2012年11月号
グローバル物流市場の実像

Part 5 グローバル・ロジスティクス業界の展望「16th 2012 Third-Party Logistics Study」を読む

NOVEMBER 2012  72 グローバル・ロジスティクス業界の展望 「16th 2012 Third-Party Logistics Study」を読む アウトソーシングの傾向  今回の調査「16th 2012 Third-Party Logistics Study」(注1)では、荷主の六四%が3PL の利用を増やしていると回答している。
その一 方、二四%は3PLの提供していたサービスの うち一部を自社管理に戻しており、また五八% が「3PLの利用もしくは取引会社数を減らし ている」と回答している。
 表1は、荷主がアウトソーシングしているロ ジスティクス機能を地域別に示している。
どの 地域においても「輸送」や「倉庫」などのオペ レーション分野は、アウトソーシングされる比率 が高い。
「フォワーディング」や「通関」は、オ ペレーションというより「手続き」に近い業務 であるが、これも自営よりフォワーダーや通関 業者に任せるのが一般的となっている。
 それに対して、「輸送計画と運営」、「在庫管 理」、「ITサービス」といった機能のアウトソー ス率は全体平均でそれぞれ二三%、二一%、一 五%と低い。
「サプライチェーン改善提案」では これが十一%まで下がる。
複数の3PLを総括 管理する「LLP(リードロジスティクス・プ ロバイダー)/4PL」を利用している荷主と もなると利用率は九%に留まっている。
 サプライチェーンの改善提案やLLPなどの 業務は、3PLの新たなサービス領域としての 開発が期待されているが、現状ではオペレーシ ョンにかかわるサービスのアウトソースが大勢を 占め、戦略性の高い分野はいまだに荷主の自社 管理とする傾向が強い。
 3PLがサプライチェーンの運営やLLPに 介入するのは、そう容易なことではない。
例え ば、米ゼネラルモーターズ(GM)は米大手3 PLのメンローと合弁で二〇〇〇年にLLP会 社のベクターSCMを設立したが、〇六年に合  米ペンシルベニア州立大学と仏キャップジェミニコ ンサルティングは毎年共同で「3PL報告書(Third-Party Logistics Study)」を発表している。
その最新版とな る第16回・2012年版を参照しながら、グローバル・ ロジスティクス業界の今後の方向性を概観する。
グローバル物流市場の実像 〜新たな可能性の探求に向けて〜 平田義章 国際ロジスティクスアドバイザー Part 5 表1 アウトソースされたロジスティクスサービス(単位:荷主の利用度 %) 注:*LLP(リードロジスティクスプロバイダー)や4PLとは複数の3PLを統括・管理する機能 出所:16th 2012 Third Party Logistics Study Figure 6 より作成 サービスの内容全地域北アメリカヨーロッパアジア・パシフィックラテンアメリカ 国際輸送 国内輸送 倉庫 フレイトフォワーディング 通関 輸送計画と運営 在庫管理 ITサービス サプライチェーン改善提案 LLP / 4PL* 78 71 62 57 48 23 21 15 11 9 66 65 65 52 49 24 20 15 15 7 91 77 61 54 43 27 16 14 7 10 77 74 65 64 56 21 27 13 13 13 84 69 63 65 45 16 25 16 9 4 73  NOVEMBER 2012 弁を解消し、ベクターSCMを自社所有に戻し ている。
 またITサービスについて荷主と3PLの間 に大きな?ギャップ?が存在することも注目さ れる(図1)。
荷主の九三%は、IT能力を3 PLに欠かせない機能の一つと位置付けている。
しかし、3PLのIT能力に満足している荷主 は五四%に過ぎないのが現状だ。
長期的に見れ ばギャップは縮まっているとはいえ、いまだに 大きな開きがある。
新興国市場における3PL活用  今回の調査では、新興国ビジネスにおける3 PLの利用にもスポットライトが当てられた。
 回答企業のうち、先進国にベースを置き新興 国と取引している、あるいは新興国内に参入し ている企業は、荷主で五二%、3PLで四八% であった。
また新興国にベースを置いている企 業は荷主が二八%、3PLが二九%であった。
合わせて約八割の企業が新興国市場と関わって いることになる。
 それらの企業にとって現在、最大の市場とな っているのは、図2に示されている通り、中国、 インド、ブラジル、メキシコの四カ国である。
こ れは荷主と3PLで共通していた。
 新たな市場への参入は充分な調査を必要とす る。
とりわけ新興国は経済環境や条件が急激に 変化することが多く、常に現地の状況を把握し ておかなくてはならない。
具体的には、現地 の複雑な法律・規制、文化の違い、約束した納 期やサービスレベルを順守することができるか、 といったことが課題になる。
 そこでは3PLが重要な役割を果たしている。
新興国ビジネスにおいて、荷主が最も評価する 3PLの能力は、「ビジビリティ(可視性)」の 確保であり、また最新の貿易規則や自由貿易協 定(FTA)に基づいてネットワークを最適化 し、モノの流れを管理することである。
 さらには現地のオペレーションを熟知した上 で、積極的なコンサルティングと総合的なソリ ューションを提供することを荷主は3PLに期 待している。
 しかし、今回の調査結果によると、現状では 半数以上の荷主が、新興国との取引ないしは新 興国内の取引においては、「グローバル3PLと ローカル3PLとの連携」が最適だと考えてい る。
グローバル3PLには十分なIT機能と施 設の確保を期待し、ローカル3PLには効率的 なオペレーションを求めている。
人材不足をどう克服するか  サプライチェーン人材の不足は荷主と3PL の双方にとっての大きな課題となっている。
次 の五年間において組織を成功に導く最大の要因 図1 3PL のIT 能力に対する荷主の期待と満足度 100% 80% 60% 40% 20% 0% 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 89% 27% 33% 42% 40% 35% 42% 37% 42% 54% 54% 85% 91% 90% 92% 92% 92% 88% 94% 93% IT ギャップ 荷主の期待 荷主の満足 図2 メーンとする新興国市場 荷主3PL 中国 インド ブラジル メキシコ ロシア トルコ 南アフリカ インドネシア ベトナム フィリピン その他 エジプト コロンビア 中国 インド メキシコ ブラジル インドネシア ベトナム 南アフリカ トルコ ロシア フィリピン コロンビア エジプト その他 77% 80% 61% 60% 56% 41% 41% 41% 40% 39% 37% 27% 26% 22% 63% 56% 55% 47% 44% 41% 39% 37% 34% 30% 29% 28% NOVEMBER 2012  74 として、荷主の六一%、3PLの七七%が「適 切な人材の確保とリーダーシップ」を挙げてい る(本号特集 17 頁参照)。
 しかし、実際には多くの企業がサプライチェ ーン人材のマネジメントに問題を抱えている。
経 営層がサプライチェーン人材の問題に目を向け るのは、社内のキーマンがその必要を指摘した とき、あるいはキーマンを失ったとき等に限ら れていて、組織的な取り組みを欠いている。
こ の状況は人材開発プログラムを導入することで 解決を図るべきだと報告書は指摘している。
 サプライチェーンリーダーに求められるスキル としては、荷主と3PLの双方が「業務遂行」 能力を最重視している。
それに次いで「人材の 管理と開発」が挙がっている。
しかし、別の設 問では「人材開発」が人材マネジメントにおけ る最大の懸念に挙がっている。
 現在のリーダーは業務遂行能力は備えている ものの、人材開発において課題を抱えている ことがこの調査結果から読み取れる。
さらには、 多くの荷主と3PLが、現在のリーダーは今後 のビジネス上の課題に対処する資質を備えてい ないのではないかと危惧している。
 中途採用に関しては、荷主の六四%、3PL の七一%が同じ業界内の他社から人材を採用し ている。
その一方で荷主企業の出身者を3PL が採用するなど、近隣業界に人材を求める傾向 も強まっている(図3)。
 また、組織に人材を惹きつける要因として考 えられているのは、一位が「企業の成功(五 七%)」であり、以下、「企業内昇進・成長の 機会」、「魅力的な報酬/待遇」「良好な職場環 境と人間関係」と続く(図4)。
先進国市場 VS 新興国市場  3PLの利用率を地域別に見ると、アジア・ パシフィック(七六%)とラテンアメリカ(七 三%)で高く、北米(五八%)とヨーロッパ (五七%)では相対的に低くなっている。
つま り新興国のほうが先進国よりも利用率が高い。
 これは、新興国において3PLが提供するサ ービスレベルとインフラが、既に十分なレベルに 達していると荷主がみなすようになったことの 表れかも知れない。
あるいは、成熟市場におけ るアウトソーシングに荷主が防衛的になってい る、すなわち自営の方が、リスクが低いと考え るようになっているためとも考えられる。
 その一方、いったんアウトソーシングした業 務を自営に戻した荷主の比率は、アジア・パシ フィックとラテンアメリカのほうが、北米やヨー ロッパよりも高かった。
先ほどの傾向と矛盾す る結果のようだが、新興国においては先進国以 上にアウトソーシング戦略の頻繁な変更を強い られるということなのだろう。
 また、この結果はアジア・パシフィックとラ テンアメリカが、3PL企業にとって極めて魅 力的なマーケットであり、グローバル3PLの 明確なターゲットとなり得ることを示している。
 それと同時に荷主は、サプライチェーンの複 雑化が進み、グローバルな管理業務が増加して いることを念頭に置いて、3PLや4PLの提 供するサービスとプロセスが可能にするロジステ ィクス能力を慎重に見極めるべきだとの強い指 摘がある。
 そのために一部の荷主企業はグローバルSC Mの司令塔、中央ハブとして機能する「サプラ イチェーン・コントロール・タワー」とも呼ぶべ き組織の設立に動いていると、報告書は指摘し ている。
「ニアショア」市場の再評価  低コストを求めて生産拠点を新興国に移して いったことで、サプライチェーンは長く、かつ 細くなった。
そのことの再検討が始まっている。
ボストンコンサルティンググループの分析による と、アメリカと中国におけるメーカーの総労働コ ストは、二〇一五年頃には同水準に近づき、最 終コストの差は一〇%以下にまで縮まるという。
 その結果、一部ではこれまでのオフショア戦 略の揺り戻しが起こり、消費地近隣に生産拠点 を移す「ニアショア」が実施される。
 そうしたグローバルサプライチェーンの再構築 図3 ロジスティクス人材の獲得方法 同業他社 ヘッドハンター 公募 社員の推薦/口コミ 他業界 (3PL↔荷主物流部門など) ソーシャルネットワーク 64% 51% 46% 37% 22% 18% 21% 14% 47% 41% 71% 63% 荷主 3PL 75  NOVEMBER 2012 増やしていると答えているが、その他の回答結 果を見ると現状の3PLの能力やサービスに対 する評価は厳しく、安易にアウトソースはしな い傾向も見られる。
 アメリカで3PLのコンセプトが開発されて から既に二〇年以上が経過した。
その間に市場 は大きく変化している。
創成期には新たに出現 したビジネスモデルとそのサービスに大きな注目 が集まったが、時の経過とともに、より現実的 な効果が期待されるようになっている。
 世界経済は今、?ストレス状態?にあるとさ れる。
数年にわたる急成長の後に減速し、低迷 から抜け出せないでいる。
ITの進化と輸送技 術の革新によって、先進国のメーカーは新興国 の安い労働力を利用できるようになった。
そし てサプライチェーンの効率運営は経済成長の原 動力となってきた。
 しかし、今後は海外生産に過度に依存するこ との弊害が表面化していくことになるのかも知 れない。
既に一部では自国への生産回帰の動き も見られる。
グローバル・ロジスティクスがど のように変化していくか、その動向をしばらく は注視する必要がある。
 とはいえ、そうした短期的な事象が世界の貿 易システムを構造的に変化させることはないで あろう。
 ビジネスの国際的な拡大にともない、規模の 大小を問わず多くの荷主が国際貿易に介入する ようになった。
それに機敏に対応してきたのが フレイトフォワーダーであった。
グローバルなサ プライチェーンの最適化を実施するためには、貨 物の最終引渡し地点までの一元管理が前提とな において3PLは重要な役割を果たす。
そのた めに六〇%近い荷主が、リレーションシップの 強化を目的として3PLパートナーの再評価を 行うべき時期を迎えていると答えている。
 今回の報告書では「3PLは荷主の現在と将 来のビジネスニーズと課題に対して迅速かつ柔軟 に対応しているか」との問いに対し、ほとんど すべての3PL(九八%)が「対応している」 と答えている。
しかし、同じ質問に対する荷主 の回答は六八%であり、前回調査の七二%から さらに下がっている。
3PLと荷主の見解には ギャップがあり、改善の余地は大きい。
これからの3PLサービス  以上、一二年の3PL報告書を概観してきた。
今回の調査では荷主の六四%が3PLの使用を る。
そのためにフォワーダーは港から内陸地点 へと手を広げてきた。
ヨーロッパのメガフォワ ーダーはその典型例といえよう。
そこで提供さ れているロジスティクス・サービスが今日の3P L市場の一つの核となっている。
 その一方、先進国の輸送規制が排除されてい くなかで新たなビジネスモデルとして3PLが誕 生した。
3PLはロジスティクスの効率化とコ スト削減を求めプロセス改革を推進し、そのサ ービス領域を、国内・国際輸送、在庫管理、包 装、配送、さらには簡易的なアッセンブリーや 返品管理にまで広げてきた。
 そして大手3PLはM&Aを実施してフォワ ーディング機能まで手にすることになった。
荷 主のグローバル化が、国際輸送における有利な 運賃やルートの選定、開発途上国での通関や内 陸輸送の手配を含めた新たなサービスの開発を 必要とした。
 今後も荷主のニーズを的確に把握した新たな サービスの創造が求められることは変わらない。
情報管理、サプライチェーン企画などのコンサル ティングサービスがそのカギになる。
そこでは既 にグローバル市場に進出している大手のみなら ず、特定のサービスに特化したニッチプレーヤー による市場開発の可能性もあるだろう。
注 (1) 2012 THIRD-PARTY LOGISITICS STUDY, Results and Findings of the 16th Annual Study, C. John Langley, Jr. Ph. D. , and Capgemini. 当 報告書は3PLサービスの使用者/非使用者の管理 職一五六一人および3PL企業の管理職六九七人 を対象に、二〇一一年に実施したアンケート調査を 分析したものである。
荷主 3PL 51% 43% 40% 39% 27% 26% 60% 54% 47% 34% 39% 図4 サプライチェーン人材を組織にひきつけるものは何か 業界トップ3の地位 (規模とブランド) 57% 57% 57% 55% 54% 53% 41% 48% 20% 30% 18% 18% 15% 13% 12% 10% 9% 7% 企業の成功 企業内昇進・成長の機会 魅力的な報酬/待遇 良好な職場環境と人間関係 企業家精神/自主独立の精神 イノベーション 柔軟性 ロケーション

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