2013年1月号
特集

情報共有 キムラユニティー ──荷主と共同で品質向上プロジェクト

 「まるで共同出資会社のようだ」と荷主のコクヨ サプライロジスティクスは言う。
物流センター稼働 当初の混乱をバネに、荷主とがっちりスクラムを組 んで庫内作業の品質向上を目的とする共同プロジ ェクトを立ち上げた。
専用台車の開発、作業訓練 施設の設置など、踏み込んだ施策を次々に実現し て大きな効果を上げている。
「ハイブリッド台車」でミス防ぐ  愛知県に本拠を置くキムラユニティーは、トヨタ 自動車グループを中心とした補給部品物流などに 加え、自動車業界以外を対象に「NLS(ニュー ロジスティクスサービス)」と呼ぶ3PL事業を展 開している。
 キムラユニティーの木下毅司執行役員ロジスティ クス・サービス事業本部副本部長は「今までトヨ タさんと一緒になって培った安全や品質のノウハウ を3PL事業のセンター運営にも取り入れて、お客 様に付加価値を提供している」と言う。
 二〇〇五年に発足した「SQ推進本部」が同社 の品質改善活動を指揮している。
「クレーム数」や 「工程内不良の発生件数」、「作業標準の順守率」な どをKPIに設定し、目標管理を行っている。
さ らには過去に重大なクレームが寄せられた日を「品 質祈念日」と位置付け、毎年同じ日に再発防止の 対策を確認し合うといったユニークな活動も実施し ている。
 コクヨグループの物流会社コクヨサプライロジス ティクス(以下、KSL)の物流センター「近畿 IDC」(大阪市住之江区)では、荷主と共同で 品質向上プロジェクトに取り組んでいる。
 近畿IDCはKSLが大阪にあった三拠点を統 合する形で〇七年に運用をスタートした。
コクヨグ ループの関西地区における主力拠点で、延べ床面 積は約二万坪。
文房具、オフィス用品など約四万 三〇〇〇アイテムを取り扱い、卸や量販店、代理 店、ネット通販などさまざまなチャネルをカバーし ている。
 輸送を含めたセンター全体の管理をKSLが監督 し、庫内作業をKSLからキムラユニティーが受託 している。
この近畿IDCを含め、キムラユニティ ーは全国三カ所でコクヨグループの物流センター運 営に携わっており、従来から関係が深い。
 KSLとキムラユニティーの両社による共同改善 プロジェクトは〇八年に発足した。
まずは作業の問 題点を把握した上で、第一ステップとして、ミス なく効率的に作業できる「環境整備」を行い、第 二ステップで庫内作業員やリーダー層らの「人財育 成」を進めるという中期計画を立てた。
JANUARY 2013  26  その第一ステップ、「環境改善」ではWMS(倉 庫管理システム)とマテハンの整備に取り組んだ。
物量の波動に対応して適正人員を配置する仕組み をWMSに持たせると同時に、キムラユニティーが 独自に開発し、コクヨ向けの別の拠点で試験運用 していたピッキング用の台車を近畿IDCに本格的 に導入した。
 台車はモニターと商品を入れるオリコン三個を搭 載している。
作業者は画面に映し出される商品の 画像と品番、品名、出荷単位をチェックし、音声 指示も確認してピッキングを進める。
台車に取り付 けたセンサーが品物や個数の誤りが無いかを自動的 にチェックし、ミスを音声で知らせる。
 ピッキングと検品を同時に処理できるほか、作 業者個人が判断する余地を減らしてミスの発生を 回避する。
ITと人の知恵を組み合わせて運用す ることから、キムラユニティーはこれを「ハイブリ ──荷主と共同で品質向上プロジェクト キムラユニティー情報共有 (左から)キムラユニティー・木下氏、KSL・村上氏、キムラユニ ティー・岡本氏 27  JANUARY 2013 ッド台車」と名付けた。
 この台車を近畿IDCに本格的に導入するのと 併せて、作業員らの要望を反映させ、取っ手やキ ャスターのデザインを変更し、より操作しやすくす るなどの改良を加えてきた。
現在は約一二〇台が 庫内で活躍している。
 さらに一三年には、梱包作業のスペースにタブレ ット端末を設置し、用いる包装材や同梱物、配送 便の納期、割れ物といった注意点を自動的に分か りやすく表示して梱包の正確性を高める「ハイブ リッド梱包テーブル」を始める計画だという。
 第二ステップの「人財育成」では、近畿IDC 内に独自の訓練施設「トレーニングコア」を設置し た。
庫内を模した棚とハイブリッド台車を使って、 ピッキング作業を体験できる。
新人教育に使うほ か、中堅クラスもここで弱点としている作業のス キルアップに取り組む。
 各作業員のパフォーマンスはハイブリッド台車に 蓄積されたデータを元に管理している。
生産性は 実績に応じて、S、A、B、C、D、Eの六ラン クに分けている。
現状では約八割がBランク以上。
すべての作業員が出荷クレームゼロのうえ、Bラン ク以上となるのが現在の目標だ。
 各作業員の品質(出荷クレーム件数)と生産性 (作業量)を組み合わせた「パフォーマンス評価」 を一覧にして、庫内のホワイトボードに掲示してい る。
個人のスキルを「見える化」することで、作 業員の自覚を促すとともに、適正な教育を実施で きるようにした。
 併せて、新人や中堅など、実務者にバラバラに 行っていた品質教育もパッケージ化し、現場のマン ツーマン指導などを実施している。
こうした環境 整備や人財育成の相乗効果で、出荷クレーム数は 〇八年から一二年にかけて八割近く減少した。
立ち上げ時の混乱が契機に  KSLの村上義則統括所長は「委託側と受託側 がここまでがっちりと組んだ関係は異例だろう。
ま るで両社が出資した近畿IDC株式会社、という 感じだ。
お互いにIDCセンターの収益の数字もガ ラス張りにしている。
パートナーとしてしっかり手 を結ぶことができている証しではないか」と強調 する。
 実は両社がこのプロジェクトを開始したきっかけ は、近畿IDC立ち上げ時のオペレーションの混乱 だった。
コクヨグループは近畿IDCで、卸や量販 店、ネット通販などの多様なチャネルに一つの物流 センターで対応するというオペレーションを初めて 経験した。
 作業に慣れない部分があったことなどから、当 初は作業時間の延長といった問題が頻発した。
危 機感を抱いた両社は相互に情報を開示し、話し合 いを重ねた結果、一緒に腰を据えて品質改善に取 り組もうとの結論に達した。
 近畿IDC以外の拠点では、ここまで品質管理 で緊密に連携している事例はないという。
いわば怪 我の功名だったが、「近畿IDCにおける委託先と の連携を全社的に横展開したい」とKSLの村上 統括所長。
他の拠点でもパートナー企業との関係強 化に意欲を示している。
一方、キムラユニティーの 岡本稔第一物流部長は「物流の改善事例を様々な 場で発表し、外部の方にもいろいろな指摘をいた だいて品質向上に生かし、さらに飛躍したい」と 理想を語っている。
        (藤原秀行) 近畿IDCに配備されている「ハイブ リッド台車」。
モニターにピッキングの 対象となる商品の画像や品番などが映 し出される。
品質教育用施設「トレーニングコア」。
庫内を模した棚などが設置され、実際 の作業を体験できる。
商品を保管する箱の前に、写真と出荷単位を掲示し、個数間 違いなどのミスを防いでいる。
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