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2012年11月号
特集

第2部 最前線の仕事、やりがい、人事制度 総合商社 物流部門 三井物産世界規模の研修で「開拓者」育成

NOVEMBER 2012  36 幹部候補生が一週間かけて英語で議論  三井物産は、本体の物流本部に加え、国際複合 一貫輸送を手がけるトライネット、日本国内で倉庫 を運営するトライネット・ロジスティクスなど、国 内外のグループ企業がそれぞれ役割を分担し、連携 して物流事業を展開している(図表)。
 商社の持ち味である国内外のネットワークを機能 させて、輸配送にとどまらない幅広い事業を展開 するには、三井物産の物流部門を核としたグルー プ間の緊密な連携が常に求められる。
 そこで二〇〇六年に「三井グローバルロジスティ クススクール」(MGLS)と称する新たな研修制 度をスタートさせた。
二年に一度、世界各地の物 流子会社など約一五社から、担当者を日本に約一 週間集めている。
トライネットやトライネット・ロ ジの海外拠点社員、三井物産の現地法人の物流担 当者など、各社の幹部候補生がその対象だ。
 約二〇人の参加者が四チームに分かれ、あらか じめ設定されたテーマについて、英語で徹底的に 議論を戦わせる。
最終日に、その成果を物流本部 長らにプレゼンテーションする。
参加者にとっては 朝から晩まで議論詰めの一週間になる。
 一〇年に開催された前回の研修では、「日本の物 流技術を中国に持っていって、新しいビジネスモデ ルを考える」「米中間の国際輸送に日系企業グルー プとしてビジネスチャンスをどのように見いだして いくか」の二つを柱のテーマにした。
 そこで海外から研修に参加した外国人メンバー の一人は、ミャンマーに着目すべきだと指摘し熱 弁を振るった。
MGLSの運営を手がける物流本 部物流業務部戦略企画室の宮田正博氏は「ミャン マーは当時まだ民主化が進まず、国際社会の注目 度も今ほど高くはなかった。
現在の状況を思うと、 非常に先見性のある意見が出たことに驚かされる。
物流本部の幹部に刺激を与えるような提案が活発 に出るのは大きな成果」と強調する。
 四回目となる今年の研修は十一月に実施する。
物流本部の中期経営計画を達成するために必要な 新規事業の創出や既存ビジネス強化の具体策を提 案することをテーマに設定している。
 MGLSの仕切り役は、物流本部戦略企画室の 三〇歳前後の若手社員が担う。
各チームに一人ず つ、ファシリテーター(進行役)として付き、議論 が深まるよう助言するなど、サポートする。
 ファシリテーターも参加者同様、期間中は基本的 に英語しか許されない。
しかも指導する相手は三 〇代から四〇代の中堅社員だ。
各国から集まった 参加者だけでなく、戦略企画室の若手社員にとっ ても、指導力や見識を試される貴重な機会だ。
 宮田氏は「商社の人間は、どのような環境にあ っても積極的、自発的に取り組む姿勢が必要。
我々 は海外市場など、新たなことに挑戦する開拓者の 役割も担っている」と説明。
参加者がハードな研 修を通じ、そうした能力を身に付けて、連結経営 への貢献度を高めることを期待している。
 グループの連携を強めるための研修は、国内で も動き出している。
まず、〇六年にトライネット、 トライネット・ロジなどの国内主要物流子会社によ る「人材強化協議会」を立ち上げた。
従来は各社 が個別に実施していた社員研修を、一堂に会した 形で進める体制に変更した。
 ただし、一〇年までは専門家が戦略経営やコー チングについて講義をするなど、座学が中心だっ 三井物産 世界規模の研修で「開拓者」育成  グループの幹部候補生を全世界から集め、経営戦略な どを徹底討論させている。
昨年は、国内の主要物流事業 会社が共同で実施している研修内容を全面的に刷新。
社 員が物流事業の課題を洗い出し、改善策を提言させるス タイルにした。
ハードな研修を課すことで、自発的に挑 戦する「開拓者」の育成と、グループ経営の強化を狙う。
第 2部 最前線の仕事、やりがい、人事制度 総合商社 物流部門 37  NOVEMBER 2012 た。
三井物産が研修をお膳立てして各社はその枠 組みに乗るという習慣をぬぐいきれていなかった。
 そこで、昨年はスタイル自体を抜本的に見直し、 各グループ会社の総務・人事担当が中心となって企 画を練り上げることにした。
三井物産物流本部の 栗本聡物流業務部人事・総務室長は「研修を行う こと自体が目的化していて、マンネリ感が出てい た。
何のために研修をするのか、という原点をも う一度きちんと見つめ直した」と振り返る。
 「各社を知る」を研修のキーワードに設定。
参加 者が自分の所属している会社以外のグループ企業 の業務内容を学ぶとともに、各社の施設を見学し た。
その上で、物流事業が抱える課題や解決策を ほぼ一日かけて徹底的に議論し、三井物産本体の 幹部らの面前でプレゼンテーションするかたちをと った。
いわば、MGLSの国内版だ。
グループ間の連携を強化  スタイルを大きく変更したのには主に二つの狙 いがあった。
栗本室長は「一つは意識改革。
親会 社から言われて行動するのではなく、現状改善へ 何をすべきかを主体的に考えてもらうようにする。
もう一つは、連結業績への貢献。
各社の業務内容 を知るだけではなく、知った先に何があるのかだ。
グループ会社として連結業績に貢献するというと ころまで考えてもらいたい」と言う。
 内容を見直してからは初めてとなる昨年の研修 は、トライネット、トライネット・ロジスティクス、 羽田空港の国際線貨物ターミナル整備・運営を担 当している東京国際エアカーゴターミナル(TIA CT)、トライネット・ロジ子会社の東神倉庫、三 井物産インシュアランス(MIC)の五社から社員 約十人が参加した。
メンバーは三〇代後半から四 〇代前半で、将来各社を背負っていくことが期待 されている層を意識して選んだ。
 初日は、トライネットの社員がフォワーディング 事業について、MICの社員が海上貨物の保険業 務などについて、それぞれ自分たちで他の参加者 に説明。
普段直接触れ合う機会が少ない他のグル ープ会社の業務内容を相互理解することに努めた。
翌日からは一泊二日でトライネット・ロジの物流セ ンターや羽田空港の国際線貨物ターミナルなど、各 社の施設を見学。
デスク業務が中心の社員も庫内 作業などの実務に触れた。
 最終日には集大成として、参加者を二つのグル ープに分けた上で、「関係会社から見た三井物産物 流本部グループの課題」「各社がどのように連携す れば連結効果を発揮できるか」のテーマについて、 それぞれ議論させた。
その結果を、物流本部幹部 らを前に、プレゼンテーションした。
 そこでは「三井物産本体の全体戦略が関係会社 にあまり伝わってこない」「各社間の交流が不足し ている」「連携の前提として、個社の力をより強化 することが必要だ」といった忌憚のない声が相次 いだ。
参加者の真剣さが伝わってきた。
 連携の具体策では、各社間の人材交流促進、グ ループ各社の社員が情報を共有できる専用サイトの 構築、各社間で情報を報告する定例会議の開催な どが提案された。
 研修後、参加者たちが自発的に話し合って新た な試みを始めた。
従来は個別に営業活動をしてい た各社が連携して顧客に売り込めるよう、五社の サービスをすべて盛り込んだ共同のパンフレットを 作ることで合意した。
現在、制作を進めていると いう。
栗本室長は「社員たちが自立的に動くこと が一番重要」と、こうした動きを歓迎する。
 今年十一月に実施する研修も昨年のスタイルを 踏襲する方向だ。
共同研修を担当する物流業務部 人事・総務室の佐久間裕子さんは「自分たちに実 際に何ができるのか、今回はより具体的なところ まで話してもらおうと考えている」と言う。
 最終日のプレゼンの場には、昨年の参加者にも来 てもらう方向だ。
栗本室長は「各社のつながり強化 のための集合研修は積極的に推進していきたい。
た だし、各社の人材開発・育成担当者らの意識レベル にはまだ差がある。
どうやって全体の意識を底上げ していくかが重要だ」と考えている。
(藤原秀行) 特集 物流のプロになる 三井物産の物流本部と主要グループ会社 物流インフラ事業TIACT 事業 総合物流事業 保険・ リスクマネジメント事業 TIACT MIC/MRS ICTA ・保険代理店、ブローカー 三井ダイレクト損害保険 ・キャプティブ ・国際航空貨物上屋(羽田) 物流本部 中核会社PORTEK ECTT (タイ) TRP (アルゼンチン) FLDC (ベトナム) ・港湾ターミナル運営 ・港湾エンジニアリング (インドネシア・アフリカ) トライネット グループ トライネット・ ロジスティクス 錦江低温/ 上海新天天LF Logistics ・海上輸送・国内倉庫  ネットワーク ・中国低温物流・中国アジア倉庫  ネットワーク 出所:三井物産資料より

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