2012年3月号
特集

第2部 注目5カ国の物流市場勢力図 インド──日系物流企業の投資ラッシュ始まる

 日系物流企業のインドへの投資ラッシュが始まっている。
合弁会社の設立やM&A によって現地にネットワークと拠点を 手に入れ、現地の荷主にまで切り込む。
巨大な国内市場を抱 えるインドには大きなビジネスチャンスが眠っている。
ただし、 そこには高い障壁も待ち構えている。
      (石鍋 圭) 合弁、M&Aが続々  近鉄エクスプレス(KWE)は今年二月一三日、イ ンドの物流大手ガティと合弁会社を四月に設立する と発表した。
ガティはインド国内において四〇〇〇台 のトラックと五〇〇カ所の拠点を抱える上場企業で、 二〇一一年六月期の売上高は約二〇〇億円。
主力の 国内貨物輸送事業と宅配事業のほか、ロジスティク ス事業、国際貨物輸送事業、船舶運航事業など幅広 い物流サービスを提供している。
 ガティの事業のうち、国内貨物輸送事業とロジステ ィクス事業を分割して合弁会社に移管する。
合弁会 社名は「ガティ─近鉄エクスプレス」で、出資比率は KWEが三〇%、ガティが七〇%になる見通し。
初 年度の目標売上高は約一六〇億円。
当面の成長率は 二二〜二三%を見込んでいる。
 KWEとしてはインド全域に物流ネットワークを持 つガティと組むことで、これまで手薄だった国内物流 にテコ入れし、経済成長著しいインド市場でのプレゼ ンスを高めたい考えだ。
さらにインドで得た国内物流 網とKWEのグローバルネットワークをリンクさせる ことで、荷主の国際戦略をサーポートしていく。
 伊藤忠グループもまた、昨年十一月にインドの有力 物流企業パレック社との間に合弁企業「IP社」を 折半投資で立ち上げている。
パレック社もガティと同 様インド全域でサービスを展開しているが、特に生活 消費財の物流に強みを持つ。
新たに設立したIP社 はインド五三都市、二三〇拠点のネットワークを武器 に、生活消費財、家電、機械部品関連の荷主を対象 にJITサービスなど高機能物流を提供する。
 M&Aによって一気に業容を拡大させる動きも目 立つ。
SBSホールディングスは昨年一〇月、アトラ ス・ロジスティクスの株式の八〇%を取得した。
アト ラスはインド国内に二六拠点、国外に一四拠点を有 するフォワーディング会社だが、発電所やプラント建 設など大規模開発向けの輸送にも豊富な実績を有し ている。
SBSは同社の買収により、インド国内お よび日印ビジネスでの競争力強化を見込んでいる。
 日立物流も一〇年にインドのフォワーディング大手 のフライジャック・ロジスティクスを買収している。
フライジャックはムンバイやチェンナイなどを主要拠 点に、インド国内企業や欧米企業にサービスを提供し ている。
フライジャックの持つネットワークと日立物 流の3PL運営力を融合させることで、シナジーを 見込んでいる。
 水面下でも有望な買収先を探す動きは顕著になっ ている。
あるM&A仲介会社の社員は「数年前まで 海外M&Aの需要といえば中国一辺倒だったが、今 はインドの引き合いが増えている。
大手から中堅以下 の物流企業まで皆がチャンスを窺っている」と言う。
輸出拠点としての価値も  インドでの合弁や買収ニーズが急拡大している理由 は主に二つ。
一つは、拠点とネットワーク、そして事 業免許の早期確保だ。
インドの国土は広大な上、経 済の主要都市が全土に点在している。
物流業に対す る法制度や運用ルールは都市によって異なる。
しか し、荷主の拠点や物流ニーズも東西南北に分散して いるため、他の新興国のように、限定された都市と その周辺だけをカバーするという戦略は採れない。
 もう一つの理由は、インド国内の荷主獲得だ。
こ れまで日系物流企業は中国やASEAN諸国に集中 投資する一方で、インドに対しては及び腰だった。
先 行した企業のほとんどは主要荷主の要請を受け、仕 MARCH 2012  40 インド ──日系物流企業の投資ラッシュ始まる 注目5カ国の物流市場勢力図 第2部 事を約束された状態で進出している。
しかし、イン ド物流の本丸は内需だ。
その恩恵を受けるには、市 場の中心にいる地場荷主に切り込む必要がある。
 とはいえ、インドで収益を上げるのはベースカーゴ を約束された従来型のビジネスでさえ簡単ではない。
日新は一九九九年にホンダ向けの自動車部品物流か らインド事業を開始したが、しばらくは赤字経営に 苦しめられた。
単年度黒字を達成するのに五年余り かかっている。
その後、ヤマハの二輪車輸送などの 大口契約を獲得することで、ようやく安定成長にこ ぎ着けた。
 現地の荷主が対象となれば利益を出すのはさらに 困難だ。
インド日新の吉田正幸代表は「現地荷主は まだ日本式の高水準なサービスを必要としていない。
価格の面で大きな障壁がある。
コンプライアンスの担 保も難しい。
今のところビジネスとして成功の青写真 は描けないというのが実情だ。
しばらくは日系荷主 へのビジネスに特化する」と説明する。
 三菱商事、ニチレイ、三菱倉庫などが出資する低温 物流の「スノーマン・フローズン・フーズ」は、〇六 年に筆頭株主をインドの物流大手ゲートウェイ・ディ ストリパーク社に変更している。
それまでは三菱商事 が六〇%を握る筆頭株主だったが、言語や規制、州 行政の壁が立ちはだかり、日系メーンの運営が困難 になった。
国内物流の障壁の高さがうかがい知れる。
 それでも、ジェトロの海外調査部アジア太平洋州課 の河野敬氏は日系物流企業のインド進出を推奨する。
「巨大国内市場の魅力はもちろんだが、インドは今後、 輸出拠点としての価値も高まってくる。
国内物流を 整備してすぐに現地荷主を相手に商売を成立させる のは確かに難しさも伴うが、将来まで見据えればイ ンドへの投資効果はさらに大きくなる」と語る。
41  MARCH 2012 代表的な現地法人 日本通運 ヤマトホールディングス 山九 日立物流※3 近鉄エクスプレス 日新 三菱倉庫 郵船ロジスティクス※5 バンテック 日本梱包運輸倉庫 主要物流企業のインド展開 会社名都市・ 拠点数 倉庫延べ床 面積合計スタッフ数運用車両台数 (うち自社保有台数) 27,195? 232.34? 6,400?※2 約54,000? 22,700? 15,000? なし 36,090.51? 約36,800? なし 11 都市 15 拠点 1都市 1拠点 5 都市 6 拠点※1 13 都市 43 拠点 10 都市 20 拠点 4 都市 4 拠点 1 都市 1 拠点 14 都市 23 拠点 2 都市 4 拠点 2 都市 2 拠点 日本人12 人、 現地採用460 人 日本人・ 現地採用計10 人 日本人3 人、 現地採用65 人※1 日本人5 人、 総スタッフ約2000 人 日本人6 人※4、 現地採用422 人 日本人5 人、 現地採用400 人 日本人1 人、 現地採用1 人 日本人6 人、 現地採用323 人 日本時3 人、 現地採用約180 人 日本人4 人、 現地採用50 人 ※1 2012 年1月時点 ※2 2011 年 9月時点(外注先の運用車両台数は一定ではないため、ヒアリングベースの概数) ※3 2011 年9月30日時点、持ち分法適用会社含む、バンテックグループを除く ※4 日本人スタッフには現地採用日本人も含む ※5 2011 年12月末時点 なし ─ ─ ─ ─ 2 台 (0 台) 300 台 (60 台) 約30 台 (0 台) 12 台 (0 台) なし Kintetsu World Express (India)、Gati- Kintetsu Express (2012 年4月設立予定、合弁会社) インド日本通運、インド日通ロジスティクス YAMATO LOGISTICS INDIA PUT 山九インド 日立物流インド、Flyjac 社 NISSIN ABC LOGISTICS 駐在員事務所 YUSEN LOGISTICS (INDIA) VANTEC LOGISTICS INDIA NIPPON KONPO INDIA スリナガル デリー ポルバンダル ムンバイ バンガロール コーチン チェンナイ カニャークマリ コルカタ シルチャル 黄金の四角形 南北回廊 東西回廊 ※2 KWE はインド大手ガティと合弁会社を設立 物流大手の 特集

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