2012年11月号
SOLE

グローバル・サプライチェーン再構築実践ガイドの策定に着手

SOLE 日本支部フォーラムの報告 The International Society of Logistics NOVEMBER 2012  84  SOLE日本支部では今年度から 新たに「グローバル・サプライチェー ン再構築実践ガイド」の策定に着手し た。
「米国防調達ガイドブック」のフ レームワークを利用して、民間企業 がサプライチェーンを設計・運用する ための方法論をまとめる。
(SOLE 日本支部事務局幹事 曽我部旭弘) ロジスティクス理論の原点  我が国において事業システムの開 発・改善は、基本的に個別企業によ る独自の取り組みによって進められて きた。
事業モデル開発設計のための 知識・知恵の体系化は、チェーンス トア業態の開発のために「流通の戦略 シリーズ」全八巻が一九六五年から七 五年にかけて出版された程度で、そ れ以降はほとんど見受けられない。
 その間にもコンビニエンス・ストア の台頭や、ユニクロをはじめとする製 造小売業の開発などが日本で進んだが、 それらは全て個別企業のリスクの元で 開発、実践されてきたものである。
 これに対して欧米、とくに米国は国 を挙げて事業システムの開発とその体 系化に取り組んできた。
業種別事業モ デルの開発では「APQC(米国生産 性品質センター)」が目を見張るよう な体系化を実現し、他にも「標準原子 力パフォーマンスモデル(SNPM)」 など日本が見習うべきことは多い。
 これらの研究の原点にあるのが「米 国防調達ガイドブック(DAG)」で ある。
さらには国防調達のスペシャリ ストを育成するための「DAU(国 防調達大学)」や「ECRC(電子的 商取引開発センター)」など、社会イ ンフラとして高い存在価値を持つ組織 を米国は数多く有している。
 我が国においても、事業システム開 発の知財・ナレッジを個別企業に埋 もれさせてしまうのではなく、それ を再利用できるようなインフラが必要 であろう。
我々SOLEロジスティク ス学会日本支部も微力ながらその一 端を担いたいと考えている。
 筆者は食品メーカーに勤務する実務 家として、一九六〇年代後半に物流 情報システムの構築に取り組んだ。
「注 文」を「現金」に換えていくプロセス、 すなわち「受注」「配送」「請求」「回収」 業務の標準化と製品在庫の適正化を目 指したが、その実現は困難を極めた。
 物流は種々な業務・プロセスをつな ぐ機能である。
それなのに販売・製 造・調達などの機能とプロセスが整理 されないまま、その最適化と向き合 うことになり、会社全体の業務構造 や取引習慣、ルールを変革すること の困難さを、身を持って体験するこ とになった。
 そこで当時の筆者は原点に立ち返 って、事業システムとは何か、その変 革とは何を指すのか。
食品メーカーと して「どんな製品・サービスを、誰 に、どのようにして届けるか。
その グローバル・サプライチェーン 再構築実践ガイドの策定に着手 生産計画 部品調達 図1 事業プロダクト・プロセス革新とグローバル対応 GSC・国際工程管理 (ライフサイクルマネジメント)*(新国際工程管理) 事業計画 開発・実施準備 調達 販売 生産 運用・サービス リタイアメント(撤退) ? 事業企画準備段階? 実施段階? 運用・廃棄段階 ?1 ?2 ?3 自社分析 事業企画 事業設計 ? ナレッジプロジェクト   マネジメント ? マネジメント改善(組織・人的資源管理・財務など) ? マインド・スキル開発と習得 ? 現行事業・業務改善(現場を磨く) (繰り返し量産) (個別受注設計生産) 販売計画 引合い 仕様打合せ カスタマイズ設計 生産計画 部品調達 受注処理 輸配送配置 現地工事 運用リタイア 廃棄・再利用 完成品在庫 ?5 ?4 工程作り ネットワークネットワーク業務 プロセス作り 製品支援 生産 保全・整備(TPM) 据付け 生産 85  NOVEMBER 2012 DAGに準じて以下のようなサブシス テムから構成されると仮設した。
?事業企画準備段階(自社分析、事業 企画、事業設計、ネットワーク業務プ ロセス作り、ネットワーク工程作り) ?実施段階(繰り返し量産タイプ、個 別受注設計生産タイプ) ?運用・廃棄段階(製品・サービス 配置、保全・廃棄) ?ナレッジプロジェクトマネジメント ?現行事業・業務改善(現場改善) ?マネジメント改善 ?マインド・スキル開発と習得  その全体像が図1である。
そのう ち「?・事業企画準備段階」は図2 のようなプロセスを踏む。
このように 各サブシステムを可視化した、次代を 担う我が国の若き実務家たちの助け となる実践的なガイドを作成した、調 査報告書として発行する計画だ。
 これも含め本年度SOLE日本支 部では、「ロジスティクス基盤技術」 として「DAG・PMBOK分科会」 を展開し、「業種別RAMS」では鉄 道と原子力、「モデル化」では事業機 能のWBS展開をテーマとする報告を 行う計画だ。
我々の小さなナショナル センターとしての活動記録が、いつの 日か欧米に匹敵する知的財産として 進化していくことを願っている。
めて我々に示した。
その変革にはデザ イン思考に基づいた事業ライフサイク ル全体のエンジニアリングとマネジメ ントが必要である。
 そこで我々SOLE日本支部で は、今年度の活動の柱の一つとして 「グローバル・サプライチェーン再構 築実践ガイド」の策定に着手すること にした。
DAGのフレームワークをベ ースに、それを民間に転用するかた ちで、グローバル・サプライチェーン を構築・運用する手法をまとめる。
 事業システムのライフサイクルは、 ために必要なしくみはどうあるべき か」を改めて検討することにした。
 そのために早稲田大学生産技術研究 所(当時)の吉谷龍一教授からワークデ ザインによるシステム設計方法および生 産システムのあり方を検討・設計・記 述する訓練を受けた。
また当時、花王 の物流を統括されていた山越完吾氏か らB・S・ブランチャード博士の著書 「ロジスティクス・エンジニアリング・ マネジメント(LE&M)」を紹介され、 深い関心を持って研究を重ねていった。
 後日、「LE&M」は米国防省の調 達ガイド(当時はMIL規格)を民 間向けに転用した解説書であること を知った。
それから現在に至るまで米 国においてロジスティクスは軍事技術 体系の中で育まれ、それを逐次、民 間に転用するかたちで発展してきた。
米軍の知見を民間に転用    今日、我々はグローバルなサプライ チェーンの再構築を迫られている。
昨 年の3・ 11 の大震災は、サプライチ ェーンが複雑でグローバルな物流ネッ トワークから成り立っていることを改 図2 「?・事業企画準備段階」フレームワーク  ?.1〔自社分析〕 ?.2〔事業企画〕 ?.3〔事業設計〕 ?.5〔事業ネットワーク工程作り〕?.4〔事業ネットワーク業務プロセス作り〕 自社経営実態を知り、段階的成長のために事業再編成計画を立案する 企画対象事業毎にビジネスモデル(事業計画)を策定する 企画対象事業モデルの詳細仕様・要件を整え、実現ステップを決定する 1 沿革・経営理念分析 2 業界・事業の業務プロセス分析 3 決算書・財務分析 4 経営戦略、マーケティング分析 5 人的資源管理分析 6 利益・資金計画 7 リスクマネジメント 1 製品・サービス・競合優位性 2 ビジネスモデル・事業規模 3 事業ビジョン・達成ステップ 4 製品・サービス詳細検討  実践プロセス戦略的連携 5 売上利益の前提条件整理と  数値目標 1 製品・サービスの品質機能展開 2 製品・サービス構成と部品サービス毎  ネットワーク工程プロセス設定 3 部品プロセスの要件仕様の設定    〃    製作図書作成 4 原単位設定 1 拠点ネットワーク配置計画  特に生産物流拠点と輸配送ネットワーク 2 調達・生産・物流などネットワーク  コスト見積り 3 設備投資採算の確認 1 現行業務組織体系で改造する事項を想定 2 対象市場・顧客との関係で  所要業務・組織化 3 本部・支部で開発・調達生産等  業務分担想定 4 ITC情報化開発すり合わせ計画 5 運用条件、原単位などの想定と  マスターメンテナンス 5 QCDの事前評価 6 ネットワーク工程能力想定・評価 7 プロジェクトの計画と運用  (WBS 展開) 6 投資採算  資金繰り計画など *事業構成・事業マップ 事業毎顧客売上、粗利貢献分析 事業毎SWOT 分析など *経営改善計画で事業再編成の方向付けを行う *企画対象事業をSC上で概要を決定する 事業再編成計画 対象事業ビジネスモデル( 事業計画) 実施段階へ 事業設定で設定したネットワーク工程を 現行で活用できる拠点ネットワークも 利活用して実現する 事業設計で求められる業務プロセス要件 を実現するため業務体系を作り込む

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