2012年2月号
特集

注目企業 トップが語る強さの秘訣 第8位 安川ロジステック──商社代行サービスの拡大で過去最高決算 中島健夫 社長

FEBRUARY 2012  22 安川ロジステック ──商社代行サービスの拡大で過去最高決算  親会社向けの物量が一時は半減した。
それでも商社代行 サービスの拡大が下支えとなり、2011年3月期には過去最高 決算を記録した。
親会社のグローバル展開に対応して物流管 理システムをリニューアル。
事業エリアを国外に広げ、中国 を始めとする海外での物流事業展開を模索している。
(聞き手・石鍋 圭) 不況を好機に『交差教育』を実施 ──一〇年三月期に売上高が大きく落ち込み、一一 年三月期に急回復するという流れでした。
 「一〇年三月期の落ち込みは、やはりリーマンショッ クによるものです。
その期には親会社の安川電機も 赤字を計上をしている。
当社は売り上げの約八割が 親会社向けなので、親会社の経営悪化の影響をもろ に受けます。
物量は従来の半分にまで落ち込みまし た。
当社が扱う安川電機の製品は大きく『サーボモー タ』、『インバータ』、『産業用ロボット』の三分野で すが、特に半導体の製造装置などに組み込まれるサー ボモータが急落した」 ──急激な物量減にどう対応したのですか。
 「もちろん一般的な経費削減やワークシェアリング は行いましたが、切りつめ過ぎて社内のモチベーショ ンを落とさないことを念頭に置きました。
どんなに 最悪な状況でも、いつかは好転する。
その時に反撃 に打って出るパワーが残っていなければ、そのまま 落ちていくだけです。
日頃はなかなか時間を割けな いことに取り組んで力を蓄積しようと考えました」  「その一つが社員の『交差教育』です。
部門間や エリアで社員を入れ替え、一人で複数の業務を担え る体制を目指しました。
例えば、安川電機のロボッ ト工場に物流担当者として出向している社員と、イ ンバータや外販荷主を担当している社員を入れ替え る。
そういった取り組みをすることで、環境が持ち 直したときに色々な施策や提案を出来る企業体質を 構築しようと考えたのです」 ──事態が好転したのは?  「物量の減少は〇九年の五月頃が底で、その後は徐々 に回復し、その年の一〇月頃にはほぼ例年並みの水 準に戻りました。
牽引役になったのは中国をはじめ とするアジアとの輸出入です。
半導体の需要が戻ると、 それに伴ってサーボモータがまずいち早く回復した」  「さらに中国の国内消費も引き続き旺盛だったので、 エアコンなどの空調機器に使われるインバータも急 激に需要が高まった。
自動車産業や家電産業がにわ かに活況を取り戻すと、製造に必要な産業用ロボッ トの出荷も伸びてきた。
当社には輸出梱包を行う北 九梱包という子会社があるのですが、業務量が一気 に増えて対応するのに一苦労でした」  「アジアに続いて、欧米向けの物量も増えてきて 輸出入全体のボリュームが金融危機前を上回りまし た。
これは親会社の経営政策で、需要地生産を推し 進めたことが大きく起因しています。
それまでは製 品輸送がメーンだったのですが、ノックダウン部品 を送るような輸出入業務も新たに加わってきた」 ──一一年三月期は過去最高決算でした。
 「商社代行サービスが飛躍的に成長しました。
当 社が国内外のサプライヤーから部品を買って、荷主 に輸送するというものです。
商流も当社が握ること になるので、売り上げが大きく立つ。
以前は親会社 である安川電機の海外工場向けが大半だったのです が、今ではそれに加えてEMS向けの商社サービス も一部当社が受託しています」  「安川電機が基盤類などの生産を委託しているE MSに、ICチップやコンデンサー、プラスチックフ レームなどを当社が買い集めて送る。
そういった大 口の取引が増えたことで、月に二億円程度だった商 社代行サービスの売り上げは、ピーク時の一一年夏 頃には倍の約四億円にまで増えた。
これが売り上げ 急増の主要因となっています」  「ただし、足下の動向には陰りが出ています。
商  中島健夫 社長 注目企業 トップが語る強さの秘訣 第 8位 23  FEBRUARY 2012 社代行もピーク時からまた半減しました。
十二年三 月期の業績は前期が好調だっただけに減収減益とな る見通しです。
今後も残念ながら国内の物量は減っ ていくという前提で経営せざるを得ません。
親会社 も海外シフトを加速させています。
当社としても、 いかに輸出入の部分で親会社やグループ企業に貢献 できるかがポイントになってくる」  「そのためのシステム投資もしました。
当社には以 前から『YL─VAN』という物流の基幹システム があるのですが、これは国内物流がメーンで、輸出 入業務には外付けのシステムを増設して対応してい ました。
まず一〇年三月に新たな商社代行の輸出入 管理システムを、一一年八月に通常物流の輸出入管 理システムを稼働させ、基幹システムとの連動化を 図った。
これにより、業務品質や効率が高まったほ か、トレーサビリティ機能の強化なども実現しました。
一連の投資額は約二億円です」 海外物流事業のスキームを模索 ──〇八年四月にはAEOの『特定輸出者承認』を、 〇九年三月には『特例輸入者承認』を門司税関よ り取得しています。
 「輸出入業務を効率化することもちろんですが、 社員の意識を向上させることも目的の一つでした。
承認を受けるまでのプロセスでは業務品質やセキュ リティ体制などを厳しくチェックされます。
当社の 社員がそれに対応し、あるべき輸出入体制を整備し ていくことで全体的なレベルが向上すると考えた。
さらに、承認を得られれば親会社や外販荷主からの 信頼も高まり、ビジネスの拡大にも繋がる。
当社にとっ ては絶対に必要な取り組みでした」 ──親会社の海外戦略に貢献するのなら、輸出入か らさらに一歩踏み込んで、現地での物流を手がける 必要もあるのでは?  「そこが当社の喫緊の経営課題です。
現在、当社 には海外法人がありません。
親会社の工場に物流担 当者を一名ずつ出向させ、現地の物流スタッフを統 括するに留まっています。
今後の親会社のグローバ ル展開を視野に入れれば、今の体制では十分でない ことは理解しています。
ただ、どのような形で進出 することがグループ全体にとってベストなのかはま だ答えが出ていない。
現地法人を作るやり方が本当 に正しいのか、グループ企業に乗った方が得策なのか、 選択肢はいくつかあると思いますが、今は慎重に協 議しているところです」 ──時間をかけ過ぎればタイミングを逸します。
 「一二年度中には何らかの結論を出すつもりです。
というのも、安川電機は一三年三月から中国の江蘇 省でロボット生産に着手する方針を固めています。
日系の大手メーカーがロボットを海外で生産するの は初めてのことで、安川電機グループのみならず、 業界全体にとっても大きなトピックです。
そこに当 社がどう関係していくのか。
それが今後の当社の海 外戦略の下敷きになる」 ──外販についての考えは?  「今のところ積極的に伸ばしていくつもりはあり ません。
現在の外販比率は約二〇%ですが、この比 率を維持していく。
当社はあくまで安川電機および グループ会社のグローバル戦略を物流面から支える 機能子会社です。
外販に力を入れることで本来業務 が手薄になることは避けたい。
ただし、安川グルー プの物流インフラを活かせるかたちであれば、外販 荷主にも積極的にサービスを提供し、貢献していく つもりです」 外販拡大からグループ貢献に軸足移す  北九州に本拠を置く産業用ロボット最大手・安川 電機の物流子会社。
傘下には輸出梱包業の北九梱包、 運送業の安川トランスポートなどを抱える。
 現在の売上高比率は親会社およびグループ会社 向けが約80 %、外販荷主向けが約20 %。
06年に 営業本部制を整えて外販の拡大に当たっていたが、 08年には以前のエリア事業部制に戻している。
自 らの立ち位置を“安川電機のグローバル戦略を物流 面から支える機能子会社”と見定め、現在はグルー プ貢献に軸足を置いている。
会社プロフィール 07 年 3月期 08 年 3月期 09 年 3月期 10 年 3月期 11 年 3月期 18000 16000 14000 12000 10000 8000 6000 4000 2000 0 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 単位:百万円 業績推移 当期利益(右軸) 売上高(左軸) 特 集 《平成 24年版》

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