2012年1月号
ケース

コーセー 3PL 物流システムの再構築を日立物流に委託ライバルとの共同化にコスト削減を期待

JANUARY 2012  44 六拠点体制で自社物流を運営  店舗で販売する化粧品には、メーカーが販 社を通じて小売店と直接契約し、カウンセリ ング方式で対面販売する「制度品」と、問屋 を経由して流通するセルフ販売型の「一般品」 がある。
 コーセーでは制度品を「化粧品事業」、一 般品を「コスメタリー事業」に区分している。
二〇一一年三月期決算の売り上げ構成比は、 化粧品事業が七四%で、コスメタリー事業が 二四%となっている。
 これまで同社では一般品の物流については 外部のアセットを活用する一方で、制度品は 小売店までの物流システムを自社で構築・運 営する方針をとってきた。
 七〇年代に主力の狭山工場(埼玉県)に併 設して、中央在庫拠点となる「マザーセンタ ー」を設立し出荷体制を整備。
九〇年代に入 ると、北海道(恵庭市)・東北(福島県須賀 川市)・名神(滋賀県湖南市)・中四国(岡山 県笠岡市)・九州(福岡県古賀市)の全国五 カ所に「流通センター」を建設し、販社の支 店在庫を地域別に集約した。
これによって狭 山のマザーセンターから流通センターを経由し て、全国の小売店へ供給する体制を整えた。
 各センターには自動ラックやデジタルピッキ ングシステムを装備して作業を標準化し、小 売店へ受注条件によって翌日または翌々日に 配送するサービスレベルを設定した。
建物や 設備・機器への投資もすべてコーセー自身で 行った。
 流通センターの在庫は当初、狭山を除いて 販社に帰属し、販社を代行してコーセーの物 流部がセンターを運営するかたちだった。
そ の後、二〇〇五年に基幹業務システムを刷新 したタイミングで、すべての販社在庫をコー セーの在庫に切り替え、在庫管理を一元化し た。
 これに並行して組織の再編を行った。
そ れまでは生産計画・販売計画・物流計画が、 それぞれ別々に動いていた。
生産・調達の計 画や指示を「生産管理センター」が行い、製 品がマザーセンターへ入庫してから小売店へ 届けるまでを物流部が管理、流通センターへ の補充は販社の支店・営業所の情報をもとに 流通センターの担当者が指示を出していた。
 これを改めるために、段階的に組織の統合 を進めた。
〇八年に「ロジスティクス部」を発 足。
その傘下に、生産・在庫計画の立案や需 給管理を担当する「需給コントロール室」と 流通センターなどの物流業務を管理する「物 流統括室」を組み入れた。
販社の受注業務も 「受注センター」を設立し、そこに集約した後、 同部へ移管した。
 〇五年から〇九年までの五年間にわたる一 連のサプライチェーン改革によって、コーセー は制度品の在庫を約三割削減することに成功 した。
 しかし、その一方で、同社は物流施設の老  化粧品メーカーのコーセーが物流業務のアウトソー シングに踏み切った。
販売チャネルの多様化に対応し た出荷機能の強化やトレーサビリティー管理の実現に は、多大な投資が必要であることから、従来の自社 運営路線を転換した。
業務委託先にはライバルの資 生堂と同じ日立物流を選んだ。
同業種同士の物流共 同化による大幅なコスト削減を期待している。
3PL コーセー 物流システムの再構築を日立物流に委託 ライバルとの共同化にコスト削減を期待 45  JANUARY 2012 朽化という大きな問題を抱えていた。
稼働か ら一〇年以上が経過した各地の流通センター は出荷能力が限界に近づいていた。
なかでも 深刻なのは築三〇年を超える狭山のマザーセ ンターだった。
 マザーセンターは中央在庫拠点であると同 時に、エリア内の小売店に制度品を供給する 流通センターとしての役割も担っていた。
し かし、そのオペレーションは他の拠点のよう に機械化されておらず、手作業中心で、早く から能力不足が表面化していた。
 そのために本来は狭山の出荷エリアである 北関東三県や長野・静岡県を、東北や名神の 流通センターから出荷してカバーするという いびつな状態になっていた。
当日納品の対応に限界  機械化の進んだ他の五カ所の流通センター にしても、システムの陳腐化が目立ってきて いた。
稼働当初と比べて取り扱い件数やアイ テム数が大幅に増えたことに加え、市場環境 が著しく変化したことが原因だった。
 流通センターを全国に整備した当時、制度 品の最大の販売チャネルは個人経営の化粧品 専門店だった。
そのためセンターのオペレー ションも専門店との取引をベースに設計され ていた。
しかし、その後、化粧品の販売チャ ネルは大きく変わった。
 まず一般品に強いGMSが制度品でも勢力 を伸ばし、続いて薬局・薬店をチェーン化し たドラッグストアが化粧品の有力な販売チャ ネルに躍進した。
今ではコーセーの制度品の 売り上げの四〜五割をドラッグストアが占め、 GMSと専門店がほぼ同じ比率でこれに続く という構成になっている。
 専門店からの発注には主に電話かファクス が使われる。
その注文を販社の支店で受けて データを処理し、翌々日に流通センターから 配送するというやり方が従来の基本パターン だった。
EOSによる発注を対象に翌日配送 も実施していたが、その比率は小さかった。
 これに対してGMSやドラッグストアは、 一般品のセンター納品方式をモデルに、制度 品についても独自の物流体制を敷いているこ とが多い。
流通センターはそれだけ多様な納 品形態に対応しなければならない。
 発注方法もEOSの比率が七割を占めるま で拡大した。
しかも、EOS発注の半数以上 で、「受注当日の夕方までにセンターへ一括納 品」というサービスレベルが取引条件として 求められるようになった。
受注から納品まで のリードタイムが極端に短くなった。
 デジタルピッキングシステムを軸とする従 来の出荷体制は、多様化する納品形態とサー ビスの高度化に対応できなくなっていた。
セ ンターの出荷作業の遅れが原因で、指定時間 までに納品が間に合わなくなる事態も発生し た。
出荷能力の強化が差し迫った課題となっ た。
 だが、設備のリプレースにはシステム開発 物流拠点の配置と出荷エリア    全国6拠点体制を4拠点に集約 アウトソーシング前 東北 (福島県須賀川市) 青森・岩手・秋田・ 宮城・山形・福島・ 新潟・長野・茨城・ 栃木・群馬 北海道(恵庭市) 北海道 九州(佐賀県鳥栖市) 福岡・大分・佐賀・長崎・熊本・ 宮崎・鹿児島・沖縄 関東(埼玉県川島町) 青森・岩手・秋田・ 宮城・山形・福島・ 新潟・長野・茨城・ 栃木・群馬・埼玉・ 千葉・東京・神奈川・ 山梨・静岡 北海道(北広島市) 北海道 アウトソーシング後 九州(福岡県古賀市) 福岡・大分・佐賀・長崎・熊本・ 宮崎・鹿児島・沖縄 中四国(岡山県笠岡市) 滋賀・京都・大阪・奈良・ 和歌山・兵庫・香川・徳島・ 高知・愛媛・岡山・広島・ 鳥取・島根・山口 名神(滋賀県湖南市) 静岡・愛知・岐阜・三重・ 富山・石川・福井 狭山(埼玉県狭山市) 埼玉・千葉・東京・ 神奈川・山梨 関西(兵庫県西宮市) 愛知・岐阜・三重・富山・石川・ 福井・滋賀・京都・大阪・奈良・ 和歌山・兵庫・香川・徳島・ 高知・愛媛・岡山・広島・鳥取・ 島根・山口 JANUARY 2012  46 を含め多大な投資が要る。
コーセーは〇八年 に策定した中期経営計画で収益力の強化を重 点課題に掲げ、ROA(資産収益率)の改善 をめざしていた。
この全社的目標に沿って同 社は、コア事業ではない物流への投資をやめ、 自前の設備と業務運営による自家物流からア ウトソーシングへ方針転換することを決断し た。
 この決断を後押しした要因はもう一つあっ た。
化粧品は医薬品などと同様に薬事法の規 制を受ける。
近年の法改正によって、化粧品 の品質や安全に問題があった場合には製造記 録などをもとに速やかに回収を行うことが事 業者に義務付けられた。
これに対応するには 製造ロットや使用期限を把握して厳密なトレ ーサビリティー管理を行う必要がある。
 コーセーが化粧品事業の新たな成長分野と して強化をめざしている海外の場合、規制は さらに厳しい。
ヨーロッパでは輸入品に対し、 製造後の使用期限はもちろんのこと、開封後 の使用期限(PAO=Period Aft er Opening)の表示まで義務付け る国が増えている。
ロット・期限管理を徹底 していないと日本から輸出する際に仕向け地 ごとの規制への適否を判断できず混乱が生じ かねない。
 同社にとって製造ロットや使用期限管理の 実現が今後の事業展開に欠かせない要件であ ることは間違いない。
そこで同社は、大掛か りなシステム開発を伴うロット・期限管理を スレベル、付帯サービス、営業施策なども記 した。
返品の受け入れ処理の仕方や、航空輸 送を利用する際の危険物対応など細かな要件 までも見積もりの判断材料として付け加えた。
 この定義書をもとに、コンペの参加者に作 業工程ごとの単価を算出して同社が用意した 「見積もりシート」に記入してもらった。
入出 荷やピッキング、流通加工、配送などの通常 の業務だけでなく、販促品のマスター登録や ギフトの詰め合わせ作業など、年に一、二回 しか行わない業務まで同社の物流に関わるす べての業務を見積もり項目に加え、各項目の 金額を積算することにより物流費の総額が一 目で分かるようにした。
 見積もりシートによるコンペには六社が参 加し、一次審査で二社に絞った。
二次審査で は五年後を目標にコスト改善の具体的な提案 を新たに求めた。
その結果、長期的により高 いコスト削減効果をコミットした日立物流に 委託先を決定した。
 コーセーはこのコンペで、見積もり金額そ のものには大きな期待をしていなかった。
山 口宏物流統括室長は「それまでいろいろなコ 物流のアウトソーシングによって実現しようと 考えた。
物流のアウトソーシングを事業環境 整備のための絶好の機会ととらえたのだ。
「要件定義書」に全貌を開示  業務委託先を決めるコンペの開催に向け、 ロジスティクス部では約半年をかけて詳細な 「要件定義書」を作成した。
外部のコンサルタ ントなどには一切頼らず、物流統括室のメン バーだけでデータ収集と業務分析を行い、コ ーセーの物流の全貌を定義書にまとめた。
ア ウトソーシングする業務の範囲と内容を明確 に示すことをとくに重視したという。
 佐々木好二ロジスティクス部長は「どこま でを業務範囲に含めるのかが提案者によって まちまちだと比較が難しくコンペが成立しな い。
こちらで全体の絵姿を描いたうえで、こ の部分について設計と見積もりをお願いする というやり方のほうが適切な判断ができる」 と説明する。
 定義書はアウトソーシングの目的から書き 起こし、現状の業務フローとアウトソーシン グ後の業務フローを対照させてコーセーと委 託先の業務区分を明示した。
さらにコンペに 参加する事業者がシステム設計や見積もり提 案を行う際に必要な情報を事細かく盛り込ん だ。
 各拠点の出荷量や在庫数、工程別の作業数 量、月間波動などのデータをはじめ、取引先 別のフローチャート、専用の帳票類、サービ 佐々木好二 ロジスティクス部長 47  JANUARY 2012 ストダウンを実現するというもの。
「現実味が あり期待度の高い提案だった」と佐々木部長 は評価する。
オリコンの共同化も検討  両社で合意した移管後のスキームでは、拠 点数が従来の六カ所から北海道(北広島市)・ 関東(埼玉県川島町)・関西(兵庫県西宮 市)・九州(佐賀県鳥栖市)の四カ所へ変わ った。
このうち北海道など三カ所は資生堂と の共同拠点。
マザーセンターを兼ねる関東物 流センターは日立物流がコーセー専用の拠点 として新設した。
 二〇一〇年九月に物流システムの開発を終 え、九州地区で新拠点への業務移管をスター ト。
一一年二月に関西、五月に北海道、一 〇月に関東の順にアウトソーシングを完了し た。
 六カ所の流通センターのうち、これまでに 工場内倉庫の狭山と東日本大震災の影響を受 けた東北を除き、売却を終えた。
庫内作業は もともと大半を外部へ委託していた。
コーセ ーが雇用していた一部のパート・派遣社員に ついては日立側で希望者の転籍を受け入れた。
 新マザーセンターの稼働とともに、ロッ ト・期限管理を行うための登録作業がスター トした。
コーセーではロット・期限管理の実 施に備え、二年前に品目・製造ロット・数 量・入庫日などを表わす物流管理用の二次元 バーコードを開発していた。
工場ではすでに 外箱段ボールへの貼付を開始しており、登録 作業が完了する一二年一月をめどに二次元バ ーコードによるロット・期限別の在庫管理を 実施できる見込みだ。
 これによりセンターへ入庫後の保管期間を ロット別に把握できるようになり、在庫管理 の精度が上がる。
出荷後も小売店までロッ ト・期限別のトレース管理が可能になる。
海 外向けについては輸出先ごとの法規制に基づ く出荷管理が容易になる。
 今後は日立物流がコミットした五年後のコ スト削減目標の達成に向け支援を行うことが ロジスティクス部の責務となる。
その施策の 一つとして資生堂と同一規格のオリコンによ るユニットロード化を検討している。
 資生堂は九〇年代に、商品が工場の生産ラ インを出てから小売店までオリコンで一貫流 通させるユニットロードシステムを完成してい る。
「我々も工場の出荷段階から同じオリコン を採用すれば、庫内の作業をもっと共同化で き、同梱での共同配送も可能になるはずだ」 と山口室長は見ている。
 このほか国際物流も効率化の余地が大きい 分野だ。
佐々木部長は「ロット・期限管理が 動き出せば国際物流の仕組みを再構築しやす くなる。
在庫の削減やリードタイムの短縮に ついて日立物流の知恵を借り、将来的には国 際間のSCMにもつなげていきたい」と話し ている。
(フリージャーナリスト・内田三知代) スト改善をやりつくしており、我々よりも安 いコストでできるところなどないかもしれな い、とも思っていた」と打ち明ける。
同社に とってアウトソーシングの第一義的な目的は 物流への投資負担の軽減にあり、コストにつ いては固定費から変動費に変わるだけでもメ リットは充分あると考えていたのだ。
 実際に日立物流から提示された金額は、初 年度だけを比較すると従来の自社運営による コストと大差はなかった。
だが五年後のコス ト削減目標として同社がコミットした数値は コーセーにとって予想以上に満足の行くもの だった。
 日立物流のコスト削減提案で決め手となっ たのは資生堂との共同化だった。
物流業務の 実際の受け皿となる「日立物流コラボネクス ト」は、〇六年に日立物流が資生堂から物流 業務をアウトソーシングされた際に譲り受けた 資生堂の物流子会社だ。
資生堂の資産だった 物流設備をそのまま引き継ぎ業務を受託して いる。
 そこへコーセーの物流業務を移管して保管 から配送までを共同化することで長期的にコ 山口宏物流統括室長

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