2013年1月号
特集
特集
情報共有 リコーロジスティクス ──共有データベースにノウハウを蓄積
従業員の物流品質改善に関する提案や、現場で
起きた事故・ミスの詳細を蓄積するデータベースを
構築した。
ノウハウの横展開とともに、トラブル再 発を防ぐプラットフォームとして威力を発揮してい る。
こうした改善の積み重ねで、業務のクレーム率 半減などの成果が表れてきている。
自由に書き込みと閲覧が可能 リコーロジスティクスは精密機器や電子部品、オ フィス用品などの取り扱いを得意としている。
外 販比率は約三割。
親会社リコーのサプライチェーン を活用して、複写機やOA機器の回収・リサイク ル物流にも力を入れ、業績は堅調に推移している。
二〇一〇年にリコーグループは「RICOH Q uality宣言」を発表。
「お客様にいつまでも 安心・満足を感じていただくとともに、使い続け て感動していただくクオリティーを追求していく」 との方針を掲げた。
リコーロジも物流品質の重要性を再認識し、品 質をさらに高めるため、一〇年一月、グループ全 体を統括する「品質本部」を設置した。
それまで は各事業部門や作業子会社などが独自に、現場で 起こったトラブルの原因究明と再発防止策の検討な どの品質管理に当たっていた。
本社主管部門 として新設され た品質本部は、 全社の品質面で の管理指標項目 を決定し、社内 の目標浸透を後押しする役割を担う。
現在は商品 破損や誤配送、納期違反の件数などを全社共通の 管理項目に据え、毎月の経営会議でその状況を報 告している。
品質本部のスタートと足並みを揃える形で一〇年 に稼働したデータベース(DB)が、品質改善活 動を支えるインフラとして機能している。
?現場か らの品質改善提案と、?事故・ミスの二種類の情 報をDBに蓄積している。
グループの全従業員が それぞれ自分のパソコンから自由に書き込んだり、 閲覧したりできる。
ミス低減のためのピッキング手法の修正といっ た、従業員が考え付いた改善プランの説明と実際 に試して得られた効果など、各職場から随時、情 報が書き込まれている。
品質本部も内容をこまめ にチェックしている。
各地の物流センターなどに所属する実務者には、 品質本部が中心となって職場ごとに一人当たり月 間の最低提案件数を設け、積極的に発案するよう JANUARY 2013 28 発破を掛けている。
DBの各提案には、登録した 従業員の上司が内容を精査した上で、品質向上の 具体的効果などを見極めて評価点を付けている。
その点数が高いものほど、DBで上位に掲載され、 他の従業員の目に付きやすくなる仕組みだ。
従業 員にとってはより優れた提案を出す動機付けにな ると見込まれる。
優れた改善提案はDB上での公開に加え、全国 の事業部門の代表らが集まって毎月開く「品質向 上委員会」の席上で、品質本部の担当者から紹介 したり、当事者に直接発表させたりしている。
品 質本部の豊田英樹副本部長は「DBと同委員会の 両面を通じて各職場に優れたノウハウの水平展開を 図り、上司のアドバイスも得ながら、各人のスキル アップに活用している」と語る。
DBは部門長や課長職ら管理職が取り組む品質 ──共有データベースにノウハウを蓄積 リコーロジスティクス情報共有 豊田英樹品質本部 副本部長 2012年5月にオープンした「物流センター横浜」。
半導体など精密機 器がメーンのため、作業空間や棚の清掃を細かく実施している。
29 JANUARY 2013 改善活動の進行管理も担っている。
管理職はDB に自らの担当分野における年間の改善目標と、実 現に向けた具体的なプロセスを登録。
その進捗状況 を品質本部が確認し、計画したほど効果が表れて いない場合は、品質本部から当事者に対応を求め ている。
一方、事故・ミス情報に関しては、その原因や、 どういう状況で発生したのか詳細について記入さ せるほか、トラブルに対してどのような再発防止 策を立案・実施したのか、その対策は有効だった のかといった部分まで蓄積されている。
そのうち 重大事故については、品質向上委員会に報告され、 全社規模で情報が共有される。
リコーロジでは年一回、「KAIZEN大会」を 実施している。
各地からDBや品質向上委員会な どを通じて本社に集められた、サービス品質や生産 性向上、コスト削減の提案のうち、優秀なものを 三つ選んで発表、表彰するものだ。
その表彰式の前には、全国から集まった約一二 〇人が、選ばれた三つの改善事例をテーマにして、 自分が気付いた修正すべき点をアドバイスするな ど、参加者同士で自由に話し合う場を設定してい る。
「大会を単なるセレモニーに終わらせず、各自が 改善について新たな発見や考察を得て、職場に持 ち帰って生かすための機会にしてもらいたい」と 豊田副本部長は言う。
参加者派遣が難しい遠隔地 の事業本部には、大会の模様をDVD化して送る といった配慮もしている。
「情報メモ」でミス根絶狙う 全社規模の取り組みと並行して、個々の拠点レ ベルでも独自の品質改善活動を進めている。
その 一例として、首都圏事業本部では一一年から「情 報メモ」と称する報告用紙を現場に導入した。
同社の各事業本部では従来から「ヒヤリ・ハッ トメモ」と呼ばれる用紙を使い、作業を進める上で 危険な事例を職場で共有してトラブルを未然に防ぐ 仕組みを採用してきた。
首都圏事業本部では、そ の報告対象を危険な事例以外の細かなミスにまで 広げた。
「情報メモ」はA4判で、従業員が作業の合間に 現場ですぐに書き込めるよう、物流センター内に常 備している。
現場作業中にミスを犯したり、前工 程のミスに気付いたりした作業員は、「情報メモ」 にミスの内容と、それにどう対処したのかを記入 して上位職にすぐさま報告する。
メモを受け取った担当者は内容を精査し、それ を他の従業員に伝達する。
緊急度が高いミスだと 判断した場合には、メモを提出した従業員が所属 する職場のチームで、再発を回避するための具体 策を「未然防止対策書」にまとめさせ、他のチー ムに注意を呼び掛けている。
パートナー関係にある各地の物流業者との連携強 化にも注力。
全国の事業本部単位で、定期的に業 者らと勉強会を開き、リコーの新製品の性能や運 搬する際の注意事項などを細かく伝えるとともに、 リコーロジの品質に関する方針を説明。
協力を仰い でいる。
品質本部の主導する全社横断的な取り組みと、 こうした現場レベルの改善が両輪となって、提供 している物流サービスのクレーム率が二〇一〇年時 点の半分程度に減少するといった成果が表れてき ている。
一二年度には、初めての試みとして、リコー製 品届け先の物流品質に関する満足度調査を実施し た。
豊田副本部長は「従業員向けの品質管理教育 も今後は技能のレベルを高めるため、より体系立 てて階層別に細かく実施していこうと考えている」 と明かす。
(藤原秀行) 半導体製品の小分け作業。
清潔な 環境維持に重点を置く 精密機器のピッキングは慎重に実施 作業のポイントを写真入りで掲示 特集
ノウハウの横展開とともに、トラブル再 発を防ぐプラットフォームとして威力を発揮してい る。
こうした改善の積み重ねで、業務のクレーム率 半減などの成果が表れてきている。
自由に書き込みと閲覧が可能 リコーロジスティクスは精密機器や電子部品、オ フィス用品などの取り扱いを得意としている。
外 販比率は約三割。
親会社リコーのサプライチェーン を活用して、複写機やOA機器の回収・リサイク ル物流にも力を入れ、業績は堅調に推移している。
二〇一〇年にリコーグループは「RICOH Q uality宣言」を発表。
「お客様にいつまでも 安心・満足を感じていただくとともに、使い続け て感動していただくクオリティーを追求していく」 との方針を掲げた。
リコーロジも物流品質の重要性を再認識し、品 質をさらに高めるため、一〇年一月、グループ全 体を統括する「品質本部」を設置した。
それまで は各事業部門や作業子会社などが独自に、現場で 起こったトラブルの原因究明と再発防止策の検討な どの品質管理に当たっていた。
本社主管部門 として新設され た品質本部は、 全社の品質面で の管理指標項目 を決定し、社内 の目標浸透を後押しする役割を担う。
現在は商品 破損や誤配送、納期違反の件数などを全社共通の 管理項目に据え、毎月の経営会議でその状況を報 告している。
品質本部のスタートと足並みを揃える形で一〇年 に稼働したデータベース(DB)が、品質改善活 動を支えるインフラとして機能している。
?現場か らの品質改善提案と、?事故・ミスの二種類の情 報をDBに蓄積している。
グループの全従業員が それぞれ自分のパソコンから自由に書き込んだり、 閲覧したりできる。
ミス低減のためのピッキング手法の修正といっ た、従業員が考え付いた改善プランの説明と実際 に試して得られた効果など、各職場から随時、情 報が書き込まれている。
品質本部も内容をこまめ にチェックしている。
各地の物流センターなどに所属する実務者には、 品質本部が中心となって職場ごとに一人当たり月 間の最低提案件数を設け、積極的に発案するよう JANUARY 2013 28 発破を掛けている。
DBの各提案には、登録した 従業員の上司が内容を精査した上で、品質向上の 具体的効果などを見極めて評価点を付けている。
その点数が高いものほど、DBで上位に掲載され、 他の従業員の目に付きやすくなる仕組みだ。
従業 員にとってはより優れた提案を出す動機付けにな ると見込まれる。
優れた改善提案はDB上での公開に加え、全国 の事業部門の代表らが集まって毎月開く「品質向 上委員会」の席上で、品質本部の担当者から紹介 したり、当事者に直接発表させたりしている。
品 質本部の豊田英樹副本部長は「DBと同委員会の 両面を通じて各職場に優れたノウハウの水平展開を 図り、上司のアドバイスも得ながら、各人のスキル アップに活用している」と語る。
DBは部門長や課長職ら管理職が取り組む品質 ──共有データベースにノウハウを蓄積 リコーロジスティクス情報共有 豊田英樹品質本部 副本部長 2012年5月にオープンした「物流センター横浜」。
半導体など精密機 器がメーンのため、作業空間や棚の清掃を細かく実施している。
29 JANUARY 2013 改善活動の進行管理も担っている。
管理職はDB に自らの担当分野における年間の改善目標と、実 現に向けた具体的なプロセスを登録。
その進捗状況 を品質本部が確認し、計画したほど効果が表れて いない場合は、品質本部から当事者に対応を求め ている。
一方、事故・ミス情報に関しては、その原因や、 どういう状況で発生したのか詳細について記入さ せるほか、トラブルに対してどのような再発防止 策を立案・実施したのか、その対策は有効だった のかといった部分まで蓄積されている。
そのうち 重大事故については、品質向上委員会に報告され、 全社規模で情報が共有される。
リコーロジでは年一回、「KAIZEN大会」を 実施している。
各地からDBや品質向上委員会な どを通じて本社に集められた、サービス品質や生産 性向上、コスト削減の提案のうち、優秀なものを 三つ選んで発表、表彰するものだ。
その表彰式の前には、全国から集まった約一二 〇人が、選ばれた三つの改善事例をテーマにして、 自分が気付いた修正すべき点をアドバイスするな ど、参加者同士で自由に話し合う場を設定してい る。
「大会を単なるセレモニーに終わらせず、各自が 改善について新たな発見や考察を得て、職場に持 ち帰って生かすための機会にしてもらいたい」と 豊田副本部長は言う。
参加者派遣が難しい遠隔地 の事業本部には、大会の模様をDVD化して送る といった配慮もしている。
「情報メモ」でミス根絶狙う 全社規模の取り組みと並行して、個々の拠点レ ベルでも独自の品質改善活動を進めている。
その 一例として、首都圏事業本部では一一年から「情 報メモ」と称する報告用紙を現場に導入した。
同社の各事業本部では従来から「ヒヤリ・ハッ トメモ」と呼ばれる用紙を使い、作業を進める上で 危険な事例を職場で共有してトラブルを未然に防ぐ 仕組みを採用してきた。
首都圏事業本部では、そ の報告対象を危険な事例以外の細かなミスにまで 広げた。
「情報メモ」はA4判で、従業員が作業の合間に 現場ですぐに書き込めるよう、物流センター内に常 備している。
現場作業中にミスを犯したり、前工 程のミスに気付いたりした作業員は、「情報メモ」 にミスの内容と、それにどう対処したのかを記入 して上位職にすぐさま報告する。
メモを受け取った担当者は内容を精査し、それ を他の従業員に伝達する。
緊急度が高いミスだと 判断した場合には、メモを提出した従業員が所属 する職場のチームで、再発を回避するための具体 策を「未然防止対策書」にまとめさせ、他のチー ムに注意を呼び掛けている。
パートナー関係にある各地の物流業者との連携強 化にも注力。
全国の事業本部単位で、定期的に業 者らと勉強会を開き、リコーの新製品の性能や運 搬する際の注意事項などを細かく伝えるとともに、 リコーロジの品質に関する方針を説明。
協力を仰い でいる。
品質本部の主導する全社横断的な取り組みと、 こうした現場レベルの改善が両輪となって、提供 している物流サービスのクレーム率が二〇一〇年時 点の半分程度に減少するといった成果が表れてき ている。
一二年度には、初めての試みとして、リコー製 品届け先の物流品質に関する満足度調査を実施し た。
豊田副本部長は「従業員向けの品質管理教育 も今後は技能のレベルを高めるため、より体系立 てて階層別に細かく実施していこうと考えている」 と明かす。
(藤原秀行) 半導体製品の小分け作業。
清潔な 環境維持に重点を置く 精密機器のピッキングは慎重に実施 作業のポイントを写真入りで掲示 特集
