2012年8月号
特集
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第5部 レイバーマネジメントで差別化する 労働規制強化を差別化の機会に──SGホールディングスグループ
AUGUST 2012 34
「作業工程計画」で複数の現場を連携
SGホールディングスグループで3PL事業など
を手がける佐川グローバルロジスティクス(SGL)
は「波動対応力」を従来から強みの一つにしてき
た。
繁忙期だけ契約面積と作業人員を増やす、ス ポット的に一週間だけ契約するといった、荷主のニ ーズに合わせた柔軟な対応を売りにしている。
同社は全国六四カ所に「SRC(佐川流通セン ター)」および事業所を展開している。
その多くは 数社〜二〇社程度の荷主が同居するマルチテナント 型の汎用センターだ。
アパレル、電子部品、医療機 器など業種は様々で、荷主によって繁忙期や曜日、 時間帯の波動が異なるため、同じ拠点内で作業員を 融通できる。
「チーフ」もしくは「主任」と呼ばれる現場リー ダーが、波動対応のキーパーソンだ。
センターに入 居する荷主には、それぞれ一人もしくは二人のチー フを現場責任者として配置している。
各チーフは自 分の受け持つ現場の日々の作業量を予測して、「作 業工程計画」を策定する役割を担う。
それを元に上 長の係長職が拠点内で人員を調整する。
拠点内だけでは人手が足りない場合には、課長 級の事業所長が近隣の拠点に作業員の応援を依頼す る。
全国を一〇ブロックに分けた同社の各支社はそ れぞれエリア内の物流適地に複数の拠点を展開して いる。
3PL事業を面で押さえる体制が、柔軟なレ イバーコントロールを可能にしている。
ただし、肝心の作業量の予測精度が低ければ、そ のメリットを活かせない。
そのため現場で作成する 作業工程計画のレベルアップを本社主導で進めてき た。
二〇一〇年に は、それまで現 場ごとにバラツキ があった作業工 程計画のフォー マットを統一し、 その運用を標準化した。
同社の森田崇史営業部ロ ジスティクスエンジニアリング部門担当部長は「ハ イレベルな管理を行っている現場に合わせる形で全 体の底上げを図っている」という。
これに合わせてチーフ・主任クラスを主な対象と する社内の「物流技術研修」で、関連データの取り 扱いや、効率の良い計画の策定方法、現場での運 用方法、適切なKPIの割り出し方などを指導して いる。
具体的な計画の策定手順は次の通り。
まず荷主か らの情報提供や実績から入出荷計画を立てる。
それ を「入荷検品」、「棚入れ」、「ピッキング」、「出荷検 品」などの工程別の作業量に分解して「?生産計画 表」を策定する。
各工程の作業量を「標準生産性」 で割れば、その日に必要な作業人時が算出できる。
次に生産計画表を各工程・エリア別の作業時間帯を 示した「?作業進捗表」に落とし込む。
「?工程分 配表」で、それを作業員一人ひとりの時間帯別の 仕事を割り振る。
この三つの表を現場でもホワイトボードに大きく 張り出す。
?工程分配表を見れば、「誰が」、「どの 現場のどの作業を」、「何時から何時までやる」の か一目瞭然だ。
その日に作業をする一人ひとりの個 人名ごとに、割り振られた作業内容・場所・時間 がきれいに色分けされている。
?作業進捗表には一時間単位で実績を記録する。
労働規制強化を差別化の機会に ──SGホールディングスグループ 3PL 事業では人材派遣会社と同様の機能を社内に構築。
作業量の予測精度を向上させて、波動対応力で差別化を図っ ている。
宅配便事業向けにはグループ内に業務請負会社を設 立。
業界に先駆けて直接雇用化を進め、そのノウハウを外販 することで新たな収益源に育てる。
(渡邉一樹、石鍋 圭) 佐川グローバルロジステ ィクスの森田崇史担当 部長 5 レイバーマネジメントで差別化する 物流現場のコンプライアンス 特 集 日雇い派遣禁止 35 AUGUST 2012 予定より遅れている工程があれば、余裕のある工程 から人を振り分ける。
?生産計画表では予測・実 績管理を行う。
予測と実績に違いが出ている場合に は、その原因を即座に分析して課題を見つけ、PD CAサイクルを回していく。
新フォーマットの運用開始から二年あまりが経過 し、実績データも蓄積されてきた。
それでも森田担 当部長は「まだまだ荒削りな部分があり、さらに 精度を上げていく必要がある。
労働集約型の物流 業にとって波動対応は生命線。
今後も継続的に改善 に取り組んでいく」という。
一方、派遣問題に関しては「抵触日問題」が浮 上した〇九年からグループを挙げて直接雇用への切 り替えを進めてきた。
そのためにSGLでは人材 派遣会社の出身者を担当者に据えて、パートの採用 や労務管理機能を社内に取り込んだ。
重点エリアで は駅前に独自のアルバイトセンターを設置するなど、 各エリアの採用ニーズと雇用環境を考慮した柔軟な 対応をとっている。
物流人材ビジネスを新たな収益源に 宅配便事業向けには昨年四月、業務請負会社と してSGフィルダーを設立している。
佐川急便が関 東、関西、中部エリアに展開する二一〇拠点の庫内 業務を、SGフィルダーが請け負っている。
同エリ アで作業に当たるスタッフ数は総勢一万二〇〇〇人 にのぼる。
〇九年当初はそのうち約一万人が派遣社 員という状況だった。
それが現在ではほぼ一〇〇% がSGフィルダーの自社スタッフに切り替わった。
直接雇用の手順は、まずその現場で付き合いのあ る派遣会社に方針の転換を通達し、派遣スタッフに 待遇などを説明した上でSGフィルダーへの転籍を 打診する。
もちろん全員が転籍に応じてくれるわけ ではない。
条件面等での折り合いが付かず、現場を 去って行くスタッフも必ず一定数存在する。
そのた め、転籍の呼びかけと同時に、新規の庫内スタッフ を募集する。
どの程度の派遣スタッフが転籍に応じてくれるの かは直前まで不透明だ。
転籍に期待し過ぎて募集人 員を抑えれば、結果的に人員が足りずに現場が回ら なくなる可能性がある。
それを恐れて新規の募集を 採りすぎれば、余 剰人員を抱え込み、 大きなコスト増を 招くことにもなり かねない。
その点で、同じ エリアに多数の拠点を展開していることが功を奏し た。
一つのセンターで直接雇用化を進めるとなれば 過不足のない人員調整が必要条件になる。
しかし 拠点が複数あればスタッフを融通し合える。
エリア 単位での展開がここでも活きた。
直接雇用化の効果はコンプライアンスの強化だけ ではなかった。
戦力の大半が派遣スタッフから自社 パートに変わることで作業生産性が向上。
請負単価 を一%値下げすることに成功した。
グループ全体で は数億円規模のメリットが出た模様だ。
実はSGフィルダーを設立する以前の〇九年当初 は、SGホールディングスグループで社員向けの保 険業務や出張手配などを行っている佐川アドバンス が直接雇用化の窓口だった。
その業務請負事業を移 管するかたちでSGフィルダーを発足させた。
その 目的をSGフィルダーの道上良司社長は次のように 説明する。
「大きくは二つ。
一つはグループの人材調達や人 材マネジメントを当社に集約することで、効率化を 達成すること。
もう一つは人材アウトソーシングサ ービスを外部に提供していくことで、グループにと っての新たな収益源を構築することだ」。
物流業界の動きに先駆けて現場スタッフの自社化 を進めてきたのも、それらを実現するための第一ス テップという位置付けだ。
グループの直接雇用化に はメドが付いたことから、今後は積極的に外部顧客 を取り込んでいく。
道上社長は「外部顧客の倉庫の 近隣には、当社が請け負っている佐川急便の拠点が 高い確率で存在する。
社内の自社化を進めたときと 同様、人員を融通し合うことで拠点の立ち上げや波 動に対応することができる。
これは大きな強みだ」 と自信を持っている。
SGフィルダーの 道上良司社長 写真左から「?生産計画表」、「?作業進捗表」、「?工程分配表」を現場に 大きく貼り出して、日々のオペレーションを管理している
繁忙期だけ契約面積と作業人員を増やす、ス ポット的に一週間だけ契約するといった、荷主のニ ーズに合わせた柔軟な対応を売りにしている。
同社は全国六四カ所に「SRC(佐川流通セン ター)」および事業所を展開している。
その多くは 数社〜二〇社程度の荷主が同居するマルチテナント 型の汎用センターだ。
アパレル、電子部品、医療機 器など業種は様々で、荷主によって繁忙期や曜日、 時間帯の波動が異なるため、同じ拠点内で作業員を 融通できる。
「チーフ」もしくは「主任」と呼ばれる現場リー ダーが、波動対応のキーパーソンだ。
センターに入 居する荷主には、それぞれ一人もしくは二人のチー フを現場責任者として配置している。
各チーフは自 分の受け持つ現場の日々の作業量を予測して、「作 業工程計画」を策定する役割を担う。
それを元に上 長の係長職が拠点内で人員を調整する。
拠点内だけでは人手が足りない場合には、課長 級の事業所長が近隣の拠点に作業員の応援を依頼す る。
全国を一〇ブロックに分けた同社の各支社はそ れぞれエリア内の物流適地に複数の拠点を展開して いる。
3PL事業を面で押さえる体制が、柔軟なレ イバーコントロールを可能にしている。
ただし、肝心の作業量の予測精度が低ければ、そ のメリットを活かせない。
そのため現場で作成する 作業工程計画のレベルアップを本社主導で進めてき た。
二〇一〇年に は、それまで現 場ごとにバラツキ があった作業工 程計画のフォー マットを統一し、 その運用を標準化した。
同社の森田崇史営業部ロ ジスティクスエンジニアリング部門担当部長は「ハ イレベルな管理を行っている現場に合わせる形で全 体の底上げを図っている」という。
これに合わせてチーフ・主任クラスを主な対象と する社内の「物流技術研修」で、関連データの取り 扱いや、効率の良い計画の策定方法、現場での運 用方法、適切なKPIの割り出し方などを指導して いる。
具体的な計画の策定手順は次の通り。
まず荷主か らの情報提供や実績から入出荷計画を立てる。
それ を「入荷検品」、「棚入れ」、「ピッキング」、「出荷検 品」などの工程別の作業量に分解して「?生産計画 表」を策定する。
各工程の作業量を「標準生産性」 で割れば、その日に必要な作業人時が算出できる。
次に生産計画表を各工程・エリア別の作業時間帯を 示した「?作業進捗表」に落とし込む。
「?工程分 配表」で、それを作業員一人ひとりの時間帯別の 仕事を割り振る。
この三つの表を現場でもホワイトボードに大きく 張り出す。
?工程分配表を見れば、「誰が」、「どの 現場のどの作業を」、「何時から何時までやる」の か一目瞭然だ。
その日に作業をする一人ひとりの個 人名ごとに、割り振られた作業内容・場所・時間 がきれいに色分けされている。
?作業進捗表には一時間単位で実績を記録する。
労働規制強化を差別化の機会に ──SGホールディングスグループ 3PL 事業では人材派遣会社と同様の機能を社内に構築。
作業量の予測精度を向上させて、波動対応力で差別化を図っ ている。
宅配便事業向けにはグループ内に業務請負会社を設 立。
業界に先駆けて直接雇用化を進め、そのノウハウを外販 することで新たな収益源に育てる。
(渡邉一樹、石鍋 圭) 佐川グローバルロジステ ィクスの森田崇史担当 部長 5 レイバーマネジメントで差別化する 物流現場のコンプライアンス 特 集 日雇い派遣禁止 35 AUGUST 2012 予定より遅れている工程があれば、余裕のある工程 から人を振り分ける。
?生産計画表では予測・実 績管理を行う。
予測と実績に違いが出ている場合に は、その原因を即座に分析して課題を見つけ、PD CAサイクルを回していく。
新フォーマットの運用開始から二年あまりが経過 し、実績データも蓄積されてきた。
それでも森田担 当部長は「まだまだ荒削りな部分があり、さらに 精度を上げていく必要がある。
労働集約型の物流 業にとって波動対応は生命線。
今後も継続的に改善 に取り組んでいく」という。
一方、派遣問題に関しては「抵触日問題」が浮 上した〇九年からグループを挙げて直接雇用への切 り替えを進めてきた。
そのためにSGLでは人材 派遣会社の出身者を担当者に据えて、パートの採用 や労務管理機能を社内に取り込んだ。
重点エリアで は駅前に独自のアルバイトセンターを設置するなど、 各エリアの採用ニーズと雇用環境を考慮した柔軟な 対応をとっている。
物流人材ビジネスを新たな収益源に 宅配便事業向けには昨年四月、業務請負会社と してSGフィルダーを設立している。
佐川急便が関 東、関西、中部エリアに展開する二一〇拠点の庫内 業務を、SGフィルダーが請け負っている。
同エリ アで作業に当たるスタッフ数は総勢一万二〇〇〇人 にのぼる。
〇九年当初はそのうち約一万人が派遣社 員という状況だった。
それが現在ではほぼ一〇〇% がSGフィルダーの自社スタッフに切り替わった。
直接雇用の手順は、まずその現場で付き合いのあ る派遣会社に方針の転換を通達し、派遣スタッフに 待遇などを説明した上でSGフィルダーへの転籍を 打診する。
もちろん全員が転籍に応じてくれるわけ ではない。
条件面等での折り合いが付かず、現場を 去って行くスタッフも必ず一定数存在する。
そのた め、転籍の呼びかけと同時に、新規の庫内スタッフ を募集する。
どの程度の派遣スタッフが転籍に応じてくれるの かは直前まで不透明だ。
転籍に期待し過ぎて募集人 員を抑えれば、結果的に人員が足りずに現場が回ら なくなる可能性がある。
それを恐れて新規の募集を 採りすぎれば、余 剰人員を抱え込み、 大きなコスト増を 招くことにもなり かねない。
その点で、同じ エリアに多数の拠点を展開していることが功を奏し た。
一つのセンターで直接雇用化を進めるとなれば 過不足のない人員調整が必要条件になる。
しかし 拠点が複数あればスタッフを融通し合える。
エリア 単位での展開がここでも活きた。
直接雇用化の効果はコンプライアンスの強化だけ ではなかった。
戦力の大半が派遣スタッフから自社 パートに変わることで作業生産性が向上。
請負単価 を一%値下げすることに成功した。
グループ全体で は数億円規模のメリットが出た模様だ。
実はSGフィルダーを設立する以前の〇九年当初 は、SGホールディングスグループで社員向けの保 険業務や出張手配などを行っている佐川アドバンス が直接雇用化の窓口だった。
その業務請負事業を移 管するかたちでSGフィルダーを発足させた。
その 目的をSGフィルダーの道上良司社長は次のように 説明する。
「大きくは二つ。
一つはグループの人材調達や人 材マネジメントを当社に集約することで、効率化を 達成すること。
もう一つは人材アウトソーシングサ ービスを外部に提供していくことで、グループにと っての新たな収益源を構築することだ」。
物流業界の動きに先駆けて現場スタッフの自社化 を進めてきたのも、それらを実現するための第一ス テップという位置付けだ。
グループの直接雇用化に はメドが付いたことから、今後は積極的に外部顧客 を取り込んでいく。
道上社長は「外部顧客の倉庫の 近隣には、当社が請け負っている佐川急便の拠点が 高い確率で存在する。
社内の自社化を進めたときと 同様、人員を融通し合うことで拠点の立ち上げや波 動に対応することができる。
これは大きな強みだ」 と自信を持っている。
SGフィルダーの 道上良司社長 写真左から「?生産計画表」、「?作業進捗表」、「?工程分配表」を現場に 大きく貼り出して、日々のオペレーションを管理している
