2012年2月号
ケース
ケース
国分 環境対策 CO2排出量の把握に認証制度を活用中小運送会社のエコドライブを支援
FEBRUARY 2012 50
運行単位で実測値を収集
貨物輸送に伴うCO2排出量の把握と削減
努力を企業に義務付けた「改正省エネ法」の
施行から、まもなく六年が経つ。
同法では物 流事業者のほか一定規模以上の輸送量がある 「特定荷主」も対象に含め、エネルギー使用効 率の目安となる「原単位」を中長期的に年平 均一%以上減らしていくことを課している。
大手食品卸の国分は、特定荷主の指定を受 けている。
同社は三〇〇〇台を超える車両を 使って年間約二億五〇〇〇万トンの貨物を輸 送している。
再委託先まで含めると、百社以 上の運送会社がそこに携わっている。
国分は これらの協力運送会社からCO2排出量の算 定に必要なデータを収集し、報告する義務を 負う。
自社の直接の管理下にない車両の環境負荷 を把握するのは容易ではない。
しかも同社は、 あえて手間のかかるデータ収集方法を採用し て数値の算定を行ってきた。
改正省エネ法では、物流分野におけるCO2 排出量の算定式として、「?燃料法(燃料使 用量×CO2排出係数)」、「?燃費法(走行距 離/燃費×CO2排出係数)」、「?改良トン キロ法(輸送トンキロ×改良トンキロ法CO2 排出原単位)」の三つを定めている。
計算式の信頼性は「?燃料法」、「?燃費 法」、「?改良トンキロ法」の順で高いが、そ れに応じてデータ収集の手間も増える。
この うち国分は原則として、算定に燃料使用量と いう実測値が必要な「?燃料法」あるいは 「?燃費法」を採用している。
データ自体の精度にもこだわっている。
運 送会社は実車率を上げるために、一台の車両 を時間帯によって別の荷主の輸送業務に振り 向けることがよくある。
そうした実態を数値 に正確に反映させるには、各車両の燃料使用 量を運行単位で細かく把握する必要がある。
また燃費は車両ごとに異なる。
燃費法では 車種別基準値や推定値の利用が認められてい るが、それでは推定値による誤差の範囲で「原 単位を一%減らす」という目標達成の成否が 分かれてしまう可能性もある。
こうしたこと を考慮して、国分はデータをできるだけ運行 単位の実測値で収集する方針を貫いてきた。
データ収集で中心的役割を担う経営企画部 の山田英夫環境担当参事は「実態を正確に反 映したデータでないと、結果的に原単位の数 値が改善されたとしても、それがどの施策に よる成果なのかわからない。
単なる報告書の 作成で終わるのではなく、具体的な削減活動 につなげるために、精緻なデータの収集にこ 「エコドライブ」を進めてカーボン・オフセットの排 出クレジットを取得する「方法論」を物流分野で初め て申請し、承認された。
貨物輸送によって生じるCO2 排出量の把握は、実運送会社の協力にかかっている。
そのインセンティブとするため、グリーン経営やオフ セット・クレジットの認証取得を支援している。
環境対策 国分 CO2排出量の把握に認証制度を活用 中小運送会社のエコドライブを支援 国分の山田英夫経営企画部 環境担当参事 51 FEBRUARY 2012 だわってきた」と六年間の活動を振り返る。
同じ狙いから国分は食品卸業界で環境数値 の算定を標準化する活動にも積極的に参加し てきた。
食品卸業界団体の日本加工食品卸 協会(日食協)は京都議定書の目標達成に向 け「環境自主行動計画」に取り組んでいる。
この枠組みのなかで日食協は、山田氏を座 長とする運輸部門のワーキンググループ(WG) を設け、業界として改正省エネ法に対応して きた。
二〇〇六年三月にガイドラインを作成、 〇九年九月には改訂版を策定し、算定方法の 運用について業界のルールを定めている。
加工食品卸には特定の小売業から共配セン ターの運営業務を受託しているところが多い。
複数の荷主の共同配送を実施した場合、燃料 法または燃費法による算定法では、センター 業務の受託業者が荷主別に燃料使用量の按分 を行う必要がある。
本来は重量や出荷金額などをもとに按分を 行うのが望ましい。
だが共同配送の重量デー タを荷主別に把握するのは事実上難しく、出 荷金額についても小売り側から分母となる出 荷総額の開示を認められないケースが多い。
そこでこのようなケースでは、業務受託業 者(親ベンダー)がほかの荷主(卸)や小売 業の了解を得たうえで全体のエネルギー使用 量を算出し、自らの数値として報告できると いうルールにした。
また店舗への配送を終えた車両が共配セン ターに戻るまでの帰り便の扱いにも独自ルー ルを設けた。
商品を納品先に届けた後の帰り 便は通常、運送事業者が別の荷主の荷物を確 保するか空車で戻るケースが多い。
この場合、 算定の範囲は往路の輸送だけになる。
だが、店舗配送では帰り便も含めて運賃契 約を行うのが一般的だ。
しかも卸は空容器や 通い箱、ロールボックスパレットなどの回収 業務を日常的に行っている。
この業務に帰り 便を有効利用すれば排出削減が可能になる。
そうした取り組みの成果を反映できるように、 日食協は算定の範囲に帰り便を含めた。
こうした運用ルールを業界で決めたことに よって、会員がどの算定方法を採用しても同 じ基準で数値を比較できるようになり、原単 位の改善について公平な評価が可能になった。
日食協に加盟する一四一社のうち、国分を 含む十二社が現在の特定荷主に指定されてい る。
日食協では毎年、環境自主行動計画の 結果を管轄省庁に報告する際、運輸部門の活 動については、特定荷主十二社がこの共通の 運用ルールで把握した省エネ法対応の実績数 値を、一つの表にまとめ、平均値と合わせて 報告を行っている。
データ収集にインセンティブ 一方で国分は、精度の高いデータを収集す るためのシステム開発にも力を注いできた。
改正省エネ法の施行に合わせて同社は、車 両別の走行距離や給油量を管理する「ITト ラックシステム」を開発している。
運送事業 者がデジタルタコメーターで取得した運行デー タをフォーマット変換するだけで、算定に必要 なデータをスムーズに収集することができる。
ただし同社の協力運送事業者の大半は中小 でデジタコを装備しているところは少ない。
燃 料使用量や輸送距離などのデータについては、 ドライバーの運転日報をもとに紙ベースで管 理しているところがほとんどだ。
そうした事 業者からいかにして運行単位の正確なデータ を電子的に収集するかが最大の課題だった。
当初、国分は携帯電話を使ってデータを収 集する方法を検討した。
ドライバーが運行開 始時から終了時までの走行距離と給油量を携 帯電話に入力し、インターネット経由で「I Tトラックシステム」のサーバーに収集する仕 組みだ。
サーバーには配車管理や車両整備管理、請 求管理、勤怠・給与管理など、運送会社の 業務管理に必要なソフトを搭載し、運送会社 に無償で提供することにした。
運送会社は サーバーに蓄積したデータを燃費管理や配車、 請求管理などに利用できる。
一方、同じシス テムを使って国分は算定に必要なデータを取 得するという運用を目指した。
だが予想に反して利用は広がらなかった。
初期投資が不要なシステムでも中小の運送事 業者にとっては通信費などの運用コストの負 担が重荷だった。
運送会社の業務管理に役立 つと考えて搭載したソフトも一部しか利用さ れず、思惑が外れた。
FEBRUARY 2012 52 そもそも車両保有台数二〇〇台以下の運送 会社には、省エネ法に基づく報告義務がない。
中小の協力運送会社に精度の高いデータを提 供してもらうには何らかのインセンティブが 必要だと国分は考えた。
そこでまず着目した のが「グリーン経営認証制度」だ。
事業活動で営利の追及と環境保全を両立さ せて「経営のグリーン化」を進めている中小 企業を対象に、交通エコロジー・モビリティ 財団がその活動を審査し、認証を与える制度 で、運送会社は認証取得を通じて燃費向上に よるコストの削減と、?グリーン調達?を荷主 にアピールすることができる。
認証の取得には、「グリーン経営推進マニュ アル」に基づいて目標を設定し、達成のため の計画を実行することが求められる。
トラッ ク運送事業者向けではエコドライブの実施や 車両の点検・整備などが審査項目となってい る。
エコドライブに取り組む際は、燃費に関す る定量的な目標を設定してその評価を行わな ければならない。
それには車両ごとに正確な データの収集が必要だ。
荷主がCO2排出量 の算定に使うデータもこれに含まれている。
従 って運送事業者が認証を取得する取り組みを 通じ、荷主はより精度の高いデータを収集で きるようになる。
国分は運送事業者のグリーン経営認証取得 を支援するために、「ITトラックシステム」 を改良し、新たに「ITトラックグリーン経 必要はなくなる。
担当者の負担は大きく軽減 される。
同じように第三者がデータの検証を行う仕 組みとして次に目をつけたのが、環境省が〇 八年に創設した「オフセット・クレジット(J ─VER)制度」だ。
植林プロジェクトなどの 温室効果ガス排出削減・吸収活動によって削 減した排出量を、「カーボン・オフセット(排 出量の相殺)」に用いるクレジットとして認証 する。
ISOに準拠して運用され、取得した 排出クレジットは市場で売却もできる。
この制度が運送会社にとって新たなインセ ンティブになると国分は考えた。
クレジット 取得の要件は、J─VER運営委員会が承認 する「排出削減の方法論」に基づいてプロジ ェクトを実施し成果をあげること。
国分は運 送会社がクレジットを取得するための「方法 論」として「トラックにデジタルタコグラフを 装着してエコドライブを推進する方法」を申 請し、二〇一一年一月に委員会で承認された。
物流分野では初の承認だった。
この方法論は運行記録計の装着義務がない 車両を対象とし、過去一年間の燃料消費量と 走行距離の記録が完備していることや、同一 事業所に所属する八〇%以上の車両について 申請することなどの適格性基準を設けている。
基準を満たした車両でプロジェクトを実施し、 エコドライブによる燃費の向上で削減できた 排出量(排出削減率は最大一〇%)がクレジ ットとして認証される。
営認証版」を開発した。
デジタコなどで収集する燃費データや車両 情報をデータベースに蓄積し、認証の取得に 必要なデータの作成を簡素化するシステムで、 〇九年に物流子会社の国分ロジスティクスが 認証を取得した際のノウハウを取り入れた。
排出量算定に必要な燃費などのデータについ ては荷主も共有できるようにした。
協力運送会社にシステムを無償で提供する ほか、「マニュアル」を分かりやすく解説した 冊子を配布して、協力運送会社の認証取得を 支援した。
これまでに業務委託先の七七事業 所がシステムを活用するなどして認証を取得 している。
物流分野初の「方法論」を開発 国分がグリーン経営認証制度に着目した理 由はもう一つある。
国分は携帯電話のシステ ムが頓挫した後も、運行管理者に運転日報の なかから必要なデータをパソコンで入力しても らうなどの方法で電子データ化を進めてきた。
だが収集するデータの数値には、欠落やダ ブリ、桁違いなどのミスが混じっている。
こ のため国分側で各事業所の担当者がデータを 一件ずつチェックしている。
ミスが見つかる と運送会社に問い合わせて修正する。
地味で 手間のかかる作業だ。
運送会社がグリーン認証を取得すれば、デ ータの精度が認証機関によって保証されるこ とになるため、荷主がわざわざチェックする 53 FEBRUARY 2012 どのIT機器を利用して燃費を改善する方法。
もう一つは共同配送を実施して排出量を削減 する方法だ。
共同化の方法論を考案したのは荷主企業に この取り組みを広める狙いからだ。
「一社単独 ではなく、サプライチェーン全体でデータの精 度を上げ、物流を見える化していく必要があ る。
そのために共同配送でクレジットを取得 する方法論は有効だと思う」と山田氏は話す。
申請に当たり同社は削減量の試算を行って いる。
九州地区で店舗へ自社配送していた地 場メーカーの商品を国分の配送ルートに積み 合わせ、九社による共同配送を実施した。
そ の結果、エコドライブによるのとほぼ同じ水 準の排出量を削減できたという。
共同配送の環境効果測定に課題 ただしこの方法には欠点がある。
クレジッ トを取得するには排出量を比較するためにプ ロジェクトを実施する前と後のデータが必要だ。
だが共同配送に変更することで排出削減する 方法は、変更前のデータの収集について運送 会社から協力を得るのが容易でない。
試算のために実施した共同配送でも、参 加メーカーの共同化前の詳細なデータがなく、 重量と距離だけで算定する改良トンキロ法を 選択せざるを得なかった。
重量については、メーカーのホームページ で商品の容量を調べてマスターに登録してお き、ピッキングリストをもとに運行単位でメ ーカー別に総重量を集計した。
これをもとに 積載率も計算した。
距離はデジタコから取得 した。
これにより共配実施後についてはある 程度妥当なデータを取得できた。
だが実施前のデータにみなし値が多いこと から、この共同化パターンでの方法論の承認 は保留になっている。
このため別の帰り便を 利用する共同化のパターンで方法論の承認に 期待をつないでいる。
国分はこのほかにもいくつかの方法論を検 討中だ。
「方法論を増やして物流のいろいろ なクレジットをつくれば、もっと細かなデー タが取れるようになる」と山田氏は説明する。
三月には国分の働きかけによって、クレジッ トの取得をめざす運送会社を対象に、J─V ERと国内クレジットの両方の制度で物流の 方法論の説明会が開かれる予定だ。
改正省エネ法が施行された当時と比べ、協 力運送会社のデータ収集への対応はずいぶん 前向きになってきたと山田氏は感じている。
グリーン経営認証取得の取り組みなどを通じ て車両マスターやドライバーマスターの整備も 進み、燃費などのデータの精度は上がってき た。
今後は、ITの活用で運送会社に負荷をか けずにデータを収集する方法や、収集したデ ータをサプライチェーン全体で共有できるデー タベースの構築をめざして新たに取り組みを 開始する考えだ。
(フリージャーナリスト・内田三知代) この方法論に則り、国分傘下の卸で貨物運 送事業の許可も持つ長崎国分が一〇年九月 から一一年三月までプロジェクトを実施した。
保有する十三台の全車両にデジタコを装着し てエコドライブを進め、「ITトラックグリー ン認証版」を活用して走行距離や燃料消費量 などのデータを収集した。
その結果、期間中 に十二トンの排出量を削減し、一一年九月に クレジット認証を取得している。
続いて国分は経済産業省などが所管する 「国内クレジット制度」にも二つの方法論を申 請した。
一つはJ─VERと同じでデジタコな 運送事業者のインセンティブ創出 ●グリーン経営認証の取得が容易になるシステムの導入を推進 ●燃費管理機能の提供 グリーン経営認証の取得 燃費管理 帳票出力 データ入力 運転日報 ランキング 燃費管理機能 交通エコロジー・ モビリティ財団 運行データ 走行距離 走行速度 等 グリーン 経営認証 資料
同法では物 流事業者のほか一定規模以上の輸送量がある 「特定荷主」も対象に含め、エネルギー使用効 率の目安となる「原単位」を中長期的に年平 均一%以上減らしていくことを課している。
大手食品卸の国分は、特定荷主の指定を受 けている。
同社は三〇〇〇台を超える車両を 使って年間約二億五〇〇〇万トンの貨物を輸 送している。
再委託先まで含めると、百社以 上の運送会社がそこに携わっている。
国分は これらの協力運送会社からCO2排出量の算 定に必要なデータを収集し、報告する義務を 負う。
自社の直接の管理下にない車両の環境負荷 を把握するのは容易ではない。
しかも同社は、 あえて手間のかかるデータ収集方法を採用し て数値の算定を行ってきた。
改正省エネ法では、物流分野におけるCO2 排出量の算定式として、「?燃料法(燃料使 用量×CO2排出係数)」、「?燃費法(走行距 離/燃費×CO2排出係数)」、「?改良トン キロ法(輸送トンキロ×改良トンキロ法CO2 排出原単位)」の三つを定めている。
計算式の信頼性は「?燃料法」、「?燃費 法」、「?改良トンキロ法」の順で高いが、そ れに応じてデータ収集の手間も増える。
この うち国分は原則として、算定に燃料使用量と いう実測値が必要な「?燃料法」あるいは 「?燃費法」を採用している。
データ自体の精度にもこだわっている。
運 送会社は実車率を上げるために、一台の車両 を時間帯によって別の荷主の輸送業務に振り 向けることがよくある。
そうした実態を数値 に正確に反映させるには、各車両の燃料使用 量を運行単位で細かく把握する必要がある。
また燃費は車両ごとに異なる。
燃費法では 車種別基準値や推定値の利用が認められてい るが、それでは推定値による誤差の範囲で「原 単位を一%減らす」という目標達成の成否が 分かれてしまう可能性もある。
こうしたこと を考慮して、国分はデータをできるだけ運行 単位の実測値で収集する方針を貫いてきた。
データ収集で中心的役割を担う経営企画部 の山田英夫環境担当参事は「実態を正確に反 映したデータでないと、結果的に原単位の数 値が改善されたとしても、それがどの施策に よる成果なのかわからない。
単なる報告書の 作成で終わるのではなく、具体的な削減活動 につなげるために、精緻なデータの収集にこ 「エコドライブ」を進めてカーボン・オフセットの排 出クレジットを取得する「方法論」を物流分野で初め て申請し、承認された。
貨物輸送によって生じるCO2 排出量の把握は、実運送会社の協力にかかっている。
そのインセンティブとするため、グリーン経営やオフ セット・クレジットの認証取得を支援している。
環境対策 国分 CO2排出量の把握に認証制度を活用 中小運送会社のエコドライブを支援 国分の山田英夫経営企画部 環境担当参事 51 FEBRUARY 2012 だわってきた」と六年間の活動を振り返る。
同じ狙いから国分は食品卸業界で環境数値 の算定を標準化する活動にも積極的に参加し てきた。
食品卸業界団体の日本加工食品卸 協会(日食協)は京都議定書の目標達成に向 け「環境自主行動計画」に取り組んでいる。
この枠組みのなかで日食協は、山田氏を座 長とする運輸部門のワーキンググループ(WG) を設け、業界として改正省エネ法に対応して きた。
二〇〇六年三月にガイドラインを作成、 〇九年九月には改訂版を策定し、算定方法の 運用について業界のルールを定めている。
加工食品卸には特定の小売業から共配セン ターの運営業務を受託しているところが多い。
複数の荷主の共同配送を実施した場合、燃料 法または燃費法による算定法では、センター 業務の受託業者が荷主別に燃料使用量の按分 を行う必要がある。
本来は重量や出荷金額などをもとに按分を 行うのが望ましい。
だが共同配送の重量デー タを荷主別に把握するのは事実上難しく、出 荷金額についても小売り側から分母となる出 荷総額の開示を認められないケースが多い。
そこでこのようなケースでは、業務受託業 者(親ベンダー)がほかの荷主(卸)や小売 業の了解を得たうえで全体のエネルギー使用 量を算出し、自らの数値として報告できると いうルールにした。
また店舗への配送を終えた車両が共配セン ターに戻るまでの帰り便の扱いにも独自ルー ルを設けた。
商品を納品先に届けた後の帰り 便は通常、運送事業者が別の荷主の荷物を確 保するか空車で戻るケースが多い。
この場合、 算定の範囲は往路の輸送だけになる。
だが、店舗配送では帰り便も含めて運賃契 約を行うのが一般的だ。
しかも卸は空容器や 通い箱、ロールボックスパレットなどの回収 業務を日常的に行っている。
この業務に帰り 便を有効利用すれば排出削減が可能になる。
そうした取り組みの成果を反映できるように、 日食協は算定の範囲に帰り便を含めた。
こうした運用ルールを業界で決めたことに よって、会員がどの算定方法を採用しても同 じ基準で数値を比較できるようになり、原単 位の改善について公平な評価が可能になった。
日食協に加盟する一四一社のうち、国分を 含む十二社が現在の特定荷主に指定されてい る。
日食協では毎年、環境自主行動計画の 結果を管轄省庁に報告する際、運輸部門の活 動については、特定荷主十二社がこの共通の 運用ルールで把握した省エネ法対応の実績数 値を、一つの表にまとめ、平均値と合わせて 報告を行っている。
データ収集にインセンティブ 一方で国分は、精度の高いデータを収集す るためのシステム開発にも力を注いできた。
改正省エネ法の施行に合わせて同社は、車 両別の走行距離や給油量を管理する「ITト ラックシステム」を開発している。
運送事業 者がデジタルタコメーターで取得した運行デー タをフォーマット変換するだけで、算定に必要 なデータをスムーズに収集することができる。
ただし同社の協力運送事業者の大半は中小 でデジタコを装備しているところは少ない。
燃 料使用量や輸送距離などのデータについては、 ドライバーの運転日報をもとに紙ベースで管 理しているところがほとんどだ。
そうした事 業者からいかにして運行単位の正確なデータ を電子的に収集するかが最大の課題だった。
当初、国分は携帯電話を使ってデータを収 集する方法を検討した。
ドライバーが運行開 始時から終了時までの走行距離と給油量を携 帯電話に入力し、インターネット経由で「I Tトラックシステム」のサーバーに収集する仕 組みだ。
サーバーには配車管理や車両整備管理、請 求管理、勤怠・給与管理など、運送会社の 業務管理に必要なソフトを搭載し、運送会社 に無償で提供することにした。
運送会社は サーバーに蓄積したデータを燃費管理や配車、 請求管理などに利用できる。
一方、同じシス テムを使って国分は算定に必要なデータを取 得するという運用を目指した。
だが予想に反して利用は広がらなかった。
初期投資が不要なシステムでも中小の運送事 業者にとっては通信費などの運用コストの負 担が重荷だった。
運送会社の業務管理に役立 つと考えて搭載したソフトも一部しか利用さ れず、思惑が外れた。
FEBRUARY 2012 52 そもそも車両保有台数二〇〇台以下の運送 会社には、省エネ法に基づく報告義務がない。
中小の協力運送会社に精度の高いデータを提 供してもらうには何らかのインセンティブが 必要だと国分は考えた。
そこでまず着目した のが「グリーン経営認証制度」だ。
事業活動で営利の追及と環境保全を両立さ せて「経営のグリーン化」を進めている中小 企業を対象に、交通エコロジー・モビリティ 財団がその活動を審査し、認証を与える制度 で、運送会社は認証取得を通じて燃費向上に よるコストの削減と、?グリーン調達?を荷主 にアピールすることができる。
認証の取得には、「グリーン経営推進マニュ アル」に基づいて目標を設定し、達成のため の計画を実行することが求められる。
トラッ ク運送事業者向けではエコドライブの実施や 車両の点検・整備などが審査項目となってい る。
エコドライブに取り組む際は、燃費に関す る定量的な目標を設定してその評価を行わな ければならない。
それには車両ごとに正確な データの収集が必要だ。
荷主がCO2排出量 の算定に使うデータもこれに含まれている。
従 って運送事業者が認証を取得する取り組みを 通じ、荷主はより精度の高いデータを収集で きるようになる。
国分は運送事業者のグリーン経営認証取得 を支援するために、「ITトラックシステム」 を改良し、新たに「ITトラックグリーン経 必要はなくなる。
担当者の負担は大きく軽減 される。
同じように第三者がデータの検証を行う仕 組みとして次に目をつけたのが、環境省が〇 八年に創設した「オフセット・クレジット(J ─VER)制度」だ。
植林プロジェクトなどの 温室効果ガス排出削減・吸収活動によって削 減した排出量を、「カーボン・オフセット(排 出量の相殺)」に用いるクレジットとして認証 する。
ISOに準拠して運用され、取得した 排出クレジットは市場で売却もできる。
この制度が運送会社にとって新たなインセ ンティブになると国分は考えた。
クレジット 取得の要件は、J─VER運営委員会が承認 する「排出削減の方法論」に基づいてプロジ ェクトを実施し成果をあげること。
国分は運 送会社がクレジットを取得するための「方法 論」として「トラックにデジタルタコグラフを 装着してエコドライブを推進する方法」を申 請し、二〇一一年一月に委員会で承認された。
物流分野では初の承認だった。
この方法論は運行記録計の装着義務がない 車両を対象とし、過去一年間の燃料消費量と 走行距離の記録が完備していることや、同一 事業所に所属する八〇%以上の車両について 申請することなどの適格性基準を設けている。
基準を満たした車両でプロジェクトを実施し、 エコドライブによる燃費の向上で削減できた 排出量(排出削減率は最大一〇%)がクレジ ットとして認証される。
営認証版」を開発した。
デジタコなどで収集する燃費データや車両 情報をデータベースに蓄積し、認証の取得に 必要なデータの作成を簡素化するシステムで、 〇九年に物流子会社の国分ロジスティクスが 認証を取得した際のノウハウを取り入れた。
排出量算定に必要な燃費などのデータについ ては荷主も共有できるようにした。
協力運送会社にシステムを無償で提供する ほか、「マニュアル」を分かりやすく解説した 冊子を配布して、協力運送会社の認証取得を 支援した。
これまでに業務委託先の七七事業 所がシステムを活用するなどして認証を取得 している。
物流分野初の「方法論」を開発 国分がグリーン経営認証制度に着目した理 由はもう一つある。
国分は携帯電話のシステ ムが頓挫した後も、運行管理者に運転日報の なかから必要なデータをパソコンで入力しても らうなどの方法で電子データ化を進めてきた。
だが収集するデータの数値には、欠落やダ ブリ、桁違いなどのミスが混じっている。
こ のため国分側で各事業所の担当者がデータを 一件ずつチェックしている。
ミスが見つかる と運送会社に問い合わせて修正する。
地味で 手間のかかる作業だ。
運送会社がグリーン認証を取得すれば、デ ータの精度が認証機関によって保証されるこ とになるため、荷主がわざわざチェックする 53 FEBRUARY 2012 どのIT機器を利用して燃費を改善する方法。
もう一つは共同配送を実施して排出量を削減 する方法だ。
共同化の方法論を考案したのは荷主企業に この取り組みを広める狙いからだ。
「一社単独 ではなく、サプライチェーン全体でデータの精 度を上げ、物流を見える化していく必要があ る。
そのために共同配送でクレジットを取得 する方法論は有効だと思う」と山田氏は話す。
申請に当たり同社は削減量の試算を行って いる。
九州地区で店舗へ自社配送していた地 場メーカーの商品を国分の配送ルートに積み 合わせ、九社による共同配送を実施した。
そ の結果、エコドライブによるのとほぼ同じ水 準の排出量を削減できたという。
共同配送の環境効果測定に課題 ただしこの方法には欠点がある。
クレジッ トを取得するには排出量を比較するためにプ ロジェクトを実施する前と後のデータが必要だ。
だが共同配送に変更することで排出削減する 方法は、変更前のデータの収集について運送 会社から協力を得るのが容易でない。
試算のために実施した共同配送でも、参 加メーカーの共同化前の詳細なデータがなく、 重量と距離だけで算定する改良トンキロ法を 選択せざるを得なかった。
重量については、メーカーのホームページ で商品の容量を調べてマスターに登録してお き、ピッキングリストをもとに運行単位でメ ーカー別に総重量を集計した。
これをもとに 積載率も計算した。
距離はデジタコから取得 した。
これにより共配実施後についてはある 程度妥当なデータを取得できた。
だが実施前のデータにみなし値が多いこと から、この共同化パターンでの方法論の承認 は保留になっている。
このため別の帰り便を 利用する共同化のパターンで方法論の承認に 期待をつないでいる。
国分はこのほかにもいくつかの方法論を検 討中だ。
「方法論を増やして物流のいろいろ なクレジットをつくれば、もっと細かなデー タが取れるようになる」と山田氏は説明する。
三月には国分の働きかけによって、クレジッ トの取得をめざす運送会社を対象に、J─V ERと国内クレジットの両方の制度で物流の 方法論の説明会が開かれる予定だ。
改正省エネ法が施行された当時と比べ、協 力運送会社のデータ収集への対応はずいぶん 前向きになってきたと山田氏は感じている。
グリーン経営認証取得の取り組みなどを通じ て車両マスターやドライバーマスターの整備も 進み、燃費などのデータの精度は上がってき た。
今後は、ITの活用で運送会社に負荷をか けずにデータを収集する方法や、収集したデ ータをサプライチェーン全体で共有できるデー タベースの構築をめざして新たに取り組みを 開始する考えだ。
(フリージャーナリスト・内田三知代) この方法論に則り、国分傘下の卸で貨物運 送事業の許可も持つ長崎国分が一〇年九月 から一一年三月までプロジェクトを実施した。
保有する十三台の全車両にデジタコを装着し てエコドライブを進め、「ITトラックグリー ン認証版」を活用して走行距離や燃料消費量 などのデータを収集した。
その結果、期間中 に十二トンの排出量を削減し、一一年九月に クレジット認証を取得している。
続いて国分は経済産業省などが所管する 「国内クレジット制度」にも二つの方法論を申 請した。
一つはJ─VERと同じでデジタコな 運送事業者のインセンティブ創出 ●グリーン経営認証の取得が容易になるシステムの導入を推進 ●燃費管理機能の提供 グリーン経営認証の取得 燃費管理 帳票出力 データ入力 運転日報 ランキング 燃費管理機能 交通エコロジー・ モビリティ財団 運行データ 走行距離 走行速度 等 グリーン 経営認証 資料
