2012年11月号
特集

第2部 最前線の仕事、やりがい、人事制度 航空フォワーダー 近鉄エクスプレス荷主の要望に最後まで応える

NOVEMBER 2012  32 トラブル対応で実力が試される  「重要な部品だ。
これが届かなければ、海外工場 がストップしてしまう」。
近鉄エクスプレス(KW E)新宿輸出営業所の舘野祐介主事のもとに、緊 迫した顧客の声が届いた。
東日本大震災後の混乱 で船に載せられなかった部品を、航空便で急いで 運ばなければならない。
 すぐに内勤のカスタマーサービス(CS)に連絡 し、スペースの確保に動いた。
しかし、緊急事態 はどこも同じ。
何らかの「決断」が必要なのは明 らかだった。
結果を顧客に報告する。
「なんとかこれだけ場所を押さえました」 「足りないじゃないか」 「申し訳ございません。
荷物に優先順位を付けて ください」 「じゃあこれが先だ」 「残りは明日でも間に合いますか」 「ダメだ」 「では何時までなら」・・・・。
 薄氷を踏むようなせめぎ合いの末、荷物の最終 デッドラインや最低限、運ばなければならない量を 聞き出す。
そこからは再び社内調整だ。
 外回りが掴んできた情報はCSに集約され、担 当者が「A社は明日一七時に着けば間に合う。
B 社も大急ぎだが目的地が空港から近い。
この便で も間に合う」と捌いていく。
そこに外回り営業も加 わり、細かな調整を加えて最適解を見つける。
震 災後はそんな毎日が数カ月続いた。
 顧客の要望に一〇〇%応えられたわけではなかっ たが、一度も「もういい!」と見放されることな く乗り切った。
冒頭の顧客からは後日、「何とか生 産が間に合った。
ありがとう」と告げられた。
「パ ートナーとして認めてもらえた」。
そんな喜びが、 心の奥底からわき上がった。
 現在、日本から電子部品や自動車関連などを輸 出している荷主一〇社を担当している。
営業マン 一人が担当する社数としては少ないほうだ。
しか し、大手荷主が中心で、同じ会社であっても事業 部ごとに対応する必要がある。
 その一つから「送った製品が壊れていた」とい う情報を聞きつけた。
すぐさま実態調査を行った ところ、一つ一つの製品が小口でバラバラに出荷さ れていた。
小さな荷物は取扱時に損傷する可能性 が高い。
そこで「出荷をまとめてパレットに積み 付ければ、故障率はぐんと減りますよ」とアドバ イスした。
 本来の担当は輸出業務の営業だが、二年ほど前 から三国間輸送にも力を入れている。
日系企業の 海外シフトに伴い、日本を経由せずに国外の拠点 から直接、世界各地の消費地に荷物を送ることが 増えてきた。
 しかし、そのフォワーディング業務の委託先を最 終決定するのは、やはり日本の本社。
担当営業の 舘野主事がKWEのグローバルネットワーク全体を 代表して交渉することになる。
 近鉄エクスプレス 荷主の要望に最後まで応える  フォワーダービジネスは、輸送キャリアや倉庫会社の ような重いアセットを必要としない。
それだけに人材が 全てと言われる。
なかでもKWE は、荷主の懐に深く入 り込み、担当者のあらゆる要望にきめ細かく対応するこ とを自らの強みとしてきた。
グローバル化が進んでも、 その伝統は変わらない。
近鉄エクスプレス新宿輸出営業所 の舘野祐介主事 航空フォワーダー 第 2部 最前線の仕事、やりがい、人事制度 33  NOVEMBER 2012  海外現地法人でオペレーションを担当する海外ス タッフと、顧客との間を舘野主事が取り持つ場面 も増えてきた。
先日も中国の現地法人スタッフから 「急に荷物が増えたため、予定していたフライトに 積みきれません」と第一報が入った。
 即座に頭の中を整理する。
次のフライトにスペ ースはあるか。
どれくらいまでなら積み込めるか。
目的地の空港到着後に遅れを取り戻す余地はある かなど、中国のスタッフとやり取りをしながら、代 替プランを詰めた。
その結果、なんとか納期には 間に合うことが判明した。
 KWEへの入社は二〇〇三年。
当初四年間は、 京浜輸出営業所でCSを担当した。
営業マンや顧 客からの指示を、的確にテンポよく捌いていくこ とが求められた。
一日に処理するB/L(運送状) は二〇〜四〇件。
一つの処理に長時間を費やすわ けにはいかない。
インボイスに記された顧客からの 指示に従い、どのサービスを使い、どの飛行機に載 せるかなどを素早く決定していく。
 顧客から緊急の電話が入る。
「今日、一七時のフ ライトに乗せたい荷物がある」。
素早く時間を確認 するが、不可能だ。
今からでは成田への到着すら 難しい──。
だが、そう言ってしまえば取引は成 り立たない。
 「それぐらい急いでいるんですよ」。
顧客の声から 焦りが伝わってくる。
考え込む時間はない。
「じゃ あ二〇時のフライトでどうですか」「一〇分以内に 書類を用意してください」「三〇分でトラックを回 します」。
瞬時に代替案を用意する。
そうやって、 最後まで顧客の要望に応えようとするカルチャーが 社風として根付いている。
 〇七年には、アメリカのアトランタで一年間海外 研修を受けた。
海外スタッフとコミュニケーション を取りながら、海上、航空、輸出入、倉庫業務か ら外回りの営業まで一通りの実務を学び、エンド・ ツー・エンドの全体を見届けた。
交通慣習、道路 状況、ドライバーの労働条件・・・・様々な状況が土 地土地によって全く違うということを肌で学ぶこ とができた。
 外回り営業マンとなった後も、そんな幅広い経験 を活かした調整力が強みになっている。
海外で遅配 があったときも「なぜ遅れたか」を顧客に丁寧に説 明し、CSとの連携で素早く代替案を出せる。
 現在三二歳。
いつかは海外駐在員も経験したい。
そもそも「国際的 に躍動するような 仕事がしたい」と いうのが入社の動 機だった。
一〇年 が経った今、着々 とその目標に近づいている。
新卒社員にDNAを刷り込む  KWEは新卒採用メインの人事戦略をとってい る。
ここ数年は四六〜八九人を採用しており、今 年は五〇〜六〇人の予定だ。
ポテンシャルの高い新 卒を獲得し、KWE伝統の「ガツガツしたDNA」 (田中莊一人事部長)を叩き込む。
 そのために新入社員を入社数年の先輩社員が教 育する「サンシャイン・ステップアップ」という制 度を設けている。
先輩社員がマンツーマンでトレー ナーとなり、先輩と新人が手書きの専用ノートを交 換日記のようにやり取りをする。
ネット全盛の時 代だが、田中部長は「敢えて手書きのノートを使 うことで、先輩・後輩のコミュニケーション密度を 高める狙いがある」と言う。
入社後三カ月の新人 研修を済ませ、実際に現場に配属されてから当初 三カ月の見習い期間は毎日ノートを交換し、新人 が「どんな業務をどのように行ったか」を報告し、 先輩は「こうした方が良い」とアドバイスを送る。
トレーナー自身を人間的に成長させる目的もある。
研修はその後も階層別教育、業務教育、資格取得 支援、外国語、海外研修など二〇種類以上が用意 されている。
 一方人事評価では、「個々人の能力がどれだけ発 揮されているか」を重視する。
目標を設定し、年 六回の上司面談で、細かく進捗状況を確認する。
昇進には評価のほかに、一般常識や業務知識を問 う筆記試験、小論文、面接などが課される試験も あり、常に向上心が求められる環境となっている。
(渡邉一樹) 人事戦略 田中莊一人事部長 特集 物流のプロになる フライト Process.1 Day1 Process.2 Day1(18:00まで) Process.4 Day2(10:00) Process.3 Day2(9:00) Process.5 Day2(10:00〜12:00) Process.6 Day2(14:00) Process.8 Day2-(3 17:00以降) Process.7 Day(2 15:00) 海外へ (KWE 資料を元に作成) 荷主拠点からトラックで集荷 貨物の集荷 航空輸出貨物の流れ(一例) 積み下ろし 貨物を検量・検尺し、Air Way Billのラベルを貼付 貨物を航空機搭載のため のUnit Load Deviceに積 み付け 航空会社にULDを搬入 (搬入後にULD 積み付け をする場合も) 保税蔵置場所へ移送後、 通関情報処理システムで 輸出申告 拠点でいったん下ろし、個 数や外装等の異常がない か確認 税関での審査後、問題が なければ輸出許可が下りる 輸出申告 検量及びラベリング 輸出通関許可ULD 積み付け 航空会社搬入

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