2012年1月号
特集

第4部 日本のS&OPはどこまで来たか JFEスチール──営業・生産・物流の実行計画を統合

S&OPシステムを導入  鉄鋼市場は二〇〇〇年頃を境に様変わりした。
新 興国の需要が急増したのに伴い、鉄鉱石などの原料価 格が高騰し、しかも激しく変動するようになった。
一 方、自動車メーカーなどの需要家のグローバル化が進 み、世界経済に需要が大きく左右されるようになった。
 JFEスチールの西川廣システム主監は「リーマン ショックで鉄鋼需要が急激に縮んだように、昔では 考えられないような変化が起こるようになった。
何 をどれだけ販売していくか、収益をどのように計画 するか、工場の稼働体制をいかに柔軟に変更するか。
環境変化に迅速に、柔軟に対応するためのオペレー ションの実行が課題になっていた」と説明する。
 従来の事業計画の立て方ではそれが不可能だった。
販売、生産、物流の各部門がそれぞれ別のシステムと データベースを使用して計画・管理業務を行っていた からだ。
まず商社へのヒアリングから営業担当者が販 売数量を予測する。
それをもとに、各部門がそれぞ れの業務の実行計画を策定する。
それを取りまとめ て半期の販売数量の計画を固め、そこから価格計画 を立て、半期の予算を決定するというフローだった。
 各部門のシステムは連携されていなかった。
営業担 当者個人のパソコンには詳細な需要情報が入っていて も、他部門には地域別、品種別などのメッシュの粗 い情報しかない。
計画策定のために詳細な情報を入 手したり、全社的な需要動向を分析するには営業担 当者に個別に問い合わせるしかなかった。
そのため 予算の策定に約二カ月もの時間を要していた。
 JFEスチールは〇三年に川崎製鉄と日本鋼管が 統合して発足している。
そうした旧計画システムは JFEスチールの発足後、暫定的なシステムとして手 組みで開発されたものだった。
 同社はまず、受注管理業務を行う基幹システム「J ─Smile」の構築を先行させて〇六年に稼働させ た。
その約一年後、実行計画と予算計画の策定プロ セスの同期化と計画策定時間のスピードアップを目指 し、子会社のJFEシステムズなども含めたプロジェ クトチームを組織し、「JFE─Flessa 1(JFE Flexible Efficient Speedy Sales and operation management system :以下、フレッサ1)」と名付 けた新システムの開発に乗り出した。
 フレッサ1は、主に「?需要把握システム」、「?需 要管理システム」、「?需給計画システム」から構成さ れる。
「サービスバス」と呼ばれる連携基盤によって 各システムをJ─Smileや経理システムと結び、計 画と実績を統合管理できるようにした。
 「?需要把握システム」は、製品の販売分野別に 「商社コラボレーション・システム」と「物件管理シス テム」に分かれる。
このうち商社コラボレーション・ システムは、自動車や家電向けなど、一定の仕様の製 品を繰り返し販売する「リピート分野」の需要を把握 するものだ。
需要家の三〜五カ月先の需要情報を商 社の担当者に基本的に月に一度、入力してもらう。
 物件管理システムは、土木工事やビル建設などの 「プロジェクト分野」が対象だ。
JFEスチールの営 業担当者が工事日程などに合わせて必要な製品と数 量を管理している需要情報を取り込んでいる。
この 二つのシステムによって、以前よりも細かいメッシュ で他部門が鋼材の需要予測を得られるようにした。
 「?需要管理システム」は全社の販売計画を策定す る。
需要把握システムからの情報とJ─Smileか らの過去の受注実績、在庫水準、経理システムからの 情報などを基に、営業担当者ベースの受注計画、価 JANUARY 2012  30 JFEスチール ──営業・生産・物流の実行計画を統合  2009年11月、S&OPを中核とする新システムを稼働させた。
それまで営業、生産、物流が別々に立案していた実行計画 を統合し、市場の変化に柔軟に対応できる体制を整備した。
計画立案作業のリードタイムが半減し、月次で半期計画をロ ーリングさせることが可能になった。
     (梶原幸絵) 日本のS&OPはどこまで来たか 特 集 格計画、予算などの販売計画を集約している。
 「?需給計画システム」は、全社の販売計画をもと に生産・出荷計画を策定し、それを販売計画にフィー ドバックし計画を最適化する。
 これらの計画策定プロセスは月次で行う。
従来は、 まず半期計画を作り、そこから月次の計画に落とし 込んでいた。
需要動向に急激な変化が起これば、半 期計画の立案から改めてやり直さなければならなかっ た。
フレッサ1では先に半期計画を作るのを止めて、 月次実績を半期計画に反映させて修正していくロー リング方式に改めた。
 販売、生産、物流の各部門が使用するデータベース も統合した。
データベースには計画・管理に関する詳 細な情報が蓄積されており、そのデータ件数は約一 〇〇万件に及ぶ。
各部門の担当者はそれぞれに必要 な角度とメッシュでデータを自由に閲覧し、業務の改 善につなげられるようになった。
予算策定期間が半減  フレッサ1の中核となっている「?需要管理シス テム」、「?需給計画システム」の構築に当たっては、 複数のITベンダーのパッケージを約一年かけて検 証した。
その結果、「?需要管理システム」にはJ DAソフトウェア(当時、i2テクノロジーズ)の パッケージソフト「(S&OM( Sales & Operations Management)」が最もコンセプトに適合していると 判断した。
「?需給計画システム」にもJDAの「S CP( Supply Chain Planner)」を採用した。
また 「?需要把握システム」にはオラクルの「Deman tra」と「Siebel」を利用している。
 そして〇九年一月、フレッサ1の本開発に着手し、 同十一月に稼働させた。
これによって予算策定にか かる期間は六〇日から三〇日に半減した。
計画策定 のための作業時間は延べ四〇%減少した。
 JFEスチールの新田哲IT改革推進部営業・S CMグループリーダー(部長)は「最新の情報を反 映して販売・生産計画を決めることができるように なった。
震災後の急激な需要の変動に対しても、膨 大な需要変更データを速やかに計画システムに反映す ることにより、上手く対応できたと思う」と環境変 化への対応力向上に手応えを感じている。
 現在、フレッサ1のユーザー数は海外を含め約三〇 〇人、月間のログイン件数は延べ四〇〇〇〜五〇〇 〇回に上り、全社的なマネジメント基盤として定着し ている。
IT改革推進部では、そうしたユーザーに 対する活用支援も行っている。
 フレッサ1はBI機能も備えており、例えば販売部 門では過去の計画と最新計画、最新実績の対比や受 注トレンド、出荷トレンド、価格推移の分析などを行 うことができる。
こうした例を掲載したサイトを作成 して公開し、より高度な活用を促している。
 今後はフレッサ1の業務領域を広げ、「フレッサ2」 を構築する計画だ。
まず、本社と製鉄所とのシステム の連携を強化する。
現在、「?需給管理システム」に よって本社生産部門で立てた品種別の月次生産計画 は人手で調整された後、各製鉄所に渡り、製鉄所で はそこから過去実績などを考慮しながら、スケジュー リングシステムで生産計画を策定している。
 そこで本社に全製鉄所の生産シミュレーションを行 うシステムを導入し、「?需要管理システム」と生産 シミュレーションシステム、製鉄所のスケジューリング システムを連動させる検討を進める。
これによって共 通のデータベースに蓄積された情報を製鉄所の生産計 画にも活用し、計画の精度を高めていく考えだ。
31  JANUARY 2012 新田哲IT改革推進部 営業・SCMグループ リーダー(部長) 西川廣システム主監 工場 物流 商社 総括 S&OM SCP コスト 需要データ (リピート) 需要データ (物件) 売上 能力 荷揃・出荷 ・在庫 入庫・出庫 ・在庫 受注実績計画ABPP Service Buss 営業 販売生産 物流 経理システムJ-Smile 工場・基地システム 商社コラボレーション 物件管理迅速化最適化 販売・売上管理・計画 需給計画

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