2013年1月号
特集

トラック輸送 物流プラットフォーム検討会 ──ITSで家電共配をトレース

 家電メーカー一八社、家電量販三社が顔を揃え、 九州での共同物流に乗り出した。
「家電物流プラッ トフォーム」と名付けた拠点を活用し、センター納 品のゼロ化や幹線輸送の共同化に着手している。
配 送品質を向上させるため、ITS(高度道路情報 システム)スポットを活用した取り組みも実験的に スタートしている。
ITSを活用して配送品質アップ  二〇一一年九月、九州エリアで家電業界を挙げ た共同物流がスタートした。
福岡県・香椎浜にあ る約八〇〇〇坪の物流センターに、シャープ、ソ ニー、東芝など家電メーカー六社および、ヤマダ電 機、ベスト電器、コジマの家電量販三社が入居して いる。
この拠点を「家電物流プラットフォーム(以 下、家電物流PF)」と呼んでいる。
 庫内運営は三井倉庫ロジスティクスが担当。
一階 と二階は家電量販の物流センター、三階と四階は メーカーの在庫拠点として機能している。
 従来は各メーカーが自前の在庫拠点を構え、そ れぞれが家電量販の物流センターに納品していた が、量販センターと同居することで、納品に掛か る配送が実質ゼロになった。
家電量販にとっても、 当日発注・当日納品が可能となるモデルとして期 待されている。
 この拠点を軸とした幹線輸送の共同化も行われ ている。
その一例として、熊本県八代市にあるヤ マダ、ベスト、コジマの共同家電量販センターに向 け、各家電メーカーの商品を一台のトラックに混載 して届けている。
 トラックに混載する商品は家電物流PFに入居 するメーカーの商品に限らない。
例えば東京から 福岡まで運ばれてきた富士通の商品は家電物流P Fでクロスドックされ、熊本まで一緒に運ばれてい る。
三井倉庫ロジの大橋康二営業本部SCM第二 営業部長は「幹線輸送だけでなく、今後は店舗配 送の共同化にも取り組んでいきたい」と言う。
 一連の取り組みにより、一二年二月〜三月一五 日の期間では全体の走行車数は四四九台から二五 六台に削減、積載率は五三・三%から八〇・六% に向上した。
CO2の排出量も四〇・六%削減さ れ、一二年度の「グリーン物流パートナーシップ」 の優良事業者に選ばれている。
 配送品質を向上させる施策にも余念がない。
こ の共同物流に参画している企業と国土交通省がタ ッグを組み、一二年二月から「ITSスポット」を 活用した取り組みが実験的にスタートしている。
 ITSスポットとは、国交省が全国の高速道路 を中心に配備してきた、いわば情報アンテナだ。
現 JANUARY 2013  40 在、全国に約一六〇〇カ所、九州エリアでは九五 カ所に設置されている。
 ITS対応型のカーナビを搭載した車両がIT Sスポットを通過すると、その車両の過去八〇? 分程度の走行履歴が吸い上げられ、プローブ情報と してサーバーに蓄積される。
走行ルートや速度はも ちろん、急ブレーキや急ハンドルが発生した地点、 さらには急ブレーキの強弱、急ハンドルを切った角 度などまでが記録として残る。
 車両からプローブ情報を吸い上げると同時に、I TSスポットから車両に向けても情報を発信する。
広範囲にわたる渋滞情報や目的地までの正確な到 着時刻を知らせてくれるほか、過去の交通データ から事故が多い地点付近などでは、ドライバーに注 意喚起も促してくれる。
 このITS対応型のカーナビを共同物流で使用 しているトラック二〇台に装着し、日々の走行履歴 を取っている。
通常、国交省は個別の車両ごとの プローブ情報は開示していないが、今回の実験で はそれができるようにした。
 それぞれのトラックごとに走行中に起きた問題点 を抽出し、ドライバーにも周知する。
具体的な走 行履歴を基に安全運転を啓蒙することで、目に見 えて配送品質は良くなった。
以前より急ブレーキの 発生件数は三五%、急ハンドルは二四%、急加速 は八%減少している。
 共同物流に参加するメーカーにとっては、自分 たちの荷物の走行ルートをトレースできるだけでな く、実際に荷物がどのように運ばれているかを細 かく管理することが可能なため、安心して任せる ことができる。
家電量販にとっても、正確な納品 時間が把握できるため、荷受けスタッフの計画的 ──ITSで家電共配をトレース 物流プラットフォーム検討会トラック輸送 41  JANUARY 2013 配置やスペースの確保などが図れるようになる。
 三井倉庫ロジの大橋部長は「共同物流を成功さ せるためには、コストや環境への効果だけでなく、 物流品質が高いレベルで保証されている必要があ る。
ITSスポットはそのための強力なツールにな る。
専用カーナビの搭載に掛かるコストやシステム 管理など課題もあるが、実験を継続して、将来的 には本格的に導入したい」と語る。
家電業界のオールスターが揃い踏み  この共同物流は、一〇年四月に立ち上がった「物 流プラットフォーム検討会」という枠組みの中で行 われている。
同検討会には先述した企業をはじめ とする一八の家電メーカーおよび三社の家電量販 が名を連ねている。
まさに家電業界の ?オールスタ ー?と言える顔ぶれだ。
事務局は三井倉庫ロジと イヌイ倉庫が務めている。
 さらに、国交省がオブザーバーを務めるほか、東 京海洋大学や日本ロジスティクスシステム協会も参 画。
産官学を挙げての取り組みになっている。
 三井倉庫ロジの大橋部長は「メーカーや量販が それぞれ構えている倉庫や物流センターを同一拠点 に集約・共同化できれば、業界全体でムダを排除 できるというのが検討会の出発点だった。
その実 現のためには、何が必要で何が課題となるのかと いった議論をこれまで重ねてきた」と説明する。
 そして、冒頭で述べたように一一年九月から実 証に乗り出した。
当初は博多アイランドシティ内に 巨大物流センターを設ける青写真を描いていたが、 全く実績の無い状態で各社に投資決済を仰ぐのは 現実的ではない。
当面は三井倉庫ロジの香椎浜の センターを家電物流PFとして位置付け、そこで の実績づくりを優先することにした。
 香椎浜の倉庫はもともと、ヤマダ、コジマ、ベ ストの共同量販センターとして機能していた。
ここ にメーカー在庫を置けば、すぐに効果検証をするこ とができる。
スタートを飾る拠点としては申し分の 無い条件だった。
 共同物流に加わる時期は、それぞれの判断に任 せることになった。
全社一斉にスタートするのが 理想だが、各社はそれぞれ在庫拠点を構えている。
自社センターであれば償却が終わるまで手放すわけ にはいかない。
賃借倉庫でも契約が終わるまでは 移動できない。
条件の整った企業から随時参加す ることにした。
 同様に、共同物流への関わり方も各社のスタン スに任せている。
九州エリアの商品を全て家電物 流PFに在庫するメーカーがある一方で、一部の商 品のみを在庫するメーカー、クロスドック拠点とし て活用するメーカー、今後参画するメーカーなど、 その形態は様々だ。
各社がまず始められるところ から着手し、徐々に規模を拡大していく方針だ。
 大橋部長は「今はまだモデルづくりの段階だが、 九州で共同物流の土台をしっかりと構築し、効果 が上がることを証明する。
その上で、それを東京 圏や大阪圏などにも横展開していく。
将来的には 全ての参加企業にプラスとなるよう大きな果実を実 らせたい」と抱負を語る。
      (石鍋 圭) 走行ルートだけでなく、急ブレーキや急ハンドルの位置まで特定できる ITSスポットITSスポット 対応カーナビ ITSスポット 高速道路 一般道 一般道 プローブ情報収集プローブ情報収集 IC IC 家電量販店等 (目的地) 配送拠点 (出発地) 道路管理者 プローブ処理装置 物流PF検討会 実験サーバー 荷物の配送管理等に活用 道路管理者 実験サーバー 交通の分析等に活用 物流車両走行の流れ プローブ情報の流れ 国交省資料より作成 物流プラットフォーム検討会のメンバー ※民間企業のみ抜粋 【メーカー】 NECロジスティクス エプソン販売 カシオ計算機 キヤノンビジネスサポート シャープ 象印マホービン ソニーマーケティング タイガー魔法瓶 東芝ロジスティクス JVCケンウッドHD 日本ビクター ハイアールアクア バッファロー パナソニックロジスティクス 日立アプライアンス 富士通パーソナルズ 富士通ゼネラル 三菱ライフネットワーク 【量販】 ヤマダ電機 ベスト電器 コジマ 【事務局】 三井倉庫ロジスティクス イヌイ倉庫 特集

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