2012年11月号
特集

第2部 最前線の仕事、やりがい、人事制度 外資系フォワーダー DHLグローバルチームでスキルを磨く

NOVEMBER 2012  34 「声」を届けて関係性を築く  DHLグローバルフォワーディングジャパン(D GFジャパン)で、多国籍企業の営業を担当する 野田稔雄営業本部マルチナショナルカスタマーチー ム・ビジネスディベロプメントマネージャーの一日 は、朝九時、得意先近くの喫茶店で、メールをチ ェックする所から始まる。
時差のある海外から大 量のメールが夜中のうちに届いている。
 おかしい。
昨日コスタリカの現場担当者に「至 急」で頼んでおいた運賃見積もりのメールに返信 がない──。
携帯電話の世界時計アプリで時間を 確認すると現地は一八時だ。
迷わず電話を入れた。
「大丈夫ですか?  何かありましたか?」。
忙しそ うにしている相手に「緊急なんです。
すぐに数字 を出して下さい」と頼み込む。
 世界中とのそんなやり取りを、毎日何度も繰り 返す。
時差のある海外とのやり取りは、タイミン グを逃すと大幅な遅れに繋がる。
どの連絡をどの 順番で行うか、パズルのように絡み合った業務を 一瞬、一瞬の判断で処理していく。
 日本発の荷物の見積もりも、海外の関連部署に 確認しなくては完成しない。
海外からの回答をか み砕き、整理して顧客に送付する。
その間に今度 はアジア地域からのメールが次々と到着する。
訪問 営業の合間に、それらを素早く処理していく必要 がある。
オフィスに戻っていては到底間に合わな い。
得意先近辺で作業ができる店など「拠点」の 位置は頭に入っている。
 野田氏はDGFジャパンの営業マンとしてテクノ ロジー・製造業関連の二〇社強の顧客を担当する と同時に、DHLグループの一員として、顧客ご とにグローバルに組織している「アカウントチーム」 にも所属している。
これは世界中に散らばるグル ープ会社の担当者たちが所属する、いわばバーチャ ルなチームだ。
 このチーム内を、日々の業務で発生する問い合わ せや回答から、顧客の経営方針の変更や工場建設、 新商品、荷動きの可能性など新規営業に結びつく 情報まで、日々大量のやり取りが行き交う。
一堂 で話し合うべき内容があれば電話会議も開く。
そ うして共有した情報から、その顧客が今、運賃削 減を狙っているのか、それとも速度を重視してい るのか、顧客ニーズを見極め、ビジネスチャンスを 拡げていく。
 世界中に散らばるメンバーたちと直接顔を合わせ る機会はほとんどない。
そのために大事にしてい ることが二つある。
一つは業務がうまく回らない 時も、チームメンバーの仕事を否定するような話し 方をしないこと。
もう一つは電話で直接「声」を 掛けることだ。
「顔を合わせて仕事ができないから こそ、メールだけではなくて声を掛け合うことが 大事だ」と話す。
 この「アカウントチーム」のシナジーを初めて実 感したのは二〇〇六年のことだった。
エクスプレス DHL グローバルチームでスキルを磨く  顧客ごとにグローバルに組織しているアカウントチーム の一員として多国籍企業の営業活動に当たる。
フォワー ディングの専門家として、サプライチェーン部門やエク スプレス部門と連携し、世界時計を睨みながら各地と日々 大量のやり取りを処理している。
野田稔雄営業本部マルチナショナ ルカスタマーチーム・ビジネスディ ベロプメントマネージャー 外資系フォワーダー 第 2部 最前線の仕事、やりがい、人事制度 35  NOVEMBER 2012 便担当者から「うちの得意先から重量物も頼まれ た。
フォワーディング担当者も一緒に営業に来て欲 しい」と打診があった。
すぐに国内外の担当者同 士でサービス内容を整理した。
 どの荷物ならどのサービスを使えば良いか、チー ム内で具体的な数字を比較しながら見積もりを作 成した。
グローバルの協力も仰いで、相手の本社 への営業も同時に仕掛け、最終的には提案内容を DHLグループ全体のパッケージサービスとして顧 客に持って行った。
 その結果、軽貨物と重量物の両方ともDHLグ ループで受注することができた。
初めてのコラボレ ーションは大成功だった。
今ではグローバルチーム からの情報に基づいて、エクスプレスの担当者、サ プライチェーンの担当者と組んで一緒に営業に行く ことが日常茶飯事となっている。
「DHLブランド を共有することで、可能な提案が増え、新たな地 平が見えて来た」と言う。
 「顧客が日本に工場を建てる」という情報がグロ ーバルから来れば、その情報をもとに、実際にど んな設備が入るか、どんな荷動きがあるかを掴む。
情報の入手が早ければ、それだけ顧客への提案を 練り上げる時間が稼げる。
コンペの勝率も上がる。
成功体験がチームワークを育む。
個々人が顧客から 得た情報をチームに還元していくことが、結果的 に自分の成果ややりがいに繋がるという。
 二〇一〇年、DGFジャパンの営業でその年最 も優秀だった人物の「アウトスタンディング・セー ルス・パフォーマー」に選ばれた。
次の目標は自ら 営業チームを率いること。
そのために一一年から は、世界各地から選ばれた幹部候補生が受ける二 年がかりのトレーニングに参加している。
 「DGFジャパンでは、自分がこの先どんなキャ リアを歩むべきか、上司も一緒になって考えてく れる環境がある。
自分も営業スキルを磨くと同時 に、チームを管理するようなマネジメント能力を高 めていきたい」と意気込む。
 平日は深夜まで海外とのやり取りが続き、仕事 が頭から離れることはない。
その代わり、週末は きっぱりと切り替えて、プライベートの時間を大事 にする。
最近生まれた赤ん坊の世話をしたり、夫 婦で出かけたり、のんびり過ごす事が多いという。
専門家を積極的に中途採用  DGFジャパンは毎年新卒八人、中途二〇人程 度を採用している。
中途採用で一番多いポジショ ンは営業職で、海空のオペレーションや通関士の募 集もある。
中途採用のプロセスは人事面接、現場 面接で、ポジションによっては社長面接も行う。
 中途採用は「専門家」として行い、報酬も「ペ イ・フォー・パフォーマンス」の成果主義だ。
職種 やグループ会社内での異動は基本的にはないが、そ の代わり、DHLグループ全体の社内公募は盛ん に行われている。
 同グループは社員をグループ全体のスタンダード の「ジョブグレード」に従ってランク付けしており、 転籍の際の目安となる。
「グループ内にチャンスは いくらでもある。
自ら積極的にスキルを伸ばして いける、ネイチャーの良い方を採用したい」とDG Fジャパン人事部の平野美映子課長は話す。
 研修制度は各種あるが、野田も受けている「ビル ド・ユア・スキルズ」と「エマージング・リーダー ズ・プログラム」という二つのリーダー育成研修が特 徴的だ。
「ビルド・ユア・スキルズ」は、海外拠点で OJTのトレーニングを行うプログラムで、野田はド イツで二カ月実地研修を受けた。
一方「エマージン グ・リーダーズ・プログラム」は各国からの参加者を 一カ所に集め、社内 講師によるレクチャ ーやワークショップ でマネジメントのノ ウハウを習得させて いる。
(渡邉一樹) 人事戦略 DGFジャパン人事部の 平野美映子課長 特集 物流のプロになる 野田稔雄ビジネスディベロプメントマネージャーのとある一日 8:00 9:00 10:00 12:00 13:00 15:00 17:00 20:00 21:00〜 得意先へ直行。
電車内で一日の仕事のアウトラインを考える。
得意先(A 社) 付近の喫茶店でパソコンを起動して業務開始。
海外からのメールを処理。
A 社で商談開始。
ソリューションの提案・問題点の聞き取りを行う。
A 社を辞去し、ランチへ。
食事後、メールを処理し、優先順位が高い順に提案内容や問題に対する報告を作成。
担当顧客の輸送状況を確認。
社内オペレーション担当者と連絡を取り合う。
B 社で商談開始。
B 社を辞去し、喫茶店で商談の内容をリビュー。
アクションプランをまとめた後、メールを処理。
帰宅し、夕食。
就寝までの間、緊急案件については海外とのメールや電話を行う。

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