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NOVEMBER 2012 24
センター長が収益のカギを握る
「当社のセンター長には現場改善の遂行能力に加
えて、常に利益を意識する経営的な視点も求められ
る。 裁量が大きく、やり甲斐を感じる一方で、責
任の大きさも日々痛感している」
こう語るのはハマキョウレックス・袋井センター
(静岡県袋井市)の村松直センター長だ。 同氏に与
えられている最大のミッションは、オペレーション
にかかるコストを最小化し、センターの利益予算を
達成すること。
それも年間や月間というスパンではなく、一日
単位でセンターの収支を弾き出し、本社や関係部署
に毎日報告することを義務付けられている。 「予算
を達成できるかどうか、毎日が真剣勝負」と村松
センター長は言う。
本社では全センターの日次収支を毎日報告させ
ることで、その日の会社全体の利益をリアルタイム
で把握している。 赤字を出したセンターにはすぐに
手を打たせる。 その日の業務内容が記憶に残って
いるうちに、問題点を明らかにして赤字の芽を摘
み取る。 この仕組みを同社では「日々決算」と呼
んでいる。
村松センター長が預かる袋井センターは外資系医
療機器メーカーの専用物流拠点で、昨年三月末に
稼働した。 敷地面積約二万?、延床面積は約一万
五〇〇〇?で、二フロアから成る庫内には自動ソ
ーターや自動倉庫、デジタルピッキングシステムな
ど大型マテハン機器を備えている。 正社員一九人、
パート・アルバイト二〇〇人弱がそのオペレーショ
ンに従事している。
日々決算のための管理項目や集計方法は各セン
ター長に任されている。 センターによって機能や荷
主の業態などが大きく異なり、画一化することが
難しいためだ。 袋井センターでは本社と合意した年
間の利益予算から一日の利益予算を割り出し、さ
らにそれを入荷、返品、出荷、検査、配送など七
つの作業セクションに落とし込んで、それぞれ収支
を管理している。
出荷作業を例にとると、伝票ベースの出荷売上
高から、出荷作業で使用しているマテハンのリース
料や作業スペース分の家賃といった固定費および人
件費などの変動費を差し引きした結果が利益とな
る。 こうして計算した七つのセクションの収支合計
が、その日の袋井センターの成績になる。
「予算未達だったセクションでは、どこに問題が
あり、どう改善すべきかを社員やパートのリーダー
クラスと相談してすぐに手を打つ。 本社に報告する
時は、結果だけでなく原因と対策も併せて報告す
る。 『未達でした、以上』という報告はものすごく
怒られる。 逆にしっかりとした解決へのアプローチ
さえあれば、会社は一定の評価をしてくれる」と
村松センター長は説明する。
具体的な現場改善手法としては、ハマキョウ独自
の「日替わり班長制度」や「アコーディオン方式」
を駆使している。 日替わり班長制度は「5S」を
ハマキョウレックス
1日単位で予算の達成を目指す
ハマキョウレックスの代名詞ともなっている独自の収
益管理法“日々決算”。 その運用を任されている各拠点
のセンター長は、オペレーションの責任者であると同時
に、経営者としての手腕を求められる。 一日ごとに白黒
がハッキリと出る厳しい世界で、真剣勝負を続けている。
袋井センターの村松直
センター長
3PL センター長
第 2部 最前線の仕事、やりがい、人事制度
25 NOVEMBER 2012
はじめとする改善活動のリーダーを、パート全員が
持ち回りで担当するというもの。 作業員全員に現
場への愛着や参加意識を持ってもらうことで、生
産性の維持・向上を図っている。
アコーディオン方式はセンターで扱う物量に応じ、
投入するパートの数を自在に変更する方法だ。 入
荷作業を筆頭に、日々の物量の変動が大きい袋井
センターにはとくに有効な手法で、これを上手く
活用することで、ムダなコストの発生を防ぎ、生
産性を維持することに成功している。
村松センター長は「当面はこの袋井センターをハ
マキョウレックスのモデルケース的なポジションに
まで引っ張り上げたい。 荷主や従業員とコミュニケ
ーションを取りながら、高い生産性・コスト効率・
品質を実現していく。 手応えは十分感じている」
と意気込みを語る。
村松センター長は大学卒業後に一年間アパレル企
業に勤務した後、ハマキョウレックスに入社。 配属
された浅羽営業所(静岡県袋井市)で食品物流の
現場作業に従事し、三年後に同営業所の庫内係長
に就任した。
初めてセンター長になったのは二九歳の時。 社内
の「センター長資格試験」に合格し、三重県で新
たに稼働した一社専用の食品物流センターのセンタ
ー長に抜擢された。 入社以来、食品物流を担当し
てきたことが奏功した。
意気揚々と赴任するも、そこで思いもかけない
事態に直面する。 荷主と交わした契約内容に無い
作業が現場で発生し、想定以上のコストが生じてし
まった。 ただでさえ新センターの立ち上げ時の現場
は混乱する。 その収束と安定化を図りながら、並
行して上司と共に荷主との交渉を重ねる日々が続
いた。 しかし努力は実らず、結局そのセンターは
稼働から九カ月あまりで閉鎖した。
「現場のオペレーション自体はうまくいきかけて
いただけに悔しかった。 何より、自分で採用した
一〇〇人あまりのパートさんに申し訳ないという
気持ちでいっぱいだった。 こうした苦い経験をム
ダにしてはいけない」と振り返る。
その後、通販専用の物流センター長を経て、現
在のポジションに至る。 今年で入社一四年目を迎え
る村松センター長は、物流マンとしての自身の将来
についてこう語る。
「ハマキョウレックスはまだまだ伸びていく会社。
ここで様々な経験を積み、会社の中心的な役割を担
っていきたい。 おこがましいかも知れないが、三
〇代、四〇代といった世代がどうあるかで、会社
の未来は決まると考えている」
社員教育の中心に「大須賀塾」
ハマキョウレックスの社員教育の中心にあるのは
「大須賀塾」の存在だ。 創業者の大須賀正孝会長
が講師を務める勉強会で、月に一度、一泊二日で
開催される。 対象はセンター長から現場の作業員に
至るまでの全社員で、全員必ず一度は参加するル
ールだ。 大須賀会長みずから「日々決算」や「日
替わり班長制度」などの “ハマキョウイズム” を直
に叩き込む。
その他、社員が現在抱えている課題を発表して大須
賀会長がそれにアドバイスを送ったり、互いの成功体
験などを披露する場も設けている。 大須賀塾が、ナ
レッジマネジメントの機能を果たしている。 夜は宴会
で社員同士のコミュニケーションを育む。 (石鍋 圭)
人事戦略
村松センター長の一日
8:40
9:00
9:15
10:00
11:00
随時
随時
15:45
16:00
17:00
社員朝礼
現場朝礼
現場巡回
メール確認
日々決算(報告)
提出資料作成
打合せ
社員夕礼
現場巡回
メール確認
朝礼
現場巡回
報告
打合せ
前日の結果、本日の予定・目標をみんなで確認
目標・課題を明らかにして、社員1 人1 人が主体的に取り
組めるようにする。 コミュニケーションを大切に。
庫内を巡回して、現場の状況やパートの就業状況などを確認
担当社員の目が届きにくいところを中心に見て回る。
現場のパートからも意見をもらい、改善策を検討。
前日の収支、物量の動き、生産性、残業状況を確認、報告
課題を見つけたら、すぐに対応。 日々改善を図る。
荷主や業者からのメールを確認、返信
メールが100 件にのぼる日も。
即対応で、荷主や業者からの信頼を大切にしている。
荷主や業者との打合せ、社内打合せ
荷主とのコミュニケーションを大切にし、改善提案を行っている。
特集 物流のプロになる
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