2012年2月号
現場改善
現場改善
第109回 雑貨卸J社のパート現場活性化プロジェクト
FEBRUARY 2012 84
パート人件費がコストを圧迫
J社は北陸に本社を置く年商八〇億円の業務
用雑貨卸である。
創業は一九二三年で、既に九 〇年近い社歴がある。
大手による統合・合併の 進む同業界にあって、J社は取扱い品目の差異 化と事業展開エリアの独自性によって経営の独 立を維持してきた。
独自企画の輸入品を中心に約四五〇〇アイテ ムを取り扱っている。
営業所は、福井、石川、 富山、新潟に展開している。
市場規模としては 小さく、かつ地域性の強いエリアを対象に、高 いシェアを獲得している。
販路は多岐にわたっている。
なかでも七年前 に開始した通販チャネルが好調で、ここ数年は 順調に売り上げを拡大させている。
物量の増加 によって、それまで使用していた物流センター が手狭になったため、三年前に移転、拡張した。
その新センターの現場改善が今回、我々日本 ロジファクトリー(NLF)に与えられたミッ ションである。
J社の三代目となるO社長から 直接相談を受けた。
「作業スタッフの頭数は足 りているはずなのだが、残業がなくならず、コ ストアップになっている」という。
その数日後、我々はJ社が新センターを置く K市に足を運んだ。
新センターは延べ床面積約 一四〇〇坪の二階建てで、自前の施設であった。
運営もJ社自身で行っていた。
庫内を一見した だけでも「2S(整理・整頓)」の行き届いた 現場であることは分かった。
その日は約一時間半の現場視察と、現場責任 者のSセンター長を相手に約二時間のヒアリン グを行った。
それによると、新センターには直 接雇用のパート・アルバイト四二人が常時出勤 し、繁忙期には派遣会社から八〜一〇人の人員 を調達しているとのことだった。
直接雇用のパート・アルバイトは手厚く遇さ れていた。
年末には能力や勤務態度に関係なく パート全員にボーナスを支給していた。
いった ん採用されれば本人から辞めたいと言い出さな い限り、クビにされることもなかった。
J社に限らず、農村地帯などの地域コミュニ ティの強いエリアでは、パート・アルバイトで あっても簡単にクビを切ることはできない。
悪 い噂がすぐに広がり、新規募集が難しくなって しまうからだ。
老舗のJ社はとくにその点を気にしていた。
J社が新センターにK市を選んだのも北信越の 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 業務用雑貨卸の経営者から相談が入った。
作業員の頭数 は足りているはずなのに残業が慢性化している。
パート中心 の現場だが、閑散期でも人件費は減らないという。
物量の 変動に合わせて現場に投入する労働力を調整する「レイバー コントロール」ができていないようだ。
雑貨卸J社のパート現場活性化プロジェクト 第109 回 85 FEBRUARY 2012 なかでは都会的で、地域コミュニティのデメリ ットも相対的に小さいだろうと考えてのことで あった。
そのうえで、パートの扱いには相当な 配慮をしていた。
しかし、このことがセンター運営コストを押 し上げる大きな要因となっていた。
その日の物 量と関係なく作業人員が一定であるため、閑散 期には人手を余してしまう。
現場では時間のメ リハリがなくなり、作業のムダ、ムラを生んで いた。
せっかくのボーナスも、金額・時給のわ ずかな違いが不満要因となり、かえってモチベ ーションを低下させていた。
Sセンター長からのヒアリングだけでも、新 センターのおおよその課題・問題点を察するこ とはできた。
そこでO社長に対して、まだデー タ的な裏付けを得ておらず、仮説に過ぎないと 前置きしながらも、「レイバーコントロール」が 効きそうだとの見通しを伝えた。
するとO社長 は「それだ! それが必要だ」と膝を叩いたの であった。
レイバーコントロールとは、物量の波動に合 わせて、現場作業に投入するパート・アルバイ トの人数を柔軟に調整する仕組みである。
これ によって、それまで固定費だった作業人件費を 変動費化することができる。
物量の変動の大き な流通の川下のセンターには、とくに効果的な 管理手法である。
具体的には以下の六つのプロセスを踏んで、 J社のセンターにレイバーコントロールの仕組み を導入した。
「?生産性目標の設定」、「?昼礼 の徹底」、「?多能工パートの育成」、「?終わり じまいの実施・徹底」、「?ピッキング・梱包人 員の補充」、「?センター長の適正判断」である。
さらには「パート人事考課制度の導入」を第二 ステップの課題に掲げた。
作業生産性の目標を設定する このうち「?生産性目標の設定」はレイバ ーコントロールの?要?とも言える部分である。
「一人一時間当たりの作業量(人時)」を指標と して業務別の生産性を把握する。
さらには得意 先別生産性にまで展開することも可能だが、大 半の現場は業務別生産性による管理だけでも事 足りる。
業務別生産性を採るにはまず、センター作 業を「入荷」、「格納」、「ピッキング」、「検品」、 「梱包」、「出荷」に分解し、各業務ごとに生産 性を図る基準を決める。
入荷、格納作業であれ ば「ケース」。
ピッキングは「伝票行数」。
検品 は「件数」。
梱包、出荷は「ケース」といった 具合である。
ピース出荷が多い現場では、「ケース」ではな く「ピース」を基準にしたり、個品ごとに重量 の違う不定貫商品を扱う場合は「kg」を基準 にするなど、その現場で取り扱っている商品の 特性や出荷ロットに応じた基準を選ぶ。
次にパート各人の能力差を加味して作業の処 理スピードを測定する。
例えば、作業の最も速 いパートを「MAX」、最も遅いパートを「MI N」、平均的と思われる作業者を「AVE」と 設定し、それぞれの作業速度をストップウォッチ で測る。
そしてMAX、MIN、AVEの平均 値を、その現場の大まかな生産性の目安とする。
これと平行して、平均的な一日の作業スケジ ュールを作成する。
入荷開始時間と最終車両へ の積み込み時間の双方から、つまり作業のスタ ートとエンドから、各業務プロセスの開始時間 と終了時間を詰めていく。
その結果、各業務プロセスに与えられた時間 が弾き出される。
その時間と作業に必要な時間 を比較する。
作業に必要な時間は、「生産性の 目安×作業量/投入人数」で計算する。
与えら れた時間に対して作業に必要な時間が二〇%超 以内であれば、その後の改善によって十分対応 が可能である。
また、ここでの注意点は、J社のようなパー ト社員三〇〜五〇人クラスのセンターの場合、応 援に入ることのできる社員もしくはフロアリー ダーを投入人数の計算時には人数にカウントし ないことである。
そうした臨時の労働力を予備 人員として備えておくことで、見込みと実績の ズレを調整するのである(次頁表1)。
以上のスケジュールを曜日別に展開させて、さ らには繁忙時シフト、閑散時シフト、平常時シフ トをそれぞれ作成する。
ちなみにJ社の場合、平 常時シフトでは一日約八〇〇個を出荷していた。
また作業スケジュールは現場スタッフと共有 する必要があるため、大きめのホワイトボード を使って一目で分かるように可視化する。
(次 頁写真参照)この時には生産性の算式などは外 し、目標数値と終了時間だけをホワイトボード に掲示する。
磁石で作成したネームプレートを 使って、各パートが担当する作業を明示すると FEBRUARY 2012 86 便利である。
「?昼礼の徹底」はレイバーコントロールを機 能させるための必須事項である。
基本的に朝礼では出勤人員の確認と体調チェ ック、注意事項の伝達と労務管理に主眼を置く。
昼礼では、レイバーコントロールの仕組みが定着 した段階では、利益管理を行うことになる。
午 前中に受注した今日の出荷量に、午後からの受 注見込み分を加えて、どれだけ早く業務を終了 できるかを追求する。
具体的には昼礼では、各フロアリーダーとパ ートリーダークラスが集まり、午前中の作業状 況(予定より早く進んでいるか遅くなっている か)の確認と午後からの見通し(ヒトが余るの か足りないのか)を伝え、センター長が中心と なって全体の作業量に対する人員の過不足を調 整する。
いわゆる?終わりじまい?(その作業の終了 をもって一日の終了とする)で、早上がりがで きそうな業務から、残業が発生する可能性の高 い業務に、パートを振り分けるのである。
多能?班?化が効果的 ここで必要となるのが「?多能工パートの育 成」である。
他の業務にパートを振り分けよう としても、そのパートに一定のスキルと知識が なければ戦力にはならない。
他のパートに仕事 を教えてもらっているようでは返って生産性が 低下し、終了時間が延びてしまう。
そこで閑散期にパートを教育しておく。
基本 的には一人のパートで三つの業務に対応できる ようにする。
パート全員がすぐに多能工化に対 応できるわけではないため、まずは上位三分の 一程度の優秀なパートを対象にする。
ただし、筆者の経験から言うと、女性パート 中心の現場では、個人単位よりも数名による班 (グループ)単位で教育したほうが余計な軋轢 を起こさずに済む。
つまり多能工ではなく?多 能班?を育成するのである。
またパートが五〇人以上いる現場では、リー ダーが全員の名前を覚えることさえ難しくなる ので、パートが胸に下げる入退出許可証や帽子 の側面などに、ピッキングが出来るパートは黄 色、検品は赤、梱包・箱詰めは青といった具合 に、それぞれのパートが対応できる業務をカラ ー表示しておくとよい。
「?終わりじまいの実施・徹底」に関して、そ れまでJ社では終わりじまいの制度自体を実施 していなかった。
新センターへの移行に合わせ て、制度は作ったものの実践はできていなかっ た。
早上がりできる閑散期においても、センタ ー長や現場リーダーはパートたちの顔色を見て、 彼女たちの手取りが減ってしまうのを避ける傾 向があった。
しかし、パートの労働時間を固定したままで は、いくら作業を改善しても意味がない。
パー ト現場の生産性を上げるために、終わりじまい がいかに重要であるか、我々NLFは時間をか けて説いていく必要があった。
「?ピッキング・梱包人員の採用」は当初は 想定していなかった項目であった。
「?生産性 目標の設定」で各作業を計測したところ、物量 の増大に対してピッキング・梱包業務の人員が 不足していることが明らかになった。
当初、O社長が話していた「頭数は足りてい るはずなのに、残業時間がなくならずコストア ップになっている」という認識は誤りであった。
確かにトータル物流コストは増加していたが、売 り上げの伸びはそれを上回っていた。
厳密に計 算すると売上高に占めるトータル物流コストは 〇・二ポイントほど下がっていたのである。
地元紙二紙の折り込み広告で、ピッキング・ 梱包要員それぞれ二名を募集した。
ところが 三週続けて募集を行ったにもかかわらず一件の 応募もないという。
チラシをチェックしたとこ ろ、募集時給がエリア相場よりも一〇〇円安か った。
応募がないのも当然である。
そこで時給を改定した結果、二十三人の応募 があった。
当初の募集で相場より安い時給を設 定したのは、既存パートの時給水準に配慮して 差を付けたためであった。
ボーナスの支給も含 め、時給体系、評価制度に問題があるのは明ら かであった。
「?センター長の適正判断」について、我々 はO社長と幾度か協議を重ねた。
しかし、Sセ ンター長は既に高齢であり、不適任となれば降 格か解雇の選択肢しかないという。
それは先代 の会長が許さず、またセンター長の後継者も育 っていないため続投となった。
Sセンター長は管理職として十分な役割を果た せずにいた。
しかし、それは本人の責任だけで はなかった。
常に少人数で運営することを会社 側から求められてきたため、Sセンター長はオー 87 FEBRUARY 2012 ルラウンド作業員となってしまっていた。
センタ ー長として何を管理すべきなのか教えられても いなかった。
会社側にも反省すべき点はあった。
こうして六項目の施策を実施したほか、構内 アナウンスを利用して、最終入荷車両の到着連 絡や終了までの残り伝票数などの作業情報をパ ート全員に伝えるようにした。
これは現場のモ チベーションアップに効果的であった。
J社の取り組みは、言ってみればO社長の勘 違いからはじまった改善であった。
新センター への移行によって現場の生産性が悪化している わけではなかった。
しかし、結果として、全 体の生産性は取り組み開始から約三カ月で一五 %上昇した。
さらなる向上には、庫内レイアウ ト・保管ロケーションの見直し、パート人事考 課制度の導入、Sセンター長への管理職教育が 不可欠である。
これまで管理が十分でなかっただけに改善余 地は大きい。
次の節目となるプロジェクト開始 から六カ月目にはどれだけの成果が出るだろう。
筆者は楽しみにしている。
あおき・しょういち 1964年生まれ。
京都産業大学経済学部 卒業。
大手運送業者のセールスドライバーを 経て、89年に船井総合研究所入社。
物流開 発チーム・トラックチームチーフを務める。
96年、独立。
日本ロジファクトリーを設立 し代表に就任。
現在に至る。
主な著書に『経 営のテコ入れは物流改善から』明日香出版社、 『物流のしくみ』(同文館出版)などがある。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp PROFILE 図1 《人員体制表》 ■見直し・検討メンバー:○○/○○(時間短縮)/○○/○○ ■キーマン:○○/○○/○○/○○/(○○)/C 800 箱出荷ベース日*曜日別体制表が必要 入荷(4.0h) 格納(6.0h) ピッキング (32.6h) 800枚×11行÷4.5 行/ 分 =1,955 分 (32.6h) 現93 時間・目標60 時間 検品・チェック (21.2h) 800 個×0.8×20 秒/ 個 =76,800 秒(21.2h) 梱包 (32.0h) 800個×25個/h =32h 出荷(ー) 返品(4.0h) 延べ人員数 支社送り (16.0h) 時間 業務 2 4 6 6 11 11 5 8 11 11 11 8 6 6 4 2 0 0 0 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 水物 派遣 派遣 雑貨 (自配分) (本社分) (本社分) /
創業は一九二三年で、既に九 〇年近い社歴がある。
大手による統合・合併の 進む同業界にあって、J社は取扱い品目の差異 化と事業展開エリアの独自性によって経営の独 立を維持してきた。
独自企画の輸入品を中心に約四五〇〇アイテ ムを取り扱っている。
営業所は、福井、石川、 富山、新潟に展開している。
市場規模としては 小さく、かつ地域性の強いエリアを対象に、高 いシェアを獲得している。
販路は多岐にわたっている。
なかでも七年前 に開始した通販チャネルが好調で、ここ数年は 順調に売り上げを拡大させている。
物量の増加 によって、それまで使用していた物流センター が手狭になったため、三年前に移転、拡張した。
その新センターの現場改善が今回、我々日本 ロジファクトリー(NLF)に与えられたミッ ションである。
J社の三代目となるO社長から 直接相談を受けた。
「作業スタッフの頭数は足 りているはずなのだが、残業がなくならず、コ ストアップになっている」という。
その数日後、我々はJ社が新センターを置く K市に足を運んだ。
新センターは延べ床面積約 一四〇〇坪の二階建てで、自前の施設であった。
運営もJ社自身で行っていた。
庫内を一見した だけでも「2S(整理・整頓)」の行き届いた 現場であることは分かった。
その日は約一時間半の現場視察と、現場責任 者のSセンター長を相手に約二時間のヒアリン グを行った。
それによると、新センターには直 接雇用のパート・アルバイト四二人が常時出勤 し、繁忙期には派遣会社から八〜一〇人の人員 を調達しているとのことだった。
直接雇用のパート・アルバイトは手厚く遇さ れていた。
年末には能力や勤務態度に関係なく パート全員にボーナスを支給していた。
いった ん採用されれば本人から辞めたいと言い出さな い限り、クビにされることもなかった。
J社に限らず、農村地帯などの地域コミュニ ティの強いエリアでは、パート・アルバイトで あっても簡単にクビを切ることはできない。
悪 い噂がすぐに広がり、新規募集が難しくなって しまうからだ。
老舗のJ社はとくにその点を気にしていた。
J社が新センターにK市を選んだのも北信越の 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 業務用雑貨卸の経営者から相談が入った。
作業員の頭数 は足りているはずなのに残業が慢性化している。
パート中心 の現場だが、閑散期でも人件費は減らないという。
物量の 変動に合わせて現場に投入する労働力を調整する「レイバー コントロール」ができていないようだ。
雑貨卸J社のパート現場活性化プロジェクト 第109 回 85 FEBRUARY 2012 なかでは都会的で、地域コミュニティのデメリ ットも相対的に小さいだろうと考えてのことで あった。
そのうえで、パートの扱いには相当な 配慮をしていた。
しかし、このことがセンター運営コストを押 し上げる大きな要因となっていた。
その日の物 量と関係なく作業人員が一定であるため、閑散 期には人手を余してしまう。
現場では時間のメ リハリがなくなり、作業のムダ、ムラを生んで いた。
せっかくのボーナスも、金額・時給のわ ずかな違いが不満要因となり、かえってモチベ ーションを低下させていた。
Sセンター長からのヒアリングだけでも、新 センターのおおよその課題・問題点を察するこ とはできた。
そこでO社長に対して、まだデー タ的な裏付けを得ておらず、仮説に過ぎないと 前置きしながらも、「レイバーコントロール」が 効きそうだとの見通しを伝えた。
するとO社長 は「それだ! それが必要だ」と膝を叩いたの であった。
レイバーコントロールとは、物量の波動に合 わせて、現場作業に投入するパート・アルバイ トの人数を柔軟に調整する仕組みである。
これ によって、それまで固定費だった作業人件費を 変動費化することができる。
物量の変動の大き な流通の川下のセンターには、とくに効果的な 管理手法である。
具体的には以下の六つのプロセスを踏んで、 J社のセンターにレイバーコントロールの仕組み を導入した。
「?生産性目標の設定」、「?昼礼 の徹底」、「?多能工パートの育成」、「?終わり じまいの実施・徹底」、「?ピッキング・梱包人 員の補充」、「?センター長の適正判断」である。
さらには「パート人事考課制度の導入」を第二 ステップの課題に掲げた。
作業生産性の目標を設定する このうち「?生産性目標の設定」はレイバ ーコントロールの?要?とも言える部分である。
「一人一時間当たりの作業量(人時)」を指標と して業務別の生産性を把握する。
さらには得意 先別生産性にまで展開することも可能だが、大 半の現場は業務別生産性による管理だけでも事 足りる。
業務別生産性を採るにはまず、センター作 業を「入荷」、「格納」、「ピッキング」、「検品」、 「梱包」、「出荷」に分解し、各業務ごとに生産 性を図る基準を決める。
入荷、格納作業であれ ば「ケース」。
ピッキングは「伝票行数」。
検品 は「件数」。
梱包、出荷は「ケース」といった 具合である。
ピース出荷が多い現場では、「ケース」ではな く「ピース」を基準にしたり、個品ごとに重量 の違う不定貫商品を扱う場合は「kg」を基準 にするなど、その現場で取り扱っている商品の 特性や出荷ロットに応じた基準を選ぶ。
次にパート各人の能力差を加味して作業の処 理スピードを測定する。
例えば、作業の最も速 いパートを「MAX」、最も遅いパートを「MI N」、平均的と思われる作業者を「AVE」と 設定し、それぞれの作業速度をストップウォッチ で測る。
そしてMAX、MIN、AVEの平均 値を、その現場の大まかな生産性の目安とする。
これと平行して、平均的な一日の作業スケジ ュールを作成する。
入荷開始時間と最終車両へ の積み込み時間の双方から、つまり作業のスタ ートとエンドから、各業務プロセスの開始時間 と終了時間を詰めていく。
その結果、各業務プロセスに与えられた時間 が弾き出される。
その時間と作業に必要な時間 を比較する。
作業に必要な時間は、「生産性の 目安×作業量/投入人数」で計算する。
与えら れた時間に対して作業に必要な時間が二〇%超 以内であれば、その後の改善によって十分対応 が可能である。
また、ここでの注意点は、J社のようなパー ト社員三〇〜五〇人クラスのセンターの場合、応 援に入ることのできる社員もしくはフロアリー ダーを投入人数の計算時には人数にカウントし ないことである。
そうした臨時の労働力を予備 人員として備えておくことで、見込みと実績の ズレを調整するのである(次頁表1)。
以上のスケジュールを曜日別に展開させて、さ らには繁忙時シフト、閑散時シフト、平常時シフ トをそれぞれ作成する。
ちなみにJ社の場合、平 常時シフトでは一日約八〇〇個を出荷していた。
また作業スケジュールは現場スタッフと共有 する必要があるため、大きめのホワイトボード を使って一目で分かるように可視化する。
(次 頁写真参照)この時には生産性の算式などは外 し、目標数値と終了時間だけをホワイトボード に掲示する。
磁石で作成したネームプレートを 使って、各パートが担当する作業を明示すると FEBRUARY 2012 86 便利である。
「?昼礼の徹底」はレイバーコントロールを機 能させるための必須事項である。
基本的に朝礼では出勤人員の確認と体調チェ ック、注意事項の伝達と労務管理に主眼を置く。
昼礼では、レイバーコントロールの仕組みが定着 した段階では、利益管理を行うことになる。
午 前中に受注した今日の出荷量に、午後からの受 注見込み分を加えて、どれだけ早く業務を終了 できるかを追求する。
具体的には昼礼では、各フロアリーダーとパ ートリーダークラスが集まり、午前中の作業状 況(予定より早く進んでいるか遅くなっている か)の確認と午後からの見通し(ヒトが余るの か足りないのか)を伝え、センター長が中心と なって全体の作業量に対する人員の過不足を調 整する。
いわゆる?終わりじまい?(その作業の終了 をもって一日の終了とする)で、早上がりがで きそうな業務から、残業が発生する可能性の高 い業務に、パートを振り分けるのである。
多能?班?化が効果的 ここで必要となるのが「?多能工パートの育 成」である。
他の業務にパートを振り分けよう としても、そのパートに一定のスキルと知識が なければ戦力にはならない。
他のパートに仕事 を教えてもらっているようでは返って生産性が 低下し、終了時間が延びてしまう。
そこで閑散期にパートを教育しておく。
基本 的には一人のパートで三つの業務に対応できる ようにする。
パート全員がすぐに多能工化に対 応できるわけではないため、まずは上位三分の 一程度の優秀なパートを対象にする。
ただし、筆者の経験から言うと、女性パート 中心の現場では、個人単位よりも数名による班 (グループ)単位で教育したほうが余計な軋轢 を起こさずに済む。
つまり多能工ではなく?多 能班?を育成するのである。
またパートが五〇人以上いる現場では、リー ダーが全員の名前を覚えることさえ難しくなる ので、パートが胸に下げる入退出許可証や帽子 の側面などに、ピッキングが出来るパートは黄 色、検品は赤、梱包・箱詰めは青といった具合 に、それぞれのパートが対応できる業務をカラ ー表示しておくとよい。
「?終わりじまいの実施・徹底」に関して、そ れまでJ社では終わりじまいの制度自体を実施 していなかった。
新センターへの移行に合わせ て、制度は作ったものの実践はできていなかっ た。
早上がりできる閑散期においても、センタ ー長や現場リーダーはパートたちの顔色を見て、 彼女たちの手取りが減ってしまうのを避ける傾 向があった。
しかし、パートの労働時間を固定したままで は、いくら作業を改善しても意味がない。
パー ト現場の生産性を上げるために、終わりじまい がいかに重要であるか、我々NLFは時間をか けて説いていく必要があった。
「?ピッキング・梱包人員の採用」は当初は 想定していなかった項目であった。
「?生産性 目標の設定」で各作業を計測したところ、物量 の増大に対してピッキング・梱包業務の人員が 不足していることが明らかになった。
当初、O社長が話していた「頭数は足りてい るはずなのに、残業時間がなくならずコストア ップになっている」という認識は誤りであった。
確かにトータル物流コストは増加していたが、売 り上げの伸びはそれを上回っていた。
厳密に計 算すると売上高に占めるトータル物流コストは 〇・二ポイントほど下がっていたのである。
地元紙二紙の折り込み広告で、ピッキング・ 梱包要員それぞれ二名を募集した。
ところが 三週続けて募集を行ったにもかかわらず一件の 応募もないという。
チラシをチェックしたとこ ろ、募集時給がエリア相場よりも一〇〇円安か った。
応募がないのも当然である。
そこで時給を改定した結果、二十三人の応募 があった。
当初の募集で相場より安い時給を設 定したのは、既存パートの時給水準に配慮して 差を付けたためであった。
ボーナスの支給も含 め、時給体系、評価制度に問題があるのは明ら かであった。
「?センター長の適正判断」について、我々 はO社長と幾度か協議を重ねた。
しかし、Sセ ンター長は既に高齢であり、不適任となれば降 格か解雇の選択肢しかないという。
それは先代 の会長が許さず、またセンター長の後継者も育 っていないため続投となった。
Sセンター長は管理職として十分な役割を果た せずにいた。
しかし、それは本人の責任だけで はなかった。
常に少人数で運営することを会社 側から求められてきたため、Sセンター長はオー 87 FEBRUARY 2012 ルラウンド作業員となってしまっていた。
センタ ー長として何を管理すべきなのか教えられても いなかった。
会社側にも反省すべき点はあった。
こうして六項目の施策を実施したほか、構内 アナウンスを利用して、最終入荷車両の到着連 絡や終了までの残り伝票数などの作業情報をパ ート全員に伝えるようにした。
これは現場のモ チベーションアップに効果的であった。
J社の取り組みは、言ってみればO社長の勘 違いからはじまった改善であった。
新センター への移行によって現場の生産性が悪化している わけではなかった。
しかし、結果として、全 体の生産性は取り組み開始から約三カ月で一五 %上昇した。
さらなる向上には、庫内レイアウ ト・保管ロケーションの見直し、パート人事考 課制度の導入、Sセンター長への管理職教育が 不可欠である。
これまで管理が十分でなかっただけに改善余 地は大きい。
次の節目となるプロジェクト開始 から六カ月目にはどれだけの成果が出るだろう。
筆者は楽しみにしている。
あおき・しょういち 1964年生まれ。
京都産業大学経済学部 卒業。
大手運送業者のセールスドライバーを 経て、89年に船井総合研究所入社。
物流開 発チーム・トラックチームチーフを務める。
96年、独立。
日本ロジファクトリーを設立 し代表に就任。
現在に至る。
主な著書に『経 営のテコ入れは物流改善から』明日香出版社、 『物流のしくみ』(同文館出版)などがある。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp PROFILE 図1 《人員体制表》 ■見直し・検討メンバー:○○/○○(時間短縮)/○○/○○ ■キーマン:○○/○○/○○/○○/(○○)/C 800 箱出荷ベース日*曜日別体制表が必要 入荷(4.0h) 格納(6.0h) ピッキング (32.6h) 800枚×11行÷4.5 行/ 分 =1,955 分 (32.6h) 現93 時間・目標60 時間 検品・チェック (21.2h) 800 個×0.8×20 秒/ 個 =76,800 秒(21.2h) 梱包 (32.0h) 800個×25個/h =32h 出荷(ー) 返品(4.0h) 延べ人員数 支社送り (16.0h) 時間 業務 2 4 6 6 11 11 5 8 11 11 11 8 6 6 4 2 0 0 0 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 水物 派遣 派遣 雑貨 (自配分) (本社分) (本社分) /
