2012年12月号
現場改善
現場改善
第119回 日雑メーカーT社の正社員センター長育成
DECEMBER 2012 78
センター長のスキルにばらつき
T社は年商約一〇〇〇億円の日用雑貨品製
造卸だ。
取扱品目数は約六万五〇〇〇。
自社 製品のほか、中国・タイを中心とした現地法 人からの輸入商材と他社からの仕入れ品の卸 売も行っている。
北海道、東北、関東、近畿、中部、中・四 国、九州の全国計七カ所に物流センターを設置 している。
一〇年前までは一五カ所にセンター を構えていたが、合理化のため集約を進めて きた。
国内の自社工場および協力工場の分布、海 外からの調達物流、そして納品先となる各地の 卸やホームセンター(HC)の物流センターに 納品する運賃をシミュレーションした結果、現 在の七拠点が最適との判断に至った。
その後は物流担当役員であるS氏の強いリ ーダーシップの下、改善活動に取り組み、継続 的に物流コストを下げてきた。
我々日本ロジフ ァクトリー(NLF)は、その第一ステージの 「ムダ取り」の段階から改善のサポートに入っ ている。
続く第二ステージでは「センター長を軸と した社員業務の見直しとレベルアップによるコ ストダウン」をテーマに掲げ、センター運営の 「質」の問題にメスを入れた。
第一ステージの ムダ取りは本社が主導したが、第二ステージは 現場が取り組みの主体となる。
具体的には以下の三つに取り組んだ。
?センター長の業務内容の精査 ?委託物流会社との業務改善 ?センター作業における基本動作の徹底による 出荷精度および生産性の向上 「?センター長の業務内容の精査」は、各セ ンターの管理レベルの底上げが目的である。
セ ンターによってトータル物流コスト(経費率) に大きな違いがあった。
これにはT社が各拠 点に一人ずつ配置している正社員センター長 個々人のスキルが影響していた。
この格差を是 正しようという狙いである。
もっとも、各センターの取扱品目や物量は必 ずしも同じではない。
納品先までの配送距離 や時間帯、拠点エリアにおいて対応可能な協 力物流会社の数や質など、地域性の違いもあ る。
その点を考慮して、北海道と中・四国は 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 全国七カ所に物流センターを展開、それぞれ正社員のセン ター長を置いていた。
しかし、各人のスキルにはバラツキが あった。
現場オペレーションを委託している各地の協力会社 による作業レベルの違いも大きかった。
その結果、センター によって物流コストに大きな差が出ていた。
日雑メーカーT社の正社員センター長育成 第119 回 あおき・しょういち 1964年生まれ。
京都産業 大学経済学部卒業。
大手運送 業者のセールスドライバーを経 て、89年に船井総合研究所入 社。
物流開発チーム・トラッ クチームチーフを務める。
96 年、独立。
日本ロジファクトリー を設立し代表に就任。
現在に 至る。
主な著書に『経営のテ コ入れは物流改善から』(明日 香出版社)、『物流のしくみ』(同 文館出版)などがある。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp PROFILE 79 DECEMBER 2012 ひとまず対象から外し、残る東北、関東、近 畿、中部、九州の五拠点を当面のターゲットに 据えた。
上記五拠点を順次訪問し、各センター長の 運営に対する考え方や改善実績、業務範囲と その内容を確認しながら、センター長のスキル チェックを行った。
そこから大きな課題が見つかった。
センター 長によって個人差はあるものの、いずれも現 場の責任者という立場にありながら、センタ ー運営の実態を把握しきれていないことが分 かったのである。
センター長の日常業務を確認したところ、一 日の大半は本社とのやり取り、収支報告、そ して現場におけるクレーム処理に費やされてい た。
勤務時間の九割近くは事務仕事で占めら れており、センター長は事務所に「引きこも り」状態であった。
物流上のクレームを一覧表にまとめて、そ の内容を確認したところ、要因別の欄に「不 明」と記されている項目があまりにも多かっ た。
通常のセンターであれば「不明」は二〇 %未満に収まる。
それがT社の場合、三五% 以上あった。
クレームの備考欄を見ると「見つからず」「不 明のまま」といったコメントが目立った。
原因 の究明を途中で諦めているということである。
必要なオペレーション情報を入手する手順が確 立されておらず、実態把握が欠如していた。
具体的な対策として、センター長の日々の基 本業務を見直した。
現場のオペレーションを委 託している協力会社の朝礼・昼礼には必ず参 加し、一日二回の現場の巡回(ラウンド)を ルーティンワークとして組み込むことを義務付 けた。
センター長によって徹底のレベルに差はあっ たものの、基本業務の見直しから一カ月も経 たないうちに、現場の実態を示す報告が上が ってくるようになった。
「協力会社B社はパー トの出入りが激しく、ヒトが定着していない」、 「マニュアル通りの作業手順を守っているスタ 物流品質指標の設定 評価の対象指標項目内容指標の単位計算式 全体的な物流精度 を評価する指標 品揃えの状況を 評価する指標 センターの出荷精度 を評価する指標 受注精度を 評価する指標 配送精度を評価 する指標 1.在庫差異率 4.誤受注率 5.誤配送率 6.遅納率 7.未納率 3.?誤出庫率 ?誤出荷率 2.?ヒット率 ?品切れ率 (在庫品) ?品切れ率 (全品) 実地棚卸とコンピュータ上の商品在 庫数・金額との差異の割合 差異アイテム数(金額)/在庫 アイテム数(金額)×100 在庫商品のデータ行数/受注 データ行数×100 在庫品品切れ受注データ行数 /在庫品受注データ行数×100 当日出荷データ行数/当日出荷 受注データ行数×100 誤出庫データ行数/受注データ 行数×100 誤出庫データ行数/受注データ 行数×100 誤受注データ行数/受注データ 行数×100 誤配送発生納品先件数/全配 送納品先件数×100 遅納発生納品先件数/全配送 納品先件数×100 未納発生納品先件数/全配送 納品先件数×100 ?アイテム数 ?金額 納品先件数 在庫品のうち、出荷当日に在庫がな くなった商品の割合 出荷当日に出荷できなかった商品の 割合 出荷検品で品違い、数量相違、出 荷漏れが発見された商品の割合 納品検品や顧客クレームにより品違 い、数量相違、出荷漏れが発見され た商品の割合 顧客の注文を間違って出荷の手配を 行った商品の割合 納品先を間違えて配送した配送先件 数の割合 約束の時間より一定の許容時間以上 前後して納品した配送先件数の割合 配送途中の商品紛失などの理由で納 品できなかった配送先件数の割合 8.破損・汚損率 破損・汚損発生納品先件数/ 全配送納品先件数×100 納品検品や顧客クレームにより納品 できない程度に商品が傷んでいた配 送先件数の割合 在庫として品揃えできている商品の 割合 データ行数 物流作業効率指標の設定 評価の対象指標項目内容指標の単位計算式 要員の出荷効率を 判断する指標ピッキング効率ピッキング担当者が一定時間内に ピッキングを行う伝票行数 データ行数 出荷データ行数/ピッキング時間 エリア別の生産性 を判断する指標エリア別出荷効率エリアごとの1人当りの出荷数量出荷データ行数/エリア別投下 データ行数 人員 ルート別の配送効 率を判断する指標対売上運賃比率 ルート別の売上金額に占める支払運 賃の比率 ルート別支払運賃/ルート別売 円 上金額×100 DECEMBER 2012 80 ッフがほとんど見当たらない」、「天地無用が 徹底されていない」などである。
ここからピースピッキングで商品を取り出す 「元箱」の管理が各拠点に共通する課題である ことも判明した。
「保管棚に開梱されたケース が二つある」、「少量になると裸の状態で保管 することになっている」などの報告があった。
ロット間違い、日付の逆転(先入れ先出しの 不備)につながる大きな問題である。
こうしてセンター長たちは、現場をラウンド することの重要性を肌で感じ取っていった。
セ ンター長の基本業務を定めるに当たって筆者 は、「現場はウソをつかない」ことを各人に強 く伝えてきた。
その意味を理解してもらえた ようであった。
取り組みテーマを固める 「?委託物流会社との業務改善」は、本来で あれば「受注締切時間の徹底」や「イレギュ ラー処理の削減」などがテーマになるところだ。
しかし、それには物流部門が主導して営業 部門を始めとする他部門に改善を働きかけて いく必要がある。
緊急輸送等のイレギュラー を可視化し、それによるコストアップ金額を提 示し、関係部署に改善を促す。
一定の範囲を 超えるイレギュラーの要請には物流部門として 対応しないといったルールを定めるなど、?物 申す物流部?として活動しなければならない。
T社の場合は時期尚早であった。
そこで他部門との調整を必要とする改善は、 中長期の課題として位置付け、まずは現場レ ベルで解決できるテーマから着手することにし た。
その具体策をセンター長たち自身に検討さ せたところ、以下の三つが上がってきた。
a.入荷時間を制限することによる荷受け作 業人員の削減 b.商品調達のために手配している「引き取 り便」の受け入れ先の配送業務をT社の配 送ルートに組み込むことによる運賃削減 c.ロケーション・レイアウトの見直し いずれも協力物流会社にメリットのある施 策であり、交渉で揉めることのないやり易い テーマである。
センター長たちが出し惜しみを しているのは明らかだった。
「在庫削減」が抜 けている。
そのことを担当役員S氏が仕切るプロジェク ト会議の場で指摘したところ、五人のセンター 長たちは「きたか!」とばかりに表情を硬く した。
構わず筆者は続けた。
需要予測によっ て補充発注量をコントロールし、欠品を出さず に在庫を削減することを、センター長の主力業 務とすべきだと訴えた。
それによってセンター 長に正社員を投入している意味も出てくる。
それによって、センター長は新たな責任を担 うことになる。
しかも、在庫を削減した分に ついては、協力会社に保管料の引き下げを要 求しなければならない。
協力会社は空いたス ペースを埋めるために他に荷主を探すことを強 いられる。
歓迎される折衝にはならない。
一瞬、席が静まりかえった後、プロジェクト リーダーのS氏が口を開いた。
「ウチの在庫は ここ数年やや高めに推移している。
我々も本 丸のテーマに着手しなければならない」と筆 者の提案を後押しする指示を出した。
そして、 在庫削減の具体的な手順については我々NL Fの指導を受けるようにと補足したのであっ た。
その後、各センターで在庫削減が実施に移 された。
うち関東は今のところ現状維持にと どまっているが、それ以外は、近畿と中部で 一〇〇坪強のスペースを削減、九州、東北で は中量ラックの導入による保管効率の向上と 併せてそれぞれ二〇〇坪弱を削減している。
誰でも一目で分かる物流作業品質 「?センター作業における基本動作の徹底に よる出荷精度および生産性の向上」は、我々 NLFが従来から持論としている「現場のシ ョールーム化」を視野に入れた改善である。
こ の取り組みでは、現場オペレーションを委託し ている各地の協力会社によって、徹底レベル、 徹底までの期間に大きな差が出た。
具体的な「基本動作」としてT社では次の 七点を再定義した。
●あいさつ、2Sの徹底 ●入荷検品の方法 ●格納手順の確認 ●先入れ先出しの徹底 ●保管状態の顔合わせ(面合わせ) ●元箱管理の統一 81 DECEMBER 2012 ●棚卸し方法の見直し 「あいさつ、2Sの徹底」では、各地の協力 会社の企業体質やカラーが如実に表れた。
T 社だけでなく、他の荷主まで含めて、日頃か ら物流会社としてどのような基礎教育を行っ ているか、また協力会社側の現場責任者の熱 意と継続力が試された。
五拠点のうち最初に合格点を与えることが できたのは中部センターだった。
他のエリアの 協力会社の責任者を中部センターに呼んで現場 を見学してもらい、各社の目線を合わせるこ とに時間を割いた。
その結果、関東センターと九州センターは早 い段階で中部レベルに追いついた。
それに少 し遅れて、近畿センターでも手応えが感じられ るようになっていった。
しかし東北センターだ けは全く変化の兆しが見られない。
責任者を 変えない限り、東北センターは改善の見込みが ないと我々は判断するほかなかった。
「入荷検品の方法」は、それまで拠点によっ てバラバラだった。
なかには全く入荷検品を 行っていないというセンターさえあった。
その ことをセンター長自身が気付いていなかった。
これを改め、「検品は数量検品を基本とする」、 「T社が作成する重点検品先リストの対象先は 入荷量の三%にあたるケース数を開梱し、入 り数までをチェックする」、「『入荷検品表』を 作成する」という三つを統一ルールとして義 務付けた。
「格納手順の確認」と「先入れ先出しの徹 底」は連動するテーマである。
格納にあたって は「入荷日」を表示する紙のサイズを拡大す ると同時に、午前中格納分と業務終了後の格 納分をアイテムによって区分した。
そしてケー ス出荷商品のピッキングでは、棚の右側のケー スから使用していくことをルール化した。
「保管状態の顔合わせ(面合わせ)」とは、棚 に並んだケースの四隅(よすみ)を揃えて、き れいに整列させることである。
顔合わせが出 来ていると、保管棚が一枚の壁のような状態 になる。
それによって作業効率や管理精度が 直接アップするわけではなくても、このことは 「現場のショールーム化」の大前提であり、筆 者としては外せない事項であった。
S氏も同 じ気持ちであった。
単なる精神論ではない。
顔合わせは、物流 に詳しくない人でも「きれいに整っている」と 一目で理解できる「品質」の証である。
取引 予定の営業担当者や経営幹部が来訪しても胸 を張って現場を案内できる。
その結果、商談 成立につながった事例を筆者は数え切れないほ ど知っている。
T社だけではなく、現場を任 されている協力会社にも大きなメリットがある。
大規模拠点の落とし穴 「元箱管理の統一」とは前述した通り、バラ 出荷時のケース開梱に関するルール化である。
ケース出荷商品のピッキングと同様に、元箱も 右端に揃えることにして、写真入りB4版の 「作業指示レシピ」を作成し、全国の拠点に配 布した。
それまでは各現場の作業者が勝手に判断し て開梱していた。
元箱を管理するという概念 自体が希薄だった。
実際、同じセンター内であ っても、元箱管理ができているフロアとでき ていないフロアがあった。
T社のセンター長だ けではなく、協力会社側の責任者も現場を掌 握できていなかったのである。
最後の「棚卸し方法の見直し」は在庫差異 の抑制が目的である。
従来は三カ月で全アイテ ムを網羅するように月一回の循環棚卸しを行 っていた。
しかし毎月の棚卸し作業は大きな 負担でコストアップ要因になっていた。
そこで毎週の月曜と水曜の閑散日を利用し て、一週間のルーティンに棚卸し作業を組み込 んだ。
同時に前年に導入したWMSを活用し て、月八回の循環棚卸しで全アイテムをカバー するように設計し、在庫管理精度の向上を図 った。
こうしてT社の改革は第二ステージを終え た。
これまでの活動から以下の二点を筆者は 痛感している。
一つは、拠点の規模が大きく なるにつれ、センター長は事務に追われるよう になり、現場が見えなくなってしまうという ことである。
そして二つ目も、拠点の規模と比例する問 題である。
規模が大きくなると、センター長 だけでなく、フロアリーダーの目も細部にまで 行き届かなくなる。
その結果、現場のパート・ アルバイトの基本動作が疎かになって、ミスが 多発する。
いずれもT社だけでなく、一般に 見られる傾向である。
取扱品目数は約六万五〇〇〇。
自社 製品のほか、中国・タイを中心とした現地法 人からの輸入商材と他社からの仕入れ品の卸 売も行っている。
北海道、東北、関東、近畿、中部、中・四 国、九州の全国計七カ所に物流センターを設置 している。
一〇年前までは一五カ所にセンター を構えていたが、合理化のため集約を進めて きた。
国内の自社工場および協力工場の分布、海 外からの調達物流、そして納品先となる各地の 卸やホームセンター(HC)の物流センターに 納品する運賃をシミュレーションした結果、現 在の七拠点が最適との判断に至った。
その後は物流担当役員であるS氏の強いリ ーダーシップの下、改善活動に取り組み、継続 的に物流コストを下げてきた。
我々日本ロジフ ァクトリー(NLF)は、その第一ステージの 「ムダ取り」の段階から改善のサポートに入っ ている。
続く第二ステージでは「センター長を軸と した社員業務の見直しとレベルアップによるコ ストダウン」をテーマに掲げ、センター運営の 「質」の問題にメスを入れた。
第一ステージの ムダ取りは本社が主導したが、第二ステージは 現場が取り組みの主体となる。
具体的には以下の三つに取り組んだ。
?センター長の業務内容の精査 ?委託物流会社との業務改善 ?センター作業における基本動作の徹底による 出荷精度および生産性の向上 「?センター長の業務内容の精査」は、各セ ンターの管理レベルの底上げが目的である。
セ ンターによってトータル物流コスト(経費率) に大きな違いがあった。
これにはT社が各拠 点に一人ずつ配置している正社員センター長 個々人のスキルが影響していた。
この格差を是 正しようという狙いである。
もっとも、各センターの取扱品目や物量は必 ずしも同じではない。
納品先までの配送距離 や時間帯、拠点エリアにおいて対応可能な協 力物流会社の数や質など、地域性の違いもあ る。
その点を考慮して、北海道と中・四国は 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 全国七カ所に物流センターを展開、それぞれ正社員のセン ター長を置いていた。
しかし、各人のスキルにはバラツキが あった。
現場オペレーションを委託している各地の協力会社 による作業レベルの違いも大きかった。
その結果、センター によって物流コストに大きな差が出ていた。
日雑メーカーT社の正社員センター長育成 第119 回 あおき・しょういち 1964年生まれ。
京都産業 大学経済学部卒業。
大手運送 業者のセールスドライバーを経 て、89年に船井総合研究所入 社。
物流開発チーム・トラッ クチームチーフを務める。
96 年、独立。
日本ロジファクトリー を設立し代表に就任。
現在に 至る。
主な著書に『経営のテ コ入れは物流改善から』(明日 香出版社)、『物流のしくみ』(同 文館出版)などがある。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp PROFILE 79 DECEMBER 2012 ひとまず対象から外し、残る東北、関東、近 畿、中部、九州の五拠点を当面のターゲットに 据えた。
上記五拠点を順次訪問し、各センター長の 運営に対する考え方や改善実績、業務範囲と その内容を確認しながら、センター長のスキル チェックを行った。
そこから大きな課題が見つかった。
センター 長によって個人差はあるものの、いずれも現 場の責任者という立場にありながら、センタ ー運営の実態を把握しきれていないことが分 かったのである。
センター長の日常業務を確認したところ、一 日の大半は本社とのやり取り、収支報告、そ して現場におけるクレーム処理に費やされてい た。
勤務時間の九割近くは事務仕事で占めら れており、センター長は事務所に「引きこも り」状態であった。
物流上のクレームを一覧表にまとめて、そ の内容を確認したところ、要因別の欄に「不 明」と記されている項目があまりにも多かっ た。
通常のセンターであれば「不明」は二〇 %未満に収まる。
それがT社の場合、三五% 以上あった。
クレームの備考欄を見ると「見つからず」「不 明のまま」といったコメントが目立った。
原因 の究明を途中で諦めているということである。
必要なオペレーション情報を入手する手順が確 立されておらず、実態把握が欠如していた。
具体的な対策として、センター長の日々の基 本業務を見直した。
現場のオペレーションを委 託している協力会社の朝礼・昼礼には必ず参 加し、一日二回の現場の巡回(ラウンド)を ルーティンワークとして組み込むことを義務付 けた。
センター長によって徹底のレベルに差はあっ たものの、基本業務の見直しから一カ月も経 たないうちに、現場の実態を示す報告が上が ってくるようになった。
「協力会社B社はパー トの出入りが激しく、ヒトが定着していない」、 「マニュアル通りの作業手順を守っているスタ 物流品質指標の設定 評価の対象指標項目内容指標の単位計算式 全体的な物流精度 を評価する指標 品揃えの状況を 評価する指標 センターの出荷精度 を評価する指標 受注精度を 評価する指標 配送精度を評価 する指標 1.在庫差異率 4.誤受注率 5.誤配送率 6.遅納率 7.未納率 3.?誤出庫率 ?誤出荷率 2.?ヒット率 ?品切れ率 (在庫品) ?品切れ率 (全品) 実地棚卸とコンピュータ上の商品在 庫数・金額との差異の割合 差異アイテム数(金額)/在庫 アイテム数(金額)×100 在庫商品のデータ行数/受注 データ行数×100 在庫品品切れ受注データ行数 /在庫品受注データ行数×100 当日出荷データ行数/当日出荷 受注データ行数×100 誤出庫データ行数/受注データ 行数×100 誤出庫データ行数/受注データ 行数×100 誤受注データ行数/受注データ 行数×100 誤配送発生納品先件数/全配 送納品先件数×100 遅納発生納品先件数/全配送 納品先件数×100 未納発生納品先件数/全配送 納品先件数×100 ?アイテム数 ?金額 納品先件数 在庫品のうち、出荷当日に在庫がな くなった商品の割合 出荷当日に出荷できなかった商品の 割合 出荷検品で品違い、数量相違、出 荷漏れが発見された商品の割合 納品検品や顧客クレームにより品違 い、数量相違、出荷漏れが発見され た商品の割合 顧客の注文を間違って出荷の手配を 行った商品の割合 納品先を間違えて配送した配送先件 数の割合 約束の時間より一定の許容時間以上 前後して納品した配送先件数の割合 配送途中の商品紛失などの理由で納 品できなかった配送先件数の割合 8.破損・汚損率 破損・汚損発生納品先件数/ 全配送納品先件数×100 納品検品や顧客クレームにより納品 できない程度に商品が傷んでいた配 送先件数の割合 在庫として品揃えできている商品の 割合 データ行数 物流作業効率指標の設定 評価の対象指標項目内容指標の単位計算式 要員の出荷効率を 判断する指標ピッキング効率ピッキング担当者が一定時間内に ピッキングを行う伝票行数 データ行数 出荷データ行数/ピッキング時間 エリア別の生産性 を判断する指標エリア別出荷効率エリアごとの1人当りの出荷数量出荷データ行数/エリア別投下 データ行数 人員 ルート別の配送効 率を判断する指標対売上運賃比率 ルート別の売上金額に占める支払運 賃の比率 ルート別支払運賃/ルート別売 円 上金額×100 DECEMBER 2012 80 ッフがほとんど見当たらない」、「天地無用が 徹底されていない」などである。
ここからピースピッキングで商品を取り出す 「元箱」の管理が各拠点に共通する課題である ことも判明した。
「保管棚に開梱されたケース が二つある」、「少量になると裸の状態で保管 することになっている」などの報告があった。
ロット間違い、日付の逆転(先入れ先出しの 不備)につながる大きな問題である。
こうしてセンター長たちは、現場をラウンド することの重要性を肌で感じ取っていった。
セ ンター長の基本業務を定めるに当たって筆者 は、「現場はウソをつかない」ことを各人に強 く伝えてきた。
その意味を理解してもらえた ようであった。
取り組みテーマを固める 「?委託物流会社との業務改善」は、本来で あれば「受注締切時間の徹底」や「イレギュ ラー処理の削減」などがテーマになるところだ。
しかし、それには物流部門が主導して営業 部門を始めとする他部門に改善を働きかけて いく必要がある。
緊急輸送等のイレギュラー を可視化し、それによるコストアップ金額を提 示し、関係部署に改善を促す。
一定の範囲を 超えるイレギュラーの要請には物流部門として 対応しないといったルールを定めるなど、?物 申す物流部?として活動しなければならない。
T社の場合は時期尚早であった。
そこで他部門との調整を必要とする改善は、 中長期の課題として位置付け、まずは現場レ ベルで解決できるテーマから着手することにし た。
その具体策をセンター長たち自身に検討さ せたところ、以下の三つが上がってきた。
a.入荷時間を制限することによる荷受け作 業人員の削減 b.商品調達のために手配している「引き取 り便」の受け入れ先の配送業務をT社の配 送ルートに組み込むことによる運賃削減 c.ロケーション・レイアウトの見直し いずれも協力物流会社にメリットのある施 策であり、交渉で揉めることのないやり易い テーマである。
センター長たちが出し惜しみを しているのは明らかだった。
「在庫削減」が抜 けている。
そのことを担当役員S氏が仕切るプロジェク ト会議の場で指摘したところ、五人のセンター 長たちは「きたか!」とばかりに表情を硬く した。
構わず筆者は続けた。
需要予測によっ て補充発注量をコントロールし、欠品を出さず に在庫を削減することを、センター長の主力業 務とすべきだと訴えた。
それによってセンター 長に正社員を投入している意味も出てくる。
それによって、センター長は新たな責任を担 うことになる。
しかも、在庫を削減した分に ついては、協力会社に保管料の引き下げを要 求しなければならない。
協力会社は空いたス ペースを埋めるために他に荷主を探すことを強 いられる。
歓迎される折衝にはならない。
一瞬、席が静まりかえった後、プロジェクト リーダーのS氏が口を開いた。
「ウチの在庫は ここ数年やや高めに推移している。
我々も本 丸のテーマに着手しなければならない」と筆 者の提案を後押しする指示を出した。
そして、 在庫削減の具体的な手順については我々NL Fの指導を受けるようにと補足したのであっ た。
その後、各センターで在庫削減が実施に移 された。
うち関東は今のところ現状維持にと どまっているが、それ以外は、近畿と中部で 一〇〇坪強のスペースを削減、九州、東北で は中量ラックの導入による保管効率の向上と 併せてそれぞれ二〇〇坪弱を削減している。
誰でも一目で分かる物流作業品質 「?センター作業における基本動作の徹底に よる出荷精度および生産性の向上」は、我々 NLFが従来から持論としている「現場のシ ョールーム化」を視野に入れた改善である。
こ の取り組みでは、現場オペレーションを委託し ている各地の協力会社によって、徹底レベル、 徹底までの期間に大きな差が出た。
具体的な「基本動作」としてT社では次の 七点を再定義した。
●あいさつ、2Sの徹底 ●入荷検品の方法 ●格納手順の確認 ●先入れ先出しの徹底 ●保管状態の顔合わせ(面合わせ) ●元箱管理の統一 81 DECEMBER 2012 ●棚卸し方法の見直し 「あいさつ、2Sの徹底」では、各地の協力 会社の企業体質やカラーが如実に表れた。
T 社だけでなく、他の荷主まで含めて、日頃か ら物流会社としてどのような基礎教育を行っ ているか、また協力会社側の現場責任者の熱 意と継続力が試された。
五拠点のうち最初に合格点を与えることが できたのは中部センターだった。
他のエリアの 協力会社の責任者を中部センターに呼んで現場 を見学してもらい、各社の目線を合わせるこ とに時間を割いた。
その結果、関東センターと九州センターは早 い段階で中部レベルに追いついた。
それに少 し遅れて、近畿センターでも手応えが感じられ るようになっていった。
しかし東北センターだ けは全く変化の兆しが見られない。
責任者を 変えない限り、東北センターは改善の見込みが ないと我々は判断するほかなかった。
「入荷検品の方法」は、それまで拠点によっ てバラバラだった。
なかには全く入荷検品を 行っていないというセンターさえあった。
その ことをセンター長自身が気付いていなかった。
これを改め、「検品は数量検品を基本とする」、 「T社が作成する重点検品先リストの対象先は 入荷量の三%にあたるケース数を開梱し、入 り数までをチェックする」、「『入荷検品表』を 作成する」という三つを統一ルールとして義 務付けた。
「格納手順の確認」と「先入れ先出しの徹 底」は連動するテーマである。
格納にあたって は「入荷日」を表示する紙のサイズを拡大す ると同時に、午前中格納分と業務終了後の格 納分をアイテムによって区分した。
そしてケー ス出荷商品のピッキングでは、棚の右側のケー スから使用していくことをルール化した。
「保管状態の顔合わせ(面合わせ)」とは、棚 に並んだケースの四隅(よすみ)を揃えて、き れいに整列させることである。
顔合わせが出 来ていると、保管棚が一枚の壁のような状態 になる。
それによって作業効率や管理精度が 直接アップするわけではなくても、このことは 「現場のショールーム化」の大前提であり、筆 者としては外せない事項であった。
S氏も同 じ気持ちであった。
単なる精神論ではない。
顔合わせは、物流 に詳しくない人でも「きれいに整っている」と 一目で理解できる「品質」の証である。
取引 予定の営業担当者や経営幹部が来訪しても胸 を張って現場を案内できる。
その結果、商談 成立につながった事例を筆者は数え切れないほ ど知っている。
T社だけではなく、現場を任 されている協力会社にも大きなメリットがある。
大規模拠点の落とし穴 「元箱管理の統一」とは前述した通り、バラ 出荷時のケース開梱に関するルール化である。
ケース出荷商品のピッキングと同様に、元箱も 右端に揃えることにして、写真入りB4版の 「作業指示レシピ」を作成し、全国の拠点に配 布した。
それまでは各現場の作業者が勝手に判断し て開梱していた。
元箱を管理するという概念 自体が希薄だった。
実際、同じセンター内であ っても、元箱管理ができているフロアとでき ていないフロアがあった。
T社のセンター長だ けではなく、協力会社側の責任者も現場を掌 握できていなかったのである。
最後の「棚卸し方法の見直し」は在庫差異 の抑制が目的である。
従来は三カ月で全アイテ ムを網羅するように月一回の循環棚卸しを行 っていた。
しかし毎月の棚卸し作業は大きな 負担でコストアップ要因になっていた。
そこで毎週の月曜と水曜の閑散日を利用し て、一週間のルーティンに棚卸し作業を組み込 んだ。
同時に前年に導入したWMSを活用し て、月八回の循環棚卸しで全アイテムをカバー するように設計し、在庫管理精度の向上を図 った。
こうしてT社の改革は第二ステージを終え た。
これまでの活動から以下の二点を筆者は 痛感している。
一つは、拠点の規模が大きく なるにつれ、センター長は事務に追われるよう になり、現場が見えなくなってしまうという ことである。
そして二つ目も、拠点の規模と比例する問 題である。
規模が大きくなると、センター長 だけでなく、フロアリーダーの目も細部にまで 行き届かなくなる。
その結果、現場のパート・ アルバイトの基本動作が疎かになって、ミスが 多発する。
いずれもT社だけでなく、一般に 見られる傾向である。
