2013年4月号
ケース
ケース
パナホーム 環境対策 納品の帰りに施工現場の廃棄物を回収トータルコストとCO2を大幅に削減
APRIL 2013 58
ビルダーの視点で物流再構築
パナホームは戸建ての注文・分譲住宅やア
パートの新築事業、リフォーム事業などを展
開するプレハブ住宅メーカーだ。
一九六三年 に松下電工(現パナソニック株式会社 エコ ソリューションズ社)の住宅事業部門が分離 独立し、「ナショナル住宅建材」として発足 した。
当時の社名が示すように、当初はハウスメ ーカーというより住宅部材総合メーカーの性 格が強かった。
住宅の販売に当たっては販社 制度を導入、全国各地の有力な建設会社・工 務店に資本参加して「協業会社」(販売会社) を設立し、協業会社が同社の製品を仕入れて 住宅の販売・設計・施工を行うかたちで事業 を展開していた。
今日のように自社で販売・施工まで一貫し て手掛ける体制になったのは二〇〇二年から。
同年一〇月に傘下の四九の協業会社のうち主 要な連結子会社二八社と経営統合し、全国に 支社・支店を設けて直営体制に転換した。
同 時に社名をパナホームに改めた。
現在の直販 比率はおよそ七割で、残る三割が協業会社二 〇社による販売という構成になっている。
かつての同社は住宅メーカーのなかで抜き んでて自社生産比率が高かった。
建物の骨組 みとなる鉄骨や柱・外壁・屋根・床などの主 要な部材のほかに、建具や内装部材、オリジ ナルブランドのシステム商品まで大半の部材を 自社工場で生産していた。
部材によってはグループの松下電工の製品 と重複するものもあり、効率化のために生産 体制の再編が必要になった。
そこで〇七年に 当時の四工場のうち、九州と静岡の二工場を 閉鎖して、生産を茨城県の筑波工場と滋賀県 東近江市の湖東工場の二工場に集約した。
主要部材以外の建材などについては自社生 産をやめ、ほとんどを松下電工や外部のサプ ライヤーからの調達に切り替えた。
現在は一 棟の住宅の建築に必要な部材のうち自社生産 分は重量比の六割程度で、外部調達が四割近 くまで増えている。
この直営化および外部調達の拡大という大 きな経営方針の転換に伴って、物流体制の再 構築を迫られた。
同社の物流は大半の部材を自社生産する前 提で構築され、新築住宅の施工現場へは一部 の外部調達するものも含め、全ての部材を工 場に併設した物流センターから配送する体制 を取ってきた。
物流センターは三カ所。
筑波 工場と湖東工場の各物流センターおよび九州 工場の閉鎖後も出荷拠点として存続させた九 2006年から全国に「ECOセンター」を展開し ている。
住宅施工現場の工事の進捗に合わせて必 要な内装部材を多頻度配送し、帰り便で建設廃棄 物を回収する基地だ。
廃棄物の処理費用を大幅に 削減し、リサイクル率も向上、配送便の往復利用 などによりCO2排出量を3割削減できた。
環境対策 パナホーム 納品の帰りに施工現場の廃棄物を回収 トータルコストとCO2を大幅に削減 物流部の片寄勉部長 59 APRIL 2013 州物流センターの三つだ。
筑波物流センター は東北・関東・新潟・山梨、湖東物流セン ターは長野・北陸・東海・近畿・中国(山口 を除く)・四国、九州物流センターは山口と九 州・沖縄を出荷エリアにしている。
物流センターからの部材の出荷は基礎工事 の後の上棟工事からスタートする。
工場で生 産する部材のほとんどがこの上棟工事に使わ れるものだ。
標準的な戸建住宅一棟あたりに 必要な主要部材の量は四トントラックでおよそ 八台分。
同社の住宅建設では上棟工事が一日 で終了するため、これを一度に現場へ送る。
翌日から屋根工事や内装・設備工事が始ま る。
ここからは工期が一カ月以上に及ぶ。
工 程表を基にサプライヤーから内装部材やシス テムキッチン、バスユニットなどの住宅設備 機器を物流センターに調達して施工現場へ搬 入する。
一棟あたり四トン車でおよそ五台分 の物量に相当する。
従来は主要部材も内装部材もすべて物流セ ンターから出荷エリアの施工現場まで直接配 送していた。
工期の長い内装・設備工事の部 材も、一日で工事が終わる主要部材と同じよ うに四トン積み車両でまとめて送り込んでい た。
販社制度の下で生産した部材を協業会社 へ引き渡すまでが同社の役割分担だったため、 メーカー側の効率を優先した配送形態が取ら れていた。
だが直営体制へ移行してビルダー(建設業 者)側の視点で物流を見直すと、施工現場で 荷受けする際の問題点がいくつか見えてきた。
中継基地を設けて多頻度配送 施工現場を管轄する支社からまず、内装部 材の配送を数回に分けて必要なタイミングで 送ってほしいという要望が上がった。
車種に ついての改善点も指摘された。
現場によって は四トン車が進入できない場所もある。
こう したケースでは支社が小型車両を手配して近 くの空き地まで引き取りに行き、四トン車か ら小型車に積み替えて現場へ運ばなければな らなかった。
無駄を省くため現場の状況に適 した配車を行う必要があった。
また施工現場では車両の到着に合わせて、 部材を建物の上層階や各部屋へ搬送する作業 員をその都度手配していた。
管理が煩雑にな り、配送スタッフに部材を作業場所まで搬送 させてほしいという希望も寄せられた。
これらの要望を受けて物流部では物流セン ターと施工現場の間に内装部材用の中継基地 を設ける構想を練った。
中継基地で施工現場 のニーズに合わせて配送の頻度を設定し、適 正な車両を手配する。
工期中の配送をおおむね五〜六回に分け、 物流センターから中継基地までは大型車で地 域ごとにまとめて運び、基地で邸別に二〜四 トンの適正車両に積み替える。
配送車両には 助手を同乗させて施工現場への納品時には作 業場所まで搬送するという体制だ。
しかし、中継基地とはいえ新たに拠点を設 ければ固定費負担が生じてしまう。
配送回 数の増加による物流費の上昇も避けられない。
物流部ではコスト増を抑えながら構想を実現 できる方法を模索した。
そこで思い付いたの が、施工現場で発生する廃棄物を部材配送の 帰り便で回収するというアイデアだった。
図1 リサイクルのイメージ図 新築現場 部材出荷場 集積場 ECOセンター(全国7 拠点) 荷降ろし 11 分別された 産業廃棄物 産業廃棄物 積み込み 部材出荷便 帰り便に産廃を積載 1 現場当たり6〜7 回 で全量回収 余剰部材 パレット・輸送治具 リユース (再利用) マテリアル リサイクル (再生利用) 売却(有価物) プラスチック・段ボール・紙 ・鉄・アルミ・電線など 再生原料(委託処理) 木材・石膏ボード・瓦 ・外装材など 複合材等(委託処理) ゼロエミッション APRIL 2013 60 パナホームは〇六年に沖縄を除く全地域で、 住宅施工現場の廃棄物について単純焼却や単 純埋め立て処分を一切行わず、様々な方法で 資源を循環させるゼロエミッションを達成して いる。
ところがその結果、廃棄物処理費用の 増大を招いてしまった。
施工現場では建設廃棄物を廃棄物処理法に 基づき、木くず・廃プラスチック・コンクリ ート材などの七種類に分別し、それぞれのリ サイクルルートで処分を行うことが原則とな っている。
だが分別の精度は現場によってば らつきがあり、処理業者に分別を委ねていた ところもある。
またせっかく分別しても一種 類あたりの数量が少ないため、まとめて混合 廃棄物として回収されるケースもあった。
こ のため処理単価が割高になっていた。
施工現場の分別を徹底した上で、分別した 廃棄物を配送車の帰り便で中継基地まで回収 し、基地で集約して品目ごとにリサイクルル ートを一本化すれば、処理コストを削減でき るうえ、リサイクル率も高まると考えた。
物流部の片寄勉部長は、過去に茨城支社で 施工現場のゼロエミッションに取り組んだ経 験があった。
現場近くに拠点を設けて有価物 や余剰部材を効率良く回収する仕組みをつく った。
「これをモデルに中継基地を活用して部 材の配送を廃棄物の回収と組み合わせること で、物流を含めたトータルのコスト削減を実 現できると判断した」と振り返る。
ただし、有価物や余剰部材とは違い、廃棄 施工現場の八割をカバー 同社は中継基地を「ECOセンター」の名 称で〇六年四月から、つくば・神奈川・名古 屋・大阪・九州・岡山・湖東の順で七カ所に 展開してきた。
このうちつくば・九州・湖東 の三カ所は物流センターに併設。
いずれもパ ナホームが運営し業務を運送会社に委託して いる。
これまでに北海道・東北・新潟・沖縄 の各地域および一部の協業会社の管轄を除く 全国の八割の施工現場に対し、ECOセンタ ーで部材配送の中継と廃棄物の集積を行う体 制を整えた。
(上棟工事用の主要部材は従来 通り物流センターから直送) ECOセンターによる配送・回収のフロー は次の通りだ。
工事の一四日前に確定した発注内容に従い、 内装部材や住設機器のサプライヤーが工事の 二日前に物流センターへ納品する。
工事の進 捗が予定より遅れた場合には物流センターに 一時保管して出荷日を調整する。
施工現場への搬入は現場監督の「着日・車 種設定依頼書」を基に行う。
着日に合わせて 物流センターから十トン車で出荷し、ECO センターで邸別に指定車種に積み替えて配送 する。
その帰りに前回配送した部材の端材を 回収し、ECOセンターで品目別にコンテナ に詰めてそれぞれのリサイクルルートの処理施 設へ送る。
リサイクルルートは、〇六年にゼロエミッ 物を部材配送の帰り便で回収する場合は関連 法の制約を受ける。
それをクリアする方法は 二つあった。
一つは廃棄物処理法にのっとり 部材配送を行う運送会社が自治体ごとに産業 廃棄物収集運搬の許可を取る方法。
もう一つ は広域認定制度を利用する方法だ。
広域認定制度はメーカーが廃棄物となった 自社製品をリサイクルする際に、全国各地か ら効率良く回収できるように設けられた特例 制度だ。
大臣の広域認定を受ければ自治体に よる収集運搬の許可がなくても自社製品の廃 棄物を回収できる。
だが広域認定の取得には 著しく時間が掛かる上、処分場を変更する場 合に改めて申請を行わなければならないとい う不合理な点もあった。
将来、処理単価の変 動に伴ってリサイクルルートを変更することも 想定される。
継続して運用するには、廃棄物 処理法のもとで積み降ろしの双方の場所の自 治体の許可を取得する方が有利と見た。
ただし、廃棄物処理法では、同社が別法人 である協業会社の施工現場から廃棄物を回収 する場合に中間処理の許可が新たに要る。
そ こで施工現場の管轄によって対応を分けるこ とにした。
支社が管轄する施工現場からの回 収は廃棄物処理法のもとで行い、中継基地の 業務を委託する協力運送会社が各地の自治体 から収集運搬の許可を取る。
一方、協業会社 の施工現場からの回収には広域認定制度を利 用することにし、パナホームが一〇年四月に 広域認定を取得した。
61 APRIL 2013 通りのトータルコスト削減を実現した。
CO2の排出量削減でも大きな成果を上げ た。
物流センターから部材を施工現場へ配送 するまでの動脈物流と、廃棄物を処分場へ回 収するまでの静脈物流で排出するCO2の量 が、ECOセンターを経由する前と比べ推計 で三一・七%減った。
より効果が大きかったのは静脈物流だ。
従 来は処分業者が施工現場へ便を仕立てて少量 ずつ回収していた。
新体制では配送の帰り便 を使うことに加え、現場から少量ずつ回収し てECOセンターで四〜一〇トンクラスのコン テナにまとめて処分場へ大量輸送するかたち に変えたことで効率が上がった。
物流センター〜ECOセンター間の輸送を 大型化したことも寄与した。
物流センターか ら遠い名古屋・大阪・岡山の各ECOセンタ ーの配送エリアはCO2削減効果が特に大きく、 名古屋では三分の一以下に減った。
調達ルートの見直しも 今後は調達物流のルートの見直しを検討し ていく。
現在のように内装部材を全て三カ所 の物流センターで調達するのではなく、EC Oセンターか地域によっては別途「デポセン ター」を設けて調達基地にすることを検討し ている。
同社では部材購入部門の調達部が調達物流 を管轄している。
三年前から購入単価を下げ る施策として同部に調達物流担当を設け、物 流センターからサプライヤーの拠点へ集荷に行 く方法を拡大してきた。
「その集荷基地を物流センターからもっと消 費地に近いところへ移せば、V字配送がなく なり効率が良くなる。
物流部がそのルートづ くりを支援していきたい」と片寄部長は意欲 を見せている。
(フリージャーナリスト・内田三知代) ションを達成した際に同社の環境基準に沿っ て各支社が適正な処理を行う業者としてリス トアップした中から、処理単価が安く、処理 場がECOセンターの近くにある業者を選定 した。
施工現場での分別もリサイクル業者の 処理単価に応じて従来の七通りから十一通り へ細分化した。
施工現場によって分別方法に ばらつきが出ないよう、端材の袋詰めやダン ボールの結束などをルール化し、作業の標準 化も行った。
従来は、全ての廃棄物を施工現場ごとに業 者に引き渡し、しかも現場によっては混合廃 棄物として処理していた。
処理単価も容積建 てでアバウトな決め方だった。
現場で十一通 りに分別してECOセンターに集め、品目ご とに重量を計測して指定した業者に引き渡す かたちにしたことで、処理が透明になり処理 費用を大幅に削減できた。
余剰部材の再利用 や有価物のマテリアルリサイクルも進み、リ サイクル率の向上にもつながった。
物流コストも削減できた。
従来は配送の回 数が少なかったため施工現場が指定する着日 の午前九時までに必ず配送するルールだった。
だが回数が増えたことで多少の融通が利くよ うになり、ECOセンターの配送車の回転率 を上げるために現場と調整して日時を変更す ることが可能になった。
その結果、配送業務 が平準化してコストが下がった。
これらの効果によって、新たに発生したE COセンターなどの費用を相殺し、期待した 図2 「ECOセンター」の配送・回収フロー BEFORE AFTER 物流センター現場毎に部材配送 ?集約部材配送 ?集約し分別排出 ?静脈物流 の活用 ?適正車両配送 (固定車) 産業廃棄物処理業者 有価リサイクル 分別された廃棄物 リサイクル業者 4t 車配送 4t 車配送 4t 車配送 2t 車配送 物流センター ECO センターを前線デポ拠点とし 配送車両と廃棄物回収車両を統合 ⇒トータルでのCO2 削減を図る 現地積替 現場毎に 廃棄物回収 空車 空車 廃棄物 廃棄物 建設現場 建設現場 CO2 削減率 31.7%達成 10t 車幹線配送 ECO センター 約29% 約71% 部材配送→ ←廃棄物回収
一九六三年 に松下電工(現パナソニック株式会社 エコ ソリューションズ社)の住宅事業部門が分離 独立し、「ナショナル住宅建材」として発足 した。
当時の社名が示すように、当初はハウスメ ーカーというより住宅部材総合メーカーの性 格が強かった。
住宅の販売に当たっては販社 制度を導入、全国各地の有力な建設会社・工 務店に資本参加して「協業会社」(販売会社) を設立し、協業会社が同社の製品を仕入れて 住宅の販売・設計・施工を行うかたちで事業 を展開していた。
今日のように自社で販売・施工まで一貫し て手掛ける体制になったのは二〇〇二年から。
同年一〇月に傘下の四九の協業会社のうち主 要な連結子会社二八社と経営統合し、全国に 支社・支店を設けて直営体制に転換した。
同 時に社名をパナホームに改めた。
現在の直販 比率はおよそ七割で、残る三割が協業会社二 〇社による販売という構成になっている。
かつての同社は住宅メーカーのなかで抜き んでて自社生産比率が高かった。
建物の骨組 みとなる鉄骨や柱・外壁・屋根・床などの主 要な部材のほかに、建具や内装部材、オリジ ナルブランドのシステム商品まで大半の部材を 自社工場で生産していた。
部材によってはグループの松下電工の製品 と重複するものもあり、効率化のために生産 体制の再編が必要になった。
そこで〇七年に 当時の四工場のうち、九州と静岡の二工場を 閉鎖して、生産を茨城県の筑波工場と滋賀県 東近江市の湖東工場の二工場に集約した。
主要部材以外の建材などについては自社生 産をやめ、ほとんどを松下電工や外部のサプ ライヤーからの調達に切り替えた。
現在は一 棟の住宅の建築に必要な部材のうち自社生産 分は重量比の六割程度で、外部調達が四割近 くまで増えている。
この直営化および外部調達の拡大という大 きな経営方針の転換に伴って、物流体制の再 構築を迫られた。
同社の物流は大半の部材を自社生産する前 提で構築され、新築住宅の施工現場へは一部 の外部調達するものも含め、全ての部材を工 場に併設した物流センターから配送する体制 を取ってきた。
物流センターは三カ所。
筑波 工場と湖東工場の各物流センターおよび九州 工場の閉鎖後も出荷拠点として存続させた九 2006年から全国に「ECOセンター」を展開し ている。
住宅施工現場の工事の進捗に合わせて必 要な内装部材を多頻度配送し、帰り便で建設廃棄 物を回収する基地だ。
廃棄物の処理費用を大幅に 削減し、リサイクル率も向上、配送便の往復利用 などによりCO2排出量を3割削減できた。
環境対策 パナホーム 納品の帰りに施工現場の廃棄物を回収 トータルコストとCO2を大幅に削減 物流部の片寄勉部長 59 APRIL 2013 州物流センターの三つだ。
筑波物流センター は東北・関東・新潟・山梨、湖東物流セン ターは長野・北陸・東海・近畿・中国(山口 を除く)・四国、九州物流センターは山口と九 州・沖縄を出荷エリアにしている。
物流センターからの部材の出荷は基礎工事 の後の上棟工事からスタートする。
工場で生 産する部材のほとんどがこの上棟工事に使わ れるものだ。
標準的な戸建住宅一棟あたりに 必要な主要部材の量は四トントラックでおよそ 八台分。
同社の住宅建設では上棟工事が一日 で終了するため、これを一度に現場へ送る。
翌日から屋根工事や内装・設備工事が始ま る。
ここからは工期が一カ月以上に及ぶ。
工 程表を基にサプライヤーから内装部材やシス テムキッチン、バスユニットなどの住宅設備 機器を物流センターに調達して施工現場へ搬 入する。
一棟あたり四トン車でおよそ五台分 の物量に相当する。
従来は主要部材も内装部材もすべて物流セ ンターから出荷エリアの施工現場まで直接配 送していた。
工期の長い内装・設備工事の部 材も、一日で工事が終わる主要部材と同じよ うに四トン積み車両でまとめて送り込んでい た。
販社制度の下で生産した部材を協業会社 へ引き渡すまでが同社の役割分担だったため、 メーカー側の効率を優先した配送形態が取ら れていた。
だが直営体制へ移行してビルダー(建設業 者)側の視点で物流を見直すと、施工現場で 荷受けする際の問題点がいくつか見えてきた。
中継基地を設けて多頻度配送 施工現場を管轄する支社からまず、内装部 材の配送を数回に分けて必要なタイミングで 送ってほしいという要望が上がった。
車種に ついての改善点も指摘された。
現場によって は四トン車が進入できない場所もある。
こう したケースでは支社が小型車両を手配して近 くの空き地まで引き取りに行き、四トン車か ら小型車に積み替えて現場へ運ばなければな らなかった。
無駄を省くため現場の状況に適 した配車を行う必要があった。
また施工現場では車両の到着に合わせて、 部材を建物の上層階や各部屋へ搬送する作業 員をその都度手配していた。
管理が煩雑にな り、配送スタッフに部材を作業場所まで搬送 させてほしいという希望も寄せられた。
これらの要望を受けて物流部では物流セン ターと施工現場の間に内装部材用の中継基地 を設ける構想を練った。
中継基地で施工現場 のニーズに合わせて配送の頻度を設定し、適 正な車両を手配する。
工期中の配送をおおむね五〜六回に分け、 物流センターから中継基地までは大型車で地 域ごとにまとめて運び、基地で邸別に二〜四 トンの適正車両に積み替える。
配送車両には 助手を同乗させて施工現場への納品時には作 業場所まで搬送するという体制だ。
しかし、中継基地とはいえ新たに拠点を設 ければ固定費負担が生じてしまう。
配送回 数の増加による物流費の上昇も避けられない。
物流部ではコスト増を抑えながら構想を実現 できる方法を模索した。
そこで思い付いたの が、施工現場で発生する廃棄物を部材配送の 帰り便で回収するというアイデアだった。
図1 リサイクルのイメージ図 新築現場 部材出荷場 集積場 ECOセンター(全国7 拠点) 荷降ろし 11 分別された 産業廃棄物 産業廃棄物 積み込み 部材出荷便 帰り便に産廃を積載 1 現場当たり6〜7 回 で全量回収 余剰部材 パレット・輸送治具 リユース (再利用) マテリアル リサイクル (再生利用) 売却(有価物) プラスチック・段ボール・紙 ・鉄・アルミ・電線など 再生原料(委託処理) 木材・石膏ボード・瓦 ・外装材など 複合材等(委託処理) ゼロエミッション APRIL 2013 60 パナホームは〇六年に沖縄を除く全地域で、 住宅施工現場の廃棄物について単純焼却や単 純埋め立て処分を一切行わず、様々な方法で 資源を循環させるゼロエミッションを達成して いる。
ところがその結果、廃棄物処理費用の 増大を招いてしまった。
施工現場では建設廃棄物を廃棄物処理法に 基づき、木くず・廃プラスチック・コンクリ ート材などの七種類に分別し、それぞれのリ サイクルルートで処分を行うことが原則とな っている。
だが分別の精度は現場によってば らつきがあり、処理業者に分別を委ねていた ところもある。
またせっかく分別しても一種 類あたりの数量が少ないため、まとめて混合 廃棄物として回収されるケースもあった。
こ のため処理単価が割高になっていた。
施工現場の分別を徹底した上で、分別した 廃棄物を配送車の帰り便で中継基地まで回収 し、基地で集約して品目ごとにリサイクルル ートを一本化すれば、処理コストを削減でき るうえ、リサイクル率も高まると考えた。
物流部の片寄勉部長は、過去に茨城支社で 施工現場のゼロエミッションに取り組んだ経 験があった。
現場近くに拠点を設けて有価物 や余剰部材を効率良く回収する仕組みをつく った。
「これをモデルに中継基地を活用して部 材の配送を廃棄物の回収と組み合わせること で、物流を含めたトータルのコスト削減を実 現できると判断した」と振り返る。
ただし、有価物や余剰部材とは違い、廃棄 施工現場の八割をカバー 同社は中継基地を「ECOセンター」の名 称で〇六年四月から、つくば・神奈川・名古 屋・大阪・九州・岡山・湖東の順で七カ所に 展開してきた。
このうちつくば・九州・湖東 の三カ所は物流センターに併設。
いずれもパ ナホームが運営し業務を運送会社に委託して いる。
これまでに北海道・東北・新潟・沖縄 の各地域および一部の協業会社の管轄を除く 全国の八割の施工現場に対し、ECOセンタ ーで部材配送の中継と廃棄物の集積を行う体 制を整えた。
(上棟工事用の主要部材は従来 通り物流センターから直送) ECOセンターによる配送・回収のフロー は次の通りだ。
工事の一四日前に確定した発注内容に従い、 内装部材や住設機器のサプライヤーが工事の 二日前に物流センターへ納品する。
工事の進 捗が予定より遅れた場合には物流センターに 一時保管して出荷日を調整する。
施工現場への搬入は現場監督の「着日・車 種設定依頼書」を基に行う。
着日に合わせて 物流センターから十トン車で出荷し、ECO センターで邸別に指定車種に積み替えて配送 する。
その帰りに前回配送した部材の端材を 回収し、ECOセンターで品目別にコンテナ に詰めてそれぞれのリサイクルルートの処理施 設へ送る。
リサイクルルートは、〇六年にゼロエミッ 物を部材配送の帰り便で回収する場合は関連 法の制約を受ける。
それをクリアする方法は 二つあった。
一つは廃棄物処理法にのっとり 部材配送を行う運送会社が自治体ごとに産業 廃棄物収集運搬の許可を取る方法。
もう一つ は広域認定制度を利用する方法だ。
広域認定制度はメーカーが廃棄物となった 自社製品をリサイクルする際に、全国各地か ら効率良く回収できるように設けられた特例 制度だ。
大臣の広域認定を受ければ自治体に よる収集運搬の許可がなくても自社製品の廃 棄物を回収できる。
だが広域認定の取得には 著しく時間が掛かる上、処分場を変更する場 合に改めて申請を行わなければならないとい う不合理な点もあった。
将来、処理単価の変 動に伴ってリサイクルルートを変更することも 想定される。
継続して運用するには、廃棄物 処理法のもとで積み降ろしの双方の場所の自 治体の許可を取得する方が有利と見た。
ただし、廃棄物処理法では、同社が別法人 である協業会社の施工現場から廃棄物を回収 する場合に中間処理の許可が新たに要る。
そ こで施工現場の管轄によって対応を分けるこ とにした。
支社が管轄する施工現場からの回 収は廃棄物処理法のもとで行い、中継基地の 業務を委託する協力運送会社が各地の自治体 から収集運搬の許可を取る。
一方、協業会社 の施工現場からの回収には広域認定制度を利 用することにし、パナホームが一〇年四月に 広域認定を取得した。
61 APRIL 2013 通りのトータルコスト削減を実現した。
CO2の排出量削減でも大きな成果を上げ た。
物流センターから部材を施工現場へ配送 するまでの動脈物流と、廃棄物を処分場へ回 収するまでの静脈物流で排出するCO2の量 が、ECOセンターを経由する前と比べ推計 で三一・七%減った。
より効果が大きかったのは静脈物流だ。
従 来は処分業者が施工現場へ便を仕立てて少量 ずつ回収していた。
新体制では配送の帰り便 を使うことに加え、現場から少量ずつ回収し てECOセンターで四〜一〇トンクラスのコン テナにまとめて処分場へ大量輸送するかたち に変えたことで効率が上がった。
物流センター〜ECOセンター間の輸送を 大型化したことも寄与した。
物流センターか ら遠い名古屋・大阪・岡山の各ECOセンタ ーの配送エリアはCO2削減効果が特に大きく、 名古屋では三分の一以下に減った。
調達ルートの見直しも 今後は調達物流のルートの見直しを検討し ていく。
現在のように内装部材を全て三カ所 の物流センターで調達するのではなく、EC Oセンターか地域によっては別途「デポセン ター」を設けて調達基地にすることを検討し ている。
同社では部材購入部門の調達部が調達物流 を管轄している。
三年前から購入単価を下げ る施策として同部に調達物流担当を設け、物 流センターからサプライヤーの拠点へ集荷に行 く方法を拡大してきた。
「その集荷基地を物流センターからもっと消 費地に近いところへ移せば、V字配送がなく なり効率が良くなる。
物流部がそのルートづ くりを支援していきたい」と片寄部長は意欲 を見せている。
(フリージャーナリスト・内田三知代) ションを達成した際に同社の環境基準に沿っ て各支社が適正な処理を行う業者としてリス トアップした中から、処理単価が安く、処理 場がECOセンターの近くにある業者を選定 した。
施工現場での分別もリサイクル業者の 処理単価に応じて従来の七通りから十一通り へ細分化した。
施工現場によって分別方法に ばらつきが出ないよう、端材の袋詰めやダン ボールの結束などをルール化し、作業の標準 化も行った。
従来は、全ての廃棄物を施工現場ごとに業 者に引き渡し、しかも現場によっては混合廃 棄物として処理していた。
処理単価も容積建 てでアバウトな決め方だった。
現場で十一通 りに分別してECOセンターに集め、品目ご とに重量を計測して指定した業者に引き渡す かたちにしたことで、処理が透明になり処理 費用を大幅に削減できた。
余剰部材の再利用 や有価物のマテリアルリサイクルも進み、リ サイクル率の向上にもつながった。
物流コストも削減できた。
従来は配送の回 数が少なかったため施工現場が指定する着日 の午前九時までに必ず配送するルールだった。
だが回数が増えたことで多少の融通が利くよ うになり、ECOセンターの配送車の回転率 を上げるために現場と調整して日時を変更す ることが可能になった。
その結果、配送業務 が平準化してコストが下がった。
これらの効果によって、新たに発生したE COセンターなどの費用を相殺し、期待した 図2 「ECOセンター」の配送・回収フロー BEFORE AFTER 物流センター現場毎に部材配送 ?集約部材配送 ?集約し分別排出 ?静脈物流 の活用 ?適正車両配送 (固定車) 産業廃棄物処理業者 有価リサイクル 分別された廃棄物 リサイクル業者 4t 車配送 4t 車配送 4t 車配送 2t 車配送 物流センター ECO センターを前線デポ拠点とし 配送車両と廃棄物回収車両を統合 ⇒トータルでのCO2 削減を図る 現地積替 現場毎に 廃棄物回収 空車 空車 廃棄物 廃棄物 建設現場 建設現場 CO2 削減率 31.7%達成 10t 車幹線配送 ECO センター 約29% 約71% 部材配送→ ←廃棄物回収
