{literal} {/literal}

2012年8月号
ケース

富士通フロンテック SCM 国内外の工場で受注〜出荷を統合管理協力会社ともリアルタイムで情報共有

AUGUST 2012  46 バッチ処理の情報連携が制約に  富士通フロンテックは、富士通グループに 所属する東証二部上場の電子機器メーカーだ。
金融機関向けのATMや流通業向けPOS端 末、ATMに搭載するメカユニットなどを新 潟工場、およびフィリピン・中国・北米の海 外工場で受注生産している。
 四年前、同社は受注から計画・調達・製 造・出荷に至る全てのプロセスをタイムラグな しに一気通貫で管理する統合SCMシステム 「iTOS」を新潟工場に導入し、業務の大 幅なスピードアップと効率化を実現した。
 それまでは各プロセスを担当する部門ごと に、営業系・受注出荷系・生産管理系(製品 群別に三つ)・受け入れ検査系・部品倉庫管 理系・製造工程管理系の、合わせて八つのシ ステムがあり、各々のシステムを連携させる ことで一連の業務を管理していた。
 営業部門が受注情報を営業系システムに入 力すると、受注出荷系システムで情報を処理 し、これを生産管理系システムに取り込んで 生産計画を立案。
どのラインでいつ何をいく つ作るという「小日程計画」を作成し、生産 に必要な部品の所要量を算出する。
 それを元に在庫の有無や手配状況を確認し、 部品倉庫に在庫のないものや手配の済んでい ないものは、この時点でサプライヤーに発注。
その後の部品の受け入れ・入庫・製造・出荷 の業務についても、それぞれのシステム間で 情報のキャッチボールを繰り返しながら処理 する仕組みだ。
 システムの連携は原則として一日一回のバ ッチ処理で、情報伝達のスピードが遅かった。
サプライヤーに対する発注数量が確定するま でに最大で十三日。
さらにサプライヤーから 発注数量に対する納期の回答を得て、受注し た商品の納期を営業に対して回答できるまで に最大で一四日もかかっていた。
顧客のオー ダーに変更があっても迅速に対応することが できず、その結果として部品の過剰在庫や欠 品を起こしやすかった。
 また各システムのサーバーがそれぞれデータ ベースを持ってマスター管理やステータス管理 を行っていたため、バッチ処理に伴う情報更 新のタイムラグによってデータベースの中身に 不整合が生じる点も問題だった。
 部品倉庫のシステムでは、当日の朝に入荷 した部品の情報がただちに処理され、入庫情 報として登録される。
だが生産管理系のシス テムではその日の夜間にシステム間のバッチ処 理が済むまで情報が更新されない。
このため  受注から部品調達・製造・出荷までの全プロセ スを統合管理するシステムを構築し、4年前から国 内の工場で運用してきた。
協力会社ともリアルタ イムで情報を共有し、部品発注や納期回答のスピ ードを大幅に向上させた。
今年4月からは海外の工 場にも同じ仕組みを展開し始めている。
SCM 富士通フロンテック 国内外の工場で受注〜出荷を統合管理 協力会社ともリアルタイムで情報共有 南里恒裕シニアディレクター 47  AUGUST 2012 生産管理の担当者は、必要な部品の在庫状況 を確認するのにサプライヤーに出荷状況を問い 合わせたり、部品倉庫に出向いて在庫を探し 回らなければならないことがしばしばあった。
 同じ商品マスターを複数のデータベースで 重複して持つことの弊害も大きかった。
シス テムごとにマスターのメンテナンスが必要にな るうえ、どれか一つのシステムに登録ミスが あると、データベース間で整合性が取れなく なる。
これが原因で発生する情報連携時のエ ラーが月に一二〇〇件以上あった。
その都度、 電話のやり取りなどで人為的な調整を行わな ければならず業務に大きな負荷がかかってい た。
 こうした課題を克服するには、部門別に分 かれていたシステムを統合し、データベースを 一本化する必要があった。
その方法としてE RPパッケージの導入も考えられた。
だがそ の場合、部品の受け入れや在庫管理、工程管 理といった物流系の業務については既存のシ ステムをERPに繋いで運用しなければなら ない。
インタフェースの開発に多大な費用が かかるうえ、データ連携の際に多少のタイム ラグが発生する。
 システム構築を主導したコーポレートセンタ ーの南里恒裕シニアディレクターは「少しで もタイムラグがあるとデータの整合性が損な われて、トラブルの原因になる。
インタフェ ースを極力避けて人の調整がいらないシステ ムをつくりたかった」と振り返る。
こうして 同社は受注から出荷までの全プロセスの情報 をリアルタイムで共有するSCMシステムの自 社開発に踏み切った。
統合SCMシステムを自社開発  〇六年に開発をスタートし、〇八年八月に 新システム「iTOS」が稼動した。
iTO Sは営業の受注登録から生産計画・部品発 注・受け入れ・在庫管理・製造・出荷までの 業務をカバーする。
各業務の担当部門がiT OSに直接アクセスし、あたかも専用システ ムのようにデータの入力や加工を行うと、そ の情報がデータベースで統合管理される。
 iTOSの画面を見れば、他部門の業務の 動きがいつでもわかる。
しかもインターネッ ト技術の活用によって社内だけでなく外部の サプライヤーとも部品の所要計画や納期回答 などの情報をリアルタイムでやり取りできる ようにした。
「社内の部門間だけでなく、協 力会社ともタイムラグなしで情報を共有でき る仕掛けがないと全体最適は実現しない」と 南里氏。
従来のEDIによるバッチ連携の弊 害を完全に払拭した。
 iTOSは受注情報をもとに、自動的に生 産スケジューリングを行い、顧客への納期を シミュレーションする機能を備えている。
製 造ラインごとに製品の組み立て工数をマスタ ー登録してあり、これを使って受注した商品 の小日程計画を自動作成する。
この計画に対 し製造ラインの要員計画などに問題がないか 顧客営業部門生産/製造部門 経理部門 業務部門(受注出荷) 購買部門 サプライヤー 得意先FC 登録 受注登録 仕込み各マスターメンテ部品発注 受注残 入出庫 製造ライン (部品倉庫)検収 カード 作業実績部品倉庫受入検査 入荷/ 検収 小日程 注残 作業 指令 出材 指令 部品 所要 出荷確認出荷指示 検収処理 請求書 発行 商談 検収書 請求書 確定受注 納品書 納品書 納期回答 出庫 チケット 売上状況 受注状況 n工程工程 生産計画 小日程 各進捗 製造負荷 情報入力 購入品発注 出荷指示 納期回答 所要計画照会 欠品督促照会 〈凡例〉 :情報 :物流 iTOS 範囲 受注 注文書 B A 納品書 業務プロセスとiTOS の管理領域 各部門の業務の流れがiTOSによりリアル連携(タイムラグ:ゼロ) 納品書 AUGUST 2012  48 システムでチェックし、受注した数量をいつ までに生産できるかを割り出す。
 次に計画の実行に必要な部品の所要量を算 出し、在庫状況をシステムで確認する。
受注 生産といってもすべての部品を受注後に一か ら手配するわけではない。
生産に日数のかか る部品や複数の製品に共通する部品などは一 定の在庫を抱えている。
部品ごとに発注方法 や在庫レベルは異なる。
その一つひとつにつ いて、在庫の有無や手配済みか否か、発注残 があるかなどをiTOSがリアルタイムで一 元管理している。
 在庫のない部品は、「物品マスター」に設定 された調達リードタイムをもとに納入までの 日数を計算する。
この日数をスケジューリン グに反映させることによって、顧客に約束す る納期を弾き出す。
 この仕組みを構築するに当たり、同社はサ プライヤーと部品一点ずつについて調達リー ドタイムを取り決め、物品マスターに登録し た。
従来は担当者が経験をもとに調達日数を 計算して部品を手配していた。
サプライヤー から正式な納期回答をもらうのに数日かかる こともあった。
マスター化によって瞬時に日 数が分かり業務のスピードが大幅にアップした。
 iTOSのシミュレーション機能を活用す ることで、最大で十三日かかっていた部品の 発注が一日でできるようになり、顧客への納 期回答も即日に可能となった(システム上の 処理は数秒単位で済むが、業務内容によって れる仕組みになっている。
 ステータス管理にはRFIDも活用してい る。
同社はiTOSの稼動に先立つ〇八年三 月に「RFIDかんばん」でサプライヤーへ部 品の納入指示を出す「JITコントロールシス テム」を新潟工場に導入している。
サプライ ヤーがRFIDに部品番号や数量の情報を書 いたかんばんをつけて部品を納入し、工場で 検収や在庫管理・製造工程への搬入の際にR FIDかんばんを読んでステータス管理を行う。
 製造ラインで部品を組み立てる際にかんば んをはずし、回収ボックスへ投入しながらR FIDを読むと、「かんばんが空いた」という 情報がシステムに伝わり、これをもとにサプラ イヤーへの次の納入指示が作成される仕組み だ。
サプライヤーは新しい指示内容の印字さ れたかんばんを持ち帰って次回の納入を行う。
 iTOS稼動後はJITコントロールシス テムをiTOSに組み込んで運用している。
従来、サプライヤーはかんばんを使って納入 した後、新しい納入指示のかんばんを持ち 帰るまで、部品の状況が一切分からなかった。
iTOSでリアルタイムの連携が実現したこ とにより、倉庫で検収が済み在庫となって製 造ラインで組み立てが終わるまでを、かんば んの動きによって把握できるようになった。
 今後はさらに運用の高度化を図り、小日程 計画を立てたタイミングでかんばんを作成す るかたちに変える。
「iTOSによって早い 段階で小日程計画がわかるようになったのだ 承認が必要なルールを設け、二四時間以内の 回答としている)。
 iTOSは在庫の圧縮にも効果を発揮して いる。
従来はどんな部品も一律に納期前のか なり早い段階で発注をかけていた。
iTOS 導入後は各部品の調達リードタイムに合わせて 発注をぎりぎりまで後ろ倒しにし、在庫を最 小限に抑えることができるようになった。
注 文内容の急な変更にも対応しやすくなった。
 サプライヤーもiTOSを介して、小日程 計画や部品の所要、発注・発注残情報をリア ルタイムで共有できるため、早めに生産準備 ができるようになった。
生産計画の変更が生 じた場合もサプライヤーとiTOSの画面で 部品の納期などをやり取りし、その結果を短 時間でスケジューリングに反映できる。
「RFIDかんばん」の運用を高度化  iTOSでは、作成する計画に対し、部品 の受け入れや製造などがどのように実行され ているかをモノの動きとともに把握する。
部 品倉庫や製造工程でのバーコードによるステ ータス管理の結果を計画部門でもリアルタイ ムで確認できるため、以前のように倉庫で部 品を探し回る必要はない。
 当日の生産に必要な部品が欠品になってい る場合には、当該の部品が入荷した段階で倉 庫に対し「入庫指示」ではなく「出材指示 (製造ラインへの供給指示)」が出て、必要数 だけ自動的にラインサイドへの搬入が指示さ 49  AUGUST 2012  今後はさらに上流工程のサプライヤーが同 社に納入する予定の部品の在庫情報について も、iTOSに入力してもらうよう協力を求 めていく考えだ。
この情報がわかればサプライ ヤーからの納期回答が不要になり、スケジュ ーリングがもっとやりやすくなるとみている。
 これまでに二一〇社のサプライヤーとiT OSで情報連携し、このうち取引金額で七割 に当たる六六社とRFIDかんばんの運用を 行っている。
 iTOSの稼動によって、帳票類は八割近 くが不要になった。
インタフェース処理は七 割減り、システムエラーはゼロになった。
当 初は投資金額に対し二・五年での回収をめざ していたが、これより早い一・八年で回収で きた。
これは旧システムのホストコンピュータ ーの運用で発生していたアウトソース費用や 残業時間の削減効果が大きかった。
グローバルなリアルタイム管理を実現  今年に入って同じ仕組みを海外の生産拠点 にも展開し始めている。
iTOSをベースに 「G − iTOS」を開発し、四月にまずフィリ ピンの工場に導入した。
続いて一〇月には中 国の工場にも導入する予定だ。
G − iTOS はiTOSと連携して運用するため開発にあ たりグローバルで業務のルールやプロセス、サ プライヤーの企業コードなどを標準化した。
 フィリピン工場では現地や日本のサプライ ヤーから部品を調達してメガユニットを生産 し、新潟工場や欧米のATMメーカーに納め ている。
ここにG −iTOSを導入したこと で、日本と同様のリアルタイムでの業務管理 を実現するとともに、iTOSとの連携で日 本から調達する部品についても、どのサプラ イヤーがいつ納入するといった情報をいつで も確認できるようになった。
 iTOSおよびG −iTOSは内部統制を 強化するために利用者ごとにアクセス権限を 定めて画面の操作に制約を設けている。
G − iTOSでは日本の担当者にも権限を付与し、 日本から欧米などへの出荷指示が直接できる ようにした。
また海外で生産管理要員などが 急に欠員になっても、日本にいながら現地の オペレーションを支援することができる。
 現在、海外の工場ではモノの管理をすべて バーコードで行っているが、いつでもRFI Dかんばんを導入できるように、G − iTO Sには必要な機能をすべて搭載してある。
 これまでにサプライヤー十二社がG −iT OSとつながった。
「連携が進むにつれサプラ イヤーからいろいろな要望がきっと出てくる。
それに応えていくことで、もっとすごいこと が可能になるだろう。
それを見越して発展系 のシステムにつくってある」と南里氏は強い 自信を覗かせる。
 グローバルなリアルタイム連携を実現したこ とで、同社のSCMは次のステージへと大き な一歩を踏み出した。
(フリージャーナリスト・内田三知代) から、かんばんもその時点で作成してくれれ ば早めに準備ができる」とサプライヤー側か ら要望があり、検討を進めているところだ。
 工場側もサプライヤーがかんばんを出荷し た時点でiTOSに情報を取り込めるように なった。
この時点で欠品となるか否かがわか り、即座にスケジューリングに反映できる。
グローバルSCM(G-iTOS)の位置づけ 用材面揃状況 出荷可能台数 生産状況 etc 【国内】 基幹SCM (iTOS) Global データウェアハウス リアル連携 リアル連携 【凡例】 :情報(リアル連携) :物流 【海外拠点】 統合データベース G-iTOS FDTP(フィリピン) FFTS(上海) 他製造拠点 [受注/生産/調達/製造/出荷] (受注、小日程計画、MRP、発注、在庫管理、出材指令、 面揃管理、作業指令、製造進捗管理 etc) 受入検査 用材倉庫 製 造 製品倉庫 出荷 (ドロップシップ) サプライヤー

月刊ロジスティクス・ビジネス

購読のお申し込みはこちらから