2012年12月号
特集

Case study メーカー アサヒビール──鮮度競争からコラボレーションへ

DECEMBER 2012  26 キリンビールとの共同化がスタート  二〇一一年六月、アサヒビールとキリンビールに よる物流共同化が始まった。
首都圏の一部エリア で、アサヒとキリンの配送拠点に相互乗り入れする かたちで共同配送を行っている。
茨城・埼玉・長 野・静岡の四県ではビール空瓶や空樽、パレットな ど空容器の回収を両社で役割分担している。
 圧倒的なシェアを背景に長年にわたって物流の効 率化を進めてきた両メーカーが共同化でメリットを 出せる部分は限られている。
工場からの出荷は既 に大型車が満載で、そこから溢れた分しか混載の 対象にはならない。
両社工場の位置が離れている 場合には、それさえも難しい。
 首都圏で始まった共配を地方に展開するのも困 難だ。
両メーカーとも首都圏には中小型車で小売 店や飲食店に配送するための積み替え用センターを 複数置いている。
末端配送は本来であれば卸の役 目だが、人手不足だったバブル時代にメーカーが卸 を支援するかたちで整備した。
 メーカーは卸からは配送代行料を徴収している が割の合う仕事ではない。
しかも、センター納品 が増えて、末端配送の積載率は低下する傾向にあ り、相互乗り入れにはメリットがあった。
しかし、 地方は卸の自社配送が基本で、メーカーの積み替 え拠点もほとんどない。
 それでも両社が共同化に踏み切った意味は小さ くない。
長年ビール業界では大手メーカー四社がそ れぞれ独自のサプライチェーンを整備し、メーカー 系列間で激しいシェア争いを続けてきた。
しかし、 メーカーのマインドセットは変化した。
 アサヒビール営業統括本部流通部の松浦端担当 副部長は「これ までは配送にお いても保管にお いても、全部自 前でやることで 成長してきたわ けだが、今は競争する部分と共同でやっていく部 分を整理して、企業の枠を超えたコストダウンを進 めていかなければいけないステージに入っている」 と言う。
 八〇年代後半から続けてきた“フレッシュローテ ーション”の取り組みによって、同社の「スーパー ドライ」のメーカー在庫は既に三日台まで抑制され ている。
生産してから四日以内に出荷されて、九 割以上がメーカーの物流拠点を経由せずに、その まま取引先のセンターに納品される。
 九四年には既に五日台を達成していた。
その後、 二〇〇一年にSCM本部を設立。
需給調整や生産 計画、調達機能を集約してプロセスとシステムを統 合したことで、〇四年に三日台を達成した。
 翌〇五年にはSCM本部を廃止。
同時にSCM 本部傘下のSCM推進部を物流システム部に改称。
それ以降は社内に「SCM」を冠した部署は置い ていない。
SCM機能を各部門に改めて分散させ て、市場の最前線の動向を常にウォッチしながら緻 密な管理を徹底している。
 現在、需給管理は営業戦略部がベースとなる予 測を立て、それに基づき物流システム部が生産計画 を作成し、在庫を配分するというプロセスをとって いる。
その最前線では納品先ごとに過去の実績か ら発注頻度や発注量を分析し、さらに担当営業か らの情報などを加味して、物流システム部のスタッ アサヒビール ──鮮度競争からコラボレーションへ  メーカー在庫は既に3日台まで抑制された。
取引制度改 革で流通在庫の削減も済ませた。
キリンビールとの物流共 同化にも踏み切った。
個別企業の取り組みは既に限界に近 付いている。
次のステージへの突破口を、製配販3 層によ る日本型コラボレーションに期待している。
                (大矢昌浩、渡邉一樹) 営業統括本部、流通部 の松浦端担当副部長 Case study メーカー 27  DECEMBER 2012 フが日々在庫量を調整している。
 「システムで過去データから統計的に需要を予測 することはできても、新製品の動きや将来どうな るかまで分かるわけではない。
やはり最後は人間 の判断にかかってくる。
担当者の匙加減一つで在 庫水準は大きく変わってくる。
並大抵のことでは 三日台という在庫レベルは維持できない」。
かつて は物流システム部門に在籍していた松浦担当副部 長は説明する。
 松浦担当副部長が現在所属する流通部は取引制 度の設計と運用を担っている。
鮮度の高い商品を 消費者に届けるために、特約店や小売りの在庫を 適正化することが主な役割の一つだ。
 ビール業界では〇五年にメーカー四社が主導する 形で、抜本的な取引制度改革が実施に移されてい る。
従来の「応量リベート」をやめて、物流効率 化の進展具合によって支払われる「機能リベート」 に一本化。
希望小売価格・希望卸売価格・メーカ ー出荷価格からなる「三段階建値制」も廃止し、 価格をオープン化した。
 これによって、応量リベート頼みのまとめ買いに よる廉価販売は効かなくなり、適正量を仕入れて、 業態に合わせた価格で販売するというモチベーショ ンが流通側に強く働くようになった。
大型車単位 の取引やEOSの普及も広がり、サプライチェーン 全体の効率化が大幅に進んだ。
 それと同時に酒類の流通構造は大きく変化した。
九八年から始まった酒販免許の規制緩和によって 酒類の販売チャネルは急速に多様化した。
それまで メーンだった一般酒販店に代わってまずはスーパー が躍進。
国税庁の資料によると、九五年に六六% だった一般小売店の販売数量構成比は、〇九年に は一九・一%まで低下。
逆にスーパーは九五年の 一四・一%が、〇九年には三四・九%まで伸長し ている。
 これに呼応する形で酒卸の統廃合も進んだ。
九 五年に約一七〇〇あった卸売業者が二〇一一年に は約六〇〇まで絞り込まれた。
 そして現在は大手小売りのPBブームが酒類に まで波及している。
酒税法の関係から帳合は卸を 通さざるを得ないが、実質的にはメーカーと小売り の直接取引だ。
商慣行の是正に向けて  メーカーが自分の思い通りにサプライチェーンを 動かせる時代は終わった。
アサヒビールは昨年、経 済産業省が音頭をとり、消費財分野における代表 的企業四〇社が集結した「製配販連携協議会」の 発起人企業に名を連ねた。
同協議会では取引慣行 の是正、配送共同化、情報システムの標準化につ いて、それぞれワーキンググループ(WG)を設け て協議を行っている。
 具体的には、製造日から賞味期限までの期間の 三分の一を過ぎた商品の納品を小売りが認めない、 いわゆる“三分の一ルール”の緩和などが議題に 上がっている。
ビールメーカーの場合、三分の一よ りずっと短いリードタイムで納品しているため、実 質的には影響を受けていない。
それでも「三層で 工夫できることがあるなら一緒に取り組みたいと いう姿勢で臨んでいる」と松浦担当副部長は言う。
 WGにおける話し合いは必ずしも順調とは言え ない。
廃棄損の削減をはじめ総論には各社賛成で も、各論に入ると意見が食い違う。
仮にWG内で 合意ができたとしても、それを業界全体にどうや って浸透させるのか、具体的な方策が見えてこな い。
欧米と違って日本はメーカーも小売りも上位集 中が進んでいない。
製造販売連携協議会に各分野 のトップ企業が集まったといっても、そのシェアは 限られている。
 しかし、個別企業の取り組みは既に限界に来て いる。
製配販三層によるコラボレーションにその突 破口を期待せざるを得ない。
勝つのは誰だ 食品SCM 特集 酒の業態別の販売割合 一般小売店 66.0% コンビニエンスストア 10.9% スーパーマーケット 14.1% 百貨店等 1.7% 百貨店 0.8% 出所:国税庁「酒のしおり」より その他 7.3% 一般小売店 19.1% コンビニエンスストア 11.1% スーパーマーケット 34.9% 量販店 14.7% 業務用 8.7% ホームセンター・ その他 4.9% ドラッグストア 5.8% 1995年 2009年

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