2012年11月号
特集

第2部 最前線の仕事、やりがい、人事制度 3PL 提案営業 日立物流傾向分析から安定稼働まで一貫フォロー

NOVEMBER 2012  22 提案書を手に“社内営業”  日立物流のグローバル第二営業開発本部・流通ロ ジスティクス1部に所属する武田浩一部長補佐が 本社に出社するのはせいぜい週に一度。
大半は国 内の提案先や客先を飛び回っている。
抱えている 3PLの提案案件は大小あわせて常時一〇件。
案 件ごとに二〜三人のチームを組んでいるが、武田 部長補佐が全てのチームのリーダー役を務める。
 体はいくつあっても足りない。
それでも、顧客 とのやり取りをメールや電話で済ませてしまうこと は避けている。
どんなに忙しくても可能な限り提 案先まで足を運ぶことを心懸けている。
相手に自 分の顔を見せる。
「物流は人と人とのビジネス。
3 PLの受注確度は、先方と会っている時間の長さ に比例する」と武田部長補佐はこれまでの経験か ら確信している。
 新規案件は実績データの取得から始まる。
荷主が 自分で用意したデータや「RFP(提案依頼書)」 に記載されている要件を鵜呑みにすれば、後々痛 い目に遭いかねない。
算出したコストと実績に大き な開きが出て大やけどする可能性さえある。
 武田部長補佐は「荷主と守秘義務を結んだ上で、 色の付いていない生のデータを要求する。
実際に 物流現場を見せてもらい、必要な情報を取ること もある。
そこまでしなければ、正しい提案作成や コスト試算はできない」という。
 収集したデータを基に最適なフローを設計し、提 案内容を固めた後は、“社内営業” を行う。
実際の オペレーションを担う日立物流の現場担当に対し て、作業内容や必要となる作業スペース、人員、想 定する生産性や利益などを説明し、合意を図る。
 すんなりいかないケースもある。
案件を受託し、 実際の運用が始まった後は、収益の責任が現場を運 営する支店に移る。
それだけに現場は提案内容を厳 しく吟味する。
ロジックや計画に甘さがあれば、容 赦なく追求してくる。
営業サイドと現場サイドで、 激しい議論が交わされることも珍しくない。
 武田部長補佐は「もちろん我々は必ず利益が出 るという信念のもとに提案を構築している。
受注 ほしさに赤字覚悟の提案書を作ったりはしない。
それでも営業が見込んだ通りに本当に利益を出せ るのか、現場が厳しい目を向けるのは、ある意味 当然だ。
その擦り合わせから生まれてくる意見や アイデアを、我々としても提案内容に盛り込んで いく。
そして、いくら激しくやりあっても最終的 には『みんなで案件を取りに行こう』という流れ になる。
それが日立物流の強みなのかも知れない」 と胸を張る。
 社内で提案内容の合意が固まったら、それを荷 主にぶつけて判断を仰ぐ。
その結果、晴れて受注 が決定しても、まだ営業部門の仕事は終わらない。
実際に現場が稼働し、スムーズにオペレーションが 回るようになるまで、フォローを続ける。
 稼働前の数週間から数ヶ月はセンターに張り付 きになる。
センター周辺のマンスリーマンションに 日立物流 傾向分析から安定稼働まで一貫フォロー  荷主の実績データから物流の傾向を分析し、最適なフ ローを作成。
オペレーションを担当する現場サイドと提 案内容を擦り合わせてコンペに挑む。
見事、受注が決まっ ても、まだ仕事は終わらない。
立ち上げの準備段階から 現場に張り付き、安定稼働まで見届ける。
営業スキルと 創造性、そして調整能力が求められる。
グローバル第二営業開発本 部・流通ロジスティクス1部の 武田浩一部長補佐 3PL 提案営業 第 2部 最前線の仕事、やりがい、人事制度 23  NOVEMBER 2012 寝泊まりする“レオパレス生活”だ。
「提案から受 注、稼働、フォローアップまで含めると、短い案件 で三〜四カ月、倉庫を新たに建てるような案件に なると三年くらい関わることになる」という。
 武田部長補佐は大学卒業後、新卒採用で日立物 流に入社。
当初はIT部門への配属を希望してい たが、半年間の研修を経て配属されたのは、流通 系の営業部門だった。
入社当初の営業職に対する イメージは決して良いものではなかった。
しかし、 それはすぐに払拭されることになる。
 「決まった商品を客に売り込むような単純な仕事 だったら、正直ここまで続かなかったかもしれな い。
日立物流の営業は違った。
自分でゼロからソ リューションを生み出さなければならない。
何より もクリエイティビティが求められる。
そこにやり甲 斐を感じた」と当時を振り返る。
 以来一八年間、一貫して流通系の荷主開拓に汗 をかいてきた。
仕事に打ち込んだ結果、その営業ス キルは社内でも高い評価を受けるようになり、通常 より二〜三年早く主任や部長補佐に昇進している。
 そんな武田部長補佐には、“師”と仰ぐ人物がい る。
昨年日立物流グループ入りしたバンテックで代 表取締役専務執行役員を務める長谷川伸也氏だ。
日立物流の3PL事業「システム物流」を牽引し たキーマンとして業界では知られた人物で、その薫 陶を受けてきた。
 「長谷川さんには本当に色々なことを教わった。
部下の力量を見極め、上手くいく可能性の高い案 件を選んで、仕事を振ってくれる。
その結果、多 くの成功体験をさせてもらったことが今の自信に 繫がっている。
今度は自分が後輩達に同じように してあげたい」と武田部長補佐は考えている。
昨年から「日立物流カレッジ」スタート  同社の新入社員は入社から七年目までは “修行 期間” として位置付けられており、そこまではほぼ 横並び。
その先は、リーダー職、係長職(主任)、 課長職(部長補佐)、部長職とステップアップして いく。
昇進スピードには多少のバラツキがあるもの の、課長職に上がるのが大体三五歳くらい。
 同社の教育制度の中心にあるのが、昨年四月に 運用が開始された企業内大学「日立物流カレッジ (HBカレッジ)」だ。
大きく一般コースと専門コー スに分かれている。
 一般コースの目玉は「HB社員必須知識取得研 修」。
日立物流の社員は所属する部門にかかわら ず、全員が入社二年目でその基礎コースを、四年 目で実践コースを、課長職になればアドバンスコー スを受講することが義務付けられている。
講座で は「3PLの知識」「グローバルマインド」「安全」 という三つの分野を重点的にたたき込まれる。
 専門コースには「現場マネジメント系学部」「営 業系学部」「管理系学部」「技術系学部」などが設 けられており、社員は所属する部門によっていず れかの学部に“入学”する。
例えば物流センター で働く社員は「現場マネジメント系学部」に属し、 年次ごとに決められた講座や研修を受ける。
 HBカレッジは日立物流本体に加えて、バンテ ックなどグループの社員にも門戸が開かれており、 教育システムの融合が進められている。
来年には 日立物流バンテックフォワーディングの社員を中心 に、「フォワーディング学部」が専門コースに加えら れる見通しだ。
          (石鍋 圭) 人事戦略 「HB カレッジ」人材育成体系図(※一般コースの一部を抜粋) 役員クラス マネジメント課程アシスタント課程 部長職 7 年目 6 年目 5 年目 4 年目 3 年目 2 年目 入社 1 年目 階層別対象者 新任部長職研修 新任課長職研修 新任係長職研修 階層別研修公的資格取得 入社時研修(グループ会社 からの参加は任意) フォークリフト運転資格 〈配属先の必修〉 現場実習 フォローアップ研修 中堅社員研修 HB 社員必須知識取得 研修(基礎コース) 日立物流日立物流および グループ会社(一部) 一般コース(必修) HB 社員必須知識取得 研修(アドバンスコース) HB 社員必須知識取得 研修(実践コース) 課長職 係長職 リーダー職 (組長・班長) ロジスティクス管理3級 運行管理者 TOEIC スコア600 特集 物流のプロになる

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