2012年2月号
特集
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注目企業 トップが語る強さの秘訣 第20位 ユニエツクス──港に軸足を置いて郵船ロジを補完 脇田隆光 社長
FEBRUARY 2012 28
ユニエツクス
──港に軸足を置いて郵船ロジを補完
日本郵船グループの港湾運送会社として、コンテナターミ
ナルやコンテナフレートステーションの運営で安定した収益を
上げてきた。
それを原資に物流倉庫部門を育成。
アパレル品、 食品の取り扱いノウハウを蓄積した。
港湾に軸足を置いたサー ビスを強みに、グループの郵船ロジスティクスを補完する。
(聞き手・大矢昌浩) 港運事業だけでは生き残れない ──過去三年の概況は? 「二〇〇九年三月期は上期の貯金があったので通 期業績としては、それほど大きなダメージは出ませ んでした。
しかし、不況が通年できいた一〇年三月 期は、赤字スレスレまで落ち込みました。
上期は赤 字が続き、下期にいくらか持ち直したおかげで何と か通期黒字を確保した。
それに対して一一年三月期は、 リーマン前の水準には届かないものの、良い結果を 残せました。
今期も悪い数字にはならないはずです」 ──親会社の日本郵船は今期、連結赤字を見込んで います。
ユニエツクスの業績とは必ずしも連動して いない。
これは商船三井系の宇徳や、川崎汽船系の ダイトーコーポレーションなど、ユニエツクスと同様 の他の「船社系港運」も同じです。
「一般の物流会社にしても同じでしょう。
運賃が 下がれば輸送キャリアの収入は減るけれど、荷主とキャ リアの間に立つ物流会社のマージンは減るとは限ら ない。
加えてコンテナの場合、日本で陸揚げしてコ ンテナが空になって、他に輸出する荷物がないとき は、空コンテナを海外に運ぶことになり、そこでも ハンドリングが発生する」 「リーマンショックの時と違って今、海上運賃が下 がっているのは、新造船が一斉に市場に供給されて、 需給バランスが崩れてしまったことが大きい。
コン テナの取扱個数自体は実は減っていないんです。
そ のためコンテナ荷役の仕事も減らない」 ──それだけ港運事業は安定しているわけですね。
ただし、ユニエツクスは物流倉庫事業を港湾運送と 並ぶ、もう一つの柱にしています。
こちらは? 「残年ながら胸を張れる状況ではありません。
そ もそも当社は物流事業を拡大するために設立された 会社です。
一九八九年に京浜の関東郵船運輸と神戸 の日本運輸が合併してユニエツクスが誕生しました。
港運事業は港に限定された仕事ですから、それだけ なら合併の必要はなかった。
それをわざわざ統合し たのは全国規模の物流会社に成長するためでした。
合併当初の物流事業の売上比率は約四〇%でした。
それから二〇年以上経った今も約五〇%ですから、 期待通りに成長しているとは言えません」 ──物流事業は競争が激しい。
港運に特化したほう が得策なのでは? 「確かに物流事業の利益率は低い。
そのため物流 事業の売上比率が高まるほど、当社の利益率は落ち ていくことになります。
しかし、だからといって、 港運だけやっていれば良いのかと言えば、それは違 います。
現在の状況を見る限り、グローバル物流に おける日本の港湾の重要性はこれからさらに低下し ていくと考えざるを得ない」 ──確かに日本の船社のコンテナ船事業はどこも赤 字です。
今後、日本郵船がコンテナ船事業を大幅に 縮小しても不思議ではありません。
港運事業がなく なってしまう。
「残年ながら否定はできません。
実際、今年の四 月から日本郵船と商船三井は欧州航路で共同運航を 開始します。
単純化して言えば、週一便だった日本 郵船の船が二週間に一便になる。
今後もコンテナ船 事業の合理化は進みます。
その結果、日本に寄港す る母船が減れば、日本の主要港湾のコンテナ取扱量 は確実に減る。
これまでは比較的穏やかだった港の 中の競争も激しくなってくるでしょう。
従って当社 が今後も生き残って行くには、港運事業を最大限活 かしていくと同時に、物流事業でも自立できるよう 脇田隆光 社長 注目企業 トップが語る強さの秘訣 第20位 29 FEBRUARY 2012 にしなければならないんです」 ──社内に危機感はありますか。
「十分とは言えません。
日本郵船をはじめ日本の 船社は長年、厳しいグローバル競争にさらされてき ました。
彼等の危機感と比較すると我々は甘いと言 わざるを得ない。
私自身、郵船グループでずっとコ ンテナ畑を歩んできたので、よく分かります。
チャ レンジ精神を当社に植え付ける必要があります。
狭 い世界に縮こまっていてはダメなんです」 「そこで来年度から始まる三カ年計画では物流事 業の自立を最大のテーマにします。
前年からの積み 上げ方式では達成できない高い数値目標を掲げます。
物流事業の売上比率を現在の五〇%から三年で六 〇%ぐらいには持っていきたい。
その実現には物流 子会社などの買収も選択肢になってきます」 郵船ロジとの棲み分け図る ──郵船航空サービスとNYKロジスティックスが統 合して総合物流の郵船ロジスティクスが誕生しまし た。
ユニエツクスの役割分担はどうなりますか? 「従来は国際物流のNYKロジに対して、ユニエ ツクスが国内の通関や物流機能を提供するという補 完関係にありました。
しかし、郵船ロジが誕生し、 国内の通関や港周りも自分でやるということになる と、棲み分けが課題になります。
当社としては郵船 ロジのグローバルネットワークを上手く活用すると同 時に、郵船ロジにはない機能、できない分野に特化 していくことになる」 ──具体的には。
「アパレル品であり、食品です。
アパレルの通関は 再輸入品の減税制度『関税暫定措置法第八条』が カギになりますが、当社は『暫八』の運用を熟知し ている。
食品にしても当社は大井の水産埠頭に『大 井冷蔵庫』を置いて、運営ノウハウを蓄積してきま した。
一部の輸入食品には今でも在来船が使われて います。
これをハンドリングするには港湾荷役のノ ウハウが不可欠で、そうした機能は郵船グループの なかでも当社ならではの強みだと自負しています」 ──グループとして見れば、ユニエツクスも郵船ロジ に合流させたほうがスッキリします。
「そうした議論も当然あるでしょう。
しかし、個 人的には反対です。
港の中と外を無理に統合すれば、 かえってムダを生んでしまう恐れがある。
当社であ ればコンテナターミナルとその後背地にあるコンテナ・ フレート・ステーション、さらには物流倉庫をつな いだ物流を効率的にコントロールできる」 ──港の中と外は、それほど違いますか。
「日本の港周りを足場にした物流と、グローバル ネットワークをベースにした物流はやはり違います。
港周りの物流は我々のような港運事業者でないと難 しい。
例えばコンテナに入らない長尺モノや嵩モノ、 重量物の扱いは、今でも職人的な経験知が要求され る世界です。
現場のハンドリング次第で荷崩れや荷 痛みが発生してしまう」 ──3PLについては。
「当社もサービスメニューに載せていますが、グルー プとして見れば3PLはあくまで郵船ロジのドメイ ンです。
そのため我々は、港に軸足を置いたサービ スを追求していきます。
海外事業についても例えば 当社はボリビアやケニアで内陸輸送を手掛けていま す。
大手では手がかかりすぎて対応できないサービ スでも、当社のような規模であれば小回りが利く。
ニッ チなサービスでグループのネットワークを補完してい きます」 港湾運送から物流事業へのシフト進める 日本郵船グループの船社系港運。
売り上げの約半 分が、コンテナターミナルやコンテナフレートステー ションなどの運営事業。
京浜港、神戸港の日本郵 船のコンテナは、すべて同社が扱っている。
売り上 げの残り半分が、輸入アパレル品や食料品を中心と した物流倉庫事業。
1989年に横浜に本社を置く関東郵船運輸と、川 西倉庫の運輸関係部門を前身とする神戸の日本運 輸が合併し「ユニエツクス」に名称変更。
日本郵船 直系の港湾荷役会社として活動すると同時に、物 流事業の拡大を図ってきた。
会社プロフィール 08 年 3月期 09 年 3月期 10 年 3月期 11 年 3月期 300 250 200 150 100 50 0 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 単位:億円 ユニエツクスの業績推移 売上高 営業利益 当期利益 特 集 《平成 24年版》
それを原資に物流倉庫部門を育成。
アパレル品、 食品の取り扱いノウハウを蓄積した。
港湾に軸足を置いたサー ビスを強みに、グループの郵船ロジスティクスを補完する。
(聞き手・大矢昌浩) 港運事業だけでは生き残れない ──過去三年の概況は? 「二〇〇九年三月期は上期の貯金があったので通 期業績としては、それほど大きなダメージは出ませ んでした。
しかし、不況が通年できいた一〇年三月 期は、赤字スレスレまで落ち込みました。
上期は赤 字が続き、下期にいくらか持ち直したおかげで何と か通期黒字を確保した。
それに対して一一年三月期は、 リーマン前の水準には届かないものの、良い結果を 残せました。
今期も悪い数字にはならないはずです」 ──親会社の日本郵船は今期、連結赤字を見込んで います。
ユニエツクスの業績とは必ずしも連動して いない。
これは商船三井系の宇徳や、川崎汽船系の ダイトーコーポレーションなど、ユニエツクスと同様 の他の「船社系港運」も同じです。
「一般の物流会社にしても同じでしょう。
運賃が 下がれば輸送キャリアの収入は減るけれど、荷主とキャ リアの間に立つ物流会社のマージンは減るとは限ら ない。
加えてコンテナの場合、日本で陸揚げしてコ ンテナが空になって、他に輸出する荷物がないとき は、空コンテナを海外に運ぶことになり、そこでも ハンドリングが発生する」 「リーマンショックの時と違って今、海上運賃が下 がっているのは、新造船が一斉に市場に供給されて、 需給バランスが崩れてしまったことが大きい。
コン テナの取扱個数自体は実は減っていないんです。
そ のためコンテナ荷役の仕事も減らない」 ──それだけ港運事業は安定しているわけですね。
ただし、ユニエツクスは物流倉庫事業を港湾運送と 並ぶ、もう一つの柱にしています。
こちらは? 「残年ながら胸を張れる状況ではありません。
そ もそも当社は物流事業を拡大するために設立された 会社です。
一九八九年に京浜の関東郵船運輸と神戸 の日本運輸が合併してユニエツクスが誕生しました。
港運事業は港に限定された仕事ですから、それだけ なら合併の必要はなかった。
それをわざわざ統合し たのは全国規模の物流会社に成長するためでした。
合併当初の物流事業の売上比率は約四〇%でした。
それから二〇年以上経った今も約五〇%ですから、 期待通りに成長しているとは言えません」 ──物流事業は競争が激しい。
港運に特化したほう が得策なのでは? 「確かに物流事業の利益率は低い。
そのため物流 事業の売上比率が高まるほど、当社の利益率は落ち ていくことになります。
しかし、だからといって、 港運だけやっていれば良いのかと言えば、それは違 います。
現在の状況を見る限り、グローバル物流に おける日本の港湾の重要性はこれからさらに低下し ていくと考えざるを得ない」 ──確かに日本の船社のコンテナ船事業はどこも赤 字です。
今後、日本郵船がコンテナ船事業を大幅に 縮小しても不思議ではありません。
港運事業がなく なってしまう。
「残年ながら否定はできません。
実際、今年の四 月から日本郵船と商船三井は欧州航路で共同運航を 開始します。
単純化して言えば、週一便だった日本 郵船の船が二週間に一便になる。
今後もコンテナ船 事業の合理化は進みます。
その結果、日本に寄港す る母船が減れば、日本の主要港湾のコンテナ取扱量 は確実に減る。
これまでは比較的穏やかだった港の 中の競争も激しくなってくるでしょう。
従って当社 が今後も生き残って行くには、港運事業を最大限活 かしていくと同時に、物流事業でも自立できるよう 脇田隆光 社長 注目企業 トップが語る強さの秘訣 第20位 29 FEBRUARY 2012 にしなければならないんです」 ──社内に危機感はありますか。
「十分とは言えません。
日本郵船をはじめ日本の 船社は長年、厳しいグローバル競争にさらされてき ました。
彼等の危機感と比較すると我々は甘いと言 わざるを得ない。
私自身、郵船グループでずっとコ ンテナ畑を歩んできたので、よく分かります。
チャ レンジ精神を当社に植え付ける必要があります。
狭 い世界に縮こまっていてはダメなんです」 「そこで来年度から始まる三カ年計画では物流事 業の自立を最大のテーマにします。
前年からの積み 上げ方式では達成できない高い数値目標を掲げます。
物流事業の売上比率を現在の五〇%から三年で六 〇%ぐらいには持っていきたい。
その実現には物流 子会社などの買収も選択肢になってきます」 郵船ロジとの棲み分け図る ──郵船航空サービスとNYKロジスティックスが統 合して総合物流の郵船ロジスティクスが誕生しまし た。
ユニエツクスの役割分担はどうなりますか? 「従来は国際物流のNYKロジに対して、ユニエ ツクスが国内の通関や物流機能を提供するという補 完関係にありました。
しかし、郵船ロジが誕生し、 国内の通関や港周りも自分でやるということになる と、棲み分けが課題になります。
当社としては郵船 ロジのグローバルネットワークを上手く活用すると同 時に、郵船ロジにはない機能、できない分野に特化 していくことになる」 ──具体的には。
「アパレル品であり、食品です。
アパレルの通関は 再輸入品の減税制度『関税暫定措置法第八条』が カギになりますが、当社は『暫八』の運用を熟知し ている。
食品にしても当社は大井の水産埠頭に『大 井冷蔵庫』を置いて、運営ノウハウを蓄積してきま した。
一部の輸入食品には今でも在来船が使われて います。
これをハンドリングするには港湾荷役のノ ウハウが不可欠で、そうした機能は郵船グループの なかでも当社ならではの強みだと自負しています」 ──グループとして見れば、ユニエツクスも郵船ロジ に合流させたほうがスッキリします。
「そうした議論も当然あるでしょう。
しかし、個 人的には反対です。
港の中と外を無理に統合すれば、 かえってムダを生んでしまう恐れがある。
当社であ ればコンテナターミナルとその後背地にあるコンテナ・ フレート・ステーション、さらには物流倉庫をつな いだ物流を効率的にコントロールできる」 ──港の中と外は、それほど違いますか。
「日本の港周りを足場にした物流と、グローバル ネットワークをベースにした物流はやはり違います。
港周りの物流は我々のような港運事業者でないと難 しい。
例えばコンテナに入らない長尺モノや嵩モノ、 重量物の扱いは、今でも職人的な経験知が要求され る世界です。
現場のハンドリング次第で荷崩れや荷 痛みが発生してしまう」 ──3PLについては。
「当社もサービスメニューに載せていますが、グルー プとして見れば3PLはあくまで郵船ロジのドメイ ンです。
そのため我々は、港に軸足を置いたサービ スを追求していきます。
海外事業についても例えば 当社はボリビアやケニアで内陸輸送を手掛けていま す。
大手では手がかかりすぎて対応できないサービ スでも、当社のような規模であれば小回りが利く。
ニッ チなサービスでグループのネットワークを補完してい きます」 港湾運送から物流事業へのシフト進める 日本郵船グループの船社系港運。
売り上げの約半 分が、コンテナターミナルやコンテナフレートステー ションなどの運営事業。
京浜港、神戸港の日本郵 船のコンテナは、すべて同社が扱っている。
売り上 げの残り半分が、輸入アパレル品や食料品を中心と した物流倉庫事業。
1989年に横浜に本社を置く関東郵船運輸と、川 西倉庫の運輸関係部門を前身とする神戸の日本運 輸が合併し「ユニエツクス」に名称変更。
日本郵船 直系の港湾荷役会社として活動すると同時に、物 流事業の拡大を図ってきた。
会社プロフィール 08 年 3月期 09 年 3月期 10 年 3月期 11 年 3月期 300 250 200 150 100 50 0 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 単位:億円 ユニエツクスの業績推移 売上高 営業利益 当期利益 特 集 《平成 24年版》
