2012年11月号
ケース

ヤマトマルチメンテナンスソリューションズ 新サービス メーカーのリコール・自主回収をサポート専門職「コンダクター」が関連業務を統括

NOVEMBER 2012  54 広報対応やコールセンター業務も  ヤマトホールディングス傘下のヤマトマルチ メンテナンスソリューションズ(YMM)は、 メーカーの製品リコールや自主回収をワンス ポットでサポートする事業を中核の一つに据 えている。
設立は〇八年四月。
グループのヤ マトロジスティクスが「クロネコヤマトリコー ルサポートサービス」と称して〇七年に開始 したサービスを分社・独立させた。
 通常、リコール対応はメディアを通じた消 費者への告知、電話相談受付、回収に関す るデータ収集と管理、製品回収と良品の配送、 品物の保管・検品、関係省庁への回収状況の 報告、と流れていく。
YMMはそのすべてを サービスメニューに掲げており、荷主となる 企業は一括して支援を受けるほか、必要な機 能だけを選んで利用することもできる。
 回収状況を追跡し、顧客企業がインターネ ットを通じて常時確認できるサポートを実施。
リコールを告知しても回収が進まない場合に は、宅急便のセールスドライバーがダイレク トメールを広範囲に配布するなどして、回収 率の向上を図るといった支援メニューも準備 している。
料金は基本的なプランの場合、回 収する製品一個あたり三千円程度という。
 YMMの業績は非公表だが、これまでに回 収した製品数は延べ三〇〇万〜四〇〇万個程 度に上っていると見られる。
サービスを指揮 する同社の清水淳二リスクマネジメントカン パニープレジデントは「初年度(の〇七年度) から業績は事業計画を超えた。
これまでのと ころ毎年二桁成長を達成している」と言う。
 ヤマトグループではYMMが発足するまで、 リコールや自主回収のサポート要請に対して、 ヤマト運輸の各地の営業所などが個別に対応 していた。
「全体をプランニングし、パッケー ジとしてサービスを提供するという発想がまだ なかった」(清水氏)ため、事案によって、サ ポート体制やサービス範囲にバラツキが生じて いた。
それに対してYMMは、顧客の要望に 応じてグループの抱える豊富な経営リソース を有機的に組み合わせ、一貫サービスを可能 にしている。
 製品回収と代わりの品物の配送は、ヤマト 運輸の全国配送網を利用。
問い合わせに応対 するコールセンター業務はコールセンター会社 のヤマトコンタクトサービスの協力を得る、回 収に必要な梱包材はヤマト包装技術研究所と 打ち合わせる、大きな製品であれば引っ越し を手掛けているヤマトホームコンビニエンスの 力を借りる、といった具合だ。
 メーカーの製品リコールや自主回収をワンストッ プで支援するサービスを展開している。
「コンダク ター」と呼ばれる社内資格保有者が采配をふるい、 宅急便のネットワークを駆使して関連業務をワン ストップでサポートする。
2007年のサービス開始 以来、毎年2桁ペースで売上高を伸ばしている。
新サービス ヤマトマルチメンテナンスソリューションズ メーカーのリコール・自主回収をサポート 専門職「コンダクター」が関連業務を統括 清水淳二リスクマネジメント カンパニープレジデント 55  NOVEMBER 2012  サポートサービスは、「リコールサポート・ コンダクター」と呼ばれるYMM社内資格保 有者が、全体のコーディネート役を務めてい る。
コンダクターはグリーンの特製ジャケット や、大きなワッペンを身につけ、依頼のあっ た企業に駆けつける。
 トラブル状況や問題製品の販売個数などを 把握した上で、それぞれのケースに最適の告 知・回収方法を企画。
ヤマトグループ内の担 当企業と調整する。
名前の通り、指揮者のよ うにサービスを振り付けるイメージだ。
 コンダクターは、関連法令などの知識と、 実務面で独自のノウハウを兼ね備えた、まさ にリコールの専門家。
外部からスカウトせず、 社内の人間を一から教育しているため、育成 には時間も手間もかかる。
YMMに在籍する コンダクターは今年十月初旬の時点でようや く一四人まで増やすことができた。
 自らもコンダクターの資格を持つYMMの 清水リスクマネジメントカンパニープレジデン トは「品物を運ぶだけでなく、法律も絡むの で、不十分な知識しかない人間が関わると問 題になりかねない。
きちんと法令などを熟知 した人間を育てる必要がある。
コンダクター はヤマトグループの資産であり、オンリーワン の存在」と胸を張る。
 やはりコンダクターでもある宇佐美志郎リ スクマネジメントカンパニー課長は「リコール 対応という性質上、短期間でさまざまな業務 を垂直に立ち上げなければいけないので、コ ンダクターに情報を一元化して迅速に話が進 むようにしている」と解説する。
コンダクタ ーの一元的対応やグループの多様な経営リソ ース活用で、条件が合えば最短で連絡があっ た当日に回収を始めることが可能としている。
 リコールの案件によっては、回収する品数 が膨大になる可能性もあるが、清水氏は「一 つの集配拠点に何百も配送先が重なることは まずない。
ドライバーに負荷があまり掛から ない形で、通常の配送業務の中で対応しても らうよう調整できる」と言う。
 問題が起きた製品を回収するため、宅急便 などのドライバーの安全確保も必須だ。
殺虫 剤のスプレー缶を回収する際には、夏場に荷 物を運ぶトラック内の温度が上がって缶が爆 発する事態を防ぐために、クール宅急便でス プレー缶を冷やしながら配送したこともあっ たという。
製品安全への関心高まりが背景に  ヤマトグループがリコール支援に参入した 背景には、製品の安全性やリコール対応への 社会的関心の高まりがあった。
〇五年、松下 電器産業(現パナソニック)のFF式石油暖 房機でCO(一酸化炭素)中毒事故が相次ぎ、 大規模な回収を迫られた。
 〇六年にはパロマ工業(現パロマ)製のガ ス湯沸かし器で同じくCO中毒による死亡・ 重傷事故が続発していることが発覚、製品回 収などの安全対策が不十分として激しい非難 を浴びた。
同社のケースは、対応を誤れば企 業存亡の危機に直面しかねないほど、製品の 安全確保が重要な問題になっていることを如 実に見せつけた。
 こうした動きを受けて政府も〇七年五月、 改正消費生活用製品安全法を施行。
トラブ ルの早期把握と被害の拡大防止のため、使っ た人が亡くなったり重傷を負ったりする深刻 な製品事故が起きた場合、メーカーや輸入業 宇佐美志郎リスクマネジメン トカンパニー課長 コンダクターが定期的に開いている社内会議の模様。
参加者 同士でリコール対応の支援業務に必要な知識を確認し合い、リ コールを取り巻く社会環境の変化に対応するとともに、今後 の営業方針を議論している。
者に事故発生を知ってから十日以内に国へ報 告するよう義務付けた制度をスタートさせた。
これまでに報告があったのは家電製品のほか、 ガス器具や石油ストーブ、電気コンロなど多 岐にわたる。
 〇九年には製品安全などの消費者行政を一 元的に担う消費者庁が発足。
事故情報の収集 やトラブルの原因究明などに力を入れている。
さらに、一三年には、問題がある火災報知器 や消火器などの消防用品について、総務大臣 が製造・販売業者に回収を命令できる制度も 導入される予定だ。
今後もメーカーの製品安 全に対する責務は強まりこそすれ、弱まるこ とは考えられない情勢だ。
 ひとたび自社製品に不具合などのトラブル が起これば、メーカーは回収だけでなく、消 費者への案内や問い合わせへの対応といった 大きな負担を強いられる。
しかし、コストな どの問題もあり、メーカーが社内にリコール の専門部隊や専門人材を常時大量に抱えてい るわけではない。
一括して支援するソリュー 主回収が起きた際の消費者への購入代金返還 業務なども追加した。
佐川急便では、サービ ス全体で一三年度に約五〇億円の売り上げを 目指している。
 一方、郵便事業会社の子会社でメディアへ のプロモーション業務などを手掛けているJ Pメディアダイレクトも一一年、リコール関 連業務をパッケージで支援することを売り物 にした「リコール・シューター」を開始。
イ ンターネットを活用して情報を収集し、製品 事故が起きていることを早期に察知するよう 努める点などをアピールしている。
 それでも、YMMの清水氏は「グループの 人間がオールインワンでサポートしているのは うちだけ。
そういう意味ではあまり他社とバ ッティングはしない。
サービスのきめ細かさ が違う」と、生き残りに強い自信を見せる。
 YMMはリコールサポートのほか、同じく ヤマト運輸などと協力し、家電製品やIT機 器が壊れた場合、利用者の自宅まで直接回 収に行き、修理が終われば再び自宅に届ける 「メンテナンスサポートサービス」などを提供。
好評を博している。
 さらに、今年五月、新たに企業の「お客様 情報室」向けに、製品の回収・交換をサポー トするサービスを始めた。
リコールのような大 規模なケースと異なり、通常の不良品交換な どが対象だ。
宅急便を中心に経営リソースを 活かした新サービス開発には終わりがなさそ うだ。
            (藤原秀行) ションサービスの需要が見込めるとヤマトグル ープは判断した。
ライバル参入も生き残りに強い自信  もちろん、ライバルたちも新たなニーズの 発生を、指をくわえて見ているわけではない。
佐川急便は〇九年、リコール発生告知から製 品回収までの一括支援をうたった「リコール・ トータルサービス」を開始。
グループが持つ輸 送やロジスティクス、産業廃棄物回収といっ たノウハウを活かすほか、コールセンターや損 害保険あっせん、コンサルティングといった 専門分野の業務は、トランスコスモスや三井 住友海上保険、インターリスク総研と連携し て提供している。
 今年三月には、リコールのほか、パソコン や靴の修理・回収支援などの既存サービスを 組み合わせて、サービスの名前を「リバース・ ソリューション」に改編し、事業拡大に向け た専門部署「リバース・ソリューション課」を 開設。
新たなメニューとして、リコールや自 NOVEMBER 2012  56 リコールサポートサービスの流れ 【不具合・リコール発生】 【回収方法プランニング】 リコールサポート・コンダクターが 最適な回収方法をプランニング 【告知】 新聞・チラシ・DM・TVCMなど メディア告知支援 【電話受付】 電話による告知や受付業務 【システム管理】 データ管理や送り状の発行のほか 回収までのシステム連携 【良品・資材配送】 良品の一斉配送および 回収用梱包資材の提供・配送 【製品回収】 宅配便ほかヤマトのサービスによる 回収作業 【保管・検品】 回収品のメンテナンス・保管・ 検品・廃棄など 【アフターフォロー】 回収状況情報提供 報告資料作成など 出所:YMM資料より

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