2013年4月号
3PL再入門
3PL再入門
第4回 3PLの導入効果を理解する
3PL 再 入門
梶田ひかる
トランコム(株)
ロジスティクスソリューションアドバイザー
《第 回》
従来型の物流業務委託と3PLでは、その効果
は大きく異なる。
3PLを利用することの本質的な 価値は一時的なコスト削減ではなく、物流システ ム管理人材の確保と継続的な効率化の実現にあ る。
中堅メーカーこそ、その効果を最も有効に利 用することができる。
APRIL 2013 82 3PLを利用する真のメリット 日本においては古くから物流業務の外部委 託が広く行われてきた。
わざわざ「日本にお いて」と枕詞を置いたのは、先進国であって も各国の事業規制によって委託が進んでいる 国と、そうでない国があるためである。
例えば米国は、一般にはアウトソーシング先 進国と目されているが、物流業務に関しては いまだに荷主企業の自家倉庫が多く、近隣へ の配送も自家トラックの比率が高い。
また新 興国の多くも物流業が未発達であるために自 家物流が中心となっている。
そのため世界規模で進んでいる現在の3P L化の流れにおいて、その導入効果として海 外で紹介されているものの多くが、実は単純 な外部委託と3PLを区別していないことに 注意する必要がある。
日本における3PLの 導入効果は、この二つを明確に分けてとらえ なければ理解できない。
図1は日本における従来型の物流業務委託 の効果と3PLの導入効果を比較したもので ある。
一見すると、それぞれの効果として挙 げられている事項に大きな違いはないように 感じるかもしれない。
3PLの導入効果とし て目立つのは、物流システム管理要員の人事 ローテーションやキャリアパスの問題が解決す ることぐらいであろう。
だが、実際には大きな違いがある。
図1で 「物流業務委託による効果」として挙げられ ている事項の一部は、保管と輸送を大幅に再 編した新しい物流システムを稼働させた時点 での効果であり、その後、条件が変化すれば 効果は失われてしまう。
確かに新システムの稼働時には「生産性・ 効率の向上」や「物流プロセスの簡素化」を 期待できるが、そのシステムが取り扱ってい る商品や入庫元・納品先の変化、納品先から 要求される物流サービス条件の変化などに伴い、 当初の効果は徐々に薄れていく。
そして、そのような変化が物流においては 頻繁に発生する。
そのため物流業務における パフォーマンスは、変化への対応力が決定的 な要因になる。
変化への対応力を強化するこ とで設備・機器がより一層有効活用できるよ うになり、生産性が向上するのである。
従って、3PLの真のメリットとは、物流 システム管理業務を委託することによる人材 問題および人事問題の解決であり、また変化 への対応力の強化による持続的な物流システ ムの効率化なのだと言える。
この問題と同様に、物流業務の外部委託に よるコスト低減についても大きな誤解がまん 延している。
委託によって業務の担当者が荷 主企業のスタッフから専門業者のスタッフに代 わるために人件費の水準が下がり、倉庫の坪 単価や運賃にも業者間相場が適用されるので コストが下がるという考え方である。
確かにかつてはそれが可能であった。
しか しながら今では、そうした余地はほとんど残 4 3PLの導入効果を理解する 83 APRIL 2013 されていない。
人件費や経費の単価を下げる のではなく、システム、すなわち仕組みを変 えることでコスト低減を実現する時代に入っ ている。
それを支援するのが3PLである。
具体的なコスト低減の要素は大きく二つあ る。
物流システムそのものと在庫である。
一 般にメーカーにおいては、二つのうち在庫削 減による効果のほうが大きい。
一方、流通業 は日本の場合、もともとバックヤード在庫を ほとんど持たないため、直接的には物流シス テムコストの低減効果のほうが大きくなる。
ただし、在庫削減によるコスト低減効果を 厳密に算定するのは容易ではない。
資本コス トのように損益計算書上には表れないコスト や、陳腐化リスクのように将来的に発生する コストもある。
そのために、すぐに損益計算 書上に効果が表れる物流システムコスト低減の 方に目が行きやすいことには留意が必要である。
規模の経済性によるコストダウン それでは物流システムコストの低減はどう やって実現されるのであろうか。
言うまでも なく、それは生産性の向上である。
そしても う一つのヒントは、規模の経済性を利用する ことだと筆者は考えている。
倉庫業務を例に取る。
単純に考えれば、作 業要員の生産性が上がれば、投入する人数を 減らすことができる。
物量の変化に応じて投 入する人数を変化させることでも人件費は低 減できる。
しかしながら、そう簡単に行かな いのが物流である。
一年を通して作業に習熟した要員を一定数 確保しておかなければ、繁忙期の業務に差し 障りが生じてしまう。
また受注翌日納品の場 合、当日の作業量はその日にならないと分か らない。
作業量が分かった時点で、現場に投 入する人数や各作業員の勤務時間を調整する には限度がある。
倉庫スペースも同様である。
必要なスペース を中長期的に予測するのは極めて困難である。
最近よく見られるのは、これまで国内生産だっ たものが海外生産に変わることに伴う入庫量 の増大である。
海外からの入庫となれば、海 上コンテナ単位で入ることになるため、それ だけ保管スペースを広く取る必要が出てくる。
そもそも、そのビジネスが拡大するのか縮 小するのか、確かなことは誰にも分からない。
それを専用倉庫で処理する場合、ある程度の 物量増大にも対応できるように手配すること になる。
つまり広めになる。
一年のスパンで 見ても季節変動があるため閑散期にはスペー スが余ってしまう。
これを解決する方法の一つが、複数の荷主 による大規模施設の共同利用である。
図2で は荷主A社、B社の業務を3PL事業者C社 が受託し、物量の変化に応じてスペースを柔 軟に調整している。
荷主の数が三社、四社と 増えてくれば、それだけ調整の余地も大きく なる。
荷主各社で情報システムを統一化するなど して作業方法の標準化を図れば、要員の融通 も可能になる。
さらには輸送も融通し合うこ とで、同一方面への荷物が増えて積載率が向 上する。
つまり配送費を低減できる。
昨今、大規模施設を提供する物流不動産デ ベロッパーが注目されている。
3PLがその 主なテナントとなっている。
3PLを媒介と してスペース、設備、要員を複数の荷主間で 融通し、物流システムコストの低減を実現する という流れは今後ますます拡大していくだろ う。
これに伴い大規模施設へのニーズが高まる。
図1 物流委託と3PL 委託による効果 物流業務委託による効果 ●投資の抑制 ●コスト削減 ●委託部門へのサービスの向上 ●資金の柔軟化 ●コア業務への集中 ●顧客サービスの向上 ●規模の経済性の追求 ●生産性・効率の向上 ●労働問題の排除 ●有能な人材、経験者等の確保 ●物流プロセスの簡素化 ●規制に関する各種コスト発生の排除 3PLにより新たに加わる効果 ●設備・機器の有効活用 ●人材の有効活用 ─技術教育の強化 ─ノウハウの有効活用 ─ローテーション/キャリアパスなど 人事課題の解決 ●変化への対応力の強化 ─新技術のキャッチアップ ─柔軟な設備サイズの実現 ─サービスの向上 ●利益の向上 そのために大型施設の新規供給が相次ぎ、物 流REITが活況を呈しているのである。
中堅メーカーこそ効果大 ロジスティクス効率化のもう一つの要素で ある在庫削減に着目してみよう。
在庫を持つことによるリスクは年々高まる 一方だ。
食品業界では、量販店を中心とした 「三分の一ルール(製造日から賞味期限までの 期間の三分の一を過ぎた商品の納品を禁止す るルール)」や日付の逆転禁止(先に納品した 商品よりも製造日が遅い商品の納品を禁止す るルール)により、在庫廃棄の可能性が高まっ ている。
家電製品など他の消費財でも、商品によっ て売れるか売れないかが極端になってきてい る。
しかも、短期間で急激に売れ行きが変わ る。
想定以上に売れて販売機会損失を招いた り、突然売れなくなったりするのが昨今の消 費の特徴である。
当然ながらその影響は、それら消費財メー カーに資材を納入する産業材メーカーにも及ぶ。
納品リードタイムを維持したまま受注量の激 しいアップダウンに対応するには、各消費財 メーカー向け製品の見込み生産を行うしかない。
それだけ在庫の陳腐化リスクが高まる。
オペレーションに必要な在庫の絶対値、安 全在庫の水準を下げることができれば、そう したリスクを低減できる。
物流システムの再 編が一つの手段となる。
具体的には在庫拠点 の集約とクロスドックの活用である。
それに 加えて、物流サービスの標準化を進めれば、 さらに在庫は少なくできる。
3PLを利用してそれを実現した時に、最 も効果を得やすいのが中堅メーカーだ。
規模 は中堅でも大手と同様に全国で販売を行うた め物流拠点を全国に点在させている上、シェ アに劣るため見込み生産が多く、もともと在 庫の増えやすい状況にある。
しかも、物流システム管理人材は不足がち だ。
人材も資金も豊富な大手メーカーでは3 PLを利用してシステムを再編する場合でも、 最適な拠点数や立地、その効果を社内で検討 し、施策の大枠を決めてから候補企業に提案 依頼書(RFP)を出すことが多い。
しかし、 中堅メーカーにはそれも難しい。
一方で中堅メーカーには在庫削減を進める 上で有利な点もある。
前回の本稿で述べたよ うに、在庫削減は3PL事業者のみで進める ことはできない。
生産や営業にもそれに向け た対応を求める必要がある。
その点で中堅メー カーにはオーナー系企業が多く、社内全体の 統制を取りやすい。
オーナーが直接、ロジス ティクス再編を先導することで改革に推進力 が生まれる。
それにも関わらず、今のところ中堅メーカー の3PLニーズは決して高くない。
理由の一 つは、業務を委託した時点ではコストアップ になることが多いからである。
システムが高 度化されて物流の工程がすぐに分かるように なる、品質が向上する、などの効果を得る代 わりに、情報システムのコストが増える。
表面的なコストだけでなく、在庫削減によ る各種の効果に加え、システムの高度化によ る顧客サービスの向上や販売機会損失の低減 などを加味して、3PLの真のメリットを理 解すべきだろう。
中堅メーカーの置かれている環境は厳しい。
納品先から求められる物流サービスレベルは大 APRIL 2013 84 3PL 再 入門 図2 大規模倉庫における柔軟性の実現 A社B社 A社 B社 A社 B社 A 社繁忙期、B社閑散期A 社閑散期、B 社繁忙期 手メーカーに対するそれと大きくは変わらない。
しかし、物量が少ないため、コストが割高に なってしまう。
対売上高物流コスト比率が上 がり、価格競争で不利になる。
その有効なソリューションとして3PLがあ る。
3PLを利用することで在庫削減を進め、 ローコスト化と顧客満足度の向上を図ること ができる。
ロジスティクスを一気に大手企業 と遜色ないレベルに高度化することができる のである。
そのために必要なのは、物流に対 する経営トップの正しい認識と強力なリーダー シップである。
業態によるコスト構成の違い ただし、物流システムそのもののコストは その会社の業態によってコスト構成比が異なっ てくる。
流通業では保管・荷役のコストの割 合が高いのに対し、メーカーでは輸送コスト の割合が高くなる。
図3に日本ロジスティクスシステム協会の 二〇一一年度の業種別の物流コスト機能別比 率を示す。
これによると製造業平均で、物流 コストの六割強が輸送コストとなっている。
当該年度調査では製造業をさらに細分化した レベルでの物流機能別コスト構成は公表され ていないが、業種によっては九割近くが輸送 コストとなっている業種もある。
この調査から次のことが言える。
小分け作 業が多く発生し、それに要するコストの大き い流通業では3PL事業者を選択する際にも 庫内作業の業務レベルが重要となる。
それに 対して輸送コストの比率の高いメーカーにおい ては、相対的に輸送費の管理レベルを重視す べきである。
そして輸送コストの低減もまた単価ではな く仕組みで対応する時代になっている。
安い 運送事業者を探すという方法には継続性がな く、赤字覚悟の運賃で引き受けてくれる運送 事業者は少なくなっている。
輸送コストを低減する具体的な方法は走行 距離によって異なる。
流通業のルート配送な ど、四トン未満のトラックで近距離輸送を行 う場合には車両の回転数がポイントになる。
例えばコンビニの店舗配送は一日三回転させ ることでローコスト化を実現している。
メーカー輸送の中心となる中長距離の場合 は、やはり積載率、実車率、実働率の向上が 基本となる。
しかし、これは輸送コスト管理 における長年のテーマであり、実現は容易で はない。
荷動きをマクロで見れば、同じ区間でも大 都市圏に入る荷物より、大都市圏から出てい く荷物の方が多い。
物量にアンバランスがあ るため、実車率の向上には限度がある。
しかし、荷動きをミクロでとらえれば策は 打てる。
各方面別の荷物を持つ運送事業者を マッチングすれば良い。
メーカー同士の物流 共同化によってそれを実現した事例は、過去 に本誌でも何度か取り上げられてきた。
しか し、これは継続が難しい。
いったんは成功し ても、それぞれのメーカーの物量の変化、拠 点の再編等によって条件が変わってしまうか らである。
往復実車を安定的に実現するには、特定の 協力運送会社だけで荷物を融通するのではな くマッチングの対象を増やす必要がある。
そ のツールが求貨求車システムである。
ITブー ムの頃の乱立から淘汰を経て、現在はマッチ ング率の高い求貨求車システムへの情報集約 が進んでいる。
筆者がアドバイザーを務めるトランコムはそ の代表格であり、同社は自身で運営する求貨 求車システムをベースに荷主企業の輸送管理 を丸ごと請け負うサービスを「エコロジネット ワーク」と名付け、それを3PL事業におけ る強みと位置付けている。
85 APRIL 2013 図3 物流コストの物流機能別構成比 100 80 60 40 20 0 (%) 小売業 9.9 37.3 52.8 製造業 23.6 15.4 61.0 輸送費保管費 卸売業 38.1 16.8 45.0 包装・荷役その他
3PLを利用することの本質的な 価値は一時的なコスト削減ではなく、物流システ ム管理人材の確保と継続的な効率化の実現にあ る。
中堅メーカーこそ、その効果を最も有効に利 用することができる。
APRIL 2013 82 3PLを利用する真のメリット 日本においては古くから物流業務の外部委 託が広く行われてきた。
わざわざ「日本にお いて」と枕詞を置いたのは、先進国であって も各国の事業規制によって委託が進んでいる 国と、そうでない国があるためである。
例えば米国は、一般にはアウトソーシング先 進国と目されているが、物流業務に関しては いまだに荷主企業の自家倉庫が多く、近隣へ の配送も自家トラックの比率が高い。
また新 興国の多くも物流業が未発達であるために自 家物流が中心となっている。
そのため世界規模で進んでいる現在の3P L化の流れにおいて、その導入効果として海 外で紹介されているものの多くが、実は単純 な外部委託と3PLを区別していないことに 注意する必要がある。
日本における3PLの 導入効果は、この二つを明確に分けてとらえ なければ理解できない。
図1は日本における従来型の物流業務委託 の効果と3PLの導入効果を比較したもので ある。
一見すると、それぞれの効果として挙 げられている事項に大きな違いはないように 感じるかもしれない。
3PLの導入効果とし て目立つのは、物流システム管理要員の人事 ローテーションやキャリアパスの問題が解決す ることぐらいであろう。
だが、実際には大きな違いがある。
図1で 「物流業務委託による効果」として挙げられ ている事項の一部は、保管と輸送を大幅に再 編した新しい物流システムを稼働させた時点 での効果であり、その後、条件が変化すれば 効果は失われてしまう。
確かに新システムの稼働時には「生産性・ 効率の向上」や「物流プロセスの簡素化」を 期待できるが、そのシステムが取り扱ってい る商品や入庫元・納品先の変化、納品先から 要求される物流サービス条件の変化などに伴い、 当初の効果は徐々に薄れていく。
そして、そのような変化が物流においては 頻繁に発生する。
そのため物流業務における パフォーマンスは、変化への対応力が決定的 な要因になる。
変化への対応力を強化するこ とで設備・機器がより一層有効活用できるよ うになり、生産性が向上するのである。
従って、3PLの真のメリットとは、物流 システム管理業務を委託することによる人材 問題および人事問題の解決であり、また変化 への対応力の強化による持続的な物流システ ムの効率化なのだと言える。
この問題と同様に、物流業務の外部委託に よるコスト低減についても大きな誤解がまん 延している。
委託によって業務の担当者が荷 主企業のスタッフから専門業者のスタッフに代 わるために人件費の水準が下がり、倉庫の坪 単価や運賃にも業者間相場が適用されるので コストが下がるという考え方である。
確かにかつてはそれが可能であった。
しか しながら今では、そうした余地はほとんど残 4 3PLの導入効果を理解する 83 APRIL 2013 されていない。
人件費や経費の単価を下げる のではなく、システム、すなわち仕組みを変 えることでコスト低減を実現する時代に入っ ている。
それを支援するのが3PLである。
具体的なコスト低減の要素は大きく二つあ る。
物流システムそのものと在庫である。
一 般にメーカーにおいては、二つのうち在庫削 減による効果のほうが大きい。
一方、流通業 は日本の場合、もともとバックヤード在庫を ほとんど持たないため、直接的には物流シス テムコストの低減効果のほうが大きくなる。
ただし、在庫削減によるコスト低減効果を 厳密に算定するのは容易ではない。
資本コス トのように損益計算書上には表れないコスト や、陳腐化リスクのように将来的に発生する コストもある。
そのために、すぐに損益計算 書上に効果が表れる物流システムコスト低減の 方に目が行きやすいことには留意が必要である。
規模の経済性によるコストダウン それでは物流システムコストの低減はどう やって実現されるのであろうか。
言うまでも なく、それは生産性の向上である。
そしても う一つのヒントは、規模の経済性を利用する ことだと筆者は考えている。
倉庫業務を例に取る。
単純に考えれば、作 業要員の生産性が上がれば、投入する人数を 減らすことができる。
物量の変化に応じて投 入する人数を変化させることでも人件費は低 減できる。
しかしながら、そう簡単に行かな いのが物流である。
一年を通して作業に習熟した要員を一定数 確保しておかなければ、繁忙期の業務に差し 障りが生じてしまう。
また受注翌日納品の場 合、当日の作業量はその日にならないと分か らない。
作業量が分かった時点で、現場に投 入する人数や各作業員の勤務時間を調整する には限度がある。
倉庫スペースも同様である。
必要なスペース を中長期的に予測するのは極めて困難である。
最近よく見られるのは、これまで国内生産だっ たものが海外生産に変わることに伴う入庫量 の増大である。
海外からの入庫となれば、海 上コンテナ単位で入ることになるため、それ だけ保管スペースを広く取る必要が出てくる。
そもそも、そのビジネスが拡大するのか縮 小するのか、確かなことは誰にも分からない。
それを専用倉庫で処理する場合、ある程度の 物量増大にも対応できるように手配すること になる。
つまり広めになる。
一年のスパンで 見ても季節変動があるため閑散期にはスペー スが余ってしまう。
これを解決する方法の一つが、複数の荷主 による大規模施設の共同利用である。
図2で は荷主A社、B社の業務を3PL事業者C社 が受託し、物量の変化に応じてスペースを柔 軟に調整している。
荷主の数が三社、四社と 増えてくれば、それだけ調整の余地も大きく なる。
荷主各社で情報システムを統一化するなど して作業方法の標準化を図れば、要員の融通 も可能になる。
さらには輸送も融通し合うこ とで、同一方面への荷物が増えて積載率が向 上する。
つまり配送費を低減できる。
昨今、大規模施設を提供する物流不動産デ ベロッパーが注目されている。
3PLがその 主なテナントとなっている。
3PLを媒介と してスペース、設備、要員を複数の荷主間で 融通し、物流システムコストの低減を実現する という流れは今後ますます拡大していくだろ う。
これに伴い大規模施設へのニーズが高まる。
図1 物流委託と3PL 委託による効果 物流業務委託による効果 ●投資の抑制 ●コスト削減 ●委託部門へのサービスの向上 ●資金の柔軟化 ●コア業務への集中 ●顧客サービスの向上 ●規模の経済性の追求 ●生産性・効率の向上 ●労働問題の排除 ●有能な人材、経験者等の確保 ●物流プロセスの簡素化 ●規制に関する各種コスト発生の排除 3PLにより新たに加わる効果 ●設備・機器の有効活用 ●人材の有効活用 ─技術教育の強化 ─ノウハウの有効活用 ─ローテーション/キャリアパスなど 人事課題の解決 ●変化への対応力の強化 ─新技術のキャッチアップ ─柔軟な設備サイズの実現 ─サービスの向上 ●利益の向上 そのために大型施設の新規供給が相次ぎ、物 流REITが活況を呈しているのである。
中堅メーカーこそ効果大 ロジスティクス効率化のもう一つの要素で ある在庫削減に着目してみよう。
在庫を持つことによるリスクは年々高まる 一方だ。
食品業界では、量販店を中心とした 「三分の一ルール(製造日から賞味期限までの 期間の三分の一を過ぎた商品の納品を禁止す るルール)」や日付の逆転禁止(先に納品した 商品よりも製造日が遅い商品の納品を禁止す るルール)により、在庫廃棄の可能性が高まっ ている。
家電製品など他の消費財でも、商品によっ て売れるか売れないかが極端になってきてい る。
しかも、短期間で急激に売れ行きが変わ る。
想定以上に売れて販売機会損失を招いた り、突然売れなくなったりするのが昨今の消 費の特徴である。
当然ながらその影響は、それら消費財メー カーに資材を納入する産業材メーカーにも及ぶ。
納品リードタイムを維持したまま受注量の激 しいアップダウンに対応するには、各消費財 メーカー向け製品の見込み生産を行うしかない。
それだけ在庫の陳腐化リスクが高まる。
オペレーションに必要な在庫の絶対値、安 全在庫の水準を下げることができれば、そう したリスクを低減できる。
物流システムの再 編が一つの手段となる。
具体的には在庫拠点 の集約とクロスドックの活用である。
それに 加えて、物流サービスの標準化を進めれば、 さらに在庫は少なくできる。
3PLを利用してそれを実現した時に、最 も効果を得やすいのが中堅メーカーだ。
規模 は中堅でも大手と同様に全国で販売を行うた め物流拠点を全国に点在させている上、シェ アに劣るため見込み生産が多く、もともと在 庫の増えやすい状況にある。
しかも、物流システム管理人材は不足がち だ。
人材も資金も豊富な大手メーカーでは3 PLを利用してシステムを再編する場合でも、 最適な拠点数や立地、その効果を社内で検討 し、施策の大枠を決めてから候補企業に提案 依頼書(RFP)を出すことが多い。
しかし、 中堅メーカーにはそれも難しい。
一方で中堅メーカーには在庫削減を進める 上で有利な点もある。
前回の本稿で述べたよ うに、在庫削減は3PL事業者のみで進める ことはできない。
生産や営業にもそれに向け た対応を求める必要がある。
その点で中堅メー カーにはオーナー系企業が多く、社内全体の 統制を取りやすい。
オーナーが直接、ロジス ティクス再編を先導することで改革に推進力 が生まれる。
それにも関わらず、今のところ中堅メーカー の3PLニーズは決して高くない。
理由の一 つは、業務を委託した時点ではコストアップ になることが多いからである。
システムが高 度化されて物流の工程がすぐに分かるように なる、品質が向上する、などの効果を得る代 わりに、情報システムのコストが増える。
表面的なコストだけでなく、在庫削減によ る各種の効果に加え、システムの高度化によ る顧客サービスの向上や販売機会損失の低減 などを加味して、3PLの真のメリットを理 解すべきだろう。
中堅メーカーの置かれている環境は厳しい。
納品先から求められる物流サービスレベルは大 APRIL 2013 84 3PL 再 入門 図2 大規模倉庫における柔軟性の実現 A社B社 A社 B社 A社 B社 A 社繁忙期、B社閑散期A 社閑散期、B 社繁忙期 手メーカーに対するそれと大きくは変わらない。
しかし、物量が少ないため、コストが割高に なってしまう。
対売上高物流コスト比率が上 がり、価格競争で不利になる。
その有効なソリューションとして3PLがあ る。
3PLを利用することで在庫削減を進め、 ローコスト化と顧客満足度の向上を図ること ができる。
ロジスティクスを一気に大手企業 と遜色ないレベルに高度化することができる のである。
そのために必要なのは、物流に対 する経営トップの正しい認識と強力なリーダー シップである。
業態によるコスト構成の違い ただし、物流システムそのもののコストは その会社の業態によってコスト構成比が異なっ てくる。
流通業では保管・荷役のコストの割 合が高いのに対し、メーカーでは輸送コスト の割合が高くなる。
図3に日本ロジスティクスシステム協会の 二〇一一年度の業種別の物流コスト機能別比 率を示す。
これによると製造業平均で、物流 コストの六割強が輸送コストとなっている。
当該年度調査では製造業をさらに細分化した レベルでの物流機能別コスト構成は公表され ていないが、業種によっては九割近くが輸送 コストとなっている業種もある。
この調査から次のことが言える。
小分け作 業が多く発生し、それに要するコストの大き い流通業では3PL事業者を選択する際にも 庫内作業の業務レベルが重要となる。
それに 対して輸送コストの比率の高いメーカーにおい ては、相対的に輸送費の管理レベルを重視す べきである。
そして輸送コストの低減もまた単価ではな く仕組みで対応する時代になっている。
安い 運送事業者を探すという方法には継続性がな く、赤字覚悟の運賃で引き受けてくれる運送 事業者は少なくなっている。
輸送コストを低減する具体的な方法は走行 距離によって異なる。
流通業のルート配送な ど、四トン未満のトラックで近距離輸送を行 う場合には車両の回転数がポイントになる。
例えばコンビニの店舗配送は一日三回転させ ることでローコスト化を実現している。
メーカー輸送の中心となる中長距離の場合 は、やはり積載率、実車率、実働率の向上が 基本となる。
しかし、これは輸送コスト管理 における長年のテーマであり、実現は容易で はない。
荷動きをマクロで見れば、同じ区間でも大 都市圏に入る荷物より、大都市圏から出てい く荷物の方が多い。
物量にアンバランスがあ るため、実車率の向上には限度がある。
しかし、荷動きをミクロでとらえれば策は 打てる。
各方面別の荷物を持つ運送事業者を マッチングすれば良い。
メーカー同士の物流 共同化によってそれを実現した事例は、過去 に本誌でも何度か取り上げられてきた。
しか し、これは継続が難しい。
いったんは成功し ても、それぞれのメーカーの物量の変化、拠 点の再編等によって条件が変わってしまうか らである。
往復実車を安定的に実現するには、特定の 協力運送会社だけで荷物を融通するのではな くマッチングの対象を増やす必要がある。
そ のツールが求貨求車システムである。
ITブー ムの頃の乱立から淘汰を経て、現在はマッチ ング率の高い求貨求車システムへの情報集約 が進んでいる。
筆者がアドバイザーを務めるトランコムはそ の代表格であり、同社は自身で運営する求貨 求車システムをベースに荷主企業の輸送管理 を丸ごと請け負うサービスを「エコロジネット ワーク」と名付け、それを3PL事業におけ る強みと位置付けている。
85 APRIL 2013 図3 物流コストの物流機能別構成比 100 80 60 40 20 0 (%) 小売業 9.9 37.3 52.8 製造業 23.6 15.4 61.0 輸送費保管費 卸売業 38.1 16.8 45.0 包装・荷役その他
