2012年1月号
現場改善
現場改善
第108回 準大手路線会社A社の新分野参入
JANUARY 2012 66
生き残りをかけて新分野に参入
路線会社A社は年商一〇〇〇億円を超える準
大手で、その社名は物流業界以外にも広く知ら
れている。
国内はもちろん海外にまで事業を展 開しているが、自社インフラは東日本がメーン となっている。
それだけに東日本大震災では大 きな影響を受けた。
改めて会社のあり方を見直 す必要に迫られたのである。
これまでA社は利益率こそ低いものの、業界 準大手として他社との大きな差別化要因がなく ても何とか凌いできた。
しかし、最大手クラス がじわじわとシェアを伸ばし、A社を含めた二 番手グループとの格差は広がる一方である。
こ のままでは、いずれ市場における立ち位置を失 ってしまうと、A社の上層部は強い危機感を抱 いていた。
生き残り策としてA社は、サービス対象分野 を絞り込み、既存顧客を死守すると同時に、新 しい事業の柱を構築しようと考えた。
そのため のプロジェクトチームを組織した。
メンバーは 八人。
統括部長をリーダーとして、専任の事務 局担当のほか、営業・システム・企画の各担当、 そして新規事業のオペレーションを担当する予 定の三拠点の現場所長である。
我々日本ロジファクトリー(NLF)がA社 から支援要請を受けたのは、プロジェクトが組 織されて新規事業の大枠がほぼ固まった段階で あった。
実際に事業化を進めるには社外の意見 や他社事例が必要と判断し、我々がプロジェク トに参画することになったのである。
事前打ち合せの段階で、A社が新たに参入す る分野を聞かされた我々は、「この会社もそう か」と感じざるを得なかった。
それほど現在の 物流業界で新規参入の絶えない分野であった。
A社といえども、その激戦区で勝ち抜いていく には相当な覚悟が必要である。
しかし、プロジェクトメンバーの顔触れを見 て、一抹の不安を禁じ得なかった。
新規事業を 立ち上げるうえで、最も重要なポイントは人材 だと筆者は考えている。
起業スピリットを持っ た人物、周囲の反対を押し切ってでも行動でき る馬力のある人物をリーダーに選び、その行動 の裏付けとなる十分な権限を与えない限り、社 内ベンチャーは成功しない。
メンバーのなかには残念ながらそうした人物 は見当たらなかった。
我々は人材発掘を常に念 頭に置きながら、プロジェクトを支援すること 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 業界最大手クラスとの格差が着実に広がっている。
このま までは、じり貧になるばかりだ。
強い危機感を覚えた準大 手路線会社が新たな事業の柱を求めて新分野への参入に乗り 出した。
プロジェクトチームを組織、三〇億円もの投資を決 意して、生き残りをかけた取り組みを進めている。
準大手路線会社A社の新分野参入 第108 回 あおき・しょういち 1964年生まれ。
京都産業 大学経済学部卒業。
大手運 送業者のセールスドライバー を経て、89年に船井総合研 究所入社。
物流開発チーム・ トラックチームチーフを務め る。
96年、独立。
日本ロジファ クトリーを設立し代表に就任。
現在に至る。
主な著書に『経 営のテコ入れは物流改善から』 明日香出版社、『物流のしく み』(同文館出版)などがある。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp PROFILE 67 JANUARY 2012 になった。
我々が事前に予想していた以上に、A社は 準大手に相応しいインフラとオペレーションス キルを備えていた。
路線便のターミナルとは別 に、保管型の汎用センターを全国数カ所に保有 していた。
そのなかには許可が必要な毒劇物倉 庫、防塵倉庫、セキュリティ完備の倉庫なども 含まれていた。
各センターの床荷重、高さ、駐 車場、トラックバースなどの基本スペックも充 実したものであった。
オペレーションも十分に他社と勝負できるレ ベルであった。
現場はあいさつ、「5S(整理・ 整頓・清潔・清掃・躾)」が徹底され、レイバ ーコントロールによる人員管理もうまく機能し ていた。
流通加工型のセンター運営においても、 また保管業務においても、著者の想像を超える すばらしいスキルと管理状況であった。
A社のポテンシャルを確認した後、我々はプロ ジェクトメンバーに改めてヒアリングを行い、対 象事業分野における既存荷主の有無や、自社の ?強み?などを聞き出していった。
この作業は我々のような外部の人間のほうが 適している。
自社の?強み?は、社内にいる人 間には、なかなか見つけにくいものだ。
とりわ けA社の場合は大半が新卒入社であるため、他 社との比較が難しい。
我々が彼等から情報を引 き出し、強み・弱みを判断する必要があった。
先行他社との差別化戦略を立案 我々の三つ目のアクションは、当該分野にお ける同業他社の参入状況と実績を把握すること であった。
大手、中堅、中小を合わせ数多くの 物流会社が当該市場に参入していた。
中には株 価維持やマスコミ向け話題づくりのために、い わゆるアドバルーンを上げているだけの会社も 多かった。
しかし、B社とC社は強敵だった。
既にかな りの実績を上げていた。
A社が後発として参入 するには、B社、C社とは異なる切り口でオン リーワンのサービスを提供する必要があった。
一連の調査を終え、同業他社における参入状 況の報告に基づいてプロジェクトメンバーとのブ レーンストーミングを開始した。
B社、C社と の差別化ポイントは、そう簡単には見つからな かった。
会議を何度も重ねたものの突破口を開 けない。
プロジェクトメンバーには次第に焦り が生じ、一時は参入断念のムードも漂っていた。
良くない流れを変えるために、筆者はNLF から見たときのA社の強み・弱み、荷主からの 評価・コメントなどを、雑談を交えてシャワー のようにメンバーたちに浴びせかけた。
するとある現場所長が口を開いた。
「過去に× ××のような業務を対応していたことがありま す」という。
それを受けて別の年配社員が「海 JANUARY 2012 68 外の××拠点では今でも△△の□□業務を対応 している」と情報がつながってきた。
そうして一つ仮説ができあがっていった。
そ の仮説を基に検証のための質問を筆者がさらに 投げかける。
それにまたメンバーが応える。
そ んなやり取りを何度も繰り返すことで、A社の 差別化戦略、オンリーワンサービスの設計図が 出来上がっていった。
作戦の一つは既存荷主に当該分野のクライア ントを多く持つ海外現地法人からのアプローチ である。
発地となる海外で荷主を取り込み、日 本国内への輸出分の保管、輸配送業務を狙う。
もう一つは中堅荷主へのアプローチである。
B 社、C社は今のところ当該分野の大手荷主のみ を対象としている。
そのため準大手以下が空い ている。
そこでA社は準大手から中堅にかけて をターゲットにすることで棲み分けるのである。
個別の案件の規模は小さくても数を集めようと いう作戦である。
こうしてA社は新分野への参入の糸口をつか んだ。
設定した事業ドメインと営業戦略には大 半のメンバーが手応えを感じていた。
この後、プロジェクトは「?事業化のポイン ト」、「?実施項目と優先順位の決定」、「?役割 分担の決定」、「?スケジュールの細分化」、「? 事業計画書としての取り纏め」へとプロセスを 進めていった。
「?事業化のポイント」としては、「提携」「M &A」「紹介」の三つが大きな柱だった。
新規事 業に必要な全ての機能とリソースを自前で構築 しようとすれば多大な時間と労力がかかってし まう。
その間にも環境はどんどん変化する。
外 部の力を借りて、?時間を買う?ことが不可欠 であった。
具体的には、情報システム、倉庫、ルート配 送、海外からの輸入フォワーディングの各機能 を「提携」によって担保することにした。
同時 に当該分野における荷主の物流子会社の「M& A」も視野に入れることにした。
また「紹介」 は金融機関や我々のようなコンサルタントをパ ートナー候補として位置付けた。
「?実施項目と優先順位の決定」と「?役割 分担の決定」のプロセスでは、計七三に上る項 目を抽出して、その優先順位を決め、それぞれ の役割を定め、そこに部門長クラスの担当者を 割り振っていった。
プロジェクトチームに売上予算 その後、プロジェクトリーダーを務める統括 部長から報告があった。
初年度はプロジェクト チーム自身が尖兵隊となって活動することにな ったという。
初年度予算は売上高五億円である。
二年目以降は専門部隊を発足させる計画だ。
そ のために三〇億円の投資を行うことで上層部の 合意を得たとのことであった。
この計画に筆者は当初、異論を唱えた。
専門 部隊の設立を二年目に後ろ倒しにするのは、消 極的過ぎると考えたのである。
プロジェクトチ ームが動いて、ダメなら中止するという逃げ道 を作ることになってしまう。
そうしたスタンス で本当に起業スピリットを発揮することができ るのか、疑問に思った。
しかし、A社ほどの企業規模ともなれば、リ スク管理が必要であることも理解できる。
個人 的な感覚に過ぎない口出しは却ってプロジェク トの足を引っ張ると考え、最終的には意見を取 り下げた。
その一方で三〇億円もの投資にゴーサインが 出たのは嬉しい誤算だった。
拠点探しで荷主ニ ーズに合った物件がない場合に自社施設の建設 という選択が可能になる。
そうでなくても案件 の受託が進めば、専門車両の購入、システム構 築など、投資が必要になってくる。
スペシャリ ストの確保や人材教育も不可欠だ。
そうした予 算を事前に確保できていれば、必要なタイミン グで素早く動くことができる。
それだけ成功が 近付く。
こうしてA社のプロジェクトは第一フェーズ を終えた。
現在は海外現地法人との接触と現地 入りによる既存荷主へのアプローチ、また「紹 介」による営業活動によって、小さくても実績 を作っていくことを重視して動いている。
A社 のプロジェクトチームは「競争に勝つ最大の方 法は?競争しない?ことだ」というスローガン を内部で掲げている。
そのアプローチが正しい ことを、いずれ証明してくれるだろう。
ただし、大きな懸念も残っている。
筆者が新 規事業の最大の成功要因に掲げる人材の問題で ある。
誰がこの事業の先頭に立って歩を進めて いくのか。
まだ見えていない。
今のところ関連 子会社の社長クラスやヘッドハンティングが検 討されている。
その点が定まらない限り筆者の 不安が消えることはないだろう。
国内はもちろん海外にまで事業を展 開しているが、自社インフラは東日本がメーン となっている。
それだけに東日本大震災では大 きな影響を受けた。
改めて会社のあり方を見直 す必要に迫られたのである。
これまでA社は利益率こそ低いものの、業界 準大手として他社との大きな差別化要因がなく ても何とか凌いできた。
しかし、最大手クラス がじわじわとシェアを伸ばし、A社を含めた二 番手グループとの格差は広がる一方である。
こ のままでは、いずれ市場における立ち位置を失 ってしまうと、A社の上層部は強い危機感を抱 いていた。
生き残り策としてA社は、サービス対象分野 を絞り込み、既存顧客を死守すると同時に、新 しい事業の柱を構築しようと考えた。
そのため のプロジェクトチームを組織した。
メンバーは 八人。
統括部長をリーダーとして、専任の事務 局担当のほか、営業・システム・企画の各担当、 そして新規事業のオペレーションを担当する予 定の三拠点の現場所長である。
我々日本ロジファクトリー(NLF)がA社 から支援要請を受けたのは、プロジェクトが組 織されて新規事業の大枠がほぼ固まった段階で あった。
実際に事業化を進めるには社外の意見 や他社事例が必要と判断し、我々がプロジェク トに参画することになったのである。
事前打ち合せの段階で、A社が新たに参入す る分野を聞かされた我々は、「この会社もそう か」と感じざるを得なかった。
それほど現在の 物流業界で新規参入の絶えない分野であった。
A社といえども、その激戦区で勝ち抜いていく には相当な覚悟が必要である。
しかし、プロジェクトメンバーの顔触れを見 て、一抹の不安を禁じ得なかった。
新規事業を 立ち上げるうえで、最も重要なポイントは人材 だと筆者は考えている。
起業スピリットを持っ た人物、周囲の反対を押し切ってでも行動でき る馬力のある人物をリーダーに選び、その行動 の裏付けとなる十分な権限を与えない限り、社 内ベンチャーは成功しない。
メンバーのなかには残念ながらそうした人物 は見当たらなかった。
我々は人材発掘を常に念 頭に置きながら、プロジェクトを支援すること 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 業界最大手クラスとの格差が着実に広がっている。
このま までは、じり貧になるばかりだ。
強い危機感を覚えた準大 手路線会社が新たな事業の柱を求めて新分野への参入に乗り 出した。
プロジェクトチームを組織、三〇億円もの投資を決 意して、生き残りをかけた取り組みを進めている。
準大手路線会社A社の新分野参入 第108 回 あおき・しょういち 1964年生まれ。
京都産業 大学経済学部卒業。
大手運 送業者のセールスドライバー を経て、89年に船井総合研 究所入社。
物流開発チーム・ トラックチームチーフを務め る。
96年、独立。
日本ロジファ クトリーを設立し代表に就任。
現在に至る。
主な著書に『経 営のテコ入れは物流改善から』 明日香出版社、『物流のしく み』(同文館出版)などがある。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp PROFILE 67 JANUARY 2012 になった。
我々が事前に予想していた以上に、A社は 準大手に相応しいインフラとオペレーションス キルを備えていた。
路線便のターミナルとは別 に、保管型の汎用センターを全国数カ所に保有 していた。
そのなかには許可が必要な毒劇物倉 庫、防塵倉庫、セキュリティ完備の倉庫なども 含まれていた。
各センターの床荷重、高さ、駐 車場、トラックバースなどの基本スペックも充 実したものであった。
オペレーションも十分に他社と勝負できるレ ベルであった。
現場はあいさつ、「5S(整理・ 整頓・清潔・清掃・躾)」が徹底され、レイバ ーコントロールによる人員管理もうまく機能し ていた。
流通加工型のセンター運営においても、 また保管業務においても、著者の想像を超える すばらしいスキルと管理状況であった。
A社のポテンシャルを確認した後、我々はプロ ジェクトメンバーに改めてヒアリングを行い、対 象事業分野における既存荷主の有無や、自社の ?強み?などを聞き出していった。
この作業は我々のような外部の人間のほうが 適している。
自社の?強み?は、社内にいる人 間には、なかなか見つけにくいものだ。
とりわ けA社の場合は大半が新卒入社であるため、他 社との比較が難しい。
我々が彼等から情報を引 き出し、強み・弱みを判断する必要があった。
先行他社との差別化戦略を立案 我々の三つ目のアクションは、当該分野にお ける同業他社の参入状況と実績を把握すること であった。
大手、中堅、中小を合わせ数多くの 物流会社が当該市場に参入していた。
中には株 価維持やマスコミ向け話題づくりのために、い わゆるアドバルーンを上げているだけの会社も 多かった。
しかし、B社とC社は強敵だった。
既にかな りの実績を上げていた。
A社が後発として参入 するには、B社、C社とは異なる切り口でオン リーワンのサービスを提供する必要があった。
一連の調査を終え、同業他社における参入状 況の報告に基づいてプロジェクトメンバーとのブ レーンストーミングを開始した。
B社、C社と の差別化ポイントは、そう簡単には見つからな かった。
会議を何度も重ねたものの突破口を開 けない。
プロジェクトメンバーには次第に焦り が生じ、一時は参入断念のムードも漂っていた。
良くない流れを変えるために、筆者はNLF から見たときのA社の強み・弱み、荷主からの 評価・コメントなどを、雑談を交えてシャワー のようにメンバーたちに浴びせかけた。
するとある現場所長が口を開いた。
「過去に× ××のような業務を対応していたことがありま す」という。
それを受けて別の年配社員が「海 JANUARY 2012 68 外の××拠点では今でも△△の□□業務を対応 している」と情報がつながってきた。
そうして一つ仮説ができあがっていった。
そ の仮説を基に検証のための質問を筆者がさらに 投げかける。
それにまたメンバーが応える。
そ んなやり取りを何度も繰り返すことで、A社の 差別化戦略、オンリーワンサービスの設計図が 出来上がっていった。
作戦の一つは既存荷主に当該分野のクライア ントを多く持つ海外現地法人からのアプローチ である。
発地となる海外で荷主を取り込み、日 本国内への輸出分の保管、輸配送業務を狙う。
もう一つは中堅荷主へのアプローチである。
B 社、C社は今のところ当該分野の大手荷主のみ を対象としている。
そのため準大手以下が空い ている。
そこでA社は準大手から中堅にかけて をターゲットにすることで棲み分けるのである。
個別の案件の規模は小さくても数を集めようと いう作戦である。
こうしてA社は新分野への参入の糸口をつか んだ。
設定した事業ドメインと営業戦略には大 半のメンバーが手応えを感じていた。
この後、プロジェクトは「?事業化のポイン ト」、「?実施項目と優先順位の決定」、「?役割 分担の決定」、「?スケジュールの細分化」、「? 事業計画書としての取り纏め」へとプロセスを 進めていった。
「?事業化のポイント」としては、「提携」「M &A」「紹介」の三つが大きな柱だった。
新規事 業に必要な全ての機能とリソースを自前で構築 しようとすれば多大な時間と労力がかかってし まう。
その間にも環境はどんどん変化する。
外 部の力を借りて、?時間を買う?ことが不可欠 であった。
具体的には、情報システム、倉庫、ルート配 送、海外からの輸入フォワーディングの各機能 を「提携」によって担保することにした。
同時 に当該分野における荷主の物流子会社の「M& A」も視野に入れることにした。
また「紹介」 は金融機関や我々のようなコンサルタントをパ ートナー候補として位置付けた。
「?実施項目と優先順位の決定」と「?役割 分担の決定」のプロセスでは、計七三に上る項 目を抽出して、その優先順位を決め、それぞれ の役割を定め、そこに部門長クラスの担当者を 割り振っていった。
プロジェクトチームに売上予算 その後、プロジェクトリーダーを務める統括 部長から報告があった。
初年度はプロジェクト チーム自身が尖兵隊となって活動することにな ったという。
初年度予算は売上高五億円である。
二年目以降は専門部隊を発足させる計画だ。
そ のために三〇億円の投資を行うことで上層部の 合意を得たとのことであった。
この計画に筆者は当初、異論を唱えた。
専門 部隊の設立を二年目に後ろ倒しにするのは、消 極的過ぎると考えたのである。
プロジェクトチ ームが動いて、ダメなら中止するという逃げ道 を作ることになってしまう。
そうしたスタンス で本当に起業スピリットを発揮することができ るのか、疑問に思った。
しかし、A社ほどの企業規模ともなれば、リ スク管理が必要であることも理解できる。
個人 的な感覚に過ぎない口出しは却ってプロジェク トの足を引っ張ると考え、最終的には意見を取 り下げた。
その一方で三〇億円もの投資にゴーサインが 出たのは嬉しい誤算だった。
拠点探しで荷主ニ ーズに合った物件がない場合に自社施設の建設 という選択が可能になる。
そうでなくても案件 の受託が進めば、専門車両の購入、システム構 築など、投資が必要になってくる。
スペシャリ ストの確保や人材教育も不可欠だ。
そうした予 算を事前に確保できていれば、必要なタイミン グで素早く動くことができる。
それだけ成功が 近付く。
こうしてA社のプロジェクトは第一フェーズ を終えた。
現在は海外現地法人との接触と現地 入りによる既存荷主へのアプローチ、また「紹 介」による営業活動によって、小さくても実績 を作っていくことを重視して動いている。
A社 のプロジェクトチームは「競争に勝つ最大の方 法は?競争しない?ことだ」というスローガン を内部で掲げている。
そのアプローチが正しい ことを、いずれ証明してくれるだろう。
ただし、大きな懸念も残っている。
筆者が新 規事業の最大の成功要因に掲げる人材の問題で ある。
誰がこの事業の先頭に立って歩を進めて いくのか。
まだ見えていない。
今のところ関連 子会社の社長クラスやヘッドハンティングが検 討されている。
その点が定まらない限り筆者の 不安が消えることはないだろう。
