ 有効な手段を見出せていない。
同業他社の意見を聞 ける良い機会だと思って参加した」 同じ悩みを抱えている派遣会社は全国に存在する。
日雇い派遣事業の比率が小さい場合には思い切って 撤退してしまうのも手だが、派遣会社の多くはそれ では経営が成り立たなくなってしまう。
研究会を開 催した人材ビジネス総合研究所の栃本浩昭代表は次 のように指摘する。
「結論から言えば、日雇い派遣事業の代替策は二つ に絞られる。
日々紹介を入口に、その後の業務管理 代行までを請け負うか、もしくは物流業務そのもの を請け負うかだ。
つまり、雇用管理代行のプロにな るか現場管理のプロになるか、どちらかしか道はな い。
派遣会社によってどちらが適しているかは異な る。
短期的、中長期的視野に立って選択するべきだ」 日雇い派遣最大手のフルキャストホールディングス は、今回の法改正の影響をまともに受ける。
二〇一一 年九月期の連結売上三四三億一六〇〇万円のうち、 短期業務支援事業が二六八億七〇〇〇万円を占めて いる。
この短期業務支援事業のうち、七五%程度が 日雇い派遣事業だ。
この事態に対し、フルキャストは日雇い派遣からの 完全脱却を決断。
メーン事業を短期の人材紹介業お よび雇用管理代行にシフトする方針を固めた。
日々 紹介と雇用管理代行をセットにすることで、顧客企 業に日雇い派遣と同等の機能を提供する。
同社の強 みである人員動員力と営業力を最も活かせる領域を 主戦場に選んだ。
既に今年四月から顧客企業に対するアナウンスを開 始。
五月には三億円を投じて開発した新システムが完 成するなど、準備は整っている。
八月からは一部の 顧客に対して、新サービスの提供をスタートさせる。
SBSホールディングス傘下の人材派遣会社SB Sスタッフは、売上高の九割近くを日雇い派遣事業 が占めている。
派遣法の改正議論が高まった〇九年 から社内にプロジェクトチームを立ち上げ、日雇い派 遣に代わる新たな事業展開を模索してきた。
そこで得た結論は、フルキャストと同様、顧客から のニーズが最も強かった日々紹介と雇用管理代行を事 業の中心に据えるというものだった。
ただし、サー ビスを日々紹介に絞るのではなく、幅広いメニューを 用意して顧客企業の要望に柔軟に応えていく姿勢だ。
その理由を、SBSスタッフの古谷茂社長は次のよ うに説明する。
「顧客の置かれている状況は一社ごとに異なる。
日々 紹介ではなく請負サービスの方が馴染む場合もある だろうし、『例外規定』を使って従来通り日雇い派遣 サービスを提供した方が良いケースもある。
当社のス タンスを単一にしてしまうと、きめ細やかな対応が難 しくなる。
『色がない』という意見もあるかもしれな いが、あらゆるメニューを揃えて顧客に貢献する。
そ の分、当社の経営は複雑化して難しくなるが、それ が使命だと認識している」 日雇い派遣の禁止が、物流現場へのスポット派遣を メーンにしてきた人材派遣会社に大幅な業態転換を迫っ ている。
当面は日々紹介に移行して雇用管理代行にソ リューションを拡大するか、あるいは業務請負会社とし て物流業界に参入するか、大きく2 つの選択肢がある。
(石鍋 圭) ポスト日雇い派遣のビジネスモデル 3 物流現場のコンプライアンス 特 集 日雇い派遣禁止 25 AUGUST 2012 今回の日雇い派遣禁止には例外規定が設けられて おり、これに当てはまる労働者は従来通り日雇い派 遣として働くことができる。
具体的には、六〇歳以 上の高齢者や昼間学生、副業の場合、主たる生計維 持者でない者などがそれに当たる。
このうち、副業の場合と主たる生計維持者でない者 には、五〇〇万円という収入要件が設定されている。
例えば主たる生計維持者でない主婦の場合、世帯収 入が五〇〇万円を超えていれば日雇い派遣として働く ことができる。
同じ主婦でも、世帯収入が五〇〇万 円を下回っていれば日雇い派遣として働くことはで きない。
SBSスタッフに登録している労働者の中心は主 婦層だ。
どれだけの主婦が収入要件を満たしている かで、SBSスタッフの今後の舵取りも変わってくる。
そのため同社では、登録しているスタッフのうち、ど の程度の人数が日雇い派遣としての働き方を継続で きるか調査を急いでいる。
スポット業務請負も登場 厳しい環境に対応するため、今後はこれまで以上 にグループシナジーを高めていく方針も明らかにして いる。
SBSホールディングスにはティーエルロジコ ム(TLロジコム)やフーズレックといった物流企業 が存在する。
その物流インフラを、SBSスタッフの 武器として活用する。
「例えば突発的に大型の請負案件が舞い込んだ場合、 一般的な人材会社は倉庫やトラックをすぐに準備でき ずに受託できないケースが多いが、当社の場合はTL ロジコムなどグループ企業とタッグを組むことができ る。
これは物流系の人材会社ならではの強みだ」と 古谷社長は強調する。
関東エリアを基盤とするマックスサポートは、日々 紹介や雇用管理代行サービスではなく、業務請負に舵 を切る。
「短期」「スピード」「マンパワー」をスローガ ンとする同社は、これまで物流業界向けの波動調整 機能をドメインとしてきた。
売上高の約一五億円のう ち、およそ六割を日雇い派遣事業が占めている。
マックスサポートがポスト日雇い派遣に位置付けた のは、超短期型の業務請負だ。
最短一日からでも業 務を請け負う。
「スポットアウトソーシング」と呼んで いる。
その特徴は、どんなに短期の仕事であっても 現場のリーダーには必ず正社員を起用すること。
現場 の指揮命令者を正社員で固めることで業務品質を確 保し、懸念されるコンプライアンスリスクに備える。
しかし、一定期間の請負契約の裏付けがないまま 正社員を抱えれば、大きなリスクになる。
一日単位 の業務請負で、どう固定費を吸収するのか。
同社の 梅田和督社長は次のように説明する。
「当社は設立当初から短期の仕事を中心に受けてき た。
そのために、今では短期の仕事が年間途切れる ことなく繋がっている。
投入する現場を次から次へ と変えていくことでスタッフを遊ばせないで済む。
つ まりクライアントにとっては短期の仕事でも、当社な ら継続的な仕事の一部として扱うことができる」 この仕組みには別のメリットもある。
一人ひとり の正社員は多くの現場を経験することで、様々な業 態の物流作業に精通することになる。
そこで得られ た知見は、他の現場でも活かされる。
その結果とし て、全体の作業効率が上がるという相乗効果がもた らされるという。
同社には現在、現場リーダーとな る正社員が約二〇人在籍しているが、近いうちに倍 の四〇人程度まで増やし、この短期業務請負を積極 的に打ち出していく方針だ。
SBSスタッフの 古谷茂社長 物流人材ビジネス研究会には20人の派遣会社関係者が参加。
互いの意見を交換し合った
